魔法の杖ってドロップアイテムだけじゃないの?   作:星火 悠瑠璃

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 皆さんこんにちは、悠瑠璃です。

 世界観描写練習も兼ねた、ダウナー系逸般人リュシー嬢のお話です。
 彼女の瞳に映る世界に彩りが戻っていくストーリーをこの先描いて行きたい所存です。

 その過程で中身成人女性の魔法少女と化しても止まりませんので。

 主人公:リュシーのイメージです。

【挿絵表示】

 首から上だけで申し訳ありません。
 お客様の中に「男子かよってくらいに引き締まっていて、女性的な部位がストンとした身体」を描いてくださる方はいらっしゃいませんか?
 私が描くともれなくコラ画像かキメラになります(筆者は絵と文章を練習中の理系大学生につき鈍足片手間半独学)。

 ごゆるりと。


#1 私、リュシーと申します。

 合縁奇縁なんとやら。

 

 令和の日本にて、冬に生まれてしまった虫のように死んだ私は中世ファンタジー世界の農村に生まれ落ちたのでした。

 

 …はい。前日譚は以上です。特筆すべきことはありませんでしたから。

 

 今生ではフランス語で「光」を意味するLucie(リュシー)と名付けられました。

 

 15歳の村娘として弟と妹の世話に加えて、目の前に広がる丘いっぱいの畑での農作業に追われています。(中身に無駄な知恵の詰まった)次女って辛いですね。上の顔を立てつつ、下の我儘を宥めつつ、親の目を気にし続ける。少子化世代で一人っ子だった私には決して縁のない話でした。

 

 veuve(ヴーヴ)(未亡人)と言うのが村での私の渾名、蔑称です。

 

 感情を失ってしまったかのように表情の変化に乏しく、家族揃って赤味のある茶髪の中で私だけが黒髪(喪服色)であること、大人顔負けの能力・行動実績(量産中)があること、男っ気に乏しいこと、それらが合わさって私を面と向かってそう呼ぶ方もいらっしゃいます。

 

 中身喪女と言えども15の少女にそれはないのではないでしょうかッ!?

 

 とはいえども、全て事実ですので私も否定する必要性は感じていません。

 

 

 やっぱり割愛し過ぎましたので、ちょっとだけ前世の昔話をしましょう。

 

 前略、とつけてもつけなくても良いほどに私の前世は自分の中で完結していました。

 

 何不自由なかったと形容されるようにハンディキャップとは無縁で、これといった思い出もないと言える、総じて苦楽に乏しい人生でした。

 誰もが人間社会から与えられる課題をクリアして、評価されるためだけに生きている。そう思い始めたのも小学校の頃。それ以来、私も含めた殆どのことが色褪せたありきたりのことのように思えていました。

 

 とはいえ、私自身もありきたりという幸せを享受していたことは確かです。ちょっと本が人より好きで、スマホが手放せず、勉強も求められる程度には出来、特に打ち込んだ物事は…レジンクラフトくらいでしょうか。えぇ、レジンクラフト。

 エポキシ樹脂、通称はUVレジンと呼ばれる紫外線で効果する液体を着色、型に流し込んでブラックライトで硬化する、ただそれだけの簡単な趣味です。素材も物によっては100均で買い揃えられるため、小学生の頃に知って以来ちまちまと買っては作っていました。

 また、私みたいにやり込もうとすると硬化の際に気泡が入らないように強力なドライヤーのようなヒーターを使ったり、マニキュアのトップコートのようなもので艶出しをしたりといくらかやり込む要素も多くありました。

 アクセサリを自分で作るのは楽しかったです。誰と語らうとかではなく、ただ自分が求める色や形へと漸近させていく感覚は、その時間だけは紛れもなく他の誰でもない私だけのものでした。

 

 でも、もう私の、私だけの場所はありません。

 

 この世に生を受けて、自分ではない名前を呼ばれて、気づいてしまったのです。抱えあげられた身体が捉える空気感ととこの目に映った世界は、言ってしまえば21世紀に比べて原始的で、多分生きていくだけで精一杯な人に溢れているのだと、分かってしまったのです。

 

 

 

『あぁ、この世界でも私はきっと他の誰かの模造品のように生きて、当たり前の幸せを享受して、ただただどこにでもある量産品のように、神とも世界ともつかないものに捨てられていくのだ。』

 

 なんて、悲劇のヒロインでも何でもないことを悲しいことのように何度も思い浮かべてしまうのは、我ながら引いてしまいます。

 

「享受するだけの人生を良しとする人よ。辿る人生は安寧に包まれども、誰に必要とされることもない日々をおくることでしょう。」

 

 

 厭世というよりも諦観。そう名付けるべき言葉が漏れました。

 

 与えられる課題を熟すだけの人を厭うたはずの私自身が、何より私の嫌いな人間そのものだったのです。そしてその課題を“評価されるため”の物から“生存に直結する”ことに看板をかけかえただけ。時代が違えど人は全く変わっていなかったと思い至らされた私はポッキリと折れてしまいました。

 

 ただただ卒なくやり遂げるだけの暗くて気味の悪い子供だったことでしょう。えぇ、いかに出来が悪かろうと兄や姉、弟や妹たちの方が可愛がられていました。

 

 

 何の出来か、ですか?

 

 農作業とそれから簡易ながら学校がありました。

 

 農作業は小麦などの穀類に加えて、根菜類、それから何故かジャガイモ。あと牛や鶏もいます。体力仕事なので農筋が付きました。姉は嫌がってしませんし、弟たちは遊び倒すしで私にお鉢が回ってきました。

 不思議ですよね、ジャガイモ。ここが私の名前の通りにフランスで、今が史実に忠実なら活版印刷も羅針盤も見たことのない今の時代的とは噛み合いませんが、美味しいので良しとしましょう。

 

 話を戻して、もう一方の学校では単純な語学と算数、それからもう一つがメインでした。どっちかと言うと託児所のような側面もあるようなのですが、私は上に二人居ましたし問題ないと判断され、しばらく預けられることがありませんでした。ですが、あまりにも鉄面皮だったからでしょう。子どもらしい振る舞いを覚えて来いと言わんばかりに放り込まれ、文句なしの成績優秀者でした。何も変わる事のなかった私を見た両親の脳裏には「違う、そうじゃない。」という言葉が浮かんだことでしょう。

 

 さて、それでも私には未知の分野がありました。それが授業のもう一つの主科目「魔法」です。

 

 8歳で入学して魔法の話を聞いて、ようやく史実とは異なるのだと言う発想を得ることができました。とは言え、魔法自体が扱うには、遠くの都にあるという専門の学校に“ペーパーテスト(及び賄賂)”で入学してから、検査や詳しい知識、道具などの準備を得てから、でなければ使う事すらできないそうです。

 なので人によってはいつまで経っても無縁という方もいらっしゃるとのこと。それ故、私は8年間魔法というものを知ることすら無かったわけです。

 まぁ、田舎娘なのでいきなり都会に行っても白い目で見られるだけでしょうし、学費的にも無理だろうと言うことで進路にも影響はなかったわけです。

 

 せっかくの未知も為すべき事に無縁ならば、勿体無いですが時間の無駄になりそうです。それでも経験と言わんばかりにやってみたのはやはり少しばかり前世が懐かしかったからなのでしょう。無論、良い悪い含めて今の自分の一部になっているので前世の世界に戻りたいなどと考える意味はないのです。

 

 

 大きく話が逸れましたね。こうして前世の人生は評価される実績を作るだけの人格を形成し、それに沿った人生を送らせているのでした。

 

 そういえば、前世で見かけたラノベやネット小説では神様から貰った特典だとか、前世では評価されなかったことだとかでチヤホヤされてましたね。そこのところ、本当はどうなんでしょう。

 前世で真面目に課題を行いながら大学まで過ごしていれば、効率的に物事を行う思考なんて一定程度は身につきます。ずっと評価され続けるために生きる生活のおかげですね。

 

 えぇ、ただそれがペーパーテストから実践に移り変わっただけ。

 

 結局、現代で身近な人が評価してくれるペーパーテストにやりたい事、そんな一つや二つだけにすらしがみ付けないのなら、時代が変わった程度でチヤホヤされることすらないのでしょう。…課題を熟せるだけでは人に避けられる人生にも変わりはありませんが。

 あぁ、勿論どうしようもない理不尽というものはあるのでしょう。助けを求めたところでその先すら真面とは言い難い現状が蔓延っていましたし。

 

 どの時代であれ、私に出来るのは生きていくことしかないのです。どんなに感情が人生を否定しても、他人が人生を否定しても、私は日々の些細なことに命をすり減らす人生しか、生き方を知らないのです。

 

 

 それでも安らぎは欲しいのですけれど。特に娯楽に乏しいのでお風呂とか、お風呂とか安眠とか。

 

 1番近い街でもう捨てられてしまう樽を貰ってきて、頑張って補強してドラム缶風呂風に自作しました。変人の異名が付きましたが、安らぎは嘲りに勝るのです。えっ、お湯はどうやってるのか、ですって? 律儀に沸かして何度も浴槽の中に注いでいますが、何か? おかげで毎日筋肉がつきますよ。

 

 特にフランス語系の名前だったので身構えましたが、あの宗教が台頭しているわけではなさそうなのでよかったです。何ですか「悪魔は水から体に入る」って。はぁぁ〜、やっぱりお風呂は良いですねぇ。いえ、別に世界に台頭した価値観が嫌いなわけではないです。ただ、私がこの世界で最も寛げる場を好まなかった思想というだけです。相手の一部だけ見て相手の全てを否定していては一生喧嘩しかできません。

 

 そうやって自分と違うものを否定して、都合のいい耳障りの良い言葉だけでまとまった人間(その隣人とも違いがあるのに)が、あふれた時代でしたから、それだけではいけないと思うのです。

 

「リュー姉、水路壊れたー」

 

 自分で直してください(それは否定したい)。

 

 いえ、やりますけど。前世と同じ憩いの時間を潰されるのは堪えるものがあるのです。きれいな布に恵まれたわけでもないので、ずぶ濡れになる度にお風呂に入るわけにもいきませんし、ポカポカに温まった体が脚から冷える感触というのは不快です。

 

 父は長男が畑を継いでからは都会へ出稼ぎ、母は体が弱めで掃除と内職。姉は食事の支度に数時間はかけますし、下の子たちでは出来ることも限られます。ともなれば前世の経験から正しい体の使い方を知っている私が最も身軽にかつ効率的に動けるわけです。無駄にタイムマネジメントの本が溢れていたわけではないのですよ。

 

 teenの弟が身内とはいえ裸の異性の居る所に突撃してきたことはまぁ、なれました。えぇ、私が殊更他人に感じてしまっているだけなのだと言い聞かせて、なれました。なれたのです…

 

「具体的にどこが壊れたのですか?」

 

 ともあれ、乙女の尊厳などというものに拘っているだけでは何の解決もしません。ですので、頑なにこちらに体の正面を向けない不審な輩に内容を問うこととしました。

 

「うーんとね、関板*1。」

 

 適当な板でも差し込んどけよ。自分で考えろ。

 

*1
用水路の水位を上げるために堰き止める板。ただの板。




 取り繕っても消えない軽い見下し(無自覚)。

 本当に自分のことのためにやってれば、見下しなんてないんじゃないか、と自分のことすらままならない私は考えて見たり。(至らなく思えても考え抜いた末の行動がそれなら)相手を尊重してやりながら、自分に被害が及ばないように避けるのがイイ大人って奴なんでしょうけど、理想って遠いと黄昏てみたり。

 次回、リュシーの良く行く街(仮)。

 では、また。
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