嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 説明回


 73、六頭

   73、六頭

 

 

 流石に、いきなり殺し合いとかにはならないらしい。

 

 ボス同士、離れたまま怒鳴り会うようなこともなく、中央の白丸に六つのファミリーの代表が悠然と集まって行く。

 

 因みに、今の私は先程迄見上げていた頭上高くに有る太い梁の脇に≪甲殻≫を出現させて立っている。

 

 ここは、明かり取りの窓より更に高い位置に有って下よりもっと薄暗い。

 

 目の前の埃の積もった太い梁の上で、オーラを纏った一匹のネネズミが頻りに真下の会合の様子をうかがっている。

 

 さっき見かけた奴だ。

 

 念の使い手は数が少ない。やはり偶然出くわしたのではなく、どちらかの勢力の関係者の可能性が高い。

 

 新規の念能力者が気になったのと、ちょっと身を隠す必要があったので、遅刻組が入ってくる騒ぎに合わせて上まで跳んでみた。

 

 例によって気配は断って、常に死角になる位置を動いている。そのお陰で当のネズミさんを含めて誰にも気づかれてはいない。

 しかし、流石に同じ梁の上に降りると察知される可能性が高いので、自前の足場を用意している。

 

 ふむ、なるほど・・・

 

 文字通り、うろちょろしながら下を覗くことに注力しているネズミをスルーして、上ってきたのと反対側。敵方後方の壁を伝い、隙を見て床へと降りる。みんなボス達の集まってゆく様子に気を引かれていて、容易い軽業だった。

 

 

 集まってゆくボス連中は、年齢体格も様々なれど其々ファミリーを率いるボスだけあり、皆それなりの貫禄がある。と言うか、着ている服に金がかかっているから例え中身が小物でも其れなりに見える。

 

 しかし流石ボス同士。ただ中央に集まるだけの些事が、すんなり行かない。

 

 味方の三ファミリーのボスはすぐに出たけど、敵方の面子は何やら仲間内で揉めている。

 

 

 「・・・おい!いい加減にしろよ、さっさとブツを渡せ!」

 

 昨日見かけた柄の悪い巨漢のジャイアン系ボス『ゴート』が、小男の『サギー』を威圧している。少し距離があり、周囲に聞き取れるほどの声量ではない。

 

 私には割とクリアに聞こえるけど。

 

 しかし、こんな間際にトラブルか?

 

 「そっちこそ、先にアレを返せ」

 

 こっちは絡まれてるサギー。

 の〇太ポジなのにやけにふてぶてしい。いや、金は有るはずだからス〇夫の方?まあザコキャラっぽくても一応ボスの一人だもんな。

 昨日はカジノで儲けさせてくれて異常に悔しがっていたけど、一晩経って多少は落ち着いたようだ。

 

 ・・・アレって何?

 

 「クックックおかしいなぁ、いつもの妙に癇に触る追従口(へつらいぐち)はどうした?まるで俺らと同格みてえなでかい態度じゃねえか。お前、今回の仕込みに一枚噛んだ事で何か勘違いしてんじゃねえか?」

 

 恐らく最後のボスだろう猫背でひょろりとした陰気な男、推定『スリック』が、ニヤニヤしながら血走った目でサギーを睨んでいる。

 

 「交換の約束だ」

 

 上背がある二人に詰められても、サギーは堂々としている。昨日の印象より肝が座ってる感じ。妙な余裕が感じられる。

 

 何かあった?

 

 「・・・ちっ!」

 

 一瞬、ゴートがスリックと目を合わせ舌打ちをした。

 

 「・・・しょうがねえ、そらよっ!」

 

 サギーの持ってる()()がよほどに必要なのか、ゴートが懐に手を突っ込んで布製の小袋を取り出し、サギーに向かって放り投げた。

 

 「・・・ら、乱暴に扱うな!」

 

 受け取り損ねたサギーが、取り落とした小袋を慌てて拾い上げる。

 

 「よし、間違いない・・・」

 

 中身を取り出して確認している。

 

 遠目にチラリだけど、革紐の付いた大きめのメダルのようなものが見えた。細かい意匠、金属、多分青銅製。

 

 何だろう?と思ったら、

 

 【メダル、青銅製、人足差配等万許可鑑札(にんそくさはいとうよろずきょかかんさつ)】とタグが付いた。

 

 鑑札?

 

 「チッ・・・まあいい、今まで()()()()世話になったからなぁ、これからもよろしく頼むゼ、サギ~坊っちゃん」

 

 ゴートが、(さげす)むように笑いながら脅どしをかける。

 

 「おい!俺たちを甘く見るなよ!鑑札が戻ったところでお前の立場は何も変わらねえ。毎月の上納金もな」

 

 凶悪に歪んだ笑い顔をサギーの額に擦り付けんばかりに詰め寄り、スリックがたたみ掛ける。

 

 「そういうこった、まさか大事な『鑑札』の代わりに先代と邪魔な幹部を始末してやった恩を忘れちゃいねえだろう?」

 

 ゴートが、決定的にヤバいネタを更に声量を落として漏らす。

 恐らく、サギーに対する脅しの止めとして告げた秘中の秘だろう。

 

 しかしどうも様子がおかしい。お宝を無言で見定めていたサギーが顔を上げると、気圧されたようすは微塵もない。

 

 「はあ?おかしなことを言うな、叔父貴達は操船事故で海に落ちて死んだのさ、現場仕事ならよくある事だ」

 

 サギーは、二人を気にすることなく大事そうに鑑札を懐にしまう。

 

 「何だとてめえ!」

 

 ゴートが即座に切れて、サギーの胸ぐらを掴む。

 

 「約定を反故(ほご)にする気か?」

 

 スリックも張り付いた笑顔のまま目を細く光らせる。

 

 「あ、それと『上納金』なんかではないぞ!便宜上の名目だろうが何だろうがお前らに渡したのは全て『貸付金』だ、然るべき時が来たら全額返済して貰う、覚悟しておけ」

 

 胸ぐらを掴まれて、つま先立ちになっていてもサギーの余裕は崩れない。

 

 ゴートとスリックは気づいていないけど、サギーのファミリー集団の目立たない位置から、複数のマスケット銃の銃口が向けられている。

 それと、集団の中でヤバそうな気配もちょっと動いた。

 

 銃器の持ち込みは協定違反。だけど、程度問題で多分みんな持ち込んでいると思う。

 ゴート、サギー、スリックの三人は荷車を使って戦争が出来る程持ち込んだようだ。既に一部は装備もしている。

 

 うちのハシムも、ピストルくらいなら何丁かは服の下に隠して持って来させている。

 

 堅気じゃないもんね。 

 

 ゴートとスリックの二人は、長く食い物にしてきたサギーを格下認定して、今後も甘い汁を貪るつもりだったようだけど、サギーは鑑札が返還されたのを機に二人を切るつもりのようだ。

 

 抗争必至なのでは?

 

 「・・・てめぇ、自分が何を言ってるか分ってんのか?」

 

 ゴートは、ぶち切れるよりも怪訝そうだ。

 

「厄介払いされかかってた出来損ないのクセしやがって、今さら一端のボス気取りかよ!まさか、とうとう頭がおかしくなっちまったのか?」

 

 スリックもサギーの様子に訝しさを感じている。 

 

 

 「今回の()()()、勝てば総取り・・・なんだろう?」

 

 

 サギーが、表情を隠すように口元に手を当て、眼をギラギラと輝かせて低く言う。

 

 あらまぁ、宣戦布告?

 

 いや、何かの隠語?

 

「・・・言うじゃねえか」

 

 スリックは、妙に自信ありげなサギーをちょっと警戒。

 

 「・・・クックックッそうか、そうなのか、なんだお前、まさか俺たちに勝てる気でいるのかよ!」

 

 サギーの生意気な態度が府に落ちてゴートが一頻り嗤い、スンと真顔になり興味が失せたようにサギーから手を離した。

 

 自由になったサギーは、落ち着いて自身の襟元を直す。

 

 「鑑札が戻った以上俺の弱みはもうない、三人での盟約も今は対等。約定通り残りの二人はゲームに勝った者に必ず従う、そしてその纏まった三人の力で奴らにきっちり上下関係を分からせる、最初からそういう段取りだったはずだ」 

 

 合図と共にサギーのファミリーから男が一人出てきて、サギーに何か布袋を渡した。

 

 「約束は守る、借りたものは返す。当たり前の事だ」

 

 サギーが中も確認せずにそれをゴートに回す。

 

 三人は、その後も低い声でやりあっていたけど、新しい情報は無し。しびれを切らしたハゲマッチョフォークス氏から横槍が入り、ようやく内々の話を切り上げて中央の白円へと近づいて来た。

 

 何やら色々判明。

 

 どうも相手の三人組は仲良しさんではないらしい。サギーは残り二人のお財布役だったみたい。事前に聞いた話でも、六つの街でここ『ハッベル』がもっとも経済規模が大きかったはず。鍵は鑑札かな?

 

 そこに、サギーの所のファミリーの先代ボスの暗殺まで関わっているとは。

 

 さすが、バイオレンス~

 

 小ネタもバッチリ押さえて来るなぁ。

 

 キモの約定とやらも、守られるかは微妙ですなぁ。

 

 

 大雑把に言うと、光の入る入口南側は暗黙の了解で空いている。先に来た我々三ファミリーは西側に。遅刻してきた残り三ファミリーは東側に布陣している。

 

 どちらの陣営も、例え味方勢力同士であっても各ファミリーの間には少しづつ距離があり馴れ合ってはいない。

 

 優秀な感覚器官が複数在るので、私には元居た場所でも十分に倉庫全体を知覚出来ていたけど、この位置からだと敵方三ファミリーの内情がよりはっきりと確認できる。

 

 まず、どこのファミリーも木箱に入った大量の銃器を持ち込んでいて、戦争前提の準備をしてやって来たみたいだ。実際そうなのだろう。

 

 倉庫東陣営奥の、カジノで騒いでいたゴートの率いるファミリーは木箱の数がやけに多い。ひょっとすると町中では使えないような()()も持ち込んでいるかもしれない。

 

 倉庫中央のファミリーは、ヤバい噂のスリックがボスを勤める処で、何かちょっと個性的。

 気になるのは、連れてる護衛の中に妙に腕の立つ小集団が混ざっていて、しかもその全員が子供のように小柄で異彩を放っている事だ。ま、私が言えた事ではないのだが。

 そしてさらに銃器の詰まった木箱以外に、馬でも連れてきたのかと思うような箱馬車まで持ち込んでいる。

 実は『左目(スコルピオ)』の≪観測≫のタグが付いていて中身も分かってるんだけど、何故それを持ち込んだのか理由は分からない。

 

 最後にもう馴染みとなったサギーのファミリー。一番扉に近い。一見一番普通。しかし、この三組の中で一番剣呑なのは恐らく彼の処だろう。

 驚いたことに、私でもちょっと注意を引かれるような尋常でない実力の持ち主が、いろんな気配を抑えて潜んでいる。多分サギーの味方。何処から連れてきたのか分からないけど、サギーの妙な自信の根拠は多分コレ。

 

 ちなみに倉庫西側に陣取る我等が陣営は、奥からマッチョジジイ、山羊鬚、ハシムだ。

 

 さて、やっとお約束の各ファミリーのボス同士のお話し合いフェーズ。人数差の圧もあって、冒頭からこちらは押されぎみ。

 

 まだ六合会としての形式は維持しているけど、ゴート達三人は不機嫌そうだ。ハシム達に呼びつけられるような形になったのが気に食わないらしい。

 

 ハシム達此方の三ボスもちょっと苛立たしい顔をしている。遅刻してきた上に、サギー達がなかなか出てこなかったんだから当然だ。

 

 ゴートは、その上で更に堂々と時間を取り、サギーから渡された布袋の中身の確認をしている。そして、眉をひそめるハシム達を見てニヤリと笑った。

 

 

 

 「・・・なに『六頭戦』だと?」

 

 長々続いた口論の後、山羊鬚のサジットが驚きの声を挙げた。

 

 『六頭戦』とやらが彼らの要求らしい。

 

 こいつがゲーム?

 

 『六頭戦』て何?『席次戦』じゃなかったの?

 

 「何もデントーある『六合会』を(ないがし)ろにしよう、て話じゃねえんだ。

 あんたらも気づいてる通り、昔と違って今じゃ会の中でもちょいと世代格差ってやつが生まれているだろう?

 誰とは言わんが、古臭い連中が慣例だ協定で決まっている事だと一々グダグダ文句をつけやがるのに反発する若いのも増えて来ているらしいぜ」

 

 スリックがニヤニヤともったいつけて持論を披露する。

 

 準備不足だと渋る此方サイドのボス達を、ゴートが片手を挙げて制する。

 

 「俺達も、何の手土産も無しにこんな無茶な話を通そうって訳じゃねえんだ。

 ・・・こいつは最近サギーがハッベルの闇市で()()()()()()()()だが、どうやらあんたらにとっては大事な物らしい」

 

 確かめてくれ、と妙に恩着せがましいゴートが慇懃にハシムに布袋を渡す。

 

 「・・・まさか!」

 

 中身を取り出したハシムが、大変に驚いた様子で静止する。

 

 袋から出てきたのは、先程サギーが大事に懐に仕舞った鑑札とそっくりの大きなメダル三枚だった。

 

 「なんじゃと!」

 

 「バカな・・・」

 

 常識人ハシム、山羊鬚サジット、マッチョフォーキーの三人のボスが、少しづつ意匠の違うメダルを頻りに確認している。

 

 「まさか本物ってことは無いと思うんだが、領主様から各街の人足差配一切を任される証の『鑑札』にそっくりだったもんでな。

 こんなものが(ちまた)に紛れ込むと、偽物でも要らん腹を探られるかもしれねえと気を回したわけだ」

 

 スリックが、ニヤニヤとあり得ない手柄を言い立てる。

 

 本物なのだろう。街別『人足差配等万許可鑑札』のタグも出てるし。

 

 しかしそうか、あれは街の人足手配を領主から任された証か。・・・もしかして、各ファミリーの力の源泉なのでは?

 

 確認も頻繁にしていただろうし、相当厳重に保管してあった筈だ。それを短期間に三枚とも盗み出して集めて来たとなると、何やらろくでもないカラクリが有りそうだ。

 

 ハシム達の顔に、激しい怒りと混乱そして若干の恐怖が、浮かぶ。

 

 「俺たちが提案しているのは、謂わば軽いゲームだ・・・」

 

 スリックが、動揺するハシム達に目を細めて畳み掛ける。

 

 「いい加減てめえらロートルやチンケな街の連中に同格ズラされて、こっちはずっとイライラさせられてたんだよ!」

 

 ヒョウ柄のロングコートを着た太眉毛のゴートがニヤニヤししながら悪口(あっこう)を吐く。

 

 「クックックッ、・・・飛ばし過ぎだぜゴート。それじゃ年寄り連中が話に付いて来れねえやな」

 

 スリックは痩せぎすで少し猫背、黒のタートルネック。グリスで固めたオールバックに細目で表情は笑っているように見えるのに、鎌首もたげた蛇みたいな印象。

 

 「何も難しいことじゃない、今回の会合では『席次戦』の代わりに『六頭戦』をやって、新たに各ファミリーの席次を実力に応じた格として当面固定しようって話だ」

 

 激しやすいゴートの代わりに、スリックが話を進めてゆく。

 

 

 要するに、そういうことらしい。

 

 だんまりだけど、彼等から一歩下がった位置に相手側としてサギーも居る。何か、味方のはずの前の二人を凄い目で睨んでいる。やはり金の恨みかな。

 

 

 ほぼ(ののし)り合いの会談継続。

 

 要するに昨日のサギーの言い分通り、六つのファミリーに序列を付けて『(あたま)』が誰か。六つのファミリーの序列がどうなのかをハッキリさせたいと言う主張。

 

 ハシム等は暫く食い下がったが、『鑑札』の件が無視できない貸しになっていて結局相手の要求通りになった。

 

 つまり現『六合会』並立体制の実質的な崩壊。

 

 

 「席次に文句をつけるのと、六合会全体の『(トップ)』になるのとじゃ、意味が全く違う。

 何より、六合会のトップになったって実益は何もありゃしないのに何を考えとるんじゃ?」

 

 置いてきたピートの隣で、マリオ爺が、ぼやくように言った。周囲でも同じような意見が囁かれる。

 

 この距離なら直に聞き取れるけど、頼めばピートから伝わってくる情報の一部として中継もしてくれる。ただ、ピートが居るのは床の上なので、マリオ爺の声は頭上から響いている。

 

 六合会のボスの座は、隣国との戦争や災害で荒れていた時代、六つの港町が互いに協力するために当時の力量の有る実力者に便宜上与えられた取り纏め役だったらしい。

 仕事は、ほとんど人助けやボランティア。

 

 勿論、上手くやれば大いに名も売れ敬意も払われていたけど、実質的に利より持ち出しの方が多くて割に合わない所謂名誉職。

 混乱が収まったら後を継ぐものは居らず、自然に消滅していった。

 

 

 恐らく三人とも元々先代の血を引く苦労知らずの坊ちゃん育ちで、散々()を通して威張り散らしてきた性悪共だろう。手足が伸びて、地滑り的にボスになったら周辺のファミリーとは横並び。

 それが気に入らないのは解るけど、流石に無理が有る。

 

 周りはなぜ止めない?

 

 貴族のように権威が在るわけでもなく、ボスと言う名目だけで六つの街のファミリーを纏められはしないだろう。

 たとえ人数を揃えて力で認めさせても後が続くまい。

 

 何がしたいんだ?

 

 ゴートやスリックには思想も背景も何も無さそうだし、まさか単に『六合会』でボス気取りかしたいだけ?

 

 真性のアホ?

 

 「・・・まさか、こちらに準備もさせずに『六頭戦』を仕掛けるとは!」

 

 年配の護衛役からも話題のパワーワードが出てきた。彼らには共通認識らしい。

 

 「『六頭戦』って、確か代理戦争みたいなやつじゃなかったか?」

 

 マリオ爺の孫で、『席次戦』に出場するはずだったレオンが、つぶやいた。

 

 なるほど、そういうアレか。

 

 多少の知識は有れど、私と同じように状況がよく解っていないらしい。

 妙な話の成り行きに首を傾げている。

 

 「昔はファミリー同士の派手な殺し合いなんかも有ったらしいけどなぁ」

 

 マリオ爺がレオンに詳しく教え始めた。

 

 助かる。

 

 「報復が繰り返されて互いにボロボロになるだけよ。それに今じゃ、たとえ俺らが皆殺しにされたって、街や地元のファミリーが奴らに屈する訳ねえだろう?」

 

 言われてみればそりゃそうだ。

 

 後々の、社会に寄生するだけの只の暴力装置としての反社会組織ではなく、長く地元に根差し縦横の繋がりが強い時代の郎党衆である。(ボス)が殺されておめおめ引き下がる訳もない。何かあったら『シュマ』に残っている者の反応は徹底抗戦一択だろう。

 H×Hの世界は、マイナス感情の欲望や恨みや憎しみが色濃く出る傾向に有るけど、疑いようもなく信念や恩情、魂かけた殊恩(しゅおん)もまた同じ熱量で発露される。

 

 そしてある意味ヤクザ以上にヤクザな『お貴族樣』も居る。

 

 あまりに目立って余計な騒ぎを起こせば今度は自分達が潰される。

 

 「結局、殺せば殺されるって訳よ」

 

 やはり決闘のような代理人同士の戦いで決める事になるようだ。

 

 そして、その手配をする時間がどうとかハシム達の側の方がごねて、鼻で嗤われている。

 

 まぁ、向こうはそのために準備万端だろうからなぁ。

 

 「今の『六合会』は、昔は『六頭会』と呼ばれておってのう、滅多なことでは行われないが、ファミリー同士の全面戦争を避けるため、トラブルに白黒付けるための形式が今でも残っとるんだ」

 

 マリオ爺の話によると、古くはそれで『六頭会』を取り仕切るボスを決めていた時代もあったそうだ。

 

 やがて流通が発展し各街のファミリーも力を付け、徐々に現在の『六合会』体制に移行したらしい。

 

 やっと始まるようだ。

 

 ボス達が自分のファミリーの陣地に戻って、代わりに各グループから()()()()前に出てきた。

 

 席次戦ならぬ六頭戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 みんな大変そうだけど、ミカゲは物見遊山
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