case1 猫耳の獣人の場合
「起きなさい…起きなさいってば!!」
両手で布団を引き剥がすと身体を丸めて眠る彼が現れる。布団に籠もったニオイにクラッとするのを我慢する。
「朝ごはんできてるんだから早く起きなさい!いつまで寝てるのよ、全くもう」
そう言いながら寄り添って布団を被る。背中に顔を近づけて息をする。肺を満たす空気が脳を震わせる。ピンっと尻尾が伸びるのがわかる。それを何度か繰り返していると彼の声がした。
「うん…おはよう。ご飯できてるわよ」
私が離してくれない?ああ…私が抱きしめてるから動けないんだ。
「…あと5分だけこのままで居ましょう」
そう言って私達が起きた頃にはお昼になっていた。それが彼と私が一緒に居る時のルーティン。
私達が結ばれた世界の話
case1 猫耳の獣人の場合
あたしがその感情に気が付いた時にあいつ…彼には彼にふさわしい人達が沢山周りに居た。その人達はあたしにとっても大切な人達でその人達と彼が結ばれるなら身を引こうと思った。気がついた時には手遅れなのにはなれている。
慣れている筈なのに流れる涙が止まらない。
部屋に籠り泣いた。なぜこんなにも世界はあたしに厳しいのか。人生は不平等であたしは常に敗北者の位置にいる。努力はしてきたつもりだ。
なのに全てが無駄になる。
好きな人とすら結ばれない人生。嫌だ、あたしはあいつと結ばれたい。あいつの隣に居るのはペコリーヌでもチビ助でもない。
あたしじゃダメなの?
そんな事を言える立場じゃないのは百も承知。それでもこの胸を焦がす熱が彼を求める。好きで好き過ぎて、愛してる。こんなあたしにも優しくて平等で助けてくれる。好きになるに決まっている。
でも彼は誰にでもそうなのだ。
あたしにとって彼は特別でも彼にとってあたしは特別じゃない。
その事が苦しくて、嫌で仕方がない。自分でも驚く程に黒くて泥ついた感情が渦巻く。
そうして3日程部屋から出ないで泣き続けた。身体中の水分が出尽くしたかもしれない。いい加減、部屋から出ないといけないと思いドアを開けた。
バタンとドアを背にして寝ていた彼が入ってきた。
「えっ?」
彼と目が合う。沈黙を破ったのは彼だった。たった一言のその挨拶に枯れた涙がまた溢れてくる。あたふたとする彼とあたしはただ泣くばかり。
ギュゥ
抱きしめられる。大丈夫じゃない。あんたがあたしを泣かせてる。バカ、本当にバカなんだから!
でもそのバカに甘えてるあたしはもっとバカだ。
「ねぇ…好きよ」
言わないと決めた言葉をはっきりと告げる。でもきっと伝わってない。伝わってこんなにニコニコされても困る。
「あんたの好きとあたしの好きは違うの。あたしの好きは…こういうことよ」
顔を引き寄せ唇を重ねる。目を瞑り、舌をねじ込み重ねて犯す。ああ、きっと誰もここまではしていないはずだ。
今この時だけはあたしが勝者だ。
例え最後に負けたとしてもあたしは後悔しない道を自分で選ぶ。
「愛してる…そう言ってるのよ。本当、バカね。あんたは」
細い唾液の線が私達を繋いでいる。まだハッキリと分かってない彼ともう一度、唇を重ねる。今度はただ唇を重ねて眼を合わせる。
どんな表情をしていたかはわからない。わからないけどあたしが見たモノもあたししか知らない彼だった。
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