アイツを初めて見かけたのは高校の入学式の日だった。私は真新しい制服に袖を通してご機嫌だった。
そんな浮かれ気分で道を歩いていると、ミニチュアダックスだろうか、道路に飛び出して来た。向こうからは車が来ていて間に合わないと思った瞬間、身を呈して犬を庇う人影が…。同じ総武高の制服、そしてかなりの格好良さ、あの真剣な目…。言い尽くされた表現だが、全身に電気が走るような感覚…。一目惚れだった。呆然としているとパトカーやら救急車が来て辺りは騒然としていた。普通なら人身事故を目撃してトラウマモノなんだろうが、犬を助けたイケメンの方が気になって仕方なかった。私ってこんなに恋愛脳だったんだと痛感した。
新入生が事故に遭うゴタゴタはあったが入学式も終わった。アイツも新入生だったんだとその時に知った。
通常の授業が始まり、犬を助けたイケメンは無事だったんだろうかと心配になり担任に聞いてみると、ケガをしてしばらくは休みとのこと。次に会えるとはいつなんだろと心トキメかせて一ヶ月たった。担任に聞いたら、もう学校に来ているとのこと。名前は教えてもらえなかったが、休み時間に片っ端から一年のクラスを見てまわった。…いない。おかしい、同じ一年生だったはずなのに…。同じ中学出身が居るクラスには聞いてみたけどいなかった。
幻のイケメンを探していたら、夏休みも終わり文化祭になっていた。と、友達居ないとかじゃないからな!ただ、幻のイケメン探してたら、時間が早く過ぎただけだからな!
文化祭の最中、少し休憩したかったので、人気のない場所を探していたら、幻のイケメンを発見した。やっと見つけた彼は、あの時とは違い、目が…死んでいるというか腐っていた。手には文庫本らしきモノがあった。
あれっ…。
「それ、私も読んでる」
思わず声が出てしまった。
「あん?」
けだるそうにこちらに向いた彼。やっぱり格好いい。
「あ、ごめん。私もそのラノベ読んでるから」
「あ、そ」
素っ気ない返事をして、またラノベに目をやってしまった。
「あの…」
「何か用か?」
若干、威嚇されてるみたい。
「少し話…しない?」
「今、文化祭の最中だぞ。こんなところに居ていいのかよ」
なんだろう、人を寄せ付けない猫みたい。
「少し疲れちゃって休憩したかったんだ」
「そっか。じゃあ、俺は…」
立ち上がり、移動しようとしてる。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ」
「俺、邪魔だろ?」
「いや、話したいって言ったじゃん!」
「俺と話をしても面白くないぞ」
「いいからいいから」
少し強引だったが、引き止めることに成功した。
「んで、俺と何を話したいんだ?」
「えっとさ、ここで何してたの?」
「わかんだろ、本読んでた」
「それはわかるんだけど、文化祭なのになんでってこと」
「友達もいねぇし、クラスに居てもやることねぇし。帰れるなら帰りたい」
「友達居ないって…」
「入学式の日に事故に遭ってな。遅れてクラスに入っても馴染めなくてな。まぁ、元々ボッチだったから気にはしてないし、一人の方が気楽まである」
「なにそれ」
「いいんだよ、それで」
少し自嘲気味に笑う彼は、やっぱり格好良かった。
彼を見ていたら、携帯がなってクラスメイトから呼び出された。
「ごめん、私行かなきゃ」
「おう、早く行け」
ここは、勇気を出して。
「ねぇ。と、友達になってよ」
「俺とか?」
「他に誰が居るんだよ」
「やめとけ。俺と居てもつまらんぞ」
「それは私が決める」
「わかったよ。友達(仮)な」
「なにそれ。まぁ、それでいいよ」
「私、神谷奈緒。よろしく」
「比企谷八幡だ」
彼と友達(仮)になった。
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好評なら続きます、たぶん。