嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 やっとオッサン以外のキャラが出せた。


77、綱と槍

   77、綱と槍

 

 ピートさんが元気に起き上がって走り去った後、倉庫の中は呆気にとられたようなポカーンとした空気が流れた。

 

 原因となったサジットファミリー最後の闘士も、しばし唖然としてその姿を見送っていた。

 

 ややあって、サジット陣営からの声掛けで自分が六頭戦に勝ち残っていることにやっと気付き、頭を一振りして気を引き締め、腰に差した長剣(刃引き)をゆっくりと引き抜いた。

 

 ただ、それはそれとして依然として白円の上で白目を剥いて気絶したままの巨熊は、その周囲をぴょんぴょん飛び回りながら只命令を叫ぶだけの獣使いには、どうすることも出来ない様子だ。

 

 はっきり言って邪魔。

 

 憤懣(ふんまん)やる方無いスリックの陣営から手伝いの男達が数人参加し、動かそうとするも微動だにさせることが出来ない。

 

 倉庫内にやれやれ感が漂い、ゴートのヤジが飛ぶ。

 

 「おら!負けたんだから、その汚ねえ敷物をさっさと片付けろ!」

 

 苛立ちを抑えきれず、怒鳴り返そうと立ち上がったスリック。

 しかし、そのすぐ隣にいつの間にかフードを被ったマントの大男が立っていて、立ち上がったスリックがビクッっとして恐れるように跳び離れた。

 

 「あ、あんたか・・・」

 

 知った顔だと分かっても、スリックの畏怖を滲ませた表情は変わらない。

 

 それは、おかしな光景だった。

 

 数多の手下を抱える悪名高いファミリーのボスが、フードの男一人を何故か本気で怖がっている。

 

 「・・・少し予定と違ったが、俺の言った通り『芸を仕込んだ(けもの)』ごときではどうにも成らなかったな」

 

 フードの男は、ため息を一つこぼすとスリック陣営の最後の黒子に下がるよう告げ、前にでる。

 

 「・・・あ、あれは余興だ、気にしちゃいねえ、俺の本命はあんたさ、大将。

 ・・・心配ねえぜ、全部きっちり最初の約束通りにしてある、あんたが来てくれたお返しにお仲間がこさえた借金は全てチャラ、貸し借りも無し、今後一切部下達にも余計な手出しはさせねえ、おまけに勝ってくれれば報奨もたんまり払おうじゃねえか!」

 

 ちょっと焦ったようなスリックが、ひきつった笑顔を顔に張り付けつつ殊更に公正な取り引きをアピールする。

 

 「フン、いかさま賭博の借金ごときで一門の道場を取り上げようとしておいて、善人ぶるなチンピラが!」

 

 フードの男はスリック達を見もせず、熊の移動にてこずる男達を苛ついた目で眺めている。

  

 相手が重量級なのと、気絶した熊が何時目覚めて暴れるか分からないせいで、へっぴり腰の男達はその毛皮をしっかり掴むことさえ覚束ない。

 

 「チッ・・・」

 

 フードの男は、一つ舌打ちすると不意にマントに包まれた片手を振るった。

 

 とたんにマントの下から太綱が繰り出され、素早く熊に向かって伸びて行く。

 

 それは不可思議な生き物のようだった。

 

 大蛇のようにうねり蠢き、横たわる巨熊に這い蔦のようにするすると巻き付いていく。

 

 作業中の男達がびっくりして咄嗟に熊から離れると、グンッと太綱が引かれる。

 

 あろうことか重さ半トンも有る熊の巨体が縫いぐるみのようにずるずると引き寄せられて行く。

 

 そして、最後はスリック陣営の集まるすぐ脇に死骸のように放り捨てられた。

 

 作業を終えた太綱は、訓練された動物のように男のマントの下に戻って行く。

 打ち捨てられた熊の方は、それでも目覚めない。息はしているので死んではいないようだ。側に居る獣使いの男が、癇癪を起こして何か叫びながら気絶している熊を蹴っていた。

 

 「・・・フン」

 

 一仕事終えても、フードの男に息を乱した様子は無い。

 

 「おい、言っておくが金輪際嘗めた真似はするんじゃねえぞ!メンタマおっぴろげて誰を敵に回そうとしていたのかきっちり腹に落とし込め。この警告の意味が解らず、もし又一門にちょっかい掛けて来たら・・・次はお前ら全員皆殺しだ」

 

 常人ではあり得ない殺気が一瞬漏れ、一部フードの男の態度に反感を抱いていた理解力の乏しい男達と、その周囲の者が硬直し、何人かはそのまま気を失って倒れた。

 

 フードの男は振り返りもしない。

 

 スリックは、自身がメインターゲットから外れていた事とボスとしての意地だけで何とか耐えている。

 

 

 おー、ビビってるビビってる。念能力者の威圧は常人にはキッツイからなぁ。

 

 スリックの三人目はどうも私の知り合いっぽい。いろいろ適当な理由を付けて弟子入りを断った相手だ。面倒臭いから当面会う気はない。

 

 でも、見た感じ多少は吹っ切れたみたいだ。ちゃんと人の枠からはみ出した自覚が出てきてる。前まであった変な悲壮感も無くなってる。

 

 ・・・ヘタレ牛め。

 

 戦闘系念能力者ならば、凶状くらい有って当然。(わく)を外れたことを自覚してちょっと頭と力を使えば、対応策なんていくらでも有る。ビビって逃げ回る必要なんて最初から無いのだ。

 

 

 「・・・おい、出番だぞ」

 

 ようやく盤面が変わって、ゴート陣営も動く。

 

 「負けたらぶっ殺すぞ!」

 

 「・・・・」

 

 するりと前に出て来た黒装束が、無言でフードとマントを脱ぎ捨て、長い棍を手に抑えていた気配をあらわにする。

 

 こちらは若い女だ。

 

 視線はスリックの陣営の一点から逸れない。

 

 「おい、聞いてんのか!」

 

 無視された形のゴートが怒鳴る。

 

 「・・・吠えるな、人足の(かしら)。私がこんな茶番に付き合うのは、家の門弟がお前らの子分に怪我を負わせたとか言う戯言(ざれごと)を真に受けたからじゃない、奴が出てくると聞いたからだ」

 

 

 何か引っ張り出された経緯は、フードの男と良く似ている。

 

 彼女は、先日ピークス兄妹と『綠美楼』にやって来た念能力者。此方も弟子入り志願の槍使い、『ソラ』だ。

 

 

 「それに言っておいた筈だぞ?最後まで勝ち残れるかどうかはシュマの三人目次第だと・・・」

 

 

 やっぱり居たか・・・隠形術甘くて気配ダダ漏れだったから居るとは思ったけど、彼女もそういう理由か。

 話の中身からして、彼女の目当てはやっぱ『牛』か~。『綠美楼』で別れた時も、『牛』の話が出た途端、すっ飛んでったもんな。

 

 『顔無し』のハッベル担当『小耳のジム』に確認したけど、武道場見学で会った爺さん達のホラ話は大体本当みたいなんだよなあ。

 付け加えるなら素行の悪い領主の庶子を始末するよう依頼したのは、どうも領主本人らしいけど。

 

 スリックとゴートの配した三人目は、強さ極振りで選んだせいか余りコントロールしきれていない。

 私の『(ジェミニ)』にはその不和がそっくり聞き取れてしまう。

 

 悪役ボスの二人は、今回の『六頭戦』に勝てれば後はどうでも良いと思ってるから、その辺は目を瞑ったのかも。 

 

『牛』とソラの二人が引っ張られたのは、街の郊外でドンパチやらかしたからだろう。

 争いになった理由は分からないけど、恐らく挑んだのはソラの方。 

 

 調べた感じだと武闘大会で判定勝ちしたのが納得行ってなかったみたいだし、後の身内の絡んだ誘拐事件で助けられたのも悔しかったみたいなんだよね~。しかも、当の『牛』は、領主の庶子殺しにびびって街から逃げ出しちゃってたし。

 

 バッハ達現役ハンターに確認したところ、念能力者というか特殊な力を持った『使い手』が居ることは、一部の上位者には公然の秘密として知られているらしい。

 田舎街の裏稼業のボスクラスでも、噂くらいは流れているだろう。

 

 情報を集めて火元を辿れば其れらしい人物はすぐ分かるし、少し探れば以前の武闘大会の件も引っ掛かる。街に根を張るファミリーなら該当者の特定は容易い。この街に根っこが有れば搦め手で引っ張り出すのも難しくないだろう。

 

 恐らく情報と引っ張り出す段取りを手伝ったのはサギーのファミリーだな。ギャンブルの借金とか聞こえてたし。

 

 昨日の様子じゃ、カジノ自体が住人からの資金徴収システムと化していて、利用者は必ず負けるよう仕組まれていた。あんなやり方じゃ長続きはしないだろうけど、サギーは目先のお金が大好きみたいだからなぁ。

 

 サギーが自分のとこの三人目に彼らを抜擢しなかった理由は、恐らくより強力な手札を手に入れたから。

 

 何かヤバそうな奴が控えていたし・・・

 

 て言うか、サギーのとこの三人目はどっから連れてきたんだ?なんなら私の事も眼中に無い感じだったぞ。

 

 とか考えているうちに、スリック陣営の大男がフードとマントを脱いでその姿を晒した。

 

 特徴的な二本角に見える髪型。身体に巻いた太い綱。やっぱりシュマの裏闘技場で壊し屋をやっていた『キンブル()』だ。判ってたけど。

 

 

 「き、聞いてるぜ~、武闘会では負けたらしいじゃねえか、判定で」

 

 どうにか調子を取り戻したスリックが恐る恐るキンブルに絡む。

 ファミリーの他の者の眼も有るし、嘗められっぱなしだと、沽券に関わるのだろう。

 

 「・・・・」

 

 「本当に勝てるんだろうな?」

 

 「・・・アイツにならな」

 

 キンブルがゴート陣営から出てくる『ソラ』を確認したあと、『シュマ(こちら)』の陣営を注視している。

 

 「・・・あの妙な犬コロといい・・・来てる気がするが・・・」

 

 ハシムファミリーの三人目が誰か気にしているのだろう。

 

 「・・・噂の『ミカゲ』か?本当に評判ほど腕が立つのか?」

 

 スリックが、疑義を挟む。

 

 「ああ」

 

 「マジか・・・お前さんから最大の障害になると聞いてはいたが、実のところ未だに信じられん」

 

 「事実だ」

 

 「俺は、あんたが素手で巨岩を砕き、正面から銃弾を弾くのを見た、眼にも止まらぬ不可思議な技で家の連中を手玉に取るのもな・・・それ以上だって言うのか?」

 

 「ああ・・・」

 

 なんか、『キンブル』と『ソラ』が同じようなことを言ってるや。

 

 

 「「もし師匠が出てきたら、誰も勝てん」」

 

 

 いや、出ませんて。

 

 あと、師匠じゃないから。

 

 こんな、何処が勝っても名目だけ。

 リーダーの旗印がぐるぐる回るだけのクラス委員長選挙みたいな決闘に、わざわざ介入する気はない。

 

 て言うか、私がしつこく狙われてたのはコイツらが余計な事を言ったせいじゃないのか?

 

 

 「・・・なんだよ、本当に二人とも使()()()()じゃねえか」

 

 サギーの陣営前から、驚きを漏らす声がした。

 

 おっさんだ。短髪、目力の有る傷だらけの顔、左目に眼帯、黒のハンチング、ゆったりしたシャツ。腰にはナイフではなく長鉈。

 さして大男と言うわけではないのに、精悍な印象が強く残る。目立つ男だ。

 

 なんとなく、軍人っぽい。

 

 端的に言って、強そう。

 

 「情報通り、未だどっちもひよっ子ね」

 

 男のとなりに妙齢の美女。

 

 長身、黒髪ロングストレート、冷静で冷たい視線。立ち姿にも隙がなく、貴人の着る乗馬服のような動きやすそうな服の上から、かっちりした鞣し革のロングコートを羽織っている。

 

 サギー陣営でずっと存在感を消していた、恐らく達人級の使い手。やっぱり二人居たか。直に眼にすると、『(バルゴ)』の≪結界≫の危機感知と私の素の感覚にピリピリと反応がある。

 

 ・・・一つ分かった。やはり≪結界≫の危機感知が反応するのは、私を害する事象が発生しうる未来に対してらしい。

 

 たとえどれほど危険な存在が近くに居ても、害意がなく加害行動する未来予知が働かなければ注意喚起等は発生しないようだ。

 今回、相手が前に出てきて戦意を漲らせ始めてから、やっと反応が出た。以前、あまりに何にでも反応するので、もう少し何とかならないかと調整を頼んだから、それをふまえての判定が入ってるのだろう。

 

 気配で分かってたけど、どちらにも『念能力者』のタグが付いた。

 

 多分、いや間違いなく、どちらかがサギーの陣営の三人目だろう。

 

 ・・・おかしい。

 

 サギーの用意した念能力者の仕上がりが良すぎる。身形(みなり)からして、どう見ても命令される方じゃなくてする方だ。間違いなくキンブルやソラより強いだろう。いくら(つて)が有ったとしても、田舎ヤクザが雇える人材じゃない。

 

 ・・・何か見落としてるのか?

 

 「・・・・」

 

 二人のとなりで、サギーはちょっと萎縮しているようだ。ある程度は気配を消しオーラを隠していても、存在感というか圧が凄くて二人に怯えているのだろう。

 

 あの二人位まで行くと、サギーみたいなド素人でもヤバさが判るらしい。

 出来れば何か話して情報を漏らしてほしいけど。

 

 私の違和感をよそに、白円の上ではキンブル対ソラの闘いがはじまろうとしている。

サジットファミリー最後の闘士は、いつの間にか二人のどちらかに負けて退場していた。

 

 「今度こそ、ボクが勝つ!」

 

 「フン、出来るものならやってみろ」

 

 ソラが勇ましく推参し、キンブルが律儀に応じている。

 

 どちらもちょっと楽しそう。ていうかソラってボクっ娘だったのか!

 

 シュマで会った時はずっと敬語喋りだったから気がつかなかった。実は逸材か?

 

 二人共完全に互いに集中している。

 

 そのせいで、自身の気配を集団に溶け込ませている達人二人に未だ気づけていない。

 

 そして、どうやら達人二人も、私には未だ気づいていないようだ。

 

 戦いは、攻め重視のソラが果敢に棍で突き掛かるも、両の二の腕と両脛に巻かれた太綱で防がれて押しきれない形で始まった。

 

 逆に、棍に拘るソラの隙を突いたキンブルが間を詰めて肩で体当り。ギリギリで棍を盾にするも弾き飛ばされてたたらを踏むソラ。

 

 キンブルの追撃は太綱を竿のように真っ直ぐ振り回しての大振りの打撃。

 ソラが棍で打ち払うも、綱なので打った場所から折れ曲がって少し伸び、先端の結びコブがソラを打擲(ちょうちゃく)しようと襲いかかる。

 

 それを、首を捻ってギリギリ躱すソラ。

 

 キンブルが、徐々に防御だけでなく攻撃にも太綱を使い始めた。

 

 元々、念能力者としてはキンブルに分があった。

 

 素手で闘う『武闘大会』なら武術経験の長い道場主の娘のソラが優勢。

 武器有りなら、あの只の棒を技量向上効果のある槍に変える"発"が使えないと、ソラには厳しい。"発"の効果込みでギリ互角位だろう。

 

 そして、見ても分からない『念』は兎も角、『六頭戦』のルールでは刃物は禁止だ。

 

 ・・・・・

 

 ソラの負けで勝負が着くと思ったら、何か長引いてる。

 

 「・・・ああ、なるほど」

 

 双方とも戦闘にオーラを使っているのだけれど、素人仕事のペンキ塗りのように(まば)らで安定感がない。

 

 攻防の強化もなんだかブレブレ。とても"流"とは言えないレベルだ。

 双方武術の素養があるから変な歪み方はしていないけど、全体的に無駄が多くて身体能力は上がっていても使いこなせていない。

 

 双方オーラが枯渇し始め、念能力者として息が上がってしまって居るのだ。

 

 結果オーラコントロールが曖昧になり、殺すのと殺されるのを互いに無意識に怖がって防御偏重。当たれば終わるはずの一撃が決め手に欠ける泥試合になっている。

 

 接触の度に激しく吹き飛ぶし、大きな打撃音や伝わる振動のせいで素人目には派手で見応えが有るのだけど、練度の高い念能力者から見ると、かなり(つたな)いお遊戯会でしかない。

 

 「・・・酷いな」

 

 これあれだわ、原作の奇〇師とかにモブとして画面の端っこで一纏めにカードで切り裂かれて殺される連中のムーブだわ。

 

 あ、サギーのとこのおっさんが苛ついてる。

 

 「・・・おい、もうまとめて引き潰してお仕舞いにしてもいいんじゃねえか?」

 

 話しかけられた女が首を少し傾け、胸の下で組んでいた右手の指を眉尻に上げて少し思案する。

 

 「・・・そうね、キリがなさそうだし、適当なところで前座は退場して貰いましょう、でも後から文句が出ないように二対一でやる事を認めさせてからよ」

 

 女の方も出来の悪い見せ物にストレスが溜まっていたらしい。

 

 「それで良いわね?」

 

 一応という感じで、女がサギーに確認を取る。

 

 サギーが、カクカクと頷く。

 

 なるほど、全体の絵を描いているのはあの女の方か。ていうか、サギーがフリーランスを雇った訳じゃなさそうだ。

 

 「よし、決まりだな!」

 

 おっさんが肩を回しながら静かに前に出てくる。

 

 「後は、噂の『銀狼』が出てくるかどうか・・・ピークス兄妹の話だと『悪癖(あくへき)』級の相手らしいんだけど」

 

 女がチラリとハシム陣営(こちら)の方を見る。

 

 「あの兄妹(ペア)か?今回、直前でキャンセルしてきたらしいじゃねえか」

 

 おっさんが、足を止めて女の方を見た。

 

 「はめ技専門の兄貴の方はともかく、ピンキーはバカだが、戦闘に関する感覚は侮れねえ、あいつが対峙した感触が『全力で逃げろ!』なら、実際そうなんだろう」

 

 おっさんも、白円上の決闘そっちのけで此方を油断無く注視している。

 

 こっち見んな。

 

 「組織が手配した有名どころのプロも一蹴したみたいだし、恐らく本当なんでしょう。予定ではもう少し楽に決着するはずだったんだけど・・・想定外の事態だわ。金も手間も相応に掛かってるし、どっちにしても逃げるのは無しね・・・」

 

 「フッ、ポーラちゃんは考えすぎなんだよ。ピークス兄妹の代わりに俺が指名されたのはその火消しのためだろ?」

 

 おうふ、おっさんは、対私用の人材か。

 

 「・・・『ザウル・ザウルス(とかげのザウル)』も勝てないほどの相手なら、最悪二人がかりかもね」

 

 

 組織ねえ・・・裏で画策しているのはその謎の組織って訳だ。

 

 こりゃ多分、会話が聞かれていることも織り込み済みの受け答えだな。肝心なことは何も分からん。

 

 何か分からん大きな組織が金も手間も掛けてるとか・・・脅しかな?

 

 二人の名前は分かったけど。

 

 おっさんの方が女の名前をわざと出したのにピキって、女がおっさんの方の名前を当て付けで出したんだろう。

 

 でも私、そういう裏界隈の情報とかに疎いから、名前を出されてもふーんとしかならんのだが。

 

 「・・・なあマリオ爺、『ザウル・ザウルス』って名のおっさんとか『ポーラ』って名の物騒な美人とかって聞いたことある?」

 

 とりあえず、知らないことは聞いてみようの精神で手近な情報通に話を振ってみた。

 

 「えっ?・・・ザ、ザウルにポーラ?」

 

 気配は消したまま後ろからだったので、ちょっとビックリさせたみたい。戦闘が派手なので、ジジババ共は連れと一緒に集団の少し後ろに下がっている。

 

 「いや、『ザウル・ザウルス』って言ったら、()()灰蜥蜴(はいとかげ)』の団長だろ?片目の」

 

 「『灰蜥蜴』?」

 

 「強いんで有名な傭兵団だよ?ガチの戦争屋だ、確か何年か前まで隣国で雇われてたんだけど、王様が代替わりして放逐されたって聞いたけど・・・」

 

 隣国で・・・なるほど、やっぱ軍人か。

 

 「なんだい、『灰蜥蜴』の団長が来てるのかい?・・・ああ分かった、サギーの処のあのヤバそうな二人組だろ!」

 

 派手な戦いよりもピートをもふっていたカミラ婆が、話に割り込んできた。

 

 「ポーラってのは、となりの黒髪の女だね?」

 

 そうだと言うとカミラ婆は、ポーラポーラと名前を連呼しながら何かを思い出そうとし始めた。

 マリオ爺にはポーラという名に心当たりは無いという。

 ブルート御大にも聞いてみようかと思ったけど、マリーさんと肩寄せあって二人の世界を創っていて、話しかけられる雰囲気じゃなかった。

 

 

 その時、倉庫内に不自然な静寂が漂った。

 

 白円の中央で激突すると思われたキンブルとソラの間に、おっさん改めザウルが、とうとうしびれを切らし割って入ったのだ。

 

 ザウルは、右手でキンブルの顎を掴み上げて宙吊りにし、左手でソラの棍の先端を(にぎ)って反対の端のソラを床に押さえ付けていた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ポーラは巨乳。
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