姫菜と優美子にニヨニヨ顔で見送られて奉仕部へ向かう。
おっ、あれか。シールが貼ってあるなぁ。『室名札』、『教室札』、『クラス札』、『学級表札』などというらしい。ありがとう、Google先生。
扉の前に立ち深呼吸してからノックをする。中から綺麗な声で『どうぞ』と返事がしたので入室する。
「失礼します」
「こんにちは、神谷さん」
雪ノ下さん…。
「や、やっはろー」
独特な挨拶だなぁ、由比ヶ浜さん。
「悪いな、急に呼び出して」
美少女二人に男一人とか…。このラノベ主人公め!!
「まったくだよ。今からアイス食べに行く算段してたのに」
「ごめんなさい、私が呼んでほしいと言ったから」
雪ノ下さんに、頭を下げられてしまった。
「い、いや、冗談なんで」
「お詫びといっては何だけど、紅茶はいかがかしら?」
「え?いいの?」
「ええ」
優雅な所作で紅茶を淹れている。
「何か?」
ガン見してたのに気づかれた。
「い、いやぁ、美少女っていうのは雪ノ下さんみたいな娘のことをいうんだろうなぁって」
「そう?貴女も充分、美少女だと思うのだけど?どうぞ」
「どうも」
あ、美味しい。
「ウチの雪乃さんの紅茶も美味しいけど、こっちの雪乃さんのも美味しいな」
「雪乃さん?」
「ああ、ウチの事務所にも紅茶好きの『相原雪乃』っているんだよ」
「そう、話が合いそうね」
「そうだね」
そんな他愛もない導入。咳払いをして雪ノ下さんが話し出す。
「神谷さん、先日F組で大立ち回りをしたそうね」
「言うほどのことはしてないよ」
「では、何故やったのかしら?」
何故って…。
「そんなの、友達が悪く言われてたら、嫌だろ。だからだよ」
「それに、依頼の内容を知っているみたいな言動だったらしいのだけど…」
雪ノ下さんが比企谷を睨む。
「すまん」
「ち、違うんだよ!私が比企谷から無理矢理聞いたんたよ!」
「それでも口外するのはどうなのかしら」
「あんな顔した比企谷見たら、無理矢理にでも聞き出したかったんだよ」
「神谷さんは、いつ聞いたのかしら?」
「件の嘘告白の後かな?竹林を一人で歩いていた比企谷を偶然見つけて」
「何故、F組であのようなことを?」
「比企谷から陰口言われてるって聞いたから。これも結構強引に聞いた」
「そう」
淡々と聞いてくるから怖いなぁ。でも、負けたらダメだ。でも、比企谷とこの二人が険悪になるのもダメ…。難しいなぁ。
「なんで二人は、比企谷が陰口言われてるのに、何もしなかったの?」
「いいんだ、神谷。俺が…」
「比企谷は黙って」
「はい…」
比企谷が下向いちゃった。
「うわ、ごめん。そういうつもりじゃないんだ」
「おう」
「比企谷がやったやり方は誉められたやり方じゃないのはわかる。でもさ、依頼の為にやったことなのに、他の部員がその後のフォローしないのはおかしいよね?」
「そ、それは、比企谷君がそういったことに強いから…」
「ヒッキーなら我慢出来ると思って…」
ある意味、信頼しているんだろうけど…。
「比企谷だって人間だよ。前は耐えられたとしても、今は耐えられないかもしれない。それに、部活の仲間が悪く言われてるのに何とも思わないの?」
「…」
「…」
黙っちゃったよ。
「私も事を大きくして、悪いと思ってる。でもさ、仲間なら…、友達なら助けないとさ」
わかってくれたかな?