D.T 童貞はリアルロボゲーの世界に転生しても魔法使い   作:装甲大義相州吾郎入道正宗

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年末年始が忙しいので暫し停止です。


旧トウキョウ チヨダ方面 半径30km

筑摩内部ガレージ

 

クレナイ さんから 12件 メッセージが届いています。

 

「…多くない? いや女性同士ならこれぐらい普通なのか?」

 

よくよく考えてみれば女性との文のやり取りとか前世合わせてもほとんど無かった。あったとしても業務連絡や掛け声くらいなもので、マトモに言葉を選んでキャッチボールをするのは始めての経験だ。

内容は完全にロボオタクのソレなので返事に詰まったりする事は無いが、最近は「お返事待ってます」「もう寝てしまいましたか?」「既読しましたよね」など直接会話に関係無い催促が増えている気がする…。

 

良くも悪くも自分の性別を偽る生活を続け、更にはバレないよう他者との接点を謹んできたので、ここに来て女性同士の暗黙の了解というか、普通の感覚?が解らなくなってきた。というか偶に出てくる月の物って何だろうか? ムーンレイス? サテライトシステム?

 

「御主人様。お目覚めの時間でございます」

「……悩みすぎたな」

 

溜まったメールをちょっと怯えながら処理していたら結構な時間が経過していたようで、チェイサーのコクピット前にはメイド服に身を包んだアンネが礼儀正しい所作でモーニングコールにやって来た。

別にそれぐらいなら通信で良いし、何なら必要ないと一度は断ったのだが、彼女曰く。

 

「メイドとして働く以上、主人に尽くすのは当然の義務です」

 

と譲らない。

 

チャイカと合わせて仮初めの姉妹関係を結んで貰ったので、ある意味俺ともそういったフランクな繋がりで接してくると思いきや、これには少し意外で驚いた。

 

あぁでも、かつての主人であるチャイカに「アンネお姉ちゃん?」と呼ばれたらヤバい顔つきでハァハァ言い出したので、彼女なりに自制の意味を込めて主従という一線を引いているのかもしれない。

 

他の船員に対しても男性ばかりという事で、顔はゴミを見るような侮蔑の表情をしているが男所帯の輪を乱すような真似は今のところしていない。

俺が一応の主人として厳命したのもあるが、チャイカに男女で態度を使い分ける二面性を見られたくないのが本音だろう。

 

[…おはよう]

「おはようございます。それでは朝食の方をお運び致しますので少々お待ち下さいませ」

 

バターブロンドの柔らかい色合いをしたロングヘアーのうなじを掻き上げ、インカムから指示を飛ばすアンネ。

うーん…絵になるな。

最近は定期的に頭が痛いしボーッとしてしまう時間も増えたので、こういった目の癒しは実にありがたい。…ベタだがメイド萌えなんだよね俺。D.T:Ⅱをプレイしていた時も有料DLCでいいから衣装追加が欲しいと要望を送った事もある。いやーあの頃は若かった。

 

程なくしてカラカラとコクピットへ繋がる移動通路を通るワゴンの音が大きくなってくる。

現在のチェイサーはいつもの定位置である内部ガレージで再び修理作業中なので、一々食事を届けに彼女達が甲板に出る必要は無い。

 

逆にガレージから追い出された居候のDTソンテといえば、そのままだと無用な誤解や怨みを買うので急遽製作した外付けのカーゴ…とは名ばかりの棺桶型の箱に入れて筑摩の艦橋に立て掛けてある。

これで空きスペースを確保できたのは良いが何分応急処置に過ぎず、鎖でグルグル巻きにしたので吸血鬼でも封印しているかのようなビジュアルになってしまい、やたら怖い。

艦砲も半分に減ったし、俺の筑摩は一体どこに向かってるんだ…。

 

「ヘイ、スタップ! マコトさんのご飯はナギのお仕事デスよ!」

「違うもん! マコさんのお世話はチャイカがするの!」

 

ワゴンの音が間近に聴こえてきたので頭部モニターの視界をズラすと、通路の途中で似たような背丈の2人が顔を突き合わせて言い争っている。

 

[…またか]

「で、御座いますね」

 

その場で待機していたアンネが溜息を吐きながら、それでも若い2人の喧嘩を微笑ましく見ているようだ。

先の通り、この世界では普通の男性軽視の思想を持つ彼女だが、ぶっちゃけロリコンというか性癖がペドフィリアなのでナギが無礼な態度を取ってもセーフ判定らしい。

ちなみにチャイカの方は完全に箱庭生活の純粋お嬢様なので、偏見というより男女の違いすら分かっていない節がある。

 

なので双方の《少年少女がメイド姿》でも突っ込む者がいない。

 

やったぜ。

 

「今日はマコトさんの大好物、シラスのかき揚げマフィンなんデスよ!」

 

「こっちだって、頑張って目玉焼きを10個焼いたもん!」

 

[…先に…今日の予定…を…頼む]

「承知致しました」

 

このままではいつまで経っても食事以降の行動をこなせないのでスケジュールの確認を取った。

アンネは大掛かりな組織を曲がりなりにも運営していた元側近なだけに資金管理はお手の物で、流石にいきなり貯蓄や銀行口座を触らせてはいないが現在の収支情報や借金の返済プランなど上手く組んでくれて非常に優秀な所を見せてくれている。

 

ただその彼女から見てもやはり「もっと稼がないと破産します」と忠告されたので、今は事件があった旧トウキョウ中央に直行するのではなく、オオタ区を経由して彼女の裏金金庫を目指して進んでいる。

 

この知識はゲーム時代の物なので、本当は俺が知るはずがない隠しアイテムの情報だ。現地に着いたら偶然を装って回収するつもりなのだが、近づくにつれて遠回しにルート変更を提案してくるので少し面白い。悪いがあと3箇所も頂いていきますよっと。

 

「御主人様。キチンと聞いておられますか」

[…すまない…もう一度]

「……雇って頂いてから日が浅い身ですがご忠告申し上げます。体調管理にはもう少しお気を付け下さい」

[…大丈夫だ]

 

いやいや今は普通に気が逸れてただけだし、特に問題はない。頭痛だって慣れればきっと普通に過ごせる。

 

「…今日の予定はいくらかキャンセルしておきますので、身体をお休めしますようお願いします」

[…大丈夫だ]

「いいえ。ここはメイドとして譲れません」

 

むぅ…。我慢すれば頑張れるのだが、どうにも女性に睨まれると下手に出てしまう。この辺も改善していかないとな…。

 

その後、結局2人分の朝食を何とか平らげると流石に何もしないというのは性に合わないので、こっそりドクターに作って貰ったシュミレーションモードで射撃の腕を磨く。…今回はちゃんと現実と見分けが付いているから安心だ。

 

バイザー越しの懐かしい視界にかつてを思い出しながら無心で的を狙い、トリガーを引き、武器の癖を体に染み付ける。

どうやらクロスボウに苦手意識を持っていたのは単なる食わず嫌いだったようで、慣れればライフルより扱いやすい。

 

給弾時の隙や弾数制限もスピードローダー型の矢筒があるのである程度カバー可能だし、弓と同じ機構のお陰で無駄に静音性も高い。

ただまぁ弱点があるとすれば、鏃の種類によって弾道がメチャクチャ変わるので、それに慣れないとマトモに扱えない辺りはある意味ゲーム通りで面白い。

これなら専用弾倉を追加して機関銃のように連射出来る改造も可能なので今度正式に依頼してみるとしよう。

 

……そういや最近ドクターの姿を見ないがどこで何をしてるんだ?

 

《ーーー 大将。少し良いか》

 

気になる事を考えていたら、船長から通信が入った。大事でなければ通信は切るようにアンネが指示していたので、それなりのトラブルが発生したようだ。

 

《トウキョウ方面なんだがな…ちょいと望遠カメラを回すから見てくれ》

 

バイザーを外してモニターを通常モードに切り替えると筑摩から送られてきたリアルタイム映像がコクピット内に映り出される。

 

廃棄都市No.03.旧トウキョウ

 

23区からなるかつての首都は、200年という荒廃の年月を経る事である程度の荒廃は予想していたが、曲がりなりにも最も人口密度が高い地域だっただけに一部の建造物の強度は非常に高く、ランドマークも幾つか残っていた筈なのだが…。

 

[…バリケード…いや…検問所…か]

 

トウキョウ地方をグルリと囲むように配備された目立つトラテープとポールが乱立し、一定間隔でエール式DTの代名詞【バドワイザー】が警備を行なっているようだった。

 

まだ距離が遠いのでハッキリとは視認出来ないが、全てのDTに特徴的な赤いラインが入っているので本店の手によるものだと分かる。

 

……あれ? 警備用DTに紛れてゲーム時代に見慣れた上に、つい最近仕事を一緒にした真っ赤なDTが所在なさげにウロウロしてるんだけど…。

 

東西及びモンスターが跋扈するニホン列島は、ビアガーデン以外の所有地や不当な区画管理を認めていないので、この警戒態勢はかなり強引な手段に出ているはず。

人員の数も凄まじそうだから急遽、駆り出されたのかもしれない。相方のクリムゾンもいそうだがこの場に姿は見えなかった。

 

思ったよりも切迫した状況の現場に思わず喉が鳴る。

黄組壊滅事態はゲーム時代でも発生していたのである程度楽観視していたが、よく考えれば時期が早過ぎる上に、犯人と思わしきお姉ちゃんの動機が分からない。直接会って聞くのが手っ取り早いが、何日もあそこで待ち構えているだろうか。

 

こちらの情報は黄組の断片的な記憶と逃走時の状況報告だけ。

バリケード周辺にはこの緊急封鎖で立ち往生を余儀なくされた他の歩行型艦船の姿もチラホラ見える。

 

【鈴谷】に【不知火】【セントルイス】【クリーブランド】までいる。ん、あれは…うわ【金剛】までいるじゃん! ガレージ艦船基準だと最高性能だからいつか欲しいと思ってたが…ゲームじゃないから先に買われるのも当たり前か。比叡や榛名の姉妹艦でも良いが、やっぱネームシップって特別な感じがして好きなんだよね。

いったい誰が所有してるんだろうか…。

 

甲板にやたらゴチャゴチャした装備のDTが佇んで、ポンコツデレさんの赤いDTを恫喝しているように見えるんだが、あそこで何が起こってるんだ。

 

《大将。たぶんバリケードや艦船に目が行ってる思うが、俺が言いたいのはもっと先の景色だ》

 

先…?

 

言われて映像を広角に移すと確かに、あからさまな異常が広がっていた。

 

これは確かに予想外すぎる。

 

[…街並み…そのものが…無い?]

《あぁ、メイドの話じゃ復興途中で建造物もそれなりにあったらしいが、チヨダ方面を中心に殆どが更地になってやがる》

 

自動車が通るアスファルト道路も、摩天楼のように聳える高層ビルも全て砂になってしまったかのような空虚っぷり。真っ平らに整地された建築現場のように何も存在しない砂だけの異質な空間が数キロメートルに渡って広がる。

かつて黄組の本拠点である双胴戦艦が鎮座していた場所はその面影を一切排除し、まるで古代の闘技場みたいな円形で刳り抜かれていた。

 

そして何より異質なのは、その直上。

 

晴天の空でチヨダ区だけを覆う巨大な積乱雲が王者の如く君臨している。

幾重にも渦を巻く暴風を纏い、時折発生する稲光が黒雲を迸り周囲に畏怖を撒き散らす異常気象。

局所的なタイフーンによる風の壁はぶ厚く、その中央にナニがいるのかは一見したところで何も分からない。

 

だが、この世界で俺だけはその正体を知っている。

 

だからこそ、ありえない。

【アレ】だけは絶対にありえない。

 

目の前に映る天変地異の光景を、ゲーム時代に何度も煮え湯を飲まされた極悪イベントがこんな序盤に発生する筈がないのだ。

 

《どういう理由でああなったのか俺には分からんが、とにかく近づくべきじゃねえ。…舵を切っていいな、大将》

 

いや…それはどうなんだろう?

 

一見、危険そうに見えるがアレでは無いはずだ。ーーー きっと大丈夫に違いない。

 

「ッ……そうだ、ありえないんだから。何も悩む必要は無いじゃないか」

 

再び軋む頭の痛みを我慢して考える。

 

船長からもっともな意見が出るが、ここで踵を返しても何の収入にもなり得ない。借金がキツい事情は向こうも承知済だが悪くいえばアチラは雇われの身で、俺が破産しても雇い主を変えれば済む話になってしまう。

 

しかし、俺は破産して生活が困窮する事よりも当初の目的である《機神舞踏祭》を生き抜いて、あわよくば人類の大量死を防ぎたいと思って行動している。

自分の性別以上に誰にも明かさない、話したところで理解もされない転生者の義務のような目的は良くも悪くも俺の原動力だ。

 

多少のリスクは飲み込んで行動しなければ先には進めない。そうでなければ前世でも、本来の主人公にも、そしてこの世界で俺を守って犠牲になった両親にも申し訳が立たない。

 

そのために、偶然出会ったとはいえゲーム時代で最も強力で味方になるヒロインに近づいて、一騎当千の戦力を手に入れようと会話を試みて…そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー あぁ…ようやく見つけた」

 

その時、既に何かサレていた。

チェイサー越しの会話といえど、相手の心を的確に把握するような言葉を選び続けてご機嫌を伺うなど、今になって思えば不審でしか無かっタのに。

 

だからおね……彼女が警戒するのハ当然で、一度は殺され掛けたりアクシデントはあったがソレを選択肢ミスだとか、乱数が偏ったなんてゲームみたイナ言い訳をして良好な関係を急ぎすギタ。

 

 

 

「私の、私だけの理解者を」

 

彼女…エリザベート・フォーゲルは俺の心を読んだ。

不審な態度ハ何がゲンインなのか探るタメに。

そこで何を読み取ったのか。ナニヲ知ってシマッタのか。それは分かラナい。

 

タダ一つだけ、ハッキリしているのは。

エリザベートは俺という異分子ヲ認知シタ事で必要が無かった感情を、切り捨てられた感情を、その感情だけを知ってシマッタ。

 

 

 

 

 

 

 

「愛の存在を」

 

 

 

 

 

「ぐぅゔゔ!!?」

 

突然の脳髄を焼くような痛みに呻き声を上げるマコト。

 

同時にホッパーのバイタルサインを示す計器類が異常を感知して、赤の警告表示となって緊急停止コマンドが起動した。

しかし、万が一にも異常を察知した外部の人間がコクピットに近づかないよう意図的に外部への出力を切っていたのが災いし、一人のたうち回る。

 

[沢avwp368かのゆ]

《……大将?》

 

痛みから逃れる為に暴れた際、キーボードを弾いて謎の単語が発音されてしまうがそれに構う余裕が一切無い。ただ一人、孤独に苛まれながら割れるような痛みに耐える。

 

脳を犯す大量の情報と記憶の数々。

まるで今までの半生を強制的に早回しで閲覧させられるような知識の洪水が、ただの人間であるマコトの脳内処理能力を遥かに超えて押し込まれる。

 

本来、人の記憶は時間経過で劣化して脳の記憶野を圧迫しないよう忘却のセーフティが掛けられている。しかしこれはその機能を無視した、まるで心をコピー&ペーストされるような丸写しの感覚。

 

当時の心象や忘れた筈の詳細までハッキリと再生されて感情が追いつかない。

その強制的に深層心理を書き換えるような現象に抗う術はどこにも無い。

世界最強の魔女が使う魔法に、ただ転生しただけの人間が抗うなどあり得ない。

 

 

 

「ーーー さぁ、時は来た。特等席で私達の門出を祝おう」

 

「あぁ……やっトお姉チャんの声が、ハッキリとキコエル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筑摩甲板上・ソンテ仮置き場

 

「ねぇねぇドクターさん、チャイカのお願い聞いてくれた?」

「ん? また来たであるかチミっ子。お代は先に頂いたであるから、ちゃんと仕事してるである」

 

艦橋の影からコソコソと隠れるように、筑摩内の船員で最も年の離れた二人が密談を交わしている。

 

「チャイカね、何か嫌な予感がするの。だからね少し急いで欲しいなって思って」

「ふぅむ…チェイサーの修理を優先したであるから、今すぐは流石の天才と言えど無理であるからして」

「そこを何とか…何卒お願いします!」

 

慣れない言葉遣いを使ってまで急かすチャイカを見るドクター。

いつもなら惚けて自分の意見を押し通す彼だったが、健常な親子関係がまだこの世界にあれば孫ほどに歳が離れた相手に無体を働くのも気が引けて、らしくない安請け合いをする。

 

「仕方ないであるなぁチミっ子。とりあえず動かすだけなら直ぐに出来るであるが、性能はお察しであるぞ?」

「! ありがとうドクターさん!」

 

花咲く笑顔を向けられて、ガラではないと照れるという珍しいドクターの一面。さてもう踏ん張りするかと、こっそり立て掛けてある巨大な箱に忍び込もうとして異変に気付いた。

 

「ぬぬ? 出撃警報? まだトウキョウの外縁にも達していないであるが…」

「うわっ、マコさんのDTが出てきた!」

「テスト中の【弓兵形態】で何をするつもりで……いかん!」

「きゃあ!?」

 

誂え直した白の外套に身を包み、赤黒い錆止め塗装の頭部だけを露出したチェイサーがクロスボウを片手に甲板から飛び降りる。

 

その余波で巻き上がった強風から身を呈して庇うドクターと怯えるばかりのチャイカはその姿を呆然と見つめる事しか出来ない。

ドスンと地響きを立てると無言のままトウキョウ方面へと駆け出すのはいったい何故なのか。

 

歩行型重巡洋艦【筑摩】は無言で離脱した主人を追って、渦中の場所へと歩を進める。

 

そして、

海から監視を行なっていた一隻の偵察艦も釣られるように進路を同じにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前。

旧トウキョウ湾・近海

 

人工的に拡張された海の玄関口の奥底で、息を潜めて潜伏する巨大な影と、使い捨ての潜水装備に包まれた50機のDTが小隊規模で気を伺っていた。

 

《チェリー1より、ワダツミへ定期連絡。機体状況を報告せよ》

《こちらワダツミ。本体及び牽引の装置に問題無し。……そろそろツキジでこいつもご機嫌ですよ隊長》

《ヒュー! サッサと魔女のクソをネギトロに変えてスシパーティでもやりましょうよ》

《チェリー1より、チェリー2.チェリー6。私語は慎め。そしてツキジは中央区方面に存在した海鮮販売所であり、作戦のチヨダ区には該当しない》

《マジレスありがとうございます、隊長!》

《?》

 

ドッと隊員達から笑いが起こるが意味が分からない隊長は、訝しみながらも作戦を遂行する。

 

民間軍事会社、通称《本店》において社長直属の特務部隊である彼女達に下された命令は《【雷霆】の魔女を討伐》するというシンプルかつ世界の軍事バランスを変えるような内容だった。

 

作戦前のブリーフィングでは隊員達に動揺が走ったが仕事であれば従わざるを得ないと、明らかに説明不足な事態の推移を聞き流して海上都市からニホンへと直通で赴いた。

 

《表向きの理由》は中立緩衝地帯であるニホン列島内において、突如として民間人を含めた無差別攻撃を行ったエリザベート・フォーゲルに対する報復と牽制行為である。

 

通常時は西海陣営最強の存在である彼女を庇う為、魔女会と呼ばれる組織が東海陣営の政治機関へ働き掛けを行い、責任管理問題を有耶無耶にしてきたのだが今回に限り、それがいつまで経っても届く事はなかった。

 

万全を期するなら、魔女会からの連絡を待って取引に持ち込むのが常道なのだが、東海陣営一の曲者、国家の軍事顧問も兼ねる本店の社長はこの気を逃す手は無いと首脳陣に対し進言。突然の事態に動揺していた彼女らを嘲笑う。

 

「君達〜ちょっと臆病過ぎじゃなぁい? 俺はさぁ常々言ってたよね? 【雷霆】がやらかすのは時間の問題だから備えとけって。時は金なり、タイムイズマネー! ここでやらなきゃ誰がやる、ってさ。ギャハハハハッッ!!」

 

傲岸不遜、唯我独尊の塊だが確かな才能と権力と力を持つ凶暴なピエロじみた社長に、市民から任命されただけの首脳陣に抗う術は無い。

 

「あっそれとさ。魔女達が音信不通で、手をこまねいてるのは俺の作戦だから気を使う必要は無いって話したっけ? アイツら馬鹿だから、ちょ〜とそれっぽく煽ったらもう見放す算段をしてるんだよ笑えるねぇ」

 

他者とは隔絶しすぎた実力によって味方からも危険視されていたエリザベート。しかも一年前からその不和は更に広がり、筆頭魔女の三姉妹以外からは不平不満が溜まり続けていたのだ。

そこに今時手紙でやり取りをする伝達員に偽装してスパイを送り込むなど容易いの一言だったのだろう。

 

更に一部の者は極秘裏に東海陣営と恒常的な繋がりを持ち、魔法学研究所…共同研究機関【ビアホール】で革新的技術開発を目論んでいる。

 

だからこそ今なのだ、と社長は言う。

 

「魔女達も冷静になれば【雷霆】を失うのは不味いと気付くだろうけどさ。その前にパパッとやっちゃう訳。てかもう俺の手駒送ってるし? いざとなったらこの前発掘したICBM(大陸間弾道ミサイル)使うから安心だよん」

 

環境保護が最優先される世の中において、国の中枢に関係する者が放った言葉とは思えない発言に息を飲むが、確実に成功させれば今後の世界情勢で大きく前に出れると判断されて作戦は認可される。

 

「んじゃ始めようか…久々に、人間同士の無価値で無意味な同士討ち、殺し合いってやつをさぁ! ギヒッ、ギャハハッッ!! ヒャーハッハッハッ!!!」

 

こうして《魔女狩り》と名付けられた単独のDTの撃破及びホッパーの始末は、本店直属部隊の手に委ねられた。

そのために現地の本店社員を総動員してバリケードを築き、対外的に安全を確保していると言い訳出来るようにして、機密保護を優先している。

 

散々暴れ回った前科を持つエリザベートとプロージットの組み合わせだが、それだけ活動すれば如何に十二機神のコピーであり専属のホッパーであろうと、詳細な特性や癖を見抜くのは容易い。

 

海で作戦開始を待つ彼女達はそのために厳しい訓練を施されただけでなく。専用の対雷霆用装備に加えて【超重駆動兵器(メチル)】という魔法学に拠らないとっておきの巨大兵器まで持ち出したのだ。更に万が一を考慮して牽引している装置を起動すれば正に鬼に金棒。

 

ここまでして負けるはずなど無いと隊員の多くは自信に満ち溢れて今か今かと時を待ち続ける。

 

《コマンドポストよりチェリー小隊各機。目標がチヨダ方面にて再度、飛翔を開始。大規模な天候操作を行なっている模様》

《天候…? 具体的にはなんだっての》

《コマンドポストよりチェリー2.。発言の際はコールサインを提示せよ》

《ちっ、隊長と違って愛想がない。…こちらチェリー2.、天候操作とは具体的に何だ。詳細を求む》

 

今作戦における司令部として随行中のコマンドポスト、浮遊型軽空母【エンタープライズ・ハーフ】二隻は現地で既に展開している多数の偵察部隊とのデータリンクを駆使しながらも、不可思議な現象に結論は出せないでいた。

 

《コマンドポストより、チェリー2.。現時点で詳細は不明。大規模な気圧変化を確認しているが状況が変化し続けている。確認が取れるまで待機せよ》

《なんだそりゃ…》

《チェリー1.、了解。このまま待機を続行する》

 

目標の不自然な動きに懸念を抱くが、それでも仕事は変わらないと海中で時を待つ。

 

実働部隊。チェリーNo.率いる小隊50機。

強行偵察部隊。270機に及ぶ現地所属の本店ホッパー。

警備及び封鎖部隊。トウキョウを覆う750機の外販ホッパー。

 

そして秘密兵器。旧ニホンにおいて海の神を意味するワダツミの名を冠したコードネームの巨大駆動兵器は、別命を受けて河川をゆっくり溯上していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼女達は知らない。

 

相手にするのは【雷霆】の魔女だけではなく。

 

後に【レッドキャップ】と怖れられる乱心の悪魔が、白上マコトが、この戦場にて真価を発揮する事を。

 




魔女狩り

青組ルートにおいて、エリザベートをヒロインにした場合に発生する最終イベント。
彼女を最難関と呼ぶ原因がこの戦闘パートであり、敵の支援砲撃を掻い潜りながら大量のDT部隊を倒す必要があります。
僚機としてエリザベートもプロージットで強制参戦するが、シナリオ上の都合で本気を出せないどころか打たれ弱く、撃墜されると失敗判定なので一切気が抜けません。
クリアさえ出来ればエンディング一直線なので迷わず全ての力を出し切ろう。

今作でもっと必要な物は何でしょうか。

  • 主人公の明け透けな一人称
  • 第三者からの視点
  • ヤンデレ要素
  • バトル描写
  • 展開をもっとじっくり
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