「ひ、雛菜ちゃん、お誕生日おめでとう! これからも、ずっと友達でいようね!」
今日は雛菜の誕生日。アイドルになってから初めて迎えるしあわせな日。そんな日に一番にプレゼントをくれたのは小糸ちゃん。いつも真面目で頑張り屋な小糸ちゃんからの贈り物は雛菜のラッキーカラー、黄色の化粧ポーチだった。
「あは~、ありがとね小糸ちゃん」
「ど、どうかな……アイドルになってお化粧とかいっぱいしなきゃいけないから自分としてはいいプレゼントだと思うんだけど……」
「うーん……小糸ちゃんっぽいチョイスだな、って思った~」
「そ、それはどういう意味で!?」
もちろんいい意味でだよ~、って言いたかったけど雛菜がどっちの意味で言っているのかわからないっぽい小糸ちゃんを見てると、面白いからやっぱり言わないことにした。小糸ちゃんって本当にかわいいよね~。
「はい、雛菜」
お昼休みになって、透先輩に会いに行った雛菜を出迎えたのは円香先輩だった。雛菜透先輩に会いたかったのに。
「浅倉は職員室。提出期限守らな過ぎて先生から説教されてる」
「透先輩っぽい~」
でも透先輩のそういうところも雛菜はすきかな~。そんなことを思っていたら唐突に、忘れていたことをたった今思い出したかのように円香先輩がプレゼントの包みを出してきた。円香先輩から貰えるって思ってなかったから雛菜びっくりしちゃった~。
「なにこれ~」
「万年筆」
「あは~、円香先輩おじさんっぽい~」
「は?」
円香先輩の目つきがいつにも増して鋭くなるけど、雛菜はこれでも感謝している方なんだよ。
「あ、雛菜じゃん」
「やは~、透先輩ー!」
円香先輩と話していると、職員室でこってり絞られた様子の透先輩が戻ってきた。
「浅倉、今日だけど」
「ふふっ、言わなくてもわかるよ樋口。雛菜の誕生日。そうだよね」
「さすが透先輩~!」
「ちゃーんと、いいプレゼント用意してるから。えっと……」
そう言って透先輩は自分の席にある通学鞄の中に手を突っ込む。1分くらい鞄の中に手を突っ込んでごそごそ、ってやっていた透先輩はそのまま戻ってくる。
「ふふっ、ごめん。プレゼントないわ」
「え~!」
「浅倉、そのネタ気に入ってるからって無闇に使わない」
「冗談だってば。ほら、あるよプレゼント」
「やは~!!」
透先輩からのプレゼントはスイーツ食べ放題の回数券〜! 円香先輩はもっと形に残るものにしなさい、ってぼやいてたけど、透先輩からのプレゼントならなんだって雛菜はしあわせだよ。
「……でも、雛菜完璧にしあわせじゃないかも〜」
「そ、それに関してはすまないと思ってる」
次の日になって雛菜はプロデューサーに詰め寄る。プロデューサーは昨日の雛菜の誕生日に仕事があるからって言ってその日のうちにプレゼントをくれなかったんだ。雛菜的には家族やノクチルのみんな、事務所のアイドルの人たち、そしてだいすきなプロデューサーに祝ってもらってはじめてしあわせな誕生日になったのに。
「でも〜、忘れてたわけじゃないなら雛菜は気にしないよ?」
プロデューサーから渡された資料には雛菜の新しいお仕事の内容が書いてあった。大好きなおもちゃメーカーの新商品のCMキャラクターのお仕事は雛菜だけじゃなくて多くの女の子の憧れ。
「ねえ、プロデューサー」
「……な、なんだ?」
「なんでもな〜い」
何かあるなら言ってくれ、と焦るプロデューサーだけど、やっぱり言わない。これが雛菜なりのお返しにしてお礼だから。プロデューサー、プロデューサーと会えて雛菜とってもしあわせだよ。