嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 63、三槍

   63、三槍

 

 「世に知られた使い手のミカゲ殿に一手御指南いただきたい!」

 

 ローカルな地元の有名人ポジを目指していたのに、いつの間にか世に知られていたらしい。

 

 槍術士を名乗ったソラが、軽く一振りして棍を構えた。

 

 この手の腕比べには基本応じてないのだけど、この娘はちょっと面白そうだ。興が湧く。

 

 「指南するほどの腕ではないが、これも何かの縁。拳士として応じよう」

 

 武道家っぽく挨拶されたので、ちょっと勿体付けてみた。『(こぶし)』は使わないんだけどね。

 

 「ありがたく!」

 

 嬉々として威儀を正し、頭を下げて礼をし、早速棍を構えて間を測る。

 

 槍術士と名乗ったのに、得物は何故か棍。

 

 つまり、二メートル程の単なる棒だ。

 

 この時代、場所にもよるが旅人や商人の護衛、傭兵や狩人など武装している者も珍しくはない。腰に剣やナイフをぶら下げているやつも結構居たりする。鞘なり覆いなり被せれば、実槍を持ち歩くことも出来そうなものだが、妙と言えば妙だ。

 

 一手目。

 

 棍で突こうと踏み込んできたソラに合わせて深く踏み込み、棍の持ち手を押さえて手繰(たぐ)り、そのまま掴んだ手を返して投げ飛ばす。

 

 即座に跳ね起きて突いてきた棍を、掌で反らしながら前に出、間を詰めて反対の手の掌打を伸ばし、眼前で寸止め。

 

 ソラ側は、ぎょっとしながら顔を引き、重心を下げつつ棍の中ほどに持ち換え、コンパクトに振り回して棍の反対側で下から打ちかかって来る。

 

 私は、半身で避けながら棍に沿わせた両掌を棍の回転する方向に合わせて更に回転させ、するりと棍を奪い取って回転方向を変化させ、軽く彼女の脇に当てた棍の端っこで、ソラをボールのように放り飛ばす。

 

 間合いが開く。

 

 ふわりと浮かされ、自分から宙返りをして上手く着地したソラは、自分の技がまるで通じないこと、いつの間にか自分の手の中に棍が無いことに気付き、唖然としてこちらを見た。

 

 「ほれっ」

 

 奪い取った棍を投げ返す。別に何の仕掛けもない。只の木の棒だった。

 

 「・・・強い」

 

 なんか感動したように、ぶるぶる震えている。

 

 「修業したからな」

 

 そっけなく返す。

 

 「凄い・・・凄いから、全力でやる!」

 

 ソラは顔つきが変り、纏うオーラの量を増やし始めた。

 

 「待て待て!これ以上はここでは無理だ。裏庭(ここ)が持たんし建物や見物人に被害が出かねん」

 

 ただ制圧するだけなら簡単だけど、どんな"発"を持ってるか解らん奴相手に周りを気にしながら模擬戦をするのは骨だ。

 まあ、使うのは()()()だけだろうけど、町中では瓦礫が飛んだだけで死人が出かねない。

 

 もう終わりにしても良かったが、何となくどんな"発"を使うのか興味が有ったので、午後からちょっと街の外まで出て続きをすることになった。

 

 

 と言うわけで今、見物人にソラを含めた皆で『緑美楼』の食堂へと移動し、全員で昼食をとっている。

 

 『緑美楼』の昼食は、麺類が多い。

 

 今日は魚介パスタだ。美味。

 

 基本的に、時間をずらさない限り私が本館の食堂に来ると周囲の席はすぐに埋まる。多分、ピートの人気のせいだろう。

 

 今日は、同席者がピート以外にも居るので、いつもと違い遠巻きにこちらを気にしていても、近づいて来る者はいない

 

 隣ではナプキンを首に巻いたピートが、真剣な顔をトマトソースまみれにして、幾分小盛りのパスタを一本ずつモグモグしている。

 

 ピートは、辛いのと苦味の有る野菜とかは余り好まないが、子供味の料理は大好物だ。ここではちょっと贔屓されていて、ピートのパスタだけこっそりミートボールが入っている。

 

 向かい側ではピート以外に唯一一緒にテーブルに着いているソラが、恐縮しながら落ちつかなげに食事をしていた。奢りだと言って、半ば強引に連れてきたのだ。

 まあ冷静に考えると、若い女が妓楼には入り難いか。悪い事したかもしれん。

 

 騒がしい大部屋の食堂で食事をするソラの所作は綺麗で、育ちの良さを感じさせる。

 もしかすると、良いとこの出なのか?

 

 そのわりには武術の技量は大したものだけど。武術を磨く武人の家柄とかか?金持ちの道楽で天凜が有ったか。何か訳有りか。

 

 まいっか。聞かなけりゃ関係ないし。

 

 

 食後に街を出て少し移動し、人気のない荒れ地に向かう。

 

 先程と同じように対峙する二人。

 

 しかし、今度は武人としてではなく念能力者としての模擬戦だ。

 

 一見同じでも、見える者には二人の回りに陽炎のように揺らめくエネルギーの奔流が見えるはずだ。

 

 今度は観ているのは、散歩だと思ってついてきたピートだけだ。

 

 現在、少し離れて蜻蛉(とんぼ)ハンティング中。・・・やっぱり観てないみたい。過去の実績からすると、ハント成功の可能性低し。

 

 

 気配がわずかに動くのを察し、秋の枯れ野に戦意漲る立ち姿のソラへと注意を戻す。

 

 「よろしいか?」

 

 ソラが、洗練されてはいないが勢いの有るオーラを纏い、棍を構える。

 

 「いつでも」

 

 私が落ち着いてそう返すと、ソラのオーラが構えた棍を包んで行く。

 

 "周"?・・・にしてはオーラが多い。

 

 

 「『最も優れた武器は槍である(ランス・イズ・ビューティフル)』!」

 

 

 彼女の手の中の棍、只の木の棒が、瞬時に細かい意匠の凝らされた凶悪な穂先を持つ絢爛豪華な槍へと変わる。

 

 おおっ!

 

 "発"だ。

 

 変化した!変化したけど此れは、変化系ではなく具現化系の能力。

 

 棍はただの木の棒で具現化物質ではなかった。棍を持っていたのは制約か?単なる護身用とか鍛練用の可能性もあるか。

 

 あの槍にどんな能力を宿らせているか、解らない以上油断はできない。しかし、『(バルゴ)』の≪結界≫の危機感知が反応しないから、幻想系の槍によく有る即死するような凶悪な物の可能性は低い。私自身の感覚も、対処できない程の()()()()()()()()は感じない。感じるのは先程より何故か増した武威だ。

 

 ソラは、柄の部分まで総金属製に見える重そうな槍を自慢するように軽々と振り回し、全身を躍動させた素早い突きのデモンストレーション。

 

 

 「行きます!」

 

 二手目。

 

 先程と同じように、突いてきた槍をスカして踏み込もうとタイミングを計るも、先に槍を戻されて不発。

 

 ん?

 

 再度、突いてきた槍を掌で反らそうとした直前、脚を踏み換えて豪快に反転。砂塵を舞い上げて槍を振り回してきた。見た目に相応しい威力が有るらしい。

 

 私は、違和感を感じて少し間を取る。

 

 彼女の技量が棍を使っていた時より何故か増している。

 オーラの恩恵による力や速さだけでなく、重心の安定感や槍を扱う技量そのものが上昇している。

 

 ・・・あ、"発"の効果か。

 

 さしずめ『能力向上』『槍技能向上』の付与効果の有る『槍』を具現化したって処だろうか?

 

 言わば『達人の槍』ってところか?

 

 地味だが、堅実で厄介な能力だ。

 

 上手く嵌まれば、武術、念、双方の修業によって自身の技量上昇と"発"の『槍』による強化能力向上が同時になされて、正面戦闘力だけなら通常の倍の早さで強くなってしまう。

 

 「そう言う事か・・・」

 

 用法は只の槍と殆ど変わらない。身体とその技量をそのまま武器にする強化系みたいなものだ。どうりで人目を余り気にしない訳だ。

 

 おもしろい。

 

 相手が"発"を使用したんだから、こっちも『衝撃の制圧圏(バースト・ヘヴン)』を崩しに使えば圧倒するのは容易だけど、ここは格闘戦に拘ってみようか。

 

 ソラのイメージを修正。

 

 再度ソラが滑るように前進し、鋭い突きを放つ。

 私は肩を僅かにずらしてかわし、あっさり接近すると槍の手元を押さえに掛かる。

 慌てて後退しようとするソラを見切って等速で追いかけ、社交ダンスのように二歩追従。

 目を見開いて驚愕する彼女の腹部に、軽く掌打(タッチ)

 

 すぐさま離れて残心。

 

 手加減はしたがオーラ込み。

 

 戦闘中としては長い数秒の間。

 

 ソラは停止中。

 

 蒼白の顔に唇から少しの血。

 

 遂に耐えきれず、ソラが片膝を突いた。

 

 

 "流"が未熟で、十分に減衰させる事が出来ず、立っていられなかったようだ。

 

 大丈夫。それ込みで手加減した。

 

 猛烈な不快感と苦痛は有っても、後遺症は残らない。師匠からやられて経験済み。血は余計。多分驚きすぎて打撃を喰らった時に自分の歯で口の中を切った。

 

 最近気づいたけど、私は自分の"発"が衝撃波を扱うものだからなのか、浸透系の技の理解度や習熟度が高い。

 ピークス姉弟の(ピンキー)に使った小技も、実験的に野性動物相手に練習したものだ。

 

 あのとき初めて人に使ったけど、あんなにビビられるとは思わなかった。

 

 効果自体は(くま)でも人でも大して変わらない。

 

 ただ、念能力者の場合はオーラによる守りが固いので、撃ち抜くのにちょっとコツがいる。そこら辺の感覚は、私の"発"である『衝撃の制圧圏(バースト・ヘヴン)』の修業時にさんざん苦労した経験が生きていて、何となく匙加減が解る。

 

 

 結局念能力者の格闘戦でキモになるのはオーラの運用能力。

 

 原作で言う攻防力移動。

 

 "流"だ。

 

 私が使うのは、師匠の秘技を取り入れた"廻"式"流"になるが。

 

 それが未熟な内は、当たったら終わる。

 

 オーラの込められた攻撃の威力は、車の衝突、高所からの落下、そして殺傷兵器である銃撃や砲撃に等しい。

 

 模擬戦じゃなければ、今のでソラは死んでいる。

 

 ソラが、ゆっくりと立ちあがった。

 

 未だやる気のようだ。

 

 本気の闘いのための奥の手位は在るだろうけど、普通に考えると此の先は模擬戦の域を越える。

 

 「・・・まだやれるか?」

 

 付き合うけどさ。

 

 「もう少し、お願いする・・・」

 

 口許に溢れた血を拳で拭い、ソラが言う。

 

 何か、メッチャ嬉しそう。

 

 ・・・ああ、相手になる者が周囲に居なかったのか。念に関する戦闘技能がおぼつかないのはそのせいだな。

 

 確か似たような奴に以前会ったなぁ。何か、牛っぽい奴だった。

 

 ソラが槍を構えて意識を集中している。

 

 何かやるようだ。もしかして、他にも"発"が在るのか?

 

 まだ完成度が低いのだろう。発動が、戦闘用としてはあり得ないほど遅い。

 ゆっくりと、槍からオーラの影が分離して半透明の同じ槍となって隣に並び、更にもう一度同じ現象が起きてソラの持つ槍の周囲に半透明の二本目の槍が現れる。

 

 

 「『参撃の魔槍は穿つ(トライアングラー)』!」

 

 

 正面から見ると、構えた元の槍の周囲に半透明の二本の槍が正三角形を描くようにややフレキシブルにヨタヨタと並んでいる。三本の槍それぞれの距離は二~三十センチ程度。

 

 最初から有る大元の槍を握る手やソラの身体は幻のように素通りしているけど、こちらの身体には当り判定が有るとかかな?

 

 ソラが確かめるように槍を一突きすると、追従する二本の槍が、微妙な誤差を付けて連続で追従する。

 

 一突きが三回の連続突きになるのか?

 

 位置が固定されてない分、やり難いかも。いや、単に未だ此の"発"が安定していないだけか?

 

 しかし、意外だ。こんな小細工めいたギミックを追加するようなタイプには見えなかったが。

 

 キャパシティーの問題だろうか?さっきの『棍』を『槍』にする"発"にしても形は兎も角、効果は誤差に戸惑う程度だったし、そんなに大きな負担になるとも思えんが?

 

 まあいい、この程度なんとでもなる。

 

 

 三手目。

 

 ソラは顔を伏せ、何かに集中したままゆっくりと腰を落とし、前に出ずに逆にぴょんぴょんと後ろに下がって行く。

 

 「・・・何だ?」

 

 大技かな?

 

 「・・・お!」

 

 ソラのオーラがどんどん手持ちの『槍』に注がれて行く。

 

 アレ?ちょっと危険な予感。

 

 唐突に『(バルゴ)』の≪結界≫の危機感知が発動。『右目(ライブラ)』の≪天眼≫が起動して視界が潤んでボヤけ、未来視が発動。

 

 「・・・なるほど」

 

 

 現実のソラは槍に全集中。はっきり言って隙だらけ。しかし、それに構わず顔を伏せたまま槍へのオーラ注入を終え、その全身を大きく振りかぶり『槍』の投擲動作に入っている。

 

 「槍撃(そうげき)の・・・ファーストシュート!」

 

 弾丸を越えて、最早砲弾の威力を持った『槍』が迫る。

 

 郊外で良かった~。

 

 未来予測によって軌道が解っていた私は、身体を捻ってあっさり其れをかわす。

 

 背後に抜けて行った『槍』はミサイルのように荒れ野を通り越し、遥か先で岩山に衝突して大穴を穿って消えた。流石に山を貫通するような威力は無い。しかし、射程がおかしい。

 

 何だよ、槍に誤魔化されたわ。こいつ、バリバリの放出系だよ!

 

 ソラの持つ槍から幻影の槍が一本減り、手持ちと幻影一本になっている。

 

 そして、槍へのオーラ注入は未だ続いていた。

 

 「追撃(ついげき)の・・・セカンドシュート!」

 

 あんまり周辺被害が増えてもアレなので、今度の『槍』はオーラを纏った右手に『衝撃(バースト)』を乗せて上空に・・・(はじ)く。

 

 「・・・よっ」

 

 直撃しなければ、どうと言うことはない。

 

 「な!」

 

 幻影の槍が減って"発"を維持する負担も減ったのか、こちらを確認する余裕が出来たソラに、たまたま其れが目撃され、再度びっくりされる。

 

 「くっ!」

 

 最後の『槍』へのオーラ注入が終わる。

 

 「撃砕(げきさい)の・・・ラストシュート!!」

 

 こんどは、飛んできた『槍』を、避けながら掴んでみた。

 

 「ほっ」

 

 本来、触れるだけでもダメージになる攻性オーラの塊だから、見合うだけのオーラを込めて爆弾を掴むような感じでやってみた。

 

 疾走する暴れ馬を捕まえたように、身体ごと数メートル引きずられたが保持に成功。『槍』は燃えるような破壊のオーラを放ち続けたが推進力を維持し続けるだけで爆発する事もなく、やがて燃え尽きるように消えていった。元になった『棍』や『槍』は残らないようだ。

 

 「ふむ・・・」

 

 振り向くと、ソラがぐったりと疲れを滲ませた足取りで此方に歩いてくる。

 

 模擬戦は終わりだな。

 

 投げたんだから当然だけど、得物を持っていない。

 やはり『槍』の元になった『棍』は使い捨てのようだ。つまり、所持していた武具を犠牲にして、投擲出来る槍は僅か三本のみ。オーラも使いきってヘロヘロ。

 何と言う思いきりの良い"発"だろう。本人の性格が偲ばれる。

 

 「終わりでいいな?」

 

 一応確認する。

 

 「はい、ありがとうございました・・・」

 

 ソラが、深く頭を下げる。

 

 騒ぎの終わりに気づいたピートが、走って来た。

 手に何か掴んでいて、いつものように私の肩によじ登れないようなので、抱き上げてやる。果たして蜻蛉狩りは成功したのか?

 

 

 ふらふらと危なっかしく近づいてきたソラが、唐突にその場で土下座体勢になった。

 

 「・・・どうした?」

 

 ちょっと嫌な予感。

 

 「・・・己の未熟を痛感しました!ミカゲ殿の技前は、自分の遥か高みに在ります。何としても此れを機会に師と仰ぎたく、どうか、自分を弟子の末席にお加えください!お願いします!」

 

 今んとこ、そういうの募集してないんだよなぁ・・・

 

 「すまんね、私も未だ修業中の身で弟子とか取る気は無いんだよ・・・」

 

 ソラは、土下座から動かない。

 

 「・・・君、ソラさんだっけ?それだけ見事な槍術を身に付けているのだから、そちらの師匠が居るよね?」

 

 弟子が此の腕なら、多分念関係の技術もある程度持ってるはずだけど。

 

 「おりましたが、既に自分の方が強くなってしまいました。(のたま)うのは筋の通らぬ空論ばかり。自分より弱いものに習っても、強くなれるとは思えません!」

 

 どっかで聴いた台詞だ。どうも、今の師匠は念能力者じゃないらしい。この時代だとよく有るケースなのかねぇ。弟子に念の才能が有っても、師匠に有るとは限らないのか。

 

 「はぁ・・・壊し屋キンブル(笑)みたいなことを・・・」

 

 私は、あの牛みたいな太綱使いの大男をチラリと思い出した。

 

 あいつも弟子入りしたいと言ったのを、蹴っている。

 

 「・・・キンブル」

 

 キンブルの名を聞いたとたんに、ソラの雰囲気がちょっと変わった。

 

 ピートがピクッとする。

 

 「キンブルが此の街に居たのですか?牛みたいな大男で太綱使いの?」

 

 なんか、顔を上げた彼女の目が据わっている。

 

 「そうだが・・・知り合いか?」

 

 意外な接点。

 

 「奴には命の借りがあります。どこに行けば見つけられるか御存知ですか?」

 

 自分が此の街に来たのも、奴を見つけるためなのだと教えてもらう。なんか、ちょっと殺気立ってる?

 

 キンブル何した!

 

 「奴なら銀門街のもぐりの掛け闘技場に春まで居たぞ。闘技場が『緑美楼(うち)』と揉めたので、私が出向いて適度にボコった」

 

 キンブルは確か殺しで追われて居たはずだ。さっきの彼女の言葉から、その件に関わっているのかもしれないと経緯を説明する。

 

 「今も其処に?」

 

 ソラの眉間に皺がよって、猫目が細くなる。

 

 「いや、負けた後に奴も私に弟子入りを志願してきたから、隠れ潜むような身の上の奴は論外だと断ったら、身辺整理してから又来るって言ってたぞ」

 

 噂だと、そのすぐ後に街を出たそうだ。と伝える。

 

 街を出た後の事は知らん。興味もない。

 

 「・・・そうですか、既に此処からは・・・でも、・・・ッベルに戻ったなら・・・」

 

 何かブツブツ言ってる。恐い。ピートがちょっと怯えている。

 

 「・・・どうも弟子入り前に片付けねばならないことが出来たようです。名残惜しいですが、自分はこのまま奴を追います!」

 

 弟子入りの件は又改めて、と、そう告げてソラは港の方へと去っていった。

 

 

 いや、弟子入りは断ったよねぇ。

 

 

 ま、いいか、又来たら又断ろう。

 

 

 私は、ピートと街に帰った。

 

 

 

 

 なお、ピートが捕まえたのは、ダンゴムシだった。

 前にちょっと気になって、狩りが下手で契約者がいないとき大丈夫だったのか聞いたら、変化した個体によって得意な獲物が違うそうだ。

 

 「ピート君、君今おサルさんだと言うことを忘れてない?」

 

 こてんと首を傾げられた。可愛い。

 

 ピートはたまに、ネコっぽかったりイヌっぽかったりすることがある。

 

 そう言えば本体は確かネコだった。

 

 うむ・・・なら良いか。

 

 可愛いし。

 

 可愛いは正義だし。

 

 




 スクライドは名作。
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