神谷奈緒は総武高生   作:おたふみ

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7話

『アイドルになる』とは言っても、いきなりデビュー出来る訳ではない。しばらくは、レッスンの毎日が待っている。

 

学年が上がる少し前に、私・両親・新しい担任・進路指導の先生・生徒指導の先生で面談をした。

前代未聞のことなので、先生達は狼狽していた。すぐにデビューして学校を休みがちになるとかはないこと、成績を落とさないようにすること、公にしないことなどを話し合った。

 

 

「まぁ、いきなり『アイドルになりました』って言われたら混乱するわな」

 

モシャモシャと菓子パンを頬張りながら、比企谷が答えた。2年になってから最初の昼飯時。

 

「それもだけどさ、比企谷と同じクラスになれなかったのが残念だよ」

 

「ふっ、俺は神谷と同じクラスにならなくて良かったと思ってる」

 

え?私のこと嫌いなの?

 

「安眠を邪魔されないからな」

 

「そっちかよ!!」

 

「まぁ、あれだ、アイドル候補が同じクラスに居たら、ドキドキして眠れん」

 

「そ、そっか」

 

「放課後とか休みはレッスンなのか?」

 

「まぁ、そうだな。比企谷と本屋から行ったり出来ないなぁ」

 

「…そっか」

 

ちょっとからかってみよう。

 

「私とデート出来なくて、残念なのかな?」

 

「ち、違ぇよ」

 

ちょっと慌てた?少しは残念に思ってくれてるのかな?

 

「そういえば、神谷は国語の課題やったか?」

 

「『高校生活を振り返って』だっけ?半分ぐらい書いてある。締めはアイドルにスカウトされたことかな」

 

「すげえな。俺、書くことねぇんだけど」

 

「いやいや、入学式の日に事故にあったなんて、盛りだくさんだろ!」

 

「それ以外はなんもねぇからな」

 

「じゃあ、私とデートしたこと書けば?」

 

「ばっ、あ、あれは…」

 

そんなことを言っていると予鈴が鳴った。

 

「ヤバッ!戻らないと」

 

「またな、神谷!」

 

「比企谷!間違っても『リア充爆発しろ』とか書くなよ」

 

「わかってるよ」

 

と、話をした数日後。

 

「神谷、お前のせいだ」

 

「何がだよ」

 

昼休み、ぐったりしながら比企谷が言ってきた。

 

「お前がフラグ立てるから…」

 

「まさか、本当に書いたのか?」

 

「若干アレンジはしたが…」

 

なんで書くかなぁ。

 

「んで、国語は平塚先生だよな?呼び出されたとか?」

 

「それだけじゃない。変な部活に強制入部させられた」

 

何その少年漫画みたいな展開。

 

「んで、何部なんだ?隣人部?」

 

「違ぇよ。奉仕部だよ」

 

なんか、エロい。

 

「いかがわしい部活なのか?」

 

「そんな部活、先生が強制入部させるかよ。簡単に言うと人助けだよ。なんてったかな『飢えた人に魚を与えるのではなく釣り方を教える』だっけな?」

 

「面倒くさそうだな」

 

「出来れば行きたくない。でも行かないと、平塚先生のファーストブリットが…」

 

え?平塚先生も『こちら側』なの?

 

「でも、依頼さえなければ読書出来るしな」

 

「じゃあ、がんばんなよ」

 

「いや、がんばりたくない。働きたくない。夢は専業主夫」

 

「なんだよ、それ。機会があったら遊びに行くからさ」

 

「来なくていいよ」

 

そのうち行ってやる!

 

 


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