D.T 童貞はリアルロボゲーの世界に転生しても魔法使い   作:装甲大義相州吾郎入道正宗

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中級ミッション 遅滞防衛作戦
革新的試作兵器【パックルガン】


クレナイ さんより 一件 メッセージが届いています。

 

耳に入ってきたのは軽い電子音。とある理由でチェイサー内で待機していた俺はメールが届いたのを確認してビックリする。

既に連絡先を交換し合った仲とはいえ、お姉ちゃん以外の女の子から通信を貰うのは初めてなので緊張してしまう。

どうやら掃討作戦以降も旧ニホン列島で研修を続ける事になったらしく、また会う機会があればよろしくお願いしますとの事らしい。それと今は昼休憩なので簡易掲示板で話しませんかというお誘いも含まれていた。

 

(うーん…あんまり好感度を稼ぐとフラグ管理がややこしくなるから避けたいが、既読スルーってのは心にクるらしいからな…まぁ一回くらいなら誤差だな誤差)

 

キーボードを叩いて了承の意思を伝えるとクレナイもモニター前だったらしく、すぐさま反応が帰ってきた。

 

クレナイ:こんにちわ!

マコト:こん

クレナイ:急なお話持ちかけてごめんなさい。迷惑じゃ無かったですか?

マコト:いいやちょうど仕事が受けられなくて暇だったしな

クレナイ:? 体調でも崩されたんですか

マコト:DTがほぼ大破して修理中

クレナイ:その件はそのすみません

マコト:そっちに非はないから

クレナイ:でも私が目を離さなければ被害は減らせたはずです

マコト:当事者が大丈夫といってるので大丈夫。気にしない。はい終わり

クレナイ:でも

 

その後も謝罪やら補填したいだの申し出てくれたが、流石に責任感を持ちすぎだと諌めて強引に話を打ち切って気を紛らわせる。…決してこれ以上掘り返されると放火の罪をパンジャンドラムに着せた罪悪感に心が耐えられないという訳では無い。…決して。

 

クレナイ:そういえばこの前の板挟みは大丈夫です?

マコト:板?

クレナイ:えっと作戦終わりの駐機場でうちの課長と雷霆の魔女さんがチェイサーの前に居た件です

マコト:………まじか

クレナイ:もしかして気が付いてなかったり

マコト:あー所用があって少し離れてたからその時か

クレナイ:え!? DTから降りる時があるんですか!

マコト:いや風呂とか散髪とか、普通に乗り降りはするよ。姿はまぁ事情があって見せたくないけど

クレナイ:へー意外です

 

白上マコトとして発見されるのは大問題だが、一般人に変装して外出する事は偶にある。この世界じゃ特別な理由が無い限り、男性は去勢を済ませなければ社会に出れないという恐ろしい取り決めが存在するので当初は怯えて必死に隠していた。

しかしどうやら長く社会的常識として去勢が浸透した結果、男性器を確かめる検査はほぼ形骸化して問題でも起こして注目されない限りは大丈夫のようだ。

逆に名前が売れてから男性という存在が明るみに出れば、まず間違いなく有無を確認されてチョン切られるので絶対に正体は明かさないが…。

 

「そういや、だいぶ髪も伸びてきたな…」

 

外出といえば、散髪までは自分で思い通りカット出来ず放置気味なんだが、もみあげや眉辺りの産毛まで長くなると不快感を覚えるタイプなので定期的に信頼の置けるホッパーの一人にお願いして整えて貰っている。

人畜無害な性格かつ顔をマスクで隠しても詮索してこない気遣いの持ち主には感謝の念が絶えないが、どうしてか髪を切る長さを控える傾向があるせいで俺の頭がロン毛みたいになっているのだけは文句が言いたい。いくら五分刈り程度で良いと注意しても笑顔ではぐらかされるので絶対面白がってるだろアイツ…。

 

その後もクレナイと当たり障りのないメッセージのやり取りをしていると、程なくしてあちらの昼休憩が終わったらしく、また話しましょうと締め括られた。

 

 

そんな社交辞令でも童貞は気があると勘違いするのでやめて欲しい。

 

 

とは言えず、こちらも楽しみしていると社会人の反応を返してモニターから離れる。

 

「こっちもそろそろ昼飯を済ませるか」

 

お金がないので贅沢は禁物。コクピットに常備してある真空パウチされた特売品のゼリーを取り出して、無感動に啜りながら栄養だけを摂取する。

因みにだが、この世界の食事は基本的に調整食と呼ばれるゼリーの塊や錠剤タイプの食べ物ばかりが好まれる。女性社会なので映えや繊細な見た目を気にした食事が多いと思いきや、健康や美容の観点からと、料理という行為そのものが前時代の搾取される女性の立場を連想させるとして手料理の文化が廃れたらしい。

 

転生した身としては早くこの文化に慣れなければと思うが、やはり日本人はオカズを頬張って米食ってなんぼの種族だからなぁ…。今は亡き両親も同意見だったらしく、ブーアに攫われる前は毎日一汁三菜を欠かさず用意してくれたものだ。

 

「……もっと早くここがD.T:Ⅱの世界だと気付けば助けられたかもしれないな…」

 

元の木阿弥、後の祭り、万事が塞翁が馬の如し。

こんなクソッタレの世界で両親から愛を注がれて育つという得がたい幸運を、前世の記憶から当たり前の権利だと思い込んでいた過去の自分を殴りたくなる。空になったパウチをゴミ箱に捨てて、さてどうするかと思案したところで、途中まで進めていた掃討作戦における収支報告が目に入ってしまう。

 

あれだけ苦労した油蝮の討伐。一般ホッパーの優に10倍の戦果を叩き出した俺の懐事情は……。

 

 

 

 

 

 

 

大赤字である。

 

いや勝手に付いて来た爺さんの口調を真似た訳じゃないが、本当に赤字まっしぐらで懐が寂しいってレベルじゃない。

 

ゲーム時代では豪華報酬目白押しのBOXガチャイベント。こちらでは油蝮掃討作戦として受注した仕事は、アクシデント続きで思うような効率狩りが出来ず、目標の半分を超えた程度で終わってしまったと言える。

それだけならまだ報酬の目減り程度で済む話だが、問題なのはチェイサーの損害状況だ。

 

・右腕:大破

・左肩:基部まで届く損傷有

・装備:全てロスト

・全体:何か諸々の反応が鈍い

 

そんなズタボロもいい所の、スクラップ寸前まで追い詰められた我が愛機は激怒する船長の指示で強制的なオーバーホールへ突入。今は旧トウキョウ地方を目指した海岸線沿いで一時停泊しながら修理の真っ最中だ。

連日のように運送屋から送られてくる修理部品とその伝票を見ていると、吐き気を覚えるレベルで金額が上乗せされていく。

一つ一つは既存兵器と比べて安価に違いないが、チェイサーは型遅れの年代物なので取り寄せるにどうしても値段が張ってしまう。

 

こんな事なら、より安価なエール式に乗り換えた方がお得に感じるが、世の中はそんなに甘くなかった。

確かにDTは導入コストが低いのが売りの一つなのだがこれは原価に限った話であり、製造元と提携した企業しか安値で購入する事は出来ない。

個人がDTを所有する場合にはライセンス料、DT特許使用権、年単位の損害保険、固定資産税など。形にならない料金が大量に発生するからだ。

よっぽど資産に余裕が無ければ俺のように、DT関連の業務を一手に仲介する問屋から借金をこさえて半奴隷生活を強いられてしまう。

 

そんな中での実質的な出撃不可。つまり稼ぎ口が無いにも関わらず、修理費その他諸々によって資金が枯渇し掛かっている訳だ。音声変換機能? そんなお金どこにもありませんよ…。

RTAならリセット前提でゴリ押しながら先に進めたのになぁと思うが嘆いても仕方がない。次に受ける仕事を吟味しておかなければ…。

 

「おーい大将、テストはどうなってる! 返事くらいしろ!」

「我輩の発明が素晴らしすぎて感動に打ち震えている可能性が無きにしも非ずなのであるな」

「あん? 爺さんよ、あんなトンチキな装備を勝手に作って放逐されないだけでもありがたいと思えよ」

 

そんな中、通信から聴こえてきたのは船長とあの時の爺さん…今はドクターを自称する老研究者が喧嘩腰で会話している音声だ。

真面目な船長とフラフラとした性格のドクターは正反対の気質で気が合わないらしいが、根っこが技術者という共通点から致命的な仲までは発展していない。

…男同士で男を取り合うとか、俺は本当に百合ゲーに転生したのだろうか…?

いやそもそも百合とは…恋愛とは…

 

………少し現実逃避してしまったが、現在の俺は筑摩の甲板上で修理中のチェイサーを使った新装備のテストを行なう為に待機している最中だった。

 

膝立ちで構える愛機の左手にはDTという先端技術の集大成が持つには相応しくない、古びた機構の武器が携えられている。

 

リボルバーバリスタ・ディフェンス

 

ドクターが寄せ集めの廃品から作り上げた自動装填機能付きのクロスボウで何故か6発装填の回転弾倉が採用された、見るからに色物とバグパイプの音色がする代物だが、何故こんな物を作ったのかは心当たりがある。

 

ラガー式の弱点に、通常の銃火器の扱いが不得手というのがある。

これは旧式故にOS及び照準システムが未成熟で、エール式に標準搭載されている頭部センサーと武器を連動させる自動ロックオン機能が無い事に由来する。

だったらアップデートすれば良いだろ、な話になるがラガー式は既にサポート対象外になっているのでメーカーに依頼したとしても改造を施しようが無いのだ。

 

しかし、ドクターはソフト面に強い研究者で年寄りのせいか現役時代のチェイサーについても精通しており、独自の照準システムと連動する武器を作り上げてしまう。

 

…普通にライフルにしてくれと頼んだが、それでは浪漫が無いと却下された。誰が雇い主か分からせたいが現状、システム関連を弄れるのはドクターだけなので泣く泣く要求を飲み、しかし性能を直接見ないと納得出来ないと船長に突っ込まれて今に至る訳だ。

 

「見るである! モンスター素材を応用した弦に鉄杭を装填した勇姿! 初速こそクロスボウ機構であるが、その分反動が少ない上、鏃後部に推進ロケットを追加して長距離射撃をも可能にした素晴らしき科学の結晶! お望みとあれば鏃を特殊合金化したダインスレイ…」

「それで問題点の照準はどうなってる」

「逸るな逸るな、である。マコマコよ、コクピット内に追加したバイザーを装着してモードに切り替えるである」

[…了解]

 

さてはて、どうなる事やら。

色物なのは間違いないが、武器自体はゲーム時代に存在していたので不具合は無いはず。というか、あのパンジャンドラムと同系列に位置するシリーズ作るとか関係者どころか張本人じゃねえか。

船員ガチャは初期に加入するキャラクターしか覚えてないから油断してたわ…。有能っぽいけどSSRか? でもデメリットとして紅茶をやたら要求してきたり、勝手に機体を弄くり回すので差し引きでSRくらいかもしれない。

そんなRTAの弊害で知識が偏っている事を自覚しながらバイザーを頭に取り付けて起動スイッチを押す。

すると。

 

 

「………おぉ!? こ、これはまさか…」

 

思わず声が出る。

そこに映ったのはかつて目に穴が空くほど見慣れたUIの数々。これD.T:Ⅱのゲーム画面とまったく同じだ!

照準のグリット表示や、画面隅に並んだ現在の耐久値、武器の残弾数、選択されている武器の名前。レーダーの索敵範囲など、今まではコクピット内の様々な箇所に設置されていた機器を見渡しながら操縦していたが、この一画面に無理やり全てを盛り込んだ雑多なUIこそゲーム時代に慣れ親しんだ画面そのものだ。

こんなサプライズがあるとは…ドクターってまさか有能なのでは?

 

「マコマコが感嘆の声を上げている気がするのであるな。えっへん」

「なぁにがえっへんだ。外付けの照準システムの為にバイザーを付けたら他が見えねえってんで、全部を画面にぶち込みやがってよ。んなもん見難いに決まってんだろが……ん? 監視員、何が起こった」

 

ヤバい。懐かしすぎてテストが楽しみになってきた。かつての楽しかった記憶が蘇り、思い出に浸ってしまう。

 

「モンスターの群れ? いやスタンピードだと!? 何処から来る!」

「ほう…筑摩の前方、1800m付近であるか。種類は苔猪? 山岳地帯が生息地域の筈であるが何故に海岸線まで?」

「確かに妙だな……おい、レーダー以外に目視でも確認しろ!」

 

うーん、早く撃ってみたい。

弾も安価に手作りできるらしいし、ちょっとだけ試し撃ちしよう。そうしよう。

 

「む? 先頭にDTの反応であるか。これはもしやモンスターに追われているでは?」

「多分な…相手にゃ悪いが、今のこっちは片腕のチェイサーしか戦力にならねえ。助けには入れねえな」

「筑摩の艦砲を使えば良いのである」

「それは爺さんがこの武器作るのにバラしやがっただろうが!!」

「…てへ☆」

 

よおし目標は適当に合わせて…おっ、仮想敵の表示まで出るのか、実にチュートリアルっぽくて良いな。そこに狙いを定めて……よし、命中。

 

「お、おい…大将?」

「マジであるか……この遠距離から当てた?」

 

いいね。弾道の反りも最低限で実に癖が無い、流石チュートリアルだ。今のでコツは掴んだから連続で狙ってみるか。

 

「観測員! 向こうはどうなってやがる!?」

「は? 2発目以降は全てヘッドショットとか…まだ撃つつもりであるか!?」

 

やっべ楽しくなってきた。

使うつもりが無かった予備の鏃も持ち出して仮想敵の反応全てを消すつもりでどんどん射撃する。今までが近接縛りだっただけに妙にテンションが上がってしまう。

 

「なんだ…大将は何がしたいってんだ? 仕事でもねえ無報酬の人助けだぞ」

「あるとすれば…逃げるDTに縁があるとか? 吾輩そこまでは知らんであるが」

「こっちにも分からん…だが無意味にぶっ放してる訳じゃないはずだ」

「というか、規模が小さいとはいえスタンピードを一人で殲滅する勢いなのである…」

 

む? もう撃ち尽くしたのか。

仕方ない。今日はもうおしまいにしよう。

 

[…これで…終わりだ]

「なに? まだモンスターは残って…」

「み、見るである! 群れが反転して撤退していくのである」

「……そうか! 苔猪は群れのボスを先頭に他を従える生態だからそいつを狙ってた訳か」

 

え、なに何の話?

 

「なぁるほど、まずは数を減らして動きを観察していたであるか。しかも逃げるDTに被害が及ばないよう排除しながら。そしてボスを守ろうとして動く流れを見定めてからの必中必死とは…さすマコなのである!」

 

???

 

あぁ、仮想敵のシチュエーションの話をしてるのか。ドクターはともかく船長まで乗り気とは…実は仲が良いな?

なら、後は任せて今回のテスト結果を踏まえた新武器について大いに語り合って貰おう。

 

[…後は…任せた]

 

内部ガレージへと帰還すべく身を起こすとシュバルツから拝借した外套が風でなびいて頭部モニターを覆う。これ重りでも付けないと邪魔でしょうがないな…。片腕で大きく振るいながら外套を退けて今日の仕事は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げて…! 一緒に逃げるのじゃ、アンネ!」

「……チャイカ…様」

 

そこは焦熱地獄だった。

 

元々経年劣化で崩壊しかけた廃棄都市だったが、今は全てが真っ赤に燃え盛る炎で囲まれた紅蓮の世界へと変貌している。

 

コンクリートやアスファルトは焼き爛れて異臭を放ち、鉄骨や信号機などの鋼材は見るも無残に変形し出来損ないの飴細工のように首を垂れて原型を留めない。

視界だけでもその惨状だというのに、少しでも耳を澄ませば入ってくる音は人の呻きと絶望の大合唱。死にたくない。助けてくれ。根源的な死への恐怖に支配された人の叫びが其処彼処から響いてくるのだ。

 

「妾のソンテならまだ動く…! だから、だからアンネだけでも一緒に…ぐすっ…動けぇぇ!」

 

そんな地獄の中で一機のDTだけが傷ついた姿でありながら五体満足の状態で動いている。

金色のカラーリングに装甲の至る所から飛び出る棘や鋭角のツノ。これが平時であれば威風堂々とした王の姿に見えなくもないソレはボロボロになりながらも目の前の瓦礫に押し潰されかけたDTを救おうとしていた。

 

「無駄で御座いますよ…。奇跡的にあの悪魔から難を逃れたようですが、チャイカ様のソンテだけでは瓦礫を押し返しても、砕けてわたくしに降り掛かるだけでしょう」

「だからって見捨てられないのじゃ! 妾…チャイカにはアンネが必要なの! だから諦めないで! サーヤが死んで…もうこれ以上は…!」

「……こんな時まで貴方は…」

 

二人ともう一人を始めとした集団が襲われたのは、ほんの一時間前の出来事だった。

彼女達は廃棄都市No.03旧トウキョウを根城にする山賊集団…白上マコトが表すならば黄組と呼ぶ団体だ。

遺伝子操作によって顔立ちの平均水準が引き上げられた世界であっても、尚も可愛さと美しさを兼ね備えた絶世の美を持つ少女のチャイカを旗印に、多数のファンが集まって出来た巨大なファンクラブのような存在である。

 

側近でありマネージャーのサーヤと、ボディガードのアンネ。実質的にこの二人によって運営される黄組は西にも東にも組しないレジスタンスのような風体をしているが、その実はチャイカという商材を利用した営利目的の集まりで末端のファンはともかく、側近二人は彼女を慕って側に付いている訳では無い。

 

だからもし、この団体が解散するような事態に陥ったならば金だけ持ち去って自分だけでも逃げる手筈を整えていた。

 

(実際はこんな目に合うとは…これが天罰というものでしょうか)

 

アンネは出血の酷さから朦朧とする意識の中で、自分達の真意に気付かず己を助けようとする仮初めの主人にほんの少しだけ…人生で初めて心からの謝罪を口にしようとした。

 

どうせ助からない。だから貴方だけでも逃げてください。

 

そう口にするつもりだった。

 

だが、次の瞬間。アンネが見たのはソンテが黄金の機体色以上に輝く姿と全身から生えるように現れた光の御柱による威光だ。

 

(こ…れは…)

 

柱はソンテが持ち上げようとしていた瓦礫の下から再度生成されると、その全てを取り零す事なく支え切る。

 

「やった…! チャイカ頑張ったよアンネ!」

 

幼い少女は集中し過ぎて何が起こったのか理解していないらしい。先程からアイドルの属性として付け足した妾口調が剥がれているのがその証拠だ。対して目の前で起こった奇跡のような現象に、失いかけていた意識が体の震えと共に沸き立つのを覚えるアンネ。

 

「チャイカ様…貴方様は本当に…」

 

祖国の王家伝来で伝わる蔵から強奪同然で持ち出した詳細不明のDT。それがこんな力を秘めているなど誰が思おうか。彼女の血筋といい、何か運命的な繋がりに生きる為の気力が僅かに燃える。

しかし失血による眠気は彼女を蝕み、強制的に意識を閉ざしてしまう。

突然返事が途絶えた事により焦るチャイカだが、まだ存命である事を機体のバイタルチェックで確認し、自壊し掛けたDTからコクピット部だけを丁寧に剥ぎ取って両手で抱き抱える。

 

「もう少し…もう少しだけ辛抱してねアンネ!」

 

脱兎の如き速度で燃える都市から離脱を図る。道すがらには自分を慕って集まってくれたファン達が助命を乞うように呻き声を上げているが、それは決してチャイカへの言葉ではなかった。死の間際になって正気に戻ったからではなく、この地獄を生み出した相手に命乞いをしているのだ。

 

黒煙と炎柱が照らす遥か上空で宙に座す一機のDT。藍色のソレは輝く羽根を振り翳し、魔法の雨を降らせて破壊を齎らす。

 

この行為に何の意味があるのか。

 

それを知る人物はまだこの世に二人しか存在しない。故にこの凶行は空に浮かぶDTのホッパーに対して、東西関わらず強い懸念を抱かせるに等しい行為なのだが、当の本人はまるで気にした様子は無い。

ただ絶対的な強さで君臨し、不必要な邪魔者をただの私欲で排除しているだけなのだから。

 

その閉じた瞳は逃げ去る黄金の機体を認識しているが、とあるイベントが発生しなければただの暗愚だと切り捨てて、廃棄都市を完全に破壊し尽くす事に集中する。

 

選択肢を狭め、愛しい相手から自分を求めてくれるようになるまで、彼女の破壊は止まらない。

 

そして、運良く逃げ切ったチャイカは行く宛もなく彷徨いながら早くアンネに治療を施したいと直感のままに西へと進み、そこで運命的な出会いを果たす。

 

途中でモンスターの群れに襲われ、逃げるままに走っていた所に遠距離からの狙撃が命を救う。見惚れるような射撃精度とソンテに近づく苔猪を的確に排除する隙のなさ。やがてその全てを撤退に追い込んだ救いの主は、歩行型艦船の甲板からこちらを一目確認すると、はためく外套を押さえつけるように手を振ってこちらに来いとジェスチャーをしてくれる。

 

「助かった…助かるよアンネ! あの人はきっと良い人だよ!」

 

唐突な絶望に叩き込まれて消沈していた所に、この救いの手にどれだけ感謝を述べれば良いのだろうか。

 

チャイカは幼い心に芽生えた絶大な信頼を、まだ見ぬ相手に抱くのだった。




シュバルツ

魔女会に三人在籍する筆頭魔女モーラが駆るカスタムDT。
西海陣営のハイエンドモデルである【ヴァイツェン】をベースに改造が施され、魔法触媒も兼ねたハルバードを武器としている。
高い基本性能に斬撃打撃魔法と隙が無い構成だか、固定武装が一切無い上、予備の武器もない為ハルバードを失うと大幅に戦力が低下してしまう。
姉妹機にキキの乗る【ヴァイス】が存在。

今作でもっと必要な物は何でしょうか。

  • 主人公の明け透けな一人称
  • 第三者からの視点
  • ヤンデレ要素
  • バトル描写
  • 展開をもっとじっくり
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