嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 8、“発“発動完了、十一月~十二月+壱

   8、“発“発動完了、十一月~十二月+壱

 

 おはよう諸君、今年もあと二月を残すのみだが、一歩一歩着実に行こう。

 

 一眠りしてストレスも少し目減りしたか?やや気分向上。

 変わらんダルさは、もう気にしない事にする。

 

 ・・・何処と無く、念獣達の反応というか、圧が増してる?

 おっ?お知らせが・・・仮想トレーニングの効果と地上への期待?

 いや、私自身も、この世界の地上なんか見たことないから、知らないぞ。

 私の記憶は、元の世界のものだ。

 

 え?・・・そうなんだ・・・・なんか、あんまり気にして無いらしい。

 

 ちょっとホッコリ。

 

 

 十一体目は、『左目』。

 

 名前は十一月だから、『スコルピオ』。

 

 蠍座。尻尾の先の赤い眼(アンタレス由来)と、極限の集中によって、体感時間を引き伸ばし、あらゆる獲物を容易く捕まえる、正確無比なハンターのイメージ。

 

 能力は≪観測≫、発展能力は≪加速≫。

 

 ≪観測≫は、『緋の眼』状態じゃ無くとも発動可能。

 能力は、オーラの集中のいらない“凝“と、認識、測定、若しくは鑑定の並列処理。

 

 目指すのは、所謂ゲーム画面の様な、情報の提供。

 

 原作漫画の事を思い出していて、気が付いたんだが、“凝“でオーラが見えるんなら、他にも何か色々見えたって、良いんじゃないの?って事。

 

 接近戦(クロスレンジ)で格闘中なら、視界の占有は邪魔なだけだが、それ以外、中距離(ミドルレンジ)遠距離(ロングレンジ)、他にも平時なら多方面で役に立つ。

 視界内の細かい情報処理などは、特化型の念獣の方が得意なくらいだろう。

 

 例え危険な相手じゃなくとも、おかしな物、“隠“で隠された念の仕掛け等、見つけておくにこしたことはない。

 とりあえず、見つけられない事自体が危険だし。

 

 

 ≪加速≫は、まんま、思考の加速。

 

 使いこなせれば、ほぼ無敵。

 

 ≪観測≫もそうだが、≪加速≫も私自身の脳に干渉して効果を発揮する。

 新しい能力の付与ではなく、能力の強化、向上に近い。

 

 まずは、常時“凝“。それからそれが上手く行けば、オマケでタグ付けや、マッピング、思考加速は宝くじかな?

 感覚器官系と違って、脳の思考に直接作用する部分は、自分でもちょっとヤバいと思うし。

 

 考え続けると、怖くなるので・・・ちゃっちゃと念獣作成。

 

 ・・・・・二十時間後。

 

 『左目(スコルピオ)』、完成。

 

 

 ・・・おおっ、なんか、今気が付いたんだが、私の意識の中の念獣達の気配が、私を中心に、時計の文字盤の様にぐるりと取り巻いてる。

 一時の位置の『腎臓(カプリコーン)』から、十一時の『左目(スコルピオ)』まで、綺麗に輪を描いていて、正面の十二時のスペースはまだ空いている。

 

 よくわからんが、トレーニングの成果らしい。

 

 かわいいからオッケー。

 

 

 私の、ストレスとかいろんな負担が多少軽減したのも念獣達の新規コンビネーションによるものらしい。説明されたが、意味不明。

 ≪魔眼≫の幻覚と≪強化≫の補助と≪再生≫の後始末、が関係するそうだ。

 

 幻覚の中で温泉旅行でもしたのかね。全然覚えてないぞ?

 

 ん?・・・・何か、おもいっきり暴れて泣きわめいたらしい。

 モフモフに埋もれて昼寝、とかじゃないの?

 

 ・・・・・

 

 念獣って、こういうのだったっけ?

 

 ま、いいや、時間だ、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 おはよう諸君、いよいよ最後の月、十二月がやってきた。

 パンツのゴム引き締めて行こう。

 

 ・・・あれ、私パンツ履いてない?

 

 ・・・おおっ、なるほど、今『(バルゴ)』から髪を伸ばして全身何処でも隠せる、とお知らせがあった。

 良かった、これで私の人としての尊厳は守られる事が確定した。

 

 では改めて、十二体目は『左手』。

 

 欠損部位、最後の一つ。

 

 名前は十二月だから、『サジタリウス』。

 

 射手座、人獣双方の力を兼ね備え、あらゆる物事に干渉する半神の指し手のイメージ。

 

 能力は≪添加≫、発展能力は≪転換≫。

 

 

 最初、『左手』は盾系の能力にしようと漠然と考えていたが、原作中で、オーラは量に差があると、盾に何の意味も無かったことを、思い出した。

 何枚重ねようと、弱い壁は弱い。

 ただの算数、弱い方が負ける。

 

 偶然にも、なんか盾として使えそうな、『左足(タウラス)』の≪甲殻≫と≪隔壁≫もあるし、発想を変える事にする。

 

 そもそも弱いくせに、避けられないからと言って、強力な攻撃を受け止めようとするのが戦術的間違い。

 

 受けられないなら、流すしかない。

 

 すなわち、パリィ。

 

 受け流し、と呼ばれる剣術や無手格闘技なんかの高等技術。

 

 相手の攻撃に横方向から力を加え、攻撃の威力を受ける事なく反らして流す。

 理論的にはやることはこれだけ。

 

 理論的には単純なのだが、実行するのは超難しい。特に、相手の実力がこちらを上回っている場合には、ほぼ無理。

 

 ≪添加≫の能力は、まさにこれ、敵の攻撃のベクトルに、別方向のベクトルを加え、攻撃を反らす。

 最初は接触、若しくは至近のタイミングからだろうか?なんか、合気道的な?

 

 能力が成長すれば、攻撃が勝手に反れて行ったり、触れずに投げ飛ばしたり、デコピンしたり、スプーン曲げとかできそう。

 

 

 ≪転換≫は、≪添加≫のもっとヤバいバージョンで、場のベクトルその物を自由に操る、某作品の某最強キャラが持っていた能力。

 

 はっきり言って、私も、自在に操る自信はない。だからそこは念獣に入念な補助をお願いする予定(丸投げ)。

 

 まあ、発展能力だし、そこまで成長しない可能性も、けっこうある。

 

 念獣達に命を与え、与えられる。

 最後の隙間を埋めるため、十二回目の念獣作成、行きます。

 

 ・・・・・十九時間経過。

 

 『左手(サジタリウス)』完成。

 

 ・・・・・・・・

 

 これで・・・これで、身体の欠損部位は全て補完されたはず。

 ちょっと休んだら、地上へ出られるけど。

 

 ・・・

 

 ・・・・・・計算が正しければ、今日は埋められたあの日から三百三十何日か、予定通りなら十二月の始め、今年が終わるまで、まだ一月ある。

 最初の予定では、ここで外に出ても、念獣をもう一体増やしても、どっちでも良いと考えていた。

 

 身体の不足部位全てを念獣に置き換える迄は頑張るつもりだったが、二月に『肝臓(アクエリアス)』を生み出して≪再生≫を得てから、途中で“念獣てんこ盛りプラン“を諦め、地上に出て、不足部位をただの生身で作り直して細々と生きてゆく“そこそこで満足“プランも有った。

 

 中盤くらいまでは、割に順調だった。

 こりゃ行けんじゃね?と思ったが、徐々に綻びが出た。

 

 九月十月頃のストレスがヤバくて十二体目まで行けるかも怪しくなって、もう、無理だと思った。

 ところが、念獣達が、其れを解決してしまった。

 

 念獣達が、勝手に動いたと言う事は、私が思っていたよりも、大分危ない状態だったらしい。

 

 元々一年間篭るつもりだったし、腹案もある。

 

 もう、オマケの十三体目、行くしか無いでしょう。

 念獣達の、微妙に嬉しげな肯定の意を受けつつ、十二回目の仮死の眠りに入る。

 モーニングコールは、制約に従い、二十九日後に頼む。

 

 おやすみ、みんな・・・。

 

 

 

 

 おはよう諸君、計算通りなら、今年ももうすぐ終る。

 

 と、同時に私の墓穴暮らしも終わりを迎える。

 感慨深いが、未練は全くない。

 

 さて、十三体目。

 

 制約と誓約に従って、補完される身体の部位は、今現在存在していない物でなくてはならない。

 故に、新たに設けられる部位は元々存在していなかった『尻尾』。

 ちょーっと人間辞める事になるが今更だな。

 

 名前は、十二星座のオマケとして一時期流行った蛇使い座から、採ろうと思ったが。

 本来の名のオフューカスも、神話由来の名のアスクレピオスも今一つ弱そうで、しっくり来ない。

 私の創る最後の念獣になるこの子は、かなり強力な力を持つ予定なので、なるべく相応しい名を付けてやりたい。

 

 ・・・・・蛇、蛇と言えばあれか。

 

 尻尾を咥えた蛇のモチーフ。

 

 洋の東西を問わず、古代の遺跡からみつかるため、未だその由来が不明な世界最古の無限蛇。

 

 その印からイメージを取って、『ウロボロス』。

 『蛇使い座』だから、更にその保持者、使い手を表す『ウロボロス・ホルダー』で、どうだろう。

 

 部位も『尻尾』で、蛇っぽいし。 

 

 能力は、最後まで欲しいけど必要かどうか迷っていた≪調律≫と、もはや希望的観測の塊のような発展能力≪超越≫。

 

 ≪調律≫は基本、ある特定の攻撃、というか、事変にのみ反応するカウンター防御、回避用能力で、念獣も普段は一切働かず、力を蓄え有事に備えるのが役目になる。

 

 あり得べからざる、その攻撃に名付けるなら事象改編。

 

 原作中で、希に発生していた事件で、突然ある特定の条件を満たしている人が、バタバタ死んだり。

 突然干からびて、死んだり。

 突然頭がおかしくなって、死んだり。

 突然不治の奇病にかかって、死んだり。

 訳のわからない事に否応なく巻き込まれ、訳のわからないまま死んでゆく。

 

 まさに、ハンターハンタークオリティ。

 

 理不尽この上無いこれらの現象は、強力な念能力者や念獣が起こす事もあれば、自然災害的に相手を選ばず降りかかる事もある。

 

 もちろん、普通に過ごす一般人が、これ等の事件に関わる可能性は、無視して構わないほどに小さい。

 例え念能力者だったとしても、自ら危険に飛び込むスリルジャンキーでなければ、遭遇確率は極微量だろう。

 

 つまり、無くても良いか・・・と、半分くらい考えていた。

 しかし、セーフティジャンキーな今の私からすると、めっちゃ欲しい。

 地上が目の前に迫った今は、より切実にそう思う。

 

 原作では、人間の住む五大陸の遥か外側に、暗黒大陸なる未知の魔境が有り、人類の存続が危うくなるほどの脅威が、ポコポコ存在し、たまに此方に渡って来ていた。

 

 登場人物達は、何度かそれらに遭遇し、問題を解決している。

 

 もし、主人公補正の無い私がこのまま出会えば、まず間違いなく死んでしまう。

 

 その為の、対処能力が≪調律≫だ。

 

 ≪調律≫は、理由はどうあれ発生した事象改編に対し、その改編される現実に更に介入し、私を除外させる。という、効果を持つ。

 

 つまり、事象改編は起きるが、私だけがその現象をすり抜けてしまう。

 

 

 能力の、効果や範囲を回避一択に絞ったのは、件の事象改編に込められる力の量が未知数で、もしかすると桁違いに大きいかもしれないから。

 土石流を一人では止められん、命綱で助かるのも、一人だけだ。

 

 ただ、事象改編に介入できるという事は、事象改編が起こせるという事。

 能力が成長すれば・・・いや、≪調律≫に関しては、手を広げず、このまま基本の事象改編対策を磨いて貰おう。

 その上で、何か出来る事が増やせれば良いのだし、小手先の技を増やすより、より大きな力に対処しようとする方が成長出来る気がする。

 

 気がするのは大事。

 

 ただ、“円“はともかく、防御のしようが無い念能力による情報の抜き取りや、私にとっては致命傷になる“絶“状態への強制移行も、出来るだけ早く“すり抜け“に含めておいて欲しい。

 

 

 ≪超越≫は、オマケ。

 オマケの念獣に、オマケとしてくっ付けた漫画的思考の産物。

 進化を超え、生物、生命体として、次の段階へ至るための何か。

 転生が有った訳だし、もしかすると、その先も在るかもしれん。オラ、ワクワクすっぞ。

 

 ・・・因みに、『尻尾』のデザインのモデルは、ご利益を期待して、某野菜星生まれの某主人公の、失われた尻尾を採用。 

 (祝)初モフモフ。なお、伸び縮み自在の模様(如意棒?)。

 

 

 

 では、泣いても笑っても最後の念獣作成。

 

 慎重に、“練“・・・成功。

 

 もう慣れたね。

 

 小さな小さな末っ子幼生体の発生位置は、脊椎の一番下、尻の割れ目の一番上辺り。

 

 十三番目の念獣に、兄弟達と同じだけの想いを込めて・・・“凝“。

 

 ・・・・・・二十三時間後。

 

 『尻尾(ウロボロス・ホルダー)』完成。

 

 これをもって私の最初の“発“『十三原始細胞(ゾディアック・プラスワン)』、発動完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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