283プロ短編集   作:Garbage

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3週目ストレイライト全員引けなかったせいで盛大に遅刻


Happy Birthday!(to Asahi)

 

 

 

 

 

「あさひちゃん、お誕生日おめでと〜!」

 

 愛依ちゃんがそう言ってグラスを掲げる。私の誕生日なのになんでそんなに嬉しそうなんだろう。

 

「あんた、また自分の誕生日忘れてたでしょ? いい加減覚えなさいよねそれくらい」

「そっすか? でも冬優子ちゃんと愛依ちゃんが覚えてるなら問題ないっす」

「アハハ~、やっぱりあさひちゃんはいくつになってもあさひちゃんだね~」

 

 呆れたようにため息をつく冬優子ちゃんと顔を真っ赤にしながらカラカラと笑う愛依ちゃん。妙に二人のテンションが高いような気がするのだけどいったい何があったのだろうか。そんなことを思っていると、私は思わず驚いてしまった。

 

「冬優子ちゃん、愛依ちゃん! 何飲んでるんすか! ダメっすよ!」

 

 私の指差した先に置いてあったのは栓の開いたスパークリングワイン。紛れもないアルコール。日本の法律だと未成年はお酒を飲んじゃいけないから、私はもちろん19歳の冬優子ちゃんと18歳の愛依ちゃんは飲んじゃいけないはずなのに。

 

「あんたこそ何言ってんのよ。今日はあんたの20歳の誕生日じゃない」

 

 えっ。

 

「そうだよ~、だからうちらもこうやってお酒で盛り上がってんじゃん!」

 

 えっ、えっ。事態が飲み込めない私がその場で立ち上がると、視界が妙に高い。私、こんなに背高かったっけ。こんなにスタイル良かったっけ。

 

「それにしてもストレイライトができてもう6年も経つんだね~、マジ実感ないわ~」

「ちょっと、女の子の憧れナンバーワンのカリスマモデルが何ババくさいこと言ってんのよ」

「アハハ~、そういう冬優子ちゃんこそ、若手実力派女優じゃ~ん」

「ま、ふゆの実力はこんなものよ。やっと芸能界がふゆに気がついた、的な? ってさっきから何黙り込んでるのよあさひ。天才ミュージシャンさんがぼーっとしてちゃ様にならないでしょ」

 

 冬優子ちゃんが若手実力派女優? 愛依ちゃんがカリスマモデル? 私が天才ミュージシャン? もはや何がなんだかわからなくなってきた。確かにストレイライトはソロの仕事も増えているけれど、二人の話を聞いている限りではストレイライトよりもソロの仕事の方を重視している気がしてならなかった。

 

「ふ、冬優子ちゃん」

「なに」

「ストレイライトは? 私たち三人のアイドルとしての活動は……」

「……あさひ、アイドルにはどうしても務められる期限ってものがあるのよ。あんたも成人して、みんな大人になった。若いアイドルもどんどん出てきてる。だから、ふゆたちも身を引く覚悟をしなきゃなんないのよ」

 

 な、何言ってるんすか冬優子ちゃん。ストレイライトはカリスマ的アイドルユニットで、あくなき高いパフォーマンスでファンを魅了する。若いアイドルが出てきたからって変に変わる必要なんてない。諦めない、絶対。何故なら私たちはストレイライトなのだから。なのに、どうして?

 

「あさひちゃん!?」

「あさひ!?」

 

 目の前が真っ暗になった。そこからのことは覚えていない。そうして起き上がった私は真っ暗な部屋の中、壁にかけてあるカレンダーに目をやった。忘れないように、と早めに変えておいたカレンダーには今年の1月の日程が並んでいる。もしかして、これは夢? これが私の初夢?

 

 

 

 

 

 

 

 

「冬優子ちゃん……愛依ちゃん……」

 

 今日は事務所で打ち合わせがあり、そこで冬優子ちゃん愛依ちゃんと会う。事務所に行けば、二人に会える。居ても立っても居られなくなった私は朝食も摂らずに着替えだけ済ませて事務所に向かった。嫌な夢を見て少し寝坊してしまったこともあって、事務所に着くともう二人は集まっていた。

 

「あさひ! 今何時だと思ってんのよ!」

「まあまあ冬優子ちゃん……遅れたとしても10分くらいだし、そうめくじら立てなくても……」

 

 事務所にいたのは、紛れもなく私の知っている冬優子ちゃんと愛依ちゃんだった。いつものように私を叱る冬優子ちゃんと、それを宥める愛依ちゃん。そんな二人を見て、私の中にはじわじわと込み上げるものがあった。

 

「あ、あさひちゃん!?」

「……ちょっと、どうしたのよ突然泣き出して……」

 

 えっ、私……今泣いてる? 私は無意識のうちにソファに座っている冬優子ちゃんと愛依ちゃんに抱き着いていた。今ここに、私の大好きな冬優子ちゃんと愛依ちゃんがいる。夢ではない現実。そんな現実が私はただひたすら嬉しかった。

 

「なるほど、初夢であさひちゃんが20歳になったらストレイライトが解散する夢を見た、と」

「あんたなんでよりによって初夢でそんなもの見るのよ」

 

 恐らく今まで生きてきた中で一番泣いたんじゃないか、と思えるくらい泣いた私は目の周りを真っ赤にし、冬優子ちゃんと愛依ちゃんの間に収まる形でソファに座っていた。そして落ち着いた私は今までの経緯を二人に話した。やっぱりと言ってはなんだけど、冬優子ちゃんには呆れられ、愛依ちゃんには気まずそうに笑われた。

 

「さすがに見る夢までは選べないっす……」

「好きな夢見られたらマジで快眠だもんね~」

「まあ、あんたが成人して落ち着くのならふゆにとっては願ったり叶ったりね」

「どういうことっすか?」

「だってあんたがまともになればふゆの悩みの種が減るもの。手がかからないってだけでこれほど嬉しいことはないわね!」

 

 冬優子ちゃんに色々と迷惑をかけていることに関しては自覚がないわけじゃない。でも改まって本人の口から私のことが負担になっていると言われるとさすがにショックを受ける。やっぱり私がいることは冬優子ちゃんは嫌なのかな。なんて思っているとそんな私の思っていることが見え見えだったのか、冬優子ちゃんがピン、と私のおでこを指で弾いて来た。

 

「いたっ!」

「でも……あんたが20歳になったところで落ち着いている姿が全く想像できないのよね、これが」

「わかる~! あさひちゃんは大人になって、結婚して、ママになって、おばあちゃんになっても今のあさひちゃんのまんまって感じだよね!」

 

 それは褒められているのかけなされているのか。でも、悪い気がしない。

 

「うわ、こんなノリの高齢者とか想像するだけでゾッとする……」

「おばあちゃんになってもダンスし続けるくらい元気でいたいっすね!」

「ほら、本人がこのノリだから始末が付かないのよ……だからこそ」

 

 右隣から冬優子ちゃんの手が私の頭に伸びてくる。そして無造作に頭をぐしゃぐしゃっとしてくる。

 

「あさひにはふゆがそばにいてあげなきゃいけないのよ。あんたが嫌がったって、離れてなんてやんないから」

「冬優子ちゃん……」

「べ、別に変な意味はないからね! あいつを一人にすると何しでかすかわからないから!」

「冬優子ちゃんツンデレ~!」

「うっさいわね!」

 

 去年もそうだったけど、やっぱり冬優子ちゃん愛依ちゃんと過ごす誕生日は楽しいっす。そして、願わくばあの夢の通りにはならないように。いつまでもみんなで一緒にいられますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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