「比企谷、何があったの?」
「何でもねぇよ」
視線を私から外して下を向いた。明らかに何かあったんだ。
「ねぇ、何があったの?…比企谷のそんな顔見たくない」
「…」
比企谷は何も言ってくれない。
「依頼…なのか?」
「っ!」
やっぱり。
「私は比企谷の味方でいるって決めた」
「それは、お前が勝手に言ってるだけだろ」
私を突き放そうとしているんだろうか。でも、これくらいじゃ私も引き下がらない。
「そうだ。でも、比企谷の中に少しでも、私に味方でいてほしいって思うところがあるなら、話してくれないか?」
「はぁ~」
比企谷は、ため息をつき頭を掻く。
「俺の負けだ、話すよ」
「うん、聞かせてくれ」
ひとつ呼吸をして話をはじめた。
「プライバシーがあるから、名前は伏せるぞ。とある男子から依頼があった。告白したいけどフラれたくないからサポートしてくれとな」
「何それ?ふざけてるの?」
思わず言ってしまった。
「まぁ、聞けよ。告白を100%成功させるのは無理だ。だから、修学旅行の間は二人の間が少しでも縮まるように動いた」
なるほど。それで、あんな違和感があるグループ行動だったんだ。となると、奉仕部の比企谷と由比ヶ浜さん、それと戸塚君と川崎さん?は除いて、告白するのはチャラそうなヤツで、される方は眼鏡っ娘か。
「そんなもん上手くいワケもなく、ソイツが告白する直前に俺が割り込んで嘘の告白してフラれた訳だ」
意味わかんない…。なんで、比企谷がそんな辛い想いをしなきゃいけないの?それに、比企谷が他の女の子に告白なんて…。胸が苦しい。
それと…。
「そんなことして奉仕部の二人には何か言わなかったの?」
「『貴方のやり方、嫌いだわ』と『人の気持ち考えてよ』だとさ」
比企谷は空を見上げていた。
「二人は何かしたの?」
「雪ノ下はクラスが違うし、由比ヶ浜はそこまで頭が回らないからな」
二人もきっと比企谷のことを…。だから、そんなことを言ったんだ。それにしても、何もしてないのに、なんでそんなことが言えたんだろう。
「なんでこんな依頼受けたの?そもそも、人の恋愛に首突っ込んだら、ロクなことにならないくらいわかるでしょ?」
「民主主義で決まったんだよ。そもそも、俺に拒否権はねぇよ」
やりたくもない依頼を受けて、比企谷ひとりが泥をかぶって…。奉仕部の二人には突き放すようなことを言われて…。そんなのヒドイよ、ヒド過ぎる。
「神谷、お前泣いて…」
私は比企谷に抱きついた。
「お、おい…」
「比企谷、お疲れ様。頑張ったね」
「お、俺は誉められるようなことはしてねぇよ」
「そんなことない。少なくとも私はそう思う」
「ありがとな。少し報われた気がするよ」
やっと比企谷の優しい声が聞けた。私が好きな声だ。
もう我慢…出来ないや…。
「…好き」
「え?」
「私、比企谷のことが…好き…」