嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 梁にはネズミが居る。


 79、極星

   79、極星

 

 今しがた局地戦紛いの銃撃戦があった割には倉庫内は平穏だった。

 

 ザウルに蹂躙されたのとボスのゴートが怪我に倒れたことで彼のファミリーの生き残りは動きを止めた。

 

 ゴートと同じくサギーの勝利を認めることを拒んでいたスリックは、頼みの綱のジャガ族が「守護契約しか結んでいない」と言って戦闘を拒否。

 キレて怒鳴りつけたら、あっさり前金を返されて結んでいた守護契約も解除されてしまう。

 

 何やってるんだ?

 

 もたつく間にゴート陣営がザウルによって瞬く間に壊滅させられ、スリックは歯噛みしながらも、行動の無謀を悟って動くのを諦めた。

 

 

 連中が、六頭のボスに拘る理由は解った。

 

 残りの謎は女の正体だ。

 

 ポーラと言う名前は恐らく偽名か渾名。少し嫌がってたから何か本人に関連するワードだけど、多分直接本人には結び付かない。

 

 既出の情報は二つ。

 

 『隣国』と、そして『念能力者』。

 

 「・・・なあ、今は国から離れている隣国の名のある者、あの女と同世代で名の知られた人物、何なら悪名でも良い、誰か思い付かないか?」

 

 傭兵団の団長であるザウルと五分に話が出来る現場指揮官。腕も立つのだろう。

 あれだけ才気立って目立つ女が無名なわけが無い。しかも、物腰からして恐らく貴族。若しくは貴族に使えていた随伴。

 

 こういう基礎情報も『左目(スコルピオ)』の≪観測≫にタグ標示されれば楽なんだけど、今のところそんなに便利には出来てない。

 

 タグやマップに標示される情報は、私の身体を構成する『十三原始細胞(ゾディアック・プラスワン)』の各部位が得た私の認識外も含めた膨大な情報を精査解読して導き出した物らしいのだ。何で偏りが有るのか不思議に思って聞いたら教えてくれた。

 

 私の目や耳や鼻の権能。全身の皮膚感覚や『(バルゴ)』の≪結界≫の持つ危機感知能力。これらは普段十全に使いきっているとは言えない。

 見ようと思えば遥か遠くを見。そして、聞こうと思えばどんな音でも拾える機能を持っていても、普段は常人並みの情報量で十分だからだ。

 

 残りの情報は本来切り捨てられるのだけど、私には『十三原始細胞(ゾディアック・プラスワン)』の念獣達が付いている。睡眠時や過去情報も含め、私の捨てた情報から私にとって有用そうな情報を拾い上げ、『左目(スコルピオ)』の≪観測≫のタグとして提示してくれているのだ。

 

 マジ有能。マジ感謝。

 

 つまり、この場で誰かが口を滑らしたり噂話や内緒話で漏らさない限り、念獣達の情報収集能力をもってしてもポーラに関する追加情報は得られない。逆に、スリーサイズや病歴なんかの一次情報は直ぐ解る。

 

 

 「・・・うーん、あの女と同年代位でか?」

 

 私の漠然とした問いに、マリオ爺が腕を組んで悩む。

 

 「あの年で隣国で名が売れるとしたら、活躍は先代の王の晩年近く、国の統制の(たが)が緩んで小さい争いが頻発し、後継者争いで王子同士いがみ合ってた時分だね」

 

 カミラ婆が、時代を絞り込んで検索対象を限定する。

 

 「ああ、あの頃はこっちの国にも飛び火するんじゃないかって事で皆注目してたから、その辺りの話なら結構知ってるぞ・・・戦場で活躍した王子や貴族、語り草になってた将軍や騎士に傭兵、脇を固める切れ者の軍師に参謀。当時流れてた一通りの戦話なら大体覚えてるが・・・いや、でも、あんな女の事は記憶に無いなあ」

 

 マリオ爺は、こう見えて意外と記憶力が良い。しかし、それでも何故かポーラの事はヒットしなかった。

 

 隣国の関係者ではなく、何処からか招聘された人物なのだろうか。

 

 「バカだねマリオ、今ここに居るんだから、もう隣国には所属していない奴だよ!王族や将軍を持ち出してどうするんだい!」

 

 カミラ婆が私の言葉をもう一度繰り返し、さらに範囲を絞る。

 

 「あー、そんなら思い付くのが一人居るけど、多分別人だぞ?」

 

 マリオ爺が即座に一人を挙げた。

 

 「どんな人物です?」

 

 私は、なんとなく気を引かれて聞いてみる。

 

 「通称『極星(ポラリス)』って呼ばれてた軍師だな。本名は伝わってない。確か元は第三王子に近侍してた側仕えで、戦場で窮地に陥った第三王子を自身の武力と軍略で導いて、鮮やかな逆転勝利を演出した傑物だ」

 

 当時隣国は、各地の小規模な反乱に加え隣接するいくつかの小国との国境紛争も起こっていて、名目上王族が軍を率いて出征することも多かったらしい。

 

 「ああ、その話ならアタシも聞いたことが有るよ」

 

 カミラ婆も知っている有名人のようだ。

 

 「たしか、活躍しすぎて王命で軍に所属が変えられて、出征した戦場に居る間に元主の第三王子が急死してしまったんだ。しかも、それを知らされずに戦地で戦い抜いたとか」

 

 うわっ、どうにも裏を考えずにはいられないエピソード。

 

 たしか、隣国は第一王子も第二王子も事故死していて、今の王は妾腹の元第四王子だったはず。

 

 「そう、『極星(ポラリス)』は、戦後第三王子が亡くなった事を知って、その日のうちに国から出奔した」

 

 その後は行方知れずで一応条件には合うと、マリオ爺が告げた。

 

 

 極星(ポラリス)ポーラ・スター(北極星)、ポーラ。流れは出来ている。

 

 

 「でも『極星(ポラリス)』は男だろ?」

 

 カミラ婆が反論する。

 

 「男?」

 

 なら違うのか?

 

 ゴートの処で一方的な蹂躙劇を終え、無傷のまま悠々と白円まで戻って来たザウルが、話題のポーラと小声で何か話している。

 今の一暴れで追加のボーナス(駄賃)が出るかどうかの交渉だ。粘ってるけど残念ながら無理っぽい。辛辣に対応するポーラは、取り付く島もない。

 

 厚手のコートに包まれた彼女の肢体は、例え男装していたとしても見間違いようのない程にメリハリの有るボディラインをしている。

 

 今は、サギーがスリックをネチネチと煽り、なんとか自分達に攻撃させてゴートと同じ目に遭わせようと挑発していた。

 

 「英雄『極星(ポラリス)』の別名はいくつか有って、敵から一番呼ばれてたのは『鋼鉄参謀(スティール・ブレイン)』、味方に呼ばれたのが・・・」

 

 カミラ婆が珍しく言い澱んで、マリオ爺に視線で話を振った。

 

 「・・・ああ、彼が味方に呼ばれてた別名は『鉄の睾丸(アイアン・ボール)』だ、女に着ける渾名じゃなかろう?」

 

 マリオ爺も苦笑い。

 

 「・・・なるほど」

 

 でも、戦場と言う特殊性と男社会ならではのデリカシーの欠如、件の別名が同僚の嫉妬とその度胸に対する感嘆から来ているとすれば、人物が女である可能性は多分に有るのではないだろうか。

 

 確たる根拠は無いが、念能力者としての直感が(ささや)き、聞いた人物像と眼前の女の姿が私の中でピタリと一致する。

 ポーラの正体は十中八九『極星(ポラリス)』だ。

 

 『極星(ポラリス)』、道しるべの星。そう名付けたのは、助けられた件の第三王子だったのかもしれない。

 

 

 「・・・もしかして、そうなのかい?」

 

 勘の鋭いカミラ婆が、私の思考を感じ取った。

 

 「恐らく」

 

 同意する。

 

 「・・・そうかいそうかい、そりゃ、かなり不味い事態だね・・・領主に警告するかい?」

 

 カミラ婆が、自身のコネを使って今回の件をお上に持っていく事を提案した。

 

 「・・・それだと、最悪戦争になる可能性が出て来る」

 

 傭兵であるザウルの行動は問題にならなくとも、ポーラは別だ。

 現在は隣国政府と関係無いとはいえ、元は多分貴族で軍属。もしかすると、未だ国や軍に籍が残っている可能性もある。

 

 当時ほどではないが、その後も色々有って隣国は今も混乱が続いている。現状この国からはちょっかいを出していないけど、お国の中には介入したい者も居るだろう。この一連の件を報告すると、そういう人物に大義名分を与えることになりかねない。

 

 戦争は、一部貴族にとっては楽しいゲームだけど、徴募や増税、不景気や難民等一般人には余り歓迎されない。

 

 「でも、どうすんだい?相手は戦争をしてたような連中なんだろ?」

 

 ピートを抱く腕に少し力が入っている。カミラ婆は事態をかなり重く捉えているようだ。

 

 「・・・え、戦争?」

 

 マリオ爺は、未だ事態の把握が追い付いていない。

 

 「問題ない、()()()()()()()()()()()

 

 見た感じ冷静なタイプみたいだし、ポーラの肩書きが『参謀』だったのなら、引き際は、弁えてるだろう。

 

 正面戦力のザウルさえ通用しなければ、引く可能性は高い。

 

 何か交渉してくるかもしれんけど、こっちのスタンスは変わらない。

 

 

 「下がってくれ、三人目は私が出よう」

 

 

 隠形を解き、指を上げてハシムに合図する。そして、知った顔の三人目の白幕を下がらせてファミリーの前に進み出る。

 

 心なしか、ハシムの顔に安堵の色が浮かんでいた。

 

 帽子を脱いで後ろに放り、気配を顕にして放つ圧を少し高める。

 

 自由になった『(バルゴ)』が周囲の注目を集める権能をちょっと発動させ、銀髪を美しく靡かせ一際輝かせる。ほどほどにね。

 

 やっぱり、『六頭戦』最後の挑戦者が有象無象では盛り上がりに欠けるだろう。

 

 

 私、結構強いです。

 

 

 隠形を解いた段階でザウルとポーラが直ぐに気がついて、此方を注視している。

 

 「・・・『銀狼』」

 

 私の二つ名を漏らしたのはポーラだ。何か、私を見てびっくりしている。

 

 「ははっ・・・本物だな、やっぱり居たか」

 

 白円上で待ち構えるザウルは、油断なく腰を落とし戦闘体勢に入った。

 

 「・・・シーマ・ファミリー最後の闘士として御挨拶(ごあいさつ)(つかまつ)る、我が名はミカゲ、巷間(こうかん)では『黒門のミカゲ』で通っている。

 長い付き合いになるかどうかは分からないが、お見知り置きを」

 

 ザウルに向かって、ゆっくりと歩きながら軽く名乗りを上げる。

 

 あ、最後のフレーズでザウルがピクッッとした。しまった、煽ってしまったか。

 

 「・・・ザウルだ、『ザウル・ザウルス(とかげのザウル)』で通ってる、死んだら向こう(地獄)で自慢しろ」

 

 なんだかずいぶんと楽しそうだぞ?

 

 さすが強化系、脳筋だ。やる気になるのが早い。

 

 

 「・・・ザウル、ちょっと待ってもらえる?戦う前に少し話がしたいのだけど」

 

 戦闘開始直前に、ポーラから待ったが掛かった。

 

 やっぱり、搦め手かな?

 

 

 「・・・ねえあなた、もしかして何処かの王族だったりします?」

 

 ポーラの最初の言葉は訳の分からない問いかけだった。

 

 「・・・はぁ?いや、違うが・・・」

 

 何の話?

 

 「絶対に?」

 

 重ねて念押しまでしてきた。

 

 「元々閉鎖的な田舎の村育ちだ、あり得ないな」

 

 クルタ族は、この時代でも村の外の人間とは交わらずに暮らしているはず。『私』の残ってる最古の記憶が都会のスラムなのは謎だけど、クルタ族公式のチート能力が全部盛り(頭脳、念能力、身体能力、緋の目)だったので、純血クルタ族だと思う。

 一度他のクルタ族と遭えれば、遺伝子レベルで純血かどうか念獣が教えてくれるはずだ。今はサンプルが無い。

 

 「そう・・・・失礼しました」

 

 ポーラは、何かちょっとガッカリしている。

 

 「・・・チッ、王室暗部の刷り込みか・・・厄介な」

 

 ザウルが、微妙に不穏な事を小声で毒吐いている。

 ポーラは直ぐに冷静さを取り戻し、両手を開放的に開いて話し始めた。

 

 「・・・さて、残念ながらサギー氏が漏らしてしまったから隠さずに言うけど、うちの組織は結構な大手なのよ。詳しくは言えないけど、この『六頭戦』にもそれなりの金と手間を掛けてるわ。

 用意した闘士も一級の『使い手』だし、掛かってるのも結局は名目だけの六頭のボスの座。

 わざわざ()()()()『銀狼』であるあなたが出る必要は無いのではなくて?」

 

 「サギーが漏らした」、の部分でチラリと眼をやって彼を顔面蒼白に変え、私に対してはにこやかに平和な辞退を促す。

 

 地方ローカルのヒーローは、都会に出て来ると恥を掻くから引っ込んでろ、という意味だろう。勿論脅しも含んでいる。

 

 未だ、母体組織『グラン・ファミリー』の企みが露見していなければ、それなりに説得力のある提案だった。

 

 「私も、当初は静観するつもりだったんだけど、裏に『グラン・ファミリー』が居るとなるとなかなか捨て置けなくてね・・・」

 

 溜め息を一つ吐いて残念さをアピールし、仕方なく参戦したことを明かす。

 

 「・・・ほう、何故でしょうか?」

 

 ポーラが目を細める。

 

 「お飾りの大ボスでも、配下のファミリーに()()()()()()()()()()()()()()()()()お鉢が回って来るかもしれないから、かな?」

 

 こちらが、今回の『六頭戦』にまつわる計画の執行理由を、おおよそ推測していることを暗に伝える。

 

 無いとは思うけど、計画が破綻した後まで感情的になって頑張られると面倒なので、最低限の礼儀は守る。

 

 「・・・なるほど」

 

 大したもので、策が見抜かれた事によるポーラの反応は、細めた目がさらに少し細くなっただけだった。

 

 「ですが、拳を交える前に少し思い出して欲しい事があるわね」

 

 ポーラの態度が硬化し、開いていた腕を胸の下で組み、威圧的な上から目線で話はじめる。

 

 「・・・・・」

 

 私は、彼女の狡猾な視線誘導に引っ掛かることなく無言で話の先を促す。

 

 「あなたの周りには、沢山のお味方がいらっしゃる」

 

 ポーラは、意味深な目で私の背後に居るハシム率いるファミリーやジジババ共をチラリと見た。

 

 「そしてシュマの街に帰れば、お世話になっている娼館や黒門街の住人、スラムにもご友人方がちらほらと・・・」

 

 そして、凶悪なほど冷たい眼差しで、にっこりと笑ってみせる。

 なるほど、これは『鋼鉄参謀(スティール・ブレイン)』だわ。

 

 「これは一般論ですけど、あなたは大変()()()様ですが、もし仮に()()()()()()()()がシュマの街で起こった場合、あなたお一人で全てを守るのは、無理、無駄、無謀と言う物ではないでしょうか?」

 

 ポーラは、「後悔の味は、苦いものですよ?」と締めた。

 

 アブねえ、もうちょっとで、それはご自身の経験談ですか?と聞きそうになった。

 

 一応、脅しとしての言質を取られないような言い回しになってるけど、殆ど明確な脅迫だな。

 

 でも、残念ながら私のスタンスは彼らの想定とは違うんだよなぁ。

 

 「・・・ほう、このまま辞退せずに参戦すると、私の身内にいわゆる不幸な事故が起こり得ると?」

 

 表情を消して、最後の確認。

 

 「それは、誰にとっても不幸な出来事です」

 

 ポーラは、美しい顔に痛ましげな表情を作って誰かの悲しみを予感して見せる。

 

 「・・・おやまあなんと、それは大変だ」

 

 しかし、私の返答は至極軽いものだった。

 

 「・・・・・なんですって?」

 

 ポーラが、違和感を感じ取って少し混乱している。

 

 「いえ、ですから、そうなったら大変だと」

 

 私のテンションは変わらない。

 

 「・・・お身内に不幸が起こっても何とも思わないと?」

 

 ポーラは、自身の脅迫が何故想定の効果を発揮しないのかを確かめようと切り込んだ。

 

 「いや、そんなことはありませんよ。知り合いの誰かが傷つけば怒るし、親しい友人が亡くなれば悲しむことも有るでしょう」

 

 知り合いには、ジジババが多い。皆私より先に寿命を迎えるのは間違いない。

 

 「ならば、彼らを守るためにあなたの取るべき道は・・・」

 

 ポーラが、私が選ぶべき最適解を示そうとしている。

 

 「そこが違うんですよ」

 

 私は、彼女の誤解を指摘する。

 

 「・・・え?」

 

 「私は今、名目上年寄り達の護衛についてますけど、本質的には『守護者(ガーディアン)』ではないんです。

 

 私は『復讐者(リベンジャー)』なんですよ。

 

 だから、基本的に街や人を守ったりはしません。彼や彼女の人生に介入する気は無いんです。何より誰より自分が一番大事ですから。

 義理は果たしますし、頼まれれば人助けもしますがね。

 

 でも『復讐者(リベンジャー)』なので、私の親しい友人や知己が理不尽な暴力によって害された時は・・・対象者が『如何(いか)なる者であっても』必ず落とし前はつける積もりです」

 

 本気の意志を込めてにっこり笑っておく。

 

 私が一番大事なのは、他の一切を凌駕して、明確に私であることを持論として述べ、自身を危険にさらしてまで他者を守ることはしないこと。

 しかし、何か事有れば相手が誰であっても復讐する事を宣言する。

 

 今更だけど、作品外部の人間だからね。あらかじめ、念能力者として一般人と関わるのを決めた時、この『復讐者(リベンジャー)』スタンスも決めている。『クルタの子』のリベンジ案件も有るし。キャラとしての一貫性を大事にしてみた。

 

 結局のところ、守ろうが守るまいが死ぬときは死ぬのがこのH×H世界。命は当人のモノで、ならば悔いを残さないように生きるだけ。私は見守るだけだ。

 

 『復讐者(リベンジャー)』として。

 

 「・・・復讐者」

 

 ポーラが、絶句している。

 

 「・・・ははは、こりゃ無理だ、自分以外の全てを諦める覚悟が出来てやがる、こいつに脅しは効かない。しかも、手を出すと一番厄介になるタイプだ・・・」

 

 ザウルが、呆れたような感心したような愚痴めいた評を述べた。

 

 「・・・そうみたいね」

 

 ポーラが、お手上げと言うように組んでいた腕を解き、肩を竦めて両手を上げた。

 

 「やっぱ予定通り、オレの出番だな」

 

 ザウルが、ちょっと嬉しそうに獰猛に笑う。

 

 「ええ、プラン通りに・・・」

 

 『六頭戦』最後の闘いに、ザウルを送り出そうとしたポーラの言葉が止まった。

 

 表情は険しくなり、視線が宙空を見つめている。

 

 

 いつの間にか、倉庫の中に沢山の黒い羽が舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 実は主人公も、ちょっとアレ。

 ポーラさん、本名パウリナ・エスカレート 元王室の暗部。
 エスカレート家は、幾つか有るそう言う系の家。選民思想強めのため、孤児ではなく選抜された貴族の非嫡出子をスパルタ教育して、生き残った者を王家の暗部として国が抱えている。
 パウリナは、()()()()()()今の王から自由もぎ取った。
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