D.T 童貞はリアルロボゲーの世界に転生しても魔法使い 作:装甲大義相州吾郎入道正宗
「ーーーいいかい、少年。男性は30歳まで童貞だと魔法使いになれるんだ。40歳で大魔導士。50歳で賢者。そして生涯を童貞で貫いた者は………」
ーーー異世界に転生出来るんだ。
「……ん…トさん……マコトさん! 返事をプリーズ!」
「うお!?」
急な出撃で休めなかった分、少しでも疲労を回復させようとコクピット内でうたた寝をしていたら、特徴的すぎる口調の通信が飛んできた。この周波数は筑摩購入時のオマケであるVTOL艦載機、現在はチェイサーを現地まで空輸している【瑞雲】のパイロットからで間違いない。原型機に似た胴体に垂直離着陸用のプロペラと推進機を取り付けたなんちゃって瑞雲なので専門家に見られたら怒られそうなデザインをしているが性能は申し分ない。
そういえばこのパイロットの子。換装作業中も食事を摂らない俺に駄々を捏ねて無理やり志願したんだったか…。焦った様子で何かを伝えようとしているが、存外深い眠りだったせいで上手く物事を考えられない。
えぇとたしか岩殻亀を倒して、ポンコツデレさんに塩対応して…それから、そうだ問屋のクラリッサの好感度上げに依頼を受けたら、ゲーム時代でも重宝したBOXガチャイベントで、逃さないよう急いで飛び出したんだった。
うーん、眠気もあるけど醸造で少し酔ったかな? コクピット周りの防水パッキンが脆くなって隙間から流れ込んで来たのかもしれないとボンヤリ考えていると。
「マコトさぁーーーん!!!」
こ、鼓膜が破れそうな音量だな…。慕われてるのは分かるんだけど、たまに重いというか、迫真すぎる時があって怖い。
船員【No.0120・ナギ】
この世界において、男性クローンは将来に就く職業に最適な遺伝子調整をあらかじめ施してから産まれる。
人として名乗る苗字は持つ事を許されず、工場の識別No.を名乗るのが通例で、それはナギとて例外ではない。彼は通常個体より未熟な体格をしている通り、不適格品扱いで廃棄寸前だった所を拾ったのが出会いだ。
…船長とは逆に船員ガチャでハズレを引いただけだと思うが…それは言わぬが花だろう。キャラクター全ての情報を覚えている訳ではないので役に立つか分からなかったが、筑摩の運用には最低50人は必須。10連5回の船員募集ガチャで余剰人数は生まれないのだ……!
ちなみに、DT:Ⅱの船員ガチャで女性キャラクターはSSR以上しか輩出されない。そして我が筑摩に搭乗している船員は、確定枠で数少ない男性SSRの船長を除いて全員、男性。
……やっぱガチャって悪い文明だわ。
当時、あまりの不運さに片乳首タップ教や触媒準備法、書いたら出る理論で必死になってガチャ募集に熱狂していた頃を思い出す。あの時はまだ仲間じゃなかった船長にやたら親身になって慰められ、ようやく冷静になった俺は羞恥に悶えてうっかり生声を漏らした過去がある。その時の反応が…。
「もういい…もう一人で抱え込まなくてもいいんだ…。泣きすぎて酷え声になってるぜ」
素の声ですとは言えなかった…。
色々とサポートしてくれるし、将来はああいう歳の取り方をしたいもんだなぁ…。
「Hi! 早く通信に出てくだサイ! イエローバードが烏合の衆デス! ヤンキーゴーホーム!」
………は?
促されて周囲をモニターで確認すると、こちらを中心に編隊飛行を組む輸送機の群れ。機体を無駄に揺らしながら付かず離れずの煽り運転で空を舞っている。そこだけ見れば衝突の危険を感じるかも知れないが、こちらと同じようにワイヤーロープで懸架されたDT達が慣性の法則に従い、前後左右にぶん回されてグッタリとしているので寧ろ不憫にしか見えない。
こ、この頭の悪い行動と、全機が黄色に染められたエール式DT集団は……!
「黄組の取り巻きか!?」
ゲーム時代ではランダム増援としてプレイヤーの邪魔をし、この世界でも戦場のハイエナとして毛嫌いされている世紀末ヒャッハー集団が、どうしてこのタイミングで?
安眠用に通信類を全て切っていたせいでここに至る経緯かまるで分からない。緊急時でも瑞雲からしか受け付けない設定にしたのが完全に裏目った形だ。ゲームだと目的地までファストトラベル一発で瞬間移動出来てたから道中の危険なんて完全に忘れてたわ…。
幸い、厄介な首魁の姫さんは不在のようで無駄に金ピカしている専用DT【ソンテ】の姿は見えない。
趣味が悪いカラーリングとやたら派手な装飾てんこ盛りの噛ませ臭が芳ばしい機体なので発見は容易な筈だ。
現段階では取り巻きに煽てられて指揮を取る傀儡でホッパーの腕も未熟と、ぶっちゃけ弱いのだが、ネタバレすると最強クラスのDT【
残念ながら肝心の姫さんがそれを理解していないので、覚醒イベントをクリアしないと宝の持ち腐れ感がすごい。しかし現実となったこの世界、何がキッカケでフラグが立つか分からないので警戒は必須だ。
相手がいくら取り巻きの雑兵達とはいえ、撃墜して万が一不興を買うのも不味いし、どうするかな…。
そうしてウダウダしていると、相手さんは痺れを切らしたのか、定まらない照準のまま銃口を構え……撃ちやがった!?
「ノー! このままだとビーハイヴまっしぐらデス!」
くっ…やはりというか、ブランコ状態で放たれる弾丸は全て明後日の方向に飛んでいくので、今のところ当たる気配は無い。しかしそれもアイツラが冷静になるまでの問題だろう。改めて状況を確認すると周囲に展開するDTは全部で8機。得意な市街戦ならまだしも、障害物が一切無しのお空の上で抵抗するのは難しい。一番良いのは、このまま戦闘を避けてやり過ごす事。今回の依頼先となる現場周辺は私闘禁止区画に設定されており、流石の阿呆共でも手は出せない。もし破れば重いペナルティが課せられ、彼女らの推しである姫さん達に悪影響が及ぶからだ。
「そういや企業絡みの赤組に、魔法急進派の青組、そして野良で暴れ回る過激派の黄組。
三大ルートのどれを選んでも気に入らないってイチャモン付けられて、襲い掛かって来たよなコイツら……血に飢えた蛮族かよ」
前世では、仲間になる黄組ルートでも平気で現れて戦いを挑んで来たが、所詮はゲーム要素。邪魔程度にしか考えなかったが、今世は倒してお金が直接ドロップする筈もなく、かといってDTを売り払おうにも、ホッパーがいない機体は魔力が切れて自重を支え切れず、その場で修復不可能なくらい自壊してしまうのが殆どだ。
正しく、百害あって一利なしだ。
時間を掛けてでも無傷で通り抜けたいが、現在地の座標と目的地までの距離を測ると、既に依頼受付時間までギリギリ。この状態で迂回して煙に巻くのは悪手でしかない。賭けになるが真っ直ぐ突っ切るようナギに指示を出すしかあるまい。
[…このまま…真っ直ぐ…飛べ]
「ッ! この場所でストレートですか!?」
[…絶対に…曲がるな]
「りょ、了解デース!」
何やら驚いているようだが、寄り道して依頼自体に間に合わないのが一番困る。
タダでさえ金の掛かる遠征、路中の燃料費だって馬鹿にならないのだ。報酬を必ず頂かなくては家計が火の車どころか燃え盛るパンジャンドラムになってしまう。
俺の指示で航行速度から最高速へと移るべく微細な振動を皮切りに瑞雲のエンジンに本格的な火が入ったのを実感する。前方を塞いでいた黄組の輸送機は突然の加速に反応が遅れ、進路を明け渡すしかなかった。
よしよし、一旦前に出れば撃たれる方向は後方のみ。【障壁の魔法】を使って防御に徹すれば、こいつらの粗末な武装程度、全て防いでみせるぜ…!
「ーーーshit! お前ら相手に逃げる訳ないデス!」
ん?
「はぁぁぁ!? マコトさんがチキンとか節穴にもほどがありますヨ! お目目かっぽじるデース!」
瑞雲からの通信がやたらと剣呑としている…。そういや通信のオフ設定がそのままで外部の音が聞こえてなかった。たぶん黄組の連中は口が悪いので罵倒や罵りが飛んでいるのだろう。それを真正面から受け止めてナギが反論しているみたいだが、正直ヤンキーじみた奴は憂さを晴らしたいだけで、いくら論破しようとも黙らせるのは不可能に近い。こういう時は相手にするだけ無駄なので無視して行動するのが一番良いぞ。
[…耳を…閉じて…進め]
「!?……うぅ、でも!」
[いいから…閉じろ]
不満たらたらなナギだが、宥めすかすような長文を文字入力して話すには時間が足りない。とにかく今は現地集合に間に合わせたいので最低限の言葉で納得してもらう。
そろそろ障壁を張らないと被弾しそうだしな。
操縦桿を握り込み、発動する魔法をイメージ。自分の体中に潜んでいる魔力を通して粘土を捏ねるようなイメージで具現化していく。かつてはボタン一つで発動した動作も、リアルになった今では面倒だらけだ。
…よし、後は脳内で固まった障壁の魔力を、杖の触媒に移せば準備完了。背面の杖を取り出して…取り出し……。
「ーーーーーーそういや直前に外装を取り替えたんだっけ」
すっかり忘れてた。
オ、オオオオォォォォ……
「ーーーやっべ」
機体各部から漏れ出る、大気を振動させるような低音を感じ取って冷や汗を垂らす。
ここで誰に喋る訳でもなく、豆知識の時間だ!
この世界において人間が扱う【魔法】とは、体内に術式を描いて魔力を流す事で発動する現象の総称である。
DTを介して使用する場合でもそれは変わらず、ホッパーを起点に、魔力水によって術式の規模を拡大、それに対応した杖の触媒などを通して始めて、DT用の魔法が発動する仕組みになっている。
つまりあくまで人間がメインであり、DT自体が直接行使しているのではない。ここ、テストに出ますよ。
故にパイロットであるホッパーは古めかしく言い変えれば【魔法使い】その人であり、女性上位の世界では魔女と呼称されてきた存在だ。そこからも分かるように、この才能は女性に対して だけ 発現し、モンスターという脅威と戦う状況下におかれた世界で、男性の地位が低下するのは致し方なかったという背景がある。
え? じゃあ何で男の俺が魔法を使えるのかって?
ーーー分からない…俺は雰囲気で魔法使ってる…(震え声)
…少し脱線したが、今俺が行使した魔法は魔力水によって大きく増幅された段階で機体内に保持されており、出力先となる触媒が存在しない限り尽きる事は無い。巡り巡って何割かは還元されるが、大部分は爆発寸前の風船みたいなもので、後は時間の問題でDTの各部から魔力が吹き出すだろう。
問題なのは乗っているDTが、チェイサーである点だ。
前回の亀相手に魔法を使った時、全身から咆哮のような騒音が聞こえたのを覚えているだろうか? あれは魔法術式と金属物質の相性の悪さから引き起こされる拒絶反応みたいなもので、DTであれば大なり小なり必ず付き纏う問題点の一つだ。しかしラガー式のコイツは骨格と呼べる部分を金属パーツで構成している関係上、その影響が特に顕著で音の規模が大きい。そのため魔術師形態で装備していたように、専用の防音装甲を被せなければ煩くて仕方ない大音量を発生させてしまう。
…それを最低限の自重を保つ魔法しか対応していない剣闘士形態で放つとどうなるのか。まして発動すらせず、拒絶反応増し増しの絶叫がどれほどの規模に達するのか。
「………せ、せめてに粉々にはなりませんように…!」
世界一情けない思いで、秒読み段階に入った衝撃に備える。こんな初歩的なミスなどホッパー史上あるか無いかぐらいの失態だ。ゲームなら文字が灰色になってブザー音がする程度だったのに、どうしてこうなった…!
オオオ…オオォォォォォォォォォォォ!!!
「ッッッ!!?!」
「うるっせぇぇぇぇぇ!!」
モニターが焼き付きそうな閃光と同時に押し寄せる大音響。
まるで本来は交わる事が無かった科学と魔法の関係性に嘆きを告げるバンシーのような悲鳴に、言葉も出ないナギと、爆心地である俺は鼓膜がぶち破れそうな音圧に耐えて何とか意識を手放さずに済んだ。
クラクラする頭を抑えて機体状況を調べると、奇跡的に満載した装備の類に損傷は少なく、武器の幾つかが弾き飛ばされただけのようだ。
もしかしてお祈りが通じたか?
そして、よく考えればこれだけの衝撃を事前準備なく喰らった黄組の連中も只では済まないだろう。棚から牡丹餅ではないが、これで幾らか時間を稼げるはず。 ガハハっ勝ったな飯食って来る。
やはり自分はガチャ以外の運が良いなと自画自賛し、実はまだ手を付けていないナギの食事をスルーして携帯食のシリアルバーを齧る。サクッとした食感にほのかな甘み。味の種類も豊富で意外にこれだけ食べてれば生きていけ
瞬間。コクピットに表示されるダメージアラートの数々。それはつまり
「滅茶苦茶撃たれてんじゃねぇか!?」
何故か数を減らしている残り3機のDT達が手に持つのは杖。飛んでくるのは火球や雷球といった魔法で…あークソそうだよな、相手側にも魔術師仕様の機体はいるよな!
換装によって性能を変化させられるラガー式と異なり、エール式は設計段階で得意分野が決定されるから、この手の奴は元から防音性能が高いんだった。
「万事休すか…」
ここに至っては死ぬという最大のリスクを避けて適当な所へ降下して迎え撃つしか無いだろう。
…今回の依頼は一定数のモンスターを撃破する毎に報酬品が獲得出来るのに加え10箱分、つまり一定数以上の戦果で必ず強力な武器が入手出来る檄うまイベントとして期待していただけに、惜しい事この上ない。
せめてもの抵抗に大剣を構えて盾代わりにしようと担ぎ上げた所で、前方から超スピードで迫り来る謎の飛来物に気が付いた。空を飛ぶ魔法は魔法学側で厳重に秘匿されている為、大空を駆けるのは依然として飛行機やヘリコプターが大部分を占める。それなのに飛んで来るというのは例外中の例外としか言いようが無く、俺はそれに対して嫌な心当たりがあった。
「まさか……」
ご都合主義のようなバッチリのタイミングで現れるのは、恐らく《出待ちしていた》のだろう。
彼女との因縁を語るには時間が足りないので割愛するが、この世界に転生して一番の厄ネタが、ここぞとばかりに名乗りを上げてしまう。
「ーーー私の妹を泣かせたのは、誰だ!!」
ゲーム時代における青組筆頭、同時に世界最強の名を欲しいままにする魔女の才媛。
そして今世では、ひょんな出会いからメタ知識で好感度を上げまくった結果、姉を自称するクレイジーサイコレズに暗黒進化した残念美人。
エリザベート・フォーゲル。
本来の設定ならば、孤高のクールビューティとして恋愛攻略難易度最高峰を誇る天上の存在が、こちらを助ける為、鬼気迫る迫力を伴いながら専用DT【プロージット】で空を駆けている。
白上マコト達が目指す依頼の座標。そこに鎮座するのは神話や伝承の挿絵でしか表現されないような雄大さを感じさせる巨大な世界樹。
通称、
横幅1kmという馬鹿げた敷地面積に加えて、モンスターからの襲来を避けるため、拠点基部を樹木で支えて自然物と偽装する超巨大なツリーハウスだ。
幹の中央は各階層へのエレベーターが内蔵されており、枝毎に専門の施設を設けてデパートのような構造をしているが、その内1階層全てを貸し切ってプライベートエリア扱いをしている者達がいる。
「それで、お姉様は、件の、ホッパーを、迎えに?」
「だいぶ前から待機してたよ。はぁ、どうしてこうなっちまったのかねぇ…」
端的な質問を浴びせる無表情な少女と、それに答える眼帯の女傑は、丸いテーブルの冷めた紅茶を前にして項垂れる。
「変調は、一年前の依頼、からだった」
「あん? そういや…それぐらいの時期だったね。あの鉄面皮が難儀な病を患ったもんだよ」
彼女らが思い返すのは、マコトと出会う前のエリザベートの勇姿。
伝統ある魔女の家系に生まれ、その有り余る才能で数々の実績を積み重ねてきた天才は、人類側の勢力を二分する代表として申し分がない。しかしそれがどうだ。今では親愛と情愛の区別も付かずに一人の人間に入れ込んで熱中しているなど、表向きは対等な関係たる科学側と日夜利権や損得でしのぎを削って余裕が無い上の連中に知られたら、どうなってしまうのか。考えたくもないと女傑は寒気を覚えて首を振る。
「今から、でも、連れ戻す?」
「どうせ今回の依頼でコッチに来るんだからノンビリ待てばいいさ…って、冷めた茶を啜ってんじゃないよ、みっともない」
口寂しさからか、無言で紅茶を含む少女の手を止めて柔肌に触れる。
「ん…、分かった…」
女傑に掴まれた片手を反対側の手で覆い、確かめるようにキュッと力を込める。40cmという身長差で大人と子供のような印象を受けるが、意外にも年の差は1つしかない。
当初は少女側がコンプレックスから一方的に嫌っていたが、経験豊かな女傑はその手の扱いも心得ていたらしく、こちらは一年も掛からず深い関係になっている。
「フフッ…なんだい甘えん坊だね。考えてみれば姉貴がいない分、羽目を外せるからマイナスばかりでも無いか」
可愛らしくニギニギと控えめに指を絡める少女の仕草に微笑ましく思いながら、エリザベートが帰還するであろう時間までどうやって有意義に過ごすか考えて、とりあえずはお茶を楽しむ事にした。
「おい、そこの男。新しいのを淹れ直しな」
「承知致しました。銘柄の方は如何致し…」
「は? それぐらい予想して用意するのが給仕の役割だろうが」
「ガッ!?」
二人の女性がテーブルを囲む部屋の隅には、ビアガーデンに所属する男性スタッフが待機していたのだが、仕事を割り振られた瞬間に壁から飛び出してきた荊の縄に首を絞められる。
「はぁ…これだから機微を感じ取れない男は嫌いなんだよ。女同士なら言葉にしなくても通じ合えるってのにね、キキ?」
「でも、給仕は、男しか、見た事、ない」
「そりゃ雑事は全部男にやらせればいいからね。意思疎通が出来るからって嫌な仕事を任せるのは相手が可哀想だろ」
「そう…、だね、モーラ」
息をするような平静な態度で、少女のキキが漏らした疑問を打ち消すモーラは、その幼気な感想に加虐心を唆られてつい、力加減を誤った。
「……ありゃ、死んじまったな」
「まずい?」
「あはははっ! 冗談きついよ、たかが備品を壊した程度でお咎めなんて知れたもんさね。第一、ここはビアガーデン。魔女の私らに意見出来る奴なんて何処にもいないさ」
首を捩じ切られた男性を荊で釣り上げて放ると、部屋の外で待機していた別のスタッフに後片付けをさせる。
その男性は配属…出荷されて間もないのか、同情も哀れみも何とか呑み込んで遺体を運び出そうとしたが、魔女達がお茶会と称する空間に足を踏み入れると、思わず足が竦んでしまう。このままでは前任者のように粗相を仕出かす。そんな恐怖に打ち勝とうと決死の思いで一歩ずつ歩き、業務をこなす。それを面白い余興だと楽しむモーラに反してキキはほんの少しだけ違和感を感じたが、すぐに気持ちに蓋をして世間知らずな自分に新しい世界を教えてくれた彼女に、縋るように手を握る。
「モーラ…」
「ん? 何だい」
モーラ、モーラ、モーラ、モーラ
「私の、モーラ…」
「あははっ! 可愛いねぇ本当」
モーラ、モーラ、モーラ、モーラ、モーラ、モーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラモーラ
「この手を、離さない、でね」
チェイサー
ゲーム時代では、初期配布機体として全プレイヤーが一度は操作する初心者用のDT。プレイヤー機のデフォルトネーム。
癖のない操作性に加えて、武器の互換性が高くどんなミッションであろうと対応出来るので、一部のプレイヤー間では縛り要素やRTAで引っ張りだこの人気を誇った。特にマコトはRTA走者で癖を知り尽くしている。
異世界では、世界初の正式量産型として生産されたミリオンモデルでDTの始祖というべき名機。
エール式が登場するまでは頻繁なボトムアップと局所対応のカスタム機として改修を繰り返し、様々な派生機の礎として名を馳せたが、金属部品の老朽化が進むに連れて、魔法との親和性が著しく低下する欠点が判明した事で、新造されるDTはエール式一辺倒となり、次第に名を忘れ去られていった。
マコトは気が付いていないが、こんなロートルもいい所の機体を使用しているのは現在彼一人だけ。また整備が出来るのも船長ぐらいしか居ない為、奇跡の巡り合わせで稼動状態を保っている。
チェイサーとは、酒飲みの合間に口直しで出される飲料の事。日本ではもっぱら水が出てくるが、地域によっては度数の低い酒で風味を押し流したりする。その中には当然ビールも含まれ、様々な酒類を指す広義の言葉である事から名付けられた。
今作でもっと必要な物は何でしょうか。
-
主人公の明け透けな一人称
-
第三者からの視点
-
ヤンデレ要素
-
バトル描写
-
展開をもっとじっくり