朝、スズメがチュンチュンと鳴き、日差しが部屋へと当たり始める。部屋の隅の布団がモゾモゾと動きだし、2mはあろう巨体の男が起き上がった。その男は小さく欠伸をした後、布団を丁寧に畳んで襖にしまう。そして、寝間着を脱ぎ始めた。寝間着を脱いだその体はボディービルダーをも唸らせる程に鍛え抜かれた身体をしており、名のある筋肉フェチもこの筋肉にはイチコロだろう。
その男は駒王学園の制服を取り出して着替え始めた。なんと、この男この体で高校生である。そして、着替えが終わったその男はまだ幼さが残るあどけない顔で欠伸をしながら部屋を後にする。向かったのは居間だ、そこには既に2人の女性がキッチンに立っており食事の準備をしていた。
「あ、朱乃。醤油を取ってくれないかしら?」
「はい」
「ありがとう。あら? おはよう
「おはよう、お母さん」
「あら、おはよう翠光。もうすぐ朝ごはんの準備ができるわ。座ってて」
「うん、姉さんもおはよう。」
姉に言われて机の前に座った彼の名前は、
そして、朝からボリュームたっぷりのその朝ごはんを笑顔で持ってきたのは腰まであるポニーテールが特徴の翠光の姉、姫島 朱乃。そして、姉と自分用の朝ごはんを持ってきたのは彼女らの母、姫島
「さぁ、頂きましょう。」
「うん」
「「「いただきます」」」
そして、翠光はガツガツと勢いよくご飯をおかずと共にかき込んでいく。ちゃんと噛んでいるのか疑問に思う程の速度でおかずとご飯が翠光の胃の中へと消えていく。
「翠光、お代わりあるからね。」
「お代わり」
そして、10分もしない内に用意した料理達は全て翠光の腹の中に収まった。朱璃が微笑みながら皿を片付けていく。翠光も皿を一緒に持っていく。そのまま洗うのを手伝おうとしたが朱璃に止められる。
「大丈夫よ、翠光。ありがとう」
「あ、うん。」
朱璃が翠光を止めたのは、翠光の有り余る握力だと皿を洗っている最中に割ってしまうからだ。
「あら、そういえば翠光。部活の助っ人を頼まれてなかったかしら?」
「あ。」
朱乃がご飯を食べている最中に思い出して翠光にそう声をかける。
翠光の通う駒王学園は、少し前まで女子校だったため男子生徒が少なく、それで男子の部活だと部員が足りず、翠光の身体能力を頼りによく助っ人を頼まれるのだ。今日は野球部である。
時計を見ると朝練が始まるまで数分である。翠光は急いで鞄を持って玄関まで向かってドアに手を掛ける。
「行ってきます!」
「「行ってらっしゃい」」
「あー、おっぱい揉みて〜」
「「分かる」」
芝生に横になりながらそう言葉を漏らすのは兵藤一誠。つんつん頭がトレードマークの男の子。その横に坊主の松田、メガネの元浜が共に横になっていた。彼らはこの元女子学園である駒王学園に
しかし、その甲斐虚しく。彼らのところ構わずエロい会話をする、学園で堂々とエログッズを貸し借りする、覗きをするなど、本当にモテようと思ってきたのかと疑問に思うような数々の問題を起こして、2年生になる頃には学園では変態3人組と呼ばれ、悪名高くなってしまっていた。
「彼女ほし〜。」
「「分かる」」
「なんで、俺たちモテないんだろうな?」
「ああ、永遠の疑問だ。」
「Yah〇o知〇袋にも未だに回答がない、謎である。」
顔とルックスと性格のせいであろう。知恵袋も投げ出す周知の事実である。
「あー、リアス先輩のおっぱい揉みてー」
「あの胸の中に埋もれたい」
「胸の中でhshsしたい」
「朱乃先輩のおっぱいを見たい」
「あのおっぱいで高校生ってやばいよな。」
「それ言ったら、リアス先輩もヤバいだろ」
「姉さんがどうかしたのか?」
「「「へァ!?」」」
突然、音もなく現れた巨体に飛び起きる変態3人組。その巨体の正体は翠光だった。朝練のあとなのか体操服を着ており、少し汗をかいている。
「な、なんだよ翠光か。驚かせんなよな。」
「ご、ごめん。おはよう、イッセー、松田、元浜。」
変態3人組のリアクションに逆に驚いてしまう翠光。
「なぁなぁ、翠光」
「ん?」
「お前ってさ、朱乃先輩の弟なんだしさ…」
「その、朱乃先輩のおっぱいって見たことあるか?」
「!?」
突然の質問にたじろぐ翠光。その時、彼の脳内では様々な出来事がフラッシュバックする。ネグリジェという寝間着を着て胸を密着させられたり、背中を流すと称して風呂場に突撃されたり、全裸で添い寝されたりという思春期男子にとって宜しくない出来事が蘇ってくる。
翠光は咄嗟に赤くなる顔を体ごと逸らす。
「ご、ごめん。急ぎの用事があるから行ってくる。」
「あ、おい!」
そして、ウ〇イン・ボルトもびっくりな速度でその場から逃げ出した翠光。
「あの反応、絶対見てるな。」
「ああ、間違いない。あいつウブで顔に出やすいからな。」
「くぅー〜! 羨ましいぜ全くよう! あんな美人なお姉さん持っておっぱいも見たなんて!」
「言うな、虚しくなる。」
そして、血の涙を流しながら地面を叩く一誠、膝を屈する松田、倒れ伏す元浜だった。
次の日、部活の助っ人も無く普通に学園に向かっていた翠光。姉である朱乃は部活で早めに家を出てしまい1人での登校である。向かっている途中で、松田と元浜が一緒に歩いているのを見かけた。
「おはよう、松田、元浜。」
「よう! 翠光。」
「これから、コンビニに寄ろうと思ってたのだが、翠光も来るか?」
翠光はポケットの財布の存在を確かめる。そして、たまには寄り道もいいだろうと思い、元浜達の誘いに乗った。
「お? あれイッセーじゃね?」
「ああ、本当だ。ん? なんか女の子連れてないか?」
「まさか? 偶然隣辺りに並んでるだけだろ?」
「…」
翠光は一誠の隣を歩いている女性を見て違和感を感じた。人間のように見えて人間ではないような感覚を覚えたのだ。雰囲気が、彼の"父"に似ているのだ。
「よう! 翠光! 松田と元浜も!」
そして、一誠は翠光達の元にたどり着くと妙に浮ついた様子で挨拶をしてきた。そして、彼の隣には件の女の子が並んで立っていた。
「おはよう、イッセー」
「お、おい。イッセー、その子は?」
「なんで、お前と一緒にいるんだ?」
松田と元浜は震えた声でそう質問した。それもそうだろう、日頃からおっぱいやらモテないやらと嘆いていた男が急に上機嫌に女連れである。松田と元浜に嫌な予感か浮かび上がる。
「ま、まさか…」
「あ、有り得ねぇよな…?」
「ああ、この子か? 俺の"彼女"の夕麻ちゃんだ!」
「天野夕麻です!」
口を限界以上まで広げて固まる松田と元浜。それを他所に、翠光は自分も名乗ってお辞儀を返した。
「じゃ、俺たちは先に行くから!」
そう言ってそそくさと立ち去る一誠と夕麻と名乗った女の子。残された翠光は夕麻を観察する。見たところ普通の女の子に見えるが、やはり何かが違う気がする。
そして、彼らの姿が小さくなった頃に視線を松田達に戻すと彼らは何やら藁人形と釘を持ってブツブツ何かを唱えていた。
そっとしておこうと思い、自分も学園へ急いだ。その胸にひとつの疑問を持ちながら。
それはそうとして、翠光は思った。
("かのじょ"ってなんだァ?)
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