283プロ短編集   作:Garbage

13 / 16
Happy Birthday!(To Chiyoko&Kogane)

 

 

 

 

「智代子、うち283プロに入って智代子と仲間になって、改めて気づいたばい」

 

 そう言って恋鐘ちゃんは私を真剣な眼差しで見つめてくる。うん、わかるよ恋鐘ちゃん。私も同じ気持ちだよ。

 

「今までは全く意識してなかったけど、年末年始に誕生日がくる人たちはみんなこんな気持ちやったんやね……」

「そうだね、私があと10日間早く産まれてれば……」

 

 私の誕生日から10日前はちょうどバレンタインデー。もし私が10日早く産まれていればますますチョコアイドルとしての名に箔がついたのになぁ。まあこればっかりは仕方ないことなんだけど。

 

「智代子は悪くなか。これも全部大人が悪いんよ!」

 

 そう言って私の手をぎゅっ、と握ってくる恋鐘ちゃん。私以上に熱意を持ってくれるのはいいことだけど、恋鐘ちゃんが今度の誕生日で大人の仲間入りするってことは触れないでおこう。

 

「智代子、うちはやるばい。うちらのような思いを今後みんなにさせないために!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うん、まあ気持ちはわかるんだけど」

 

 私は恋鐘ちゃん、そして決行に合わせてたまたまその場にいた愛依ちゃんを抱きこんでプロデューサーさんのところに突撃した。鼻息荒くプロデューサーさんに突っかかる私と恋鐘ちゃんに対して愛依ちゃんはまるで保護者のように一歩下がったところでアハハ、と気まずそうに笑っていた。

 

「プロデューサーさんもわかるんですよね? だったら私たちの願いを聞いてください!」

「そうばい! うちと智代子の誕生日パーティーを別々でやってほしいんよ!」

 

 私と恋鐘ちゃんが訴えたいことはひとつだけ。私の誕生日が2月24日で、恋鐘ちゃんの誕生日が1日後の2月25日なのです。日本各地からアイドルを目指して集まったこの事務所に誕生日が1日違いの女の子が揃うってかなりの確率だと思いませんか? なのにプロデューサーさんは時間や参加メンバースケジュールの関係で私と恋鐘ちゃんの誕生日パーティーをひとまとめにして開こうとしてるのです。

 誕生日パーティーを他と一緒にされるのは、例えばクリスマスに誕生日を迎える子が誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを一緒くたにされちゃう、みたいなものなんだよ!?

 

「でもみんな仕事で忙しくてだな……」

「それはわかっとると!」

「それを分かった上でお願いします!」

 

 そんな奇跡的なことが起きているからこそ、一まとめにしてほしくはないんです。もちろん恋鐘ちゃんと一緒に誕生日を祝い合えるのはいいことなんだけど、やはり人間に生まれたからには誕生日という特別な日をしっかり祝いたいものなのです。

 

「プロデューサー、うちお兄ちゃんもお姉ちゃんも弟も妹もいるから恋鐘ちゃんと智代子ちゃんの気持ちも分からなくはないんだよね……」

 

 チームうさちよかめの誼で誘った愛依ちゃんからダメ押しの助け舟が! オタクに優しいギャルが存在するなら、アイドルに優しいギャルがいてもいいよね! って結華ちゃんが力説してたのが今になって身に染みる。

 

「そうか、確かに誕生日はその人にとって特別なものだし、アイドルにとっては尚更だ。それぞれのファンもちゃんと喜びたいだろうしな。わかった、じゃあ智代子と恋鐘の誕生日は別個で開けるように調整するよ」

「やったばーい!」

 

 やったー、という掛け声と共に私と恋鐘ちゃんはハイタッチを交わす。

 

「ただ、元々1回でやる予定だったものを急遽2回にするわけだからな、他のアイドルのみんなが全員揃わないかもしれない、ってことは留意しておいてくれ」

「わかっとると!」

「そればっかりは仕方ないよね……」

 

 できれば放クラのみんなには出て欲しいけど、もし出れなかったとしても私たちの絆はそうは揺らがない。私は間近に迫った誕生日を思い浮かべては涎を垂らす。

 

「しかし、智代子がここまで真剣に訴えてくるとは思わなかったよ」

「そりゃそうですよ! だって分けて開けば2日連続で甘いケーキが……」

「えっ」

「あっ」

 

 すぐに私は自分が口を滑らせてしまったことを理解する。プロデューサーさんのやれやれ、と言った目が急に疑念に包まれたものに変わった。

 

「もしかして智代子……お前単にケーキを2日連続で食べたいだけとか」

「そ、そ、そ、そんなことありませんよ!!」

「智代子ちゃんバレバレじゃ〜ん……」

「誕生日を契機にもっとアイドルとしての自覚を持って欲しいものだな。とりあえず夏葉に今のやりとりを報告しておこう」

 

 ひゃー! 夏葉ちゃんに告げ口するのだけはやめてー! 後生ですからー!

 

「出た、智代子ちゃんの武士言葉! 生で聞けてマジ嬉しいし!……あれ、恋鐘ちゃん?」

「ま、ま、全く智代子はなってないばい! 食欲に負けるのはアイドルとしてどうかとうちは思う!」

「……で、本音は?」

「誕生日パーティーを個別にやれば、プロデューサーとうちが二人っきりになれる時間が増える……なんてことは思ってないから! 本当ばい、うちの目を見て!」

「アハハ〜! みんな素直だね〜」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。