陽乃の襲撃を撃退したのは時子様ではなく、別の人バージョンです。35話後半から36話の頭のあたりまでです。
年末のライブに向けて、レッスンもハードになってきた。ソロはだいぶ仕上がってきたな。
「な~お~」
「おう、凛か。お疲れ」
「『彩加君』って誰?」
「あ、卯月から聞いたのか?比企谷の友達で…」
「私の卯月がぁ~」
は?
「スマホ見てニヤニヤしてると思ったら…」
あ~、そういうことね。
「卯月は凛のモノじゃないだろ」
「でも、凄い良い顔して笑ってるから」
まぁ、あの感じだと付き合い始めるのも時間の問題だな。
「私にもいい人現れないかなぁ。奈緒はいいよね、比企谷がいるから」
「なっ!べ、別に比企谷とは…」
「へ~」
「に、ニヤニヤすなぁ!!」
「私の八幡がどうかした?」
加蓮まで来たよ。
「加蓮のモンじゃないだろ!」
「そうだよ。八幡は私のだよ」
「違う!比企谷は私のだ!!…はっ!」
「へ~」
「ふ~ん」
やってしまった…。
はぁ。凛と加蓮に散々からかわれた。
疲れた。ドーナツ屋でも寄ろうかな。
ドーナツを2つとカフェオレ。
…うん、美味しい。疲れた時は甘いモノだよね。
「ひゃっはろ~。貴女が神谷奈緒ちゃんかな?」
誰?
「そうですけど、どちら様ですか?」
「私は雪乃ちゃんの姉で、雪ノ下陽乃。よろしくね」
「は、はぁ、どうも…」
この人が比企谷が言ってた、厄介な雪ノ下姉か。
「何かご用意ですか?」
「うん、単刀直入に言うね。比企谷君から離れて」
は?何を言ってるんだ、この人は?
「言ってる意味がよくわからないんですけど…」
「そのままの意味だよ」
「お断りします。比企谷は私の友達だし、私は比企谷の味方でいるって約束したんで」
「そういうところが嫌だし邪魔なのよ。比企谷君には雪乃ちゃんの彼氏になってもらうから」
「そんなの比企谷が了承する訳ないじゃないですか」
「普通ならそうだね。神谷ちゃんも千葉県民だから知ってるよね?私は『雪ノ下』なんだよ」
そうか、この人が圧力をかければ…。
「何やってるんですか、貴女は」
後ろから声がした。
「比企谷!」
「あ、比企谷君、ひゃっはろ~」
これは、タイミング的にどうなんだ?良いのか?悪いのか?
「高校生脅して、どうしようっていうんですか?」
「脅してないよ、お願いしただけ」
いや、脅しです。
「俺の友達を…、大事な人を俺から引き剥がそうとして、何が目的なんですか」
だ、大事な人…。私が比企谷の…。
「大丈夫だよ。比企谷君には雪乃ちゃんが居るじゃない」
「確かに雪ノ下も大事な仲間です」
「じゃあ、神谷ちゃんはいらないよね」
「そうじゃないですよ。神谷と雪ノ下は全然違うじゃないですか」
「大丈夫。雪乃ちゃんには、素直になるように言っておくからさ」
「そういう問題じゃないです」
「それとも、私に逆らうのかな?」
その場の空気が固まった。何、この人…。
「くっ…」
比企谷でも論破出来ないの?どうしたら…。
「雪ノ下さ〜ん」
ん?この声は…。
「ちひろさん!」
「奈緒ちゃん、お疲れさまです」
「お、お疲れさまです。どうしてここに?」
「未央ちゃんを送った帰りです」
「そうなんですね」
あれ?雪ノ下さんが席を立とうとしてるけど…。
「それよりも…」
雪ノ下さんがビクッてしたけど。
「お久しぶりね、雪ノ下さん」
「あはは、お、お久しぶりです、千川さん」
「ちひろさん、知り合いなんですか?」
「大学時代に交流で少し」
以外な接点だな。
「じゃ、じゃあ、私はこれで…」
何故、帰ろうとしてるんだ?
「雪ノ下さん、うちの事務所の娘と何を話していたのかしら?」
「え、いや、なんでもないんですよ」
明らかに焦ってるな。
「じゃあ、私とOHANASHIしましょうか」
「え、いや、大丈夫です」
「そう言わずに」
ちひろさんが、雪ノ下さんの襟を掴んだ。
「え、いや、離してください。力強っ!」
「じゃあ、奈緒ちゃん。また事務所で」
「は、はい…」
「いや〜!ごめんなさい!許して〜!」
ちひろさんは、文字通り雪ノ下さんを引きずっていった。
「な、なんだったんだ?」
比企谷が呆然としている。
「あの人は、千川ちひろさん。うちの事務所の事務員兼プロデューサーのアシスタント」
「へ〜、346は事務員さんまで美人なんだな。でも、雪ノ下さん引きずってくとか怖ぇな」
ちひろさんのこと美人て言った?まぁ、確かに美人だけど…。
「美人だけど、一部のプロデューサーからは『鬼・悪魔・ちひろ』と影で呼ばれてる」
「そんなに怖い事務員なんだ…。しかも、雪ノ下さんがあんなに怖がるなんて、大学で何があったんだ?」
「さぁ」
次に事務所に行った時に聞いてみよう。
…数日後、事務所でちひろさんに聞いてみたが、はぐらかされて教えてもらえなかった。
事務所に行った翌日に、雪ノ下さん(妹)がクラスを訪ねてきた。
「姉さんから聞いたわ。迷惑をかけたみたいね、ごめんなさい」
「私は大丈夫だったけど、お姉さんは大丈夫?」
「大丈夫だと思うけど、貴女に手を出すなと言われたわ。何があったのかはわからないけど。あと『千川さん怖い』って…」
トラウマにならなきゃいいけど。
「まぁ、お姉さんが余計な口出しをしようとして、うちの事務員さんに怒られたと思って」
「はぁ、まったく姉さんは…」
これが比企谷がいう雪ノ下さんの頭痛いポーズか。
「正々堂々とくるなら、大丈夫だよ。私も受けて立つから」
「ええ、そのつもりよ」