芹沢あさひを讃えよ
和泉愛依を讃えよ
ストレイライトを讃えよ
「ただいま〜」
12月4日、今日はふゆの誕生日。年齢を一つ重ねる、ってことはそれだけアイドルを名乗れる期間が短くなるってことになるわけだからふゆ的には決して喜ばしいことじゃないんだけれど、その誕生日をファンに祝ってもらえるってのはまたアイドルとして何事にも変え難い喜びだったりする。
でも、ファンとかプロデューサーとかあさひや愛依とかに祝ってもらうのはもちろん嬉しいんだけど、誕生日を祝ってもらえて一番嬉しいのはやっぱり家族なのよね。こういう日くらい、誰の邪魔もなく家族水入らずで過ごす。普段あのやかましい二人のお守りをしてるんだから、平穏無事に過ごす日ぐらいあってもいいんじゃないかしら。
「すると、冬優子ちゃんがこう言ったんすよ〜! あんたはここでふゆと死ぬのよ!って!」
「アハハ〜、あのセリフめっちゃ気合入ってたよね〜!」
「なんで! あんたたちが!! ここにいるのよ!!!」
いずれ国民的アイドルになるふゆが帰ってきたのに何の出迎えもなく、それでいて妙に居間が騒がしいと思ったら……でもまさかあさひと愛依が実家にまで上がり込んでくるのは予想外。
「あ、冬優子ちゃんおかえりっすー!」
ふゆが帰ってきたのを見てあさひはその名前の通り、太陽のような笑顔を見せる。側から見ればあさひは紛れもない美少女であることは認めざるを得ないんだけど、内情を知ってるふゆからしてみれば時折その笑顔は天使ではなく悪魔の微笑みに見える。
「はいただいま……じゃなくて、こっちの質問に答えなさい! な・ん・で・こ・こ・にっ!」
「いや〜、今日冬優子ちゃんの誕生日じゃん?」
まあまあ、と両手を出しながら愛依が立ち上がる。あさひが暴走しがちな時にふゆと一緒にストッパーになってくれることもある愛依だけど、この子は基本的放任主義。むしろ悪意なく善意であさひを焚き付けることもあるから余計にタチが悪い。
「誕生日ね」
「冬優子ちゃんはストレイライトのリーダーじゃん?」
「そうね」
「だったらリーダーの誕生日を祝いたい、って思うのは普通じゃない?」
「いやそのりくつはおかしい、てかだったら外でやりなさいよ! なんでそのためだけに茨城まで来てるのよ!」
「前に愛依ちゃんが冬優子ちゃんの実家があり得ないくらい遠いって言ってたっす! だからどのくらい遠いか気になったから来ちゃったっす!」
ああ、あさひの悪い癖が出た、とふゆは天を仰ぐ。てかふゆの実家が遠いなんて情報どこで仕入れてきたのよ。まあ大方あのバカプロデューサーが口を滑らせたんだろうけど……
「ごめんね、去年の夏に島に合宿に行った時にうちが喋っちゃって……」
【悲報】黛冬優子さん、仲間に個人情報を売られる……みたいなスレッドをネットの掲示板に立てたくなったわよ。まあそれに関してはふゆにも落ち度はある。
まだノクチルが283プロに所属する前、ふゆたちストレイライトがまだ283プロで一番の新参だった時に事務所所属のアイドル総出で離島に行ったことがある。その時他のアイドルは事務所に集合したり寮に前乗りしたりしている中、ふゆだけは実家から船着場まで直で行ってそこで合流することになった。そこでふゆだけがいないことを気にした他のアイドルがなんでふゆがいないのかをプロデューサーや愛依に聞いたみたいで、その中には当然気になったことには何にでも興味を抱くあさひがいた。
「でもそのお詫びとしちゃなんだけどさ、うちらでご馳走用意してきたから! ほら、チキンのパーティーバレル! みんなで食べよ?」
「……先にお風呂にするから食べてていいわよ」
ただでは転ばない、愛依のこういう抜け目ないところにうちのパパやママは騙されちゃったのね、と思っちゃう。まあそれで手を引くふゆもふゆなんだけど。
*
「冬優子ちゃんのパジャマフリフリしてて可愛いっす〜」
「ザ・冬優子ちゃんって感じのパジャマだよね〜」
「なんであんたたちしれっと泊まることになってるのよ!!」
「こんな夜遅くに未成年を外に出すのは良くないっすよ冬優子ちゃん」
「だからたまに正論かますんじゃないわよ!!」
許可なくふゆの家に泊まるならともかく、あさひと愛依の親御さんやプロデューサーには外泊の許可は貰ってあるみたい。完全に根回しが済んでいるのならふゆにはもう手の打ちようがない。
「というかあんたゲストのくせにふゆよりケーキもチキンも食べてたでしょ!?」
「チキン美味しかったっす! 愛依ちゃんありがとっす!」
「どういたしまして〜」
結局今年の誕生日は平穏無事に終わることはなかった。パパとママはあさひと愛依のふゆとはまた違うタイプの可愛さにすっかりやられてメロメロになっちゃったみたい。まあふゆの仲間である二人のことを知ってもらえたのはふゆとして、ストレイライトとしてはプラスに働くんだけど。
「で、あんたたち明日は? ふゆはオフだけど」
「うちは仕事はないけど学校あるんだよね〜、ま始発乗れればなんとかなるっしょ」
「わたしはお昼からドラマの撮影っす」
……なによ、何もないのはふゆだけじゃない。あさひは昼からとはいえ仕事があるし、愛依に至っては平日だから学校がある。二人とも自分の都合があるのに、ふゆの誕生日のためにわざわざ事務所から遠い茨城まで来たっていうの?
「はぁあああ〜……」
「どうしたんすか冬優子ちゃん? またあの時のモンスターみたいなため息ついてるっす」
「呆れてんのよ、あんたたちのバカさ具合に。ふゆのために自分たちがリスクなんて背負っちゃって」
「リスク? んなもの冬優子ちゃんのためなら大したことないって〜」
「能天気なんだから……でも、ありがと」
手間ばっかりかかる二人だけど、この二人がいるから今のふゆはアイドルやれてるのかもね。
「じゃあ明日早いから寝るっす!」
「あっ、なんであんたがふゆのベッドに飛び込んでんのよ!」
「わたしと愛依ちゃんは客っすよ? こういう時は客をベッドに寝かせて家主は床で寝るものっすよね?」
「んぐっ!?」
「アハハ〜、でもうちは三人でもいい系〜」
前言撤回。やっぱりこの二人と一緒にやるのはつくづく骨が折れるわ。ただ、シングルベッドにぎゅうぎゅうになって寝るのも案外悪くないものね。
ちなみに12月6日は黛冬優子役の幸村恵理さんのお誕生日です
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