嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 十話で纏まならないかも。


 78、蜥蜴

   78、蜥蜴

 

 「乱入失礼、正直言って二人の戦いがあまりに酷くて見てられなかった、分かってると思うがこのままだとどちらかが死ぬぞ?」

 

 ザウルが、戦闘中だった二人を制したまま告げた。

 

 あ、やっぱヤバかったのか。念能力者同士の戦いは、互いに本身の刀持って切り合いするようなもんだしな。新米なら死亡事故も起こるか。

 

 「なんだてめえは、未だ決着がついてねえだろうが!邪魔すんじゃねえ!」

 

 手に汗握って観戦していたゴートが、ほぼ反射的に文句を付けた。

 

 「そうだぜ、勝負が付く前に介入するのは『六頭戦』じゃルール違反だ」

 

 同じくスリックも、クレームを告げる。

 

 「さっさと退けジジイ、殺すぞ!」

 

 ゴート陣営はマスケットの銃口を並べて狙いをつけている。

 

 「・・・さて、どう落とし前着けるんだサギー?」

 

 スリックは、一瞬ザウルを睨むも明らかにヤバそうな彼から目を反らし、サギーに狙いを絞った。

 

 それを聞いたゴートもそっちの線から責めるべきだと気付き、殺そうと睨んでいたザウルをあっさり放置。スリックと一緒にボスボスであるサギーの方を詰め始めた。

 

 「おう、そうだ!このジジイはお前のところの三人目だろうが、殺して終いでかまわねえって事だな!」

 

 ゴートにとって、大事な試合に飛び込んできたマヌケな男一人を殺す何てのは容易い事だ。

 

 出来るかどうかはともかく。

 

 しかし、必ず勝てるよう折角手間も金も掛けて準備した六頭戦の舞台で、後からケチが着くような真似は出来ればしたくないのだろう。

 多分、即座にザウルを撃たなかったのもその辺の兼ね合いだ。

 

 本人は認めないが、六頭戦に来ているのは一応同格のファミリーのボスばかり。だからこそ若僧はイキがるし、ルールを守ってゲームに勝つ意味もある。

 

 「()()()()()六頭戦に横から奇襲攻撃したんだからもう負けで構わないんじゃないか?」

 

 スリックが、重んじてもいない伝統を持ち出して降伏(サレンダー)を迫る。

 

 

 「ソイツは良い考えだ・・・文句はねえな、サギー?」

 

 阿吽の呼吸でゴートが、乗っかった。

 

 

 ポス連中が話している間にあっさり解放されたキンブルとソラは、警戒しながらザウルから少し離れ、呼吸とオーラを整えている。

 

 二人には、何処からともなく突然ザウルが現れたようにしか見えなかっただろう。

 

 

 「チッ、うるせえ親分集だ、オレは二人を助けてやったんだぜ」

 

 ボス同士の会話に、圧大きめの存在感でザウルが割って入る。

 

 「ド素人には分んねえだろうが、二人共『力』に振り回されてヨタヨタしてたから、一旦試合を止めたのさ、そんだけだ。

 あーあれだ、さっき可愛いワンコがガキを助けるために同じように熊を伸しちまっただろ?それと同じだ」

 

 さらに、ピートのことを持ち出して前例が有ることをアピール。介入の正当化を図る。

 

 「はぁぁ?てめえふざけんな!」

 

 聞いても理解できず、納得行かないゴートがザウルを銃で始末してしまうべきか悩み始める。

 

 そのオッサン、多分銃では殺せないぞ

 

 「・・・そう言ってるが、どうなんだサギー?」

 

 スリックは、どうも『使い手』と言うもののヤバさを感覚的に掴み始めたようで、無意識にザウルを避け、サギーを威圧しようとしている。

 

 「・・・に、二対一だ」

 

 隣に立つポーラのことを気にしながら、サギーがザウルの暴挙の意味を語る。

 

 「二対一?」

 

 意味を掴みきれず、スリックが繰り返す。

 

「・・・口数の少ない家のボスが言ってるのは、状況を簡単にしようって話だ、」

 

 戦闘モードに入ったポーラが隣に立っているせいで、気圧されてまともに話せないサギーからザウルが無理矢理説明を引き継ぐ。

 

 「横入りが気に入らねえんなら、シンプルに今戦ってた二人とオレ、三人で殺ろうじゃねえか」

 

 それなら問題ないだろうと、ザウルが、楽しげに言う。

 

 「三人で?・・・ふむ、なるほど、一度で決着ってわけか、良いだろう、解りやすいのは大歓迎だ」

 

 ゴートが自分の有利を微塵も疑わずに同意した。銃も一旦引かせる。

 

 大男のキンブルや華麗に棍を振り回して床石を砕いていたソラに比べれば、大した武器を持たないおっさんのザウルは、一見強そうに見えない。

 

 「三つ巴ってことか?」

 

 スリックが確認する。

 

 「いやいや、そうじゃねえ、オレが二人まとめて相手するって事だ、簡単だろう?」

 

 見たところ、戦闘を止められた二人にダメージは無い。介入を理由に失格は無理筋と見たゴートとスリックは、息を整えて戦意十分に見えるキンブルとソラを検分する。

 

 彼らの見たところ、キンブルとソラ二人の実力は互角(笑)。男の実力は未知数だが、あの二人がかりなら万が一にも敗けはねえ(苦笑)。

 

 あの男もそれなりの『使い手』のようだし、このままキンブル達化け物二人を戦わせるとどちらが勝っても消耗して次の戦闘で下手を打つかもしれない。

 

 ここは思い上がったサギーの鼻っ柱をへし折って今後言うことを聞かせるためにも、先に奴の最後のカードを始末しておくべきだろう。ザウルを殺ったら直ぐに残った二人で決着を着ければ良い。

 

 そんな打算が垣間見えるアイコンタクトの後、ゴートとスリックはサギー陣営の提案を受け入れた。

 

 ポーラの計画通りに。

 

 ・・・ポーラちゃん何者?

 

 この一連の仕込みの目的は何処にある?

 

 

 キンブルとソラに向けて、先ず二人がかりでザウルをヤるようにとゴートとスリックから指示が出る。

 

 「・・・良いだろう、此方に異存は無い」

 

 キンブルがソラと視線を合わせて頷き合い、コンビ戦を了承した。

 

 「まさか、あんたと共闘することになるとは・・・」

 

 ソラも、複雑な顔で受け入れる。

 

 両者とも、単独では勝負にならないと肌で感じている。

 

 「いつでも良いぜヒヨッコ共、多少の怪我はしても殺しやしねえよ、好きに掛かって来な」

 

 二対一でもザウルに焦った様子はない。

 

 何なら構えも取らず、突然「あっ」と言って腰の鉈を鞘ごと外し、二人に背を向けて自陣のポーラに向かって放り投げた。

 

 「刃物禁止なのを忘れてた、終わるまで持っててくれ」

 

 ボーラは、飛んできた鞘入りの鉈を危なげなく受け取り、コートの中にしまう。

 

 のんきか。

 

 キンブルとソラは、なまじ相手の腕が判るため、攻めあぐねているようだ。

 

 「ヤッバこうだろ!」

 

 キンブルが、動いた。

 

 二手に別れて挟撃の動きをしようとするソラを制し、ソラの前に出る。

 

 先程の飛び込みの速さから揺さぶりは効かないと判断し、各個撃破のリスクより二人で攻防を厚くし、隙を減らすつもりのようだ。

 

 一応及第点。キンブルの方が苦労してるだけに場馴れしてるな。

 

 ザウルは自然体だ。構えた様子はない。

 

 キンブルは、手足に巻き付けていた太綱を解き、自分の前方に八つの触手のように展開した。

 

 「『蠢く太綱(リビング・ライン)』!」

 

 地下闘技場で私と闘った時にも使った防御とカウンター狙いの形態だ

 

 キンブルもソラも念の訓練不足でオーラ枯渇が近い。勝ちを拾うには短期決戦しかない。

 

 私とやった時は待ち主体だったが、今回はキンブルから踏み込む。

 

 対するザウルは、通りかかった知り合いに挨拶するように中途半端に左手を上げただけだ。

 

 キンブルは最早止まらず、腰を落として太綱ではなく自身の右拳で撃ちかかる。オーラを込めた拳の横から、同じくオーラを纏った太綱の結びこぶが一つ追従している。

 

 前回見た通りなら展開している残り七本の太綱は自動防御で、制空権内に浸入してきた全てのものを反射的に捕らえようと機動するはずだった。

 

 そして。

 

 二人がコンタクトしたその瞬間、倉庫内に響いた音は一つしか無かった。

 

 実際には、ザウルの左手によってキンブルの防御機構だった七本の太綱は全て足下に打ち落とされて、同時に彼の拳や追従している太綱がザウルに届く前に、逆に顔面左頬を平手打ちされたキンブル自身が、蹴飛ばされた巨大なボールのように高速で回転しながら横方向へと弾き飛ばされていった。

 

 各ファミリーの陣営は、熊の出現によって中心の白円から軒並み距離をとって、その後のキンブルとソラと言う二人の使い手の闘いに巻き込まれないよう更に下がっている。

 一部は木箱や樽を盾にして隠れていたため、飛ばされたキンブルは、木箱の一つを完全に破壊して止まった。木箱の中身はビレイピンか何か、帆船の艤装具が詰まっていた。

 

 倉庫内の視線が、木箱に突っ込んだキンブルに集まった刹那、キンブルの背後からザウルの隙を窺っていたソラは、突然前で壁になっていたキンブルが消え、代わりに前進してきたザウルが立っているのに気がついた。

 

 「!」

 

 気がつくと右頬を打たれていたソラが、咄嗟にオーラを纏った棍によって殴打を防御出来たのは、長年の修練の賜物だろう。

 残念ながら棍はへし折られてそのままキンブルとは反対側のロープの詰まった樽までぶっ飛ばされてしまったけど。

 ザウルはちゃんと手加減したようで、木箱と樽は破壊されたけど意識を失っているだけで二人共無事のようだ。打ち身くらいは有るだろうけど。

 

 勝負は決し、しかし誰一人動かない。

 

 倉庫内に、緊張を孕んだ静寂が漂う。

 

 段々と化け物みたいに強かったキンブルとソラの二人が戦闘不能に陥り、つまり負けたことが認識されて行く。

 

 「・・・よし、オレの勝ちで良いよな」

 

 短い残心の後、ごく軽い調子でザウルが言った。

 

 いかにも大した仕事じゃない、という様子だ。実際、彼にとっては不本意な役回りだろう。

 

 「バカな・・・」

 

 ゴートが、信じ難い事態に唖然となる。

 

 「・・・おい、ちょっと待て、おかしいだろう?」

 

 口許をヒクヒクさせて、スリックが勝敗にクレームを着ける。

 

 「・・・何だそいつは!どっから連れてきた!今、半島どころか国中探したってあの二人以外に()()()()『使い手』は居ないはずだ!」

 

 ようやく我に返ったゴートが、現状を受け入れられずに叫んでいる。

 

 

 お、何だ、意外と『念能力者』のことを把握してるみたいな口ぶり。そういう専門機関とか裏情報が流れてる広域組織とか存在するのか?

 

 ほうほう。

 

 そういうのも想定しとくべきだったか。

 

 キンブルとソラのことも事前に情報が流れてたかも。ゴートがキンブルじゃなくてソラの方を選んだのは、きっと武術大会で勝ったのが彼女だからだな。実力的にはキンブルの方が上だとスリックは気づいていたのかね。

 

 「・・・クックックック」

 

 おや。

 

 「ハッハッハッハ!」

 

 サギー君が。

 

 「アーッハッハッハッハ!」

 

 笑ってらっしゃる。

 

 「・・・オレの、勝ちだ」

 

 震える声でのサギーの勝利宣言。超嬉しそう。

 

 

 いや、まだウチのラストカードが一枚残ってますよ?

 

 

 「サギー、てめえ小銭しか動かせなかった筈なのに、どうやってそんな腕利きを引き込みやがった!」

 

 スリックがサギーを詰める。

 

 どうやらゴート達は、サギーのお財布事情をかなり正確に掴んでいたみたい。ファミリーに彼らの手の者が潜り込んでいたのかな。買収かも。

 

 

 スリックの言うことが事実なら、ザウル達は金で雇われた訳ではない、と言うことになる。

 

 

 「クックック・・・知りたいか?」

 

 上機嫌のサギーが、罠に填まった敗者に種明かしをしてやろうと上から目線で問いかける。

 

 その一瞬、何故かポーラの表情が僅かに動いたのを感じた。

 

 「彼らは()()のファミリーから来た者達だ、以前から商売での取り引きは有ったけど、今回オレの窮状を見かねて貴重な人材を回して助力してくれたのさ」

 

 隣国は、数年前の王の代替わりからこっち内部がゴタついていて、いざという時のために避難場所として、こちらの国に友好的な拠点が欲しいと言って、サギーの事情に介入してきたらしい。

 

 鑑札を失って立場の弱かったサギーは、取り入るのにもってこいだったわけだ。

 

 怪しさしかない。

 

 「そして、彼らの活躍で今や私は半島六つのファミリーを従えるボスになれた。結局あの三人のなかで一番トップに相応しかったのは、このサギー様だったわけだ!」

 

 サギーは有頂天だけど、ゴートとスリックは未だ負けを飲み込めてない。

 

 二人の陣営が、持ち込んだマスケット銃を使って勝負をひっくり返そうと動き始める。

 

 

 今にも撃ち合いが始まりそうな空気。

 

 

 ああ、三馬鹿の目的はマジで六頭会のトップになることだったのか。私には理解できんメンタリティだ。

 

 それはともかく、隣国のファミリーねえ・・・

 

 「私の記憶では隣国のファミリーってあんまり良い評判を聞かないんだけと、その辺どう?」

 

 状況の変化に驚いているマリオ爺とカミラ婆に、続けて判断のための情報を貰う。

 

 「あ?あー、一言で言うと『貴族擬き』だ」

 

 マリオ爺は、嫌そうに告げた。

 

 「『貴族擬き』?」

 

 その話は始めて聞いた。

 

 私が噂として聞いているのは、契約はきっちり守るけど働き手の扱いが酷いとか、一度仕事を貰うと抜けるのが難しいとか、きっと何か後ろ暗い仕事を受けているとか、前世のブラック企業みたいな評判で、絶対行くのは止めておこうと思った位だ。

 

 「クックックッ、『貴族擬き』とは酷い言い種だ」

 

 カミラ婆の含み笑いが漏れる。

 

 「元は、あっちの国でも此方と同じように大きな港のある貿易港には人足請け負いの元締めが居て、親方衆として重宝されていたんだ。

 たしか、一家を構えてファミリーを名乗ってるところも相応に有った・・・」

 

 カミラ婆によると、とある港町の地方領主が借金の抵当に港の権利一切を売り払ったことが発端らしい。

 

 権利を得たその商人は地道にノウハウを身に付け、実質的に港を支配しているのは人足の元締めだと突き止めた。そして、港と人を操って莫大な富を築くことに成功する。

 

 そして、稼いだ金と得たノウハウで更に事業を拡大し、最近の政情不安もあって、今じゃ隣国の沿岸部に巨大な利権を持つボスとして『グラン・ファミリー』を名乗っている。

 

 その、『グラン・ファミリー』がマリオ爺の言った『貴族擬き』だった。

 

 『貴族擬き』。

 

 実際の身分は平民だけど、地元じゃ大領地貴族並みの金と力を持っているためにそう言われているそうだ。本人に言ったら怒りそう。

 

 その『グラン・ファミリー』が、ハッベルの街に手を出してきたのは分かる。単なる事業拡大の一貫だろう。でも、恩を売るならサギーの鑑札を取り返せばそれで済む。金に汚いサギー相手に取り入るのは、そう難しくないだろう。

 

 何故『六頭戦』までやる。六頭のボスの座に拘る。

 

 その時、ゴート達の陣営から連続した激しい打撃音と、人間が何かに強く撥ね飛ばされて壁や木箱や床、若しくは不運な人間に激突する音が続いた。

 

 ザウルだ。彼が銃撃を止めるためにゴート陣営に突っ込んだのだ。強いオーラを纏って。

 

 正に蹂躙。

 

 ザウルが縦横に動く度に人が飛ばされ、肉がひしゃげ、骨が砕かれ、戦闘力を失って行く。

 

 たまに気骨のある射手が居て、ザウルに銃弾が命中している。しかし、その肉体を覆う強靭なオーラによって、いとも容易く弾かれている。

 

 走り回るザウルの動きが速すぎて、どちらかと言うと銃弾は彼から外れるか、当たっても誰か他の者や何かにだった。

 

 見る間にどんどんと被害が増えて行く。

 

 お、ゴートが奥から何やら持ち出した。

 

 隠されていたのは、台座ごと荷車に固定された小型の大砲だ。

 長さ1メートルほどの旋回砲。いわゆる半ポンド砲だろう。あれがゴートの奥の手か。中身は恐らく散弾(キャニスター弾)。前世に有ったクレイモア地雷みたいなやつで、対人戦だと無類の効果を発揮する。あれはヤバい。

 

 発射角は、一応こっちじゃないな。

 

 あっ、かわいそうに、ゴートのやつ自分のとこの兵隊ごと撃つ気だよ・・・

 

 南無~。

 

 ザウルは砲に気が付いたが引かない。避けもしない。正面から受ける気だ。

 

 

 「・・・おら撃てよ!撃ってみろ!」 

 

 

 「死ねぇ!」とかなんとか言ってゴートが砲を発射したけど、ザウルは両腕を顔の前に翳して防御体勢を取り、前面にオーラを集中して砲撃を受けきってしまう。

 

 やっぱりか。

 

 ザウルは多分『強化系』。

 

 装填されていたのは、半ポンド(二百グラム少々)のマスケット銃弾百発弱だった、外れた弾と、ザウルに当たって跳弾した弾とで、ゴート陣営はほぼ壊滅した。ゴートもザウルが跳ね返した弾で頭に負傷し、意識を失った。

 

 あ、そう言えば、殺し屋を送ってきたゴートとスリックをどこかの時点で始末しようと思ってたんだった。死んだら手間が省けるな・・・

 

 

 ・・・ん?

 

 

 ・・・・・

 

 

 「・・・マリオ爺、ちょっと聞きたいんだけど」

 

 不意に思い付いた疑問を尋ねてみる事にする。

 

 「なんじゃ、改まって」

 

 「ファミリーのボスが死ぬとその身内や幹部が後を継ぐよな?」

 

 「そうじゃな」

 

 「じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 「へ?全員一緒にか?そんな事態にはそうそうならんだろう」

 

 「もしなったら?」

 

 「もしそうなったら、取り敢えず人足の手配は誰か近場の街のファミリーに()けて貰って、早々に鑑札を領主様にお返しするしかないなぁ」

 

 「・・・じゃあ、もしその時『六頭会』にボスが居たら・・・どうなる?」

 

 「そりゃあ、ボスが居りゃあいざというとき骨を折るのがボスの役割だ、人手を回して力になってくれるだろうよ、鑑札も預かって・・・」

 

 いつも呑気なマリオ爺の顔が、青くなっていく。

 

 「・・・まさか」

 

 マリオ爺も、何かに気づいた。

 

 「何か知ってるのか?」

 

 マリオ爺は隠居しているけど元ファミリーのボスだ。隣国の真偽の怪しい噂話も、様々に聞き込んで居ることだろう。

 

 「これは酔った船乗りから聞いた話だが、『グラン・ファミリー』が勢力を拡大する時に乗っ取った港の親分衆や商会は、どういうわけか事故や流行り病で主要な幹部や一族が減っていることが多いそうだ・・・」

 

 まあ、そういう相手だから乗っ取りが成功しただけかもしれんが。と、不安を滲ませる。

 

「道理で、拡大速度が早すぎると思ったよ・・・間違いないね、やつら、ヤってるよ」

 

 隣で聞いていたカミラ婆が、「残った連中は脅されたか買収されたのさ」とピートを抱っこしたまま険しい顔で結論付ける。

 

 「・・・なるほど、そのための『六頭会』ボスの肩書きか・・・」

 

 

 

 ・・・そうか、となると私が出なければならんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ザウルはワンコ大好き、でも大抵酷く怯えられるから滅多に撫でることが出来ない。例外的な撫でても大丈夫なワンコは、見ただけで何か直感的に判るらしい。
 本人は此れが念能力の一種じゃないかと密かに思っているけど、犬好きなら誰でも標準装備。
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