ガンダムビルドダイバーズ ちゃれんじゃーず   作:tbrh

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(投稿が)遅すぎる、これは……。






第二話 本当のスタート

目の前で繰り広げられる激戦。

性能でも数でも上回るチュートリアル用リーオーを相手に、機体の限界を超えて戦い続ける素組み以下の旧キットガンプラ。

一機を倒し、しかし追い詰められ、そこからの逆転勝利。

記念に撮ったのだというプレイ動画を見た店員は愕然となり、次いで熱くなり、騒然となった後、燃え尽きたように脱力した。そして、目の前の二人の目を見て一言。

 

「正直、すまんかった」

 

 

 

 

 

Episode 2 本当のスタート

 

 

 

 

 

真顔で頭を下げた店員は、自身の持っていたスマホで配信されている初戦闘の動画を幾つか紹介した。ちなみに比較的新しいキットの標準的な人型MSを使用している動画を選んでいる。

曰く初めて素組みしたガンプラなのだと。曰く作るには作ったが漸く決心してのGBNデビューなのだと。各人最初は自信無さげな発言が目立っていた。しかし、その戦闘風景はクサカやミオの予想を遙かに上回るものだった。

どのガンプラも自在に空を舞い、その銃は一撃で相手の装甲を穿ち、その剣は一刀の元に相手を切り裂く。

そして皆一様に言うのだ。

 

『意外と簡単でしたね』

 

クサカとミオが某死に神代行の様な顔で「うそ……だろ……」と呟いたのも尤もである。それ程までに、彼らの持ち込んだ雑に組み立てられた旧キットフルアーマーZZと、丁寧に組み立てられた現代キットのガンプラの性能差は圧倒的だった。

 

「いやぁ、まさかここまで動かなくなるなんて思わなくてねぇ」

 

愕然とする二人に対し、頭を掻きながら少し申し訳なさそうに店員は笑った。

 

「いえいえ! 自分達が雑に作ったのが悪いんですし」

 

「ん。こいつの所為」

 

慌てて弁解するクサカに対し、責任をクサカ一人に押しつけようとするミオ。心からの発言ではないと分かっているからだろう、気にした素振りを全く見せないクサカを見た店員は、この二人が今まで歩んできた関係を垣間見た気がした。

 

「でもこのままじゃ自分的にはちょっと後味悪いしねぇ……そうだ!」

 

ポン、と手を叩き、店員はショーケースの一つから商品を持ってくると、自費でレジを通した。

 

「これ、上げるよ」

 

そう言って差し出されたのは、ニッパー、ヤスリ、ピンセットがセットになったプラモデル入門用セットである。

 

「え、ええ!?」

 

「後ついでにこっちも」

 

驚くクサカに、更にもう一箱が追加される。所謂ピンバイスという物で、手回し式の細いドリルである。

 

「……いいの?」

 

「別のガンプラと交換してあげても良かったけど、こっちの方が色々役に立つと思うし。それに、ちゃんと道具を持ってれば後々沢山ガンプラ買ってくれると思うしね」

ぶっちゃけHG一箱買うのとこれで同じ値段だし、と笑う店員に、クサカとミオは深く頭を下げた。

 

「ありがとうございます!」

 

「次はちゃんと作る。……多分」

 

「どういたしまして。じゃ、もう暗くなっちゃったし、そろそろ帰った方がよさそうかな?」

 

外を見ると、もう殆ど太陽は沈みかけている。完全に夜になったわけではないが、子供が出歩く時間にはもう遅いだろう。

 

「うわ……これ、帰ったら確実に怒られるだろうなぁ」

 

「ムムム」

 

これから自分の身に降りかかる災禍を思い、クサカとミオは暗澹たる表情を浮かべた。だが帰ろうとして、ふとミオは思いついたように振り返った。

 

「……タツナミ・ミオ」

 

「え?」

 

急に名乗られ、店員は間抜けな声を上げてしまった。

 

「あ、自分クサカ・ハクセンって言います。良かったら名前、教えてもらえませんか?」

 

意図を察して自分も名乗ったクサカに尋ねられ、店員も漸く理解した。

 

「ああ、なるほど。僕は遠野愁(トオノ・ユウ以降:トオノ)。それじゃ、またね」

 

互いに手を降って別れ、クサカとミオは共に帰途についた。

 

 

 

「……」

 

クサカと並んで帰路を歩きながら、ミオはGBNでの戦闘のことを思い出していた。

トオノ店員から見せてもらった動画のことを考えれば、チュートリアル用リーオーの性能は決して高い物ではなかった筈である。にも関わらずあそこまでの死闘となった理由はつまり、使用したガンプラが極めて低い完成度であった為である。

動画の中のガンプラとて特別な手入れが加えられた形跡はないが、ランナー後の処理やモールドの墨入れ、組み立て後に齟齬を生じないよう丁寧な作業で作られている等、全体的に自分より作る機体そのものに対し作り手の意思が込められているように感じた。

それを思うと、適当に何とかなると考えた自分がいかにも不真面目に感じられたのである。

 

「ミオさん、どうかした?」

 

元々あまり喋る方ではないが、うつむき気味に黙っているミオを心配するように、クサカは声をかけた。

 

「……道具とガンプラ、私に預けて」

 

「え?」

 

顔を上げたミオの言葉は、クサカにとっては意外な物だった。彼の知るミオであれば、今日のことを反省しつつも面倒な仕上げ作業などは全て自分に押しつけてくるのではないかと思っていたのだ。

 

「それは、元々ミオさんが買った物なんだから問題ないけど。いいの? 自分が仕上げとかしなくて」

 

「私がやる。大丈夫」

 

言うや、ミオはクサカに持たせていた袋の持ち手に手をかけた。まるで恋人のような仕草にクサカはドキリとしたが、素直に手を離すことはしなかった。

 

「?」

 

「自分にも、一部でいいからやらせてくれないかな。慣れてなかったとはいえ、適当に作っちゃった事は悪かったと思ってるし」

 

ミオは文句をつけようと思ったが、よく知る笑顔でニッコリ見つめられると、意地を張る気にはならなかった。

 

「むぅ、わかった。武器とランドセル、お願い」

 

「ありがとう。じゃあヤスリ一本とピンバイスは貸してもらっても?」

 

「ん」

 

 

 

ミオを連れて遅くまで遊んでいた事について散々に絞られた後、クサカは自室で武装類とバックパックを分解した。

 

「接着されてる所は流石にどうにもならないかな……プラスチック溶けてるし」

 

そして問題になっていたランナーの切り残し等を確認してみるが、それはGBN内で確認するよりずっと小さく目立たないものだった。1/144ではこの程度に見えても、実物大に拡大されればあれほど大きなひずみになる。その事実を知ると、自分が如何にガンプラやGBNを舐めていたかを突きつけられるようであった。

 

「とはいえ……今はそんなに変わったことは出来ないか」

 

分解したパーツ一つ一つを手に取り、切り残しを丁寧にヤスリ掛けしていく。表面が削れて少々跡は付いたが、これだけでも合わせ目の隙間は大分小さくなった。

慣れない作業を丁寧にこなしていた分、これだけでもそれなりに時間がかかってしまった。

 

「で、後は……」

 

手に取ったのはダブル・ビームライフル。砲身が肉抜きされており、砲口も穴が開いていない。

 

「肉抜き穴は明日埋め方教えてもらうとして、とりあえず砲口くらいは開けておこうかな」

 

ピンバイスに最も細い先端を噛ませ、中心辺りに浅く穴を掘る。続いて少し経を大きくして深く掘り、最後に砲口経に合わせた穴を開ける。

 

「後はこっち……」

 

バックパックのダブル・キャノンにも同じように穴を開け、細いヤスリでバリを落とすと、それだけでも少しだけ見栄えが良くなった気がした。

 

「さてと、あっちは上手くやってるかな」

 

 

 

ミオもまた、遅くまで遊んでいたことやクサカに迷惑をかけていたことを散々に絞られ、自室でFAZZの本体部分と向かい合った。

 

「むぅ」

 

こちらの感想も概ねクサカと同じであった。思っていたより切り残しが目立っているようには見えない。しかし、合わせ目だけはどうしても気になるレベルである。

増加装甲類を取り外していくと、本体部分のプロポーションも気になる。旧キット故なのか、装甲を後から被せることが前提であるからなのかは分からないが、特に脚部の形状は素の状態では中々に妙な形状をしている。

 

「……とりあえず」

 

この辺りの事は後でクサカやトオノ店員に相談しようと思い直し、まずはランナーの切り残しを当たることにした。

 

「……面倒臭い」

 

始めてすぐ、愚痴が出る。

勿論彼女があまり粘り強い性格ではないという事もあるが、想像していた以上に一つ一つの対処に時間がかかるのだ。一度組んだパーツは思ったよりしっかりと接合してしまっており、分解自体がかなり面倒臭い。当然、ヤスリを当てるのにも時間がかかる。

見えなくなる分は後に回し、接続や外見からわかる部分の対処を行っていく。僅かに見栄えが良くなっていく事に関しては達成感があるが、それでもやはり面倒臭い。

 

「むぅ」

 

可愛い唸り声を一つ。

結局、完全に終わる前に作業を中断してしまう。

休憩なのだと自分に言い訳しつつ、スマフォのスイッチを入れる。適当にGBNの動画を検索させると、累計再生数一億回を超える超有名動画が表示された。GBN内の特大イベントを、そのイベントの始まりから関わっていた有名プレイヤーの視点から撮影されたものであり、有名プレイヤー達が一堂に会して侵略者役のNPDや戦艦群と戦う姿が克明に映し出されている。

 

「……」

 

皆の使う機体がどのようなものなのか、ガンダムに詳しくないミオにはよく分からない。だが、手元にある自分のそれと見比べてみると……見比べるまでもなく、画面内で躍動するガンプラ達は全く違う。込められた手間暇もそうだが、作り手の気持ちが込められている。

自分のFAZZを見る。そして溜息を一つ。

 

「……仕方ない」

 

ミオは改めて、作業に取りかかった。

 

 

 

後日、欠伸を噛殺しながらクサカが学校から帰宅してくると、目を細めてウツラウツラしているミオが昨日と同じ位置に立っていた。右手には箱の入ったビニール袋がぶら下げられており、その目的を窺わせる。

 

「ミオさん、こんにちは」

 

声をかけるとミオはビクリと肩を振るわせ、半分ほどに瞼を開けた。

 

「ふぁ……うぃす」

 

返事を返してくるが、やはり眠そうである。余程遅くまで作業を続けていたのだろうと、クサカは自分の状態と重ねて苦笑した。

 

「取ってくるから、ちょっと待っててね」

 

無言で頷くミオをなるべく待たせないために、クサカは大欠伸を一発かまして自室へと走った。

 

 

 

欠伸を繰り返しながらガンダムベースにやってきた二人は、早速作業を終えたパーツを組み合わせてみることにした。

トオノ店員に話を通して製作スペースの一つを借り受け、作業を開始する。

 

「おお……昨日とは違うねぇ」

 

勝手についてきたトオノ店員が、感慨深そうに頷く。

 

「ん。当然」

 

「頑張りましたからね」

 

外見的には切り残しがなくなり各パーツの噛み合いが良くなっただけではある。しかし、技術的にはつたないながらも愛着を持って作業を行った跡を、トオノ店員は確かに感じ取った。

 

「なら、後は簡単な塗装もやってみようか。そこのガンダムマーカーは好きに使っていいよ」

 

トオノ店員が指した先には、ペン入れに立てられたマーカーが並べられている。

 

「あれ? 塗装ってこういうのでやるんでしたっけ」

 

クサカはそれを見て、少々首を傾げた。クサカにとって塗装というと細かなマスキングを行った上でスプレーやエアブラシを使って行うというイメージだった為、マーカーで色を塗るというのは意外なものだった。

 

「一応これを使ったエアブラシってのもあるけど、基本的にはこれでもちゃんとかっこよくできるよ。まぁ物は試し、やってみよう」

 

話を進めようとするトオノ店員だったが、そこでクサカが手を挙げた。

 

「あ、その前に自分はちょっとやってみたいことが……塗装はちょっと、ミオさんだけでやっててもらっていいかな?」

 

「ん、わかった」

 

「ありがと。じゃ、ちょっとこれ、借りてくね」

 

ミオが頷くと、クサカはダブル・ビームライフルとハイパー・メガ・カノンを持ってトオノ店員と何やら話し始めた。

 

「……ま、いっか」

 

何のことか気にはなるものの、とりあえずミオは自分の作業を終わらせることにした。

スマフォに表示させた設定画を参考にしながら、まずは増加装甲をホワイト、本体部分をグレーでベース塗装する。そしてつま先や増加装甲の一部をZ系統のブルーに塗り分け、スラスターや腹部ハイメガキャノンを濃紺で際立たせると、それだけでも印象は大分変った。

頭部もグレー、ブルーで塗り分けアンテナを黄色に塗装すると、最初の薄緑一色だった頃に比べずっと引き締まったイメージになった。

最後にマーカー先を極細の物に差し替え、アイカメラをエメラルドグリーンに染める。流石に対象が小さかったため目の周りにも点々と塗料がついてしまったが、そこは同じ色を上塗りすることで修正を加える。

 

「ん、よし」

 

塗装の終わったパーツを改めて組み立て、出来栄えを見たミオは満足げに頷いた。所々に粗さはあり、染めムラもある。しかし素組の頃を思えば格段の進歩と言える。

 

「おお、凄い! かっこいい!」

 

戻ってきたクサカも、その姿を見ると感嘆の声を上げた。

 

「フフン。当然」

 

喜ぶクサカに、ミオは自慢げに胸を張って見せる。その胸は平tうわらば。

 

「そっちは?」

 

「うん、出来てるよ。驚いてくれると良いんだけど」

 

一頻り喜んだミオが尋ねると、クサカは待ってましたと持って行ったパーツを差し出して見せた。

同じく塗装の終わったダブル・ビームライフルとハイパー・メガ・カノンだが、それだけではない事にミオは気づいた。

 

「……合わせ目、ない?」

 

「ご名答!」

 

ミオが目を丸くすると、クサカは嬉しそうに顔を綻ばせた。

そう、一目見ただけでわかる程違和感に溢れていたハイパー・メガ・カノンを中央から分割していた合わせ目が消えているのである。

 

「それとほら、ここも」

 

ダブル・ビームライフルを裏返して見せると、砲身裏の肉抜き穴が綺麗に塞がれていた。塗装されたことでその境目もなくなっており、肉抜き穴など最初からなかったかのように円形の砲身を形成している。

 

「何だかずいぶん気になってるみたいだったからねぇ。接着剤とヤスリを使った簡単な方法だから、ミオちゃんも気が向いたらやってみるといいよ。勿論簡単に取り外せなくなるから、ちゃんと考えてからだけどね。で、こっちの穴埋めはあっちで売ってるエポキシパテで……」

 

「……凄い」

 

まるで我が事のように自慢げに説明するトオノ店員の言葉は、あまりミオの耳に入っていなかった。若干妬ましそうに、しかし素直に称賛するように、彼女はまじまじと作業の終わった武装達を見つめる。そして、眠気も忘れてニッコリ笑うクサカを見やる。

 

「行こう」

 

「だね! トオノさん、GBNやりたいんですけど」

 

「で、初心者の割に削り方が丁寧でねぇ……あ、ごめん。GBNだよね。ダイバーギア持ってくるから、その間に使った物片付けといて。ああ後、その辺に墨入れペンもあるから気が向いたらやってみてね」

 

クサカが声をかけると、我に返ったトオノ店員はカウンターに帰っていく。カウンターでは別の店員が代わりに客の対応をしており、戻ってきたトオノ店員は慌てて頭を下げたが、説教が始まってしまった。

その間にミオとクサカは使用した制作スペースを片付け、可能な部分のモールドに墨入れを施し、武装を持たせたFAZZの写真を撮影するなどして時間を潰し、戻ってきたトオノ店員からダイバーギアを受け取ると早速シミュレーター室に向かった。

 

 

 

「おお」

 

「これは……」

 

ログイン早々ミッションも受けずにガレージに向かった二人は、愛機の姿を見て思わず歓声を上げた。

その機体に、初ログインの時のような今にも崩れそうな様子はどこにもない。巨大な大砲を担いだ白き巨人は、正に城砦の如き重厚な存在感を放っている。本体部分にはまだ合わせ目があり、全体の塗装も均一とは言い難い。しかしそれが却って、自分達がこれを作ったのだという実感をもたらした。

 

「行こう」

 

「だね!」

 

操作パネルを表示させ、機体に搭乗する。前回と同じように操縦席に立ち、カタパルトに機体を移動させる。

 

「凄い、前回の倍以上のパワーがある……」

 

移動する間に機体データを確認したクサカは、自機の性能に驚愕した。ジェネレーター出力もそうだが、駆動出力やスラスター出力も段違いである。

カタパルトに機体が固定され、発進準備が整った。

 

『Shout now!!』

 

そしてやはりモニターに表示される指示。

 

「やっぱこれ毎回やらないといけないのか」

 

「仕方ない。ミオ、クサカ、ふぁっつ、出撃」

 

かけ声と同時にカタパルトが作動し、ミオとクサカを乗せたFAZZは猛スピードでGBNの空に射出される。

 

「……落ちない」

 

前回は限られた時間しか噴射できなかったスラスターが、今は何の不自由もなく連続で噴射できている。出力も大幅に上昇しており、ただ飛行する程度なら機体には殆ど負担はかからない。

傾きを操作してバレるロールさせてみるが、ブーストゲージは安全圏のままだった。

 

「出力も安定してる……真面目に作ったガンプラってこうなんだなぁ」

 

クサカがハイパー・メガ・カノンの照準を振り回してみると、前回は安定まで数秒の時間を要した照準は狙った場所にピタリと定まった。とは言っても、やはり機体の正面に向けることは出来ないのだが。

 

「照準も速いなぁ。これでやったら、もっと簡単にNPDの機体も倒せたのかな」

 

「……試してみたい」

 

二人のFAZZは初心者エリア上空を適当に飛行していたが、総合受付のある街へと進路を変えた。

 

 

 

一度戻り、ミッションを受注した二人は再びフィールドに戻ってきた。

内容は偵察部隊の殲滅。つまり、遠距離を通過していくNPDの部隊に奇襲を仕掛け、そのまま撃破しろという話である。

 

「お、見つけた。あの光ってる所だね」

 

クサカがサブモニターを表示させると、最初に受けたミッションと同じように、森の中に光のドームが形成されていた。

 

「ん。行こう」

 

頷くと、ミオは機体を回頭させ、速力を上げた。流石に少しずつゲージが消耗していくが、問題になる程ではない。

ドームの壁を通過すると、ミッション開始のアナウンスが流れた。

同時に、高高度の飛行は敵に発見される恐れが高まる事が、コンソールに表示される。

 

「降りろって事かな。まぁ、見つかっても全部倒せばクリアなんだから別に良いのかもしれないけど」

 

「一応、従う」

 

ミオは機体を降下させ、垂直に着地させた。そして歩行させようとするが、やはり足が殆ど前に動かない。

仕方なく、スラスターで機体を滑走させる。しかし前傾姿勢を上手く取れないため、やはり思うような速度は出せない。

 

「……弄りたい」

 

「だねぇ。でもそれはまた明日かな」

 

また頬を膨らませるミオに苦笑しながらクサカがレーダーに目を移すと、五つの反応が前方を移動していく様子が写し出された。

 

「! ミオさん、来たみたいだよ」

 

「了解。距離は?」

 

聞かれてレーダーの表示を確かめると、まだ遠距離と言える間合いだった。武装や管制装置の射程と見比べると、既にこちらの射程圏内である事が分かる。

 

「ここからでも何とか狙えそう。先制攻撃をかけよう」

 

言いながら、クサカはハイパー・メガ・カノンの照準を先頭の機体に向けた。バックパックと接続した巨大な砲身を重厚な装甲を纏った右腕が持ち上げ、半身になりながら敵部隊を砲口が睨み付ける。

 

「頭部のカメラは使えないからカノンのカメラとセンサーを使って……よし、見えた。チャージ開始」

 

操縦桿のスイッチを弾くと、バックパックとハイパー・メガ・カノン後部のジェネレーターが唸りを上げる。カメラが捉えた機体はチュートリアルバトルの時と同じ、リーオーだった。長砲身砲、ドーバーガンを構えた者が先頭に二機。突撃銃、105mmマシンガンを構えた者が後方に三機で隊列を組んでいる(ミオ、クサカ共にあまりの強敵だった故ネットで情報を調べて設定を知った。最低レベルのNPD機体故苦戦はないだろう等と書かれていたため、二人は大いにガッカリした)。クサカ達はその右側に位置し、樹木越しではあるが綺麗に奇襲を仕掛けられる位置取りであった。

 

「チャージ完了、発射!」

 

前回の半分以下の時間でチャージが終了。等速で歩行を行うNPDの隊列に対し、正確な照準で砲撃が放たれる。発生した膨大な熱風で木々が軋みを上げ、進路上の障害物を文字通り蒸発させながら、砲身の直径を上回る巨大な光の奔流がリーオーの隊列に襲いかかった。

気づいたリーオーはそちらに回頭しようとするが間に合わず、ドーバーガンを構えた二機はその両方が巻き込まれ、爆発と共に消滅した。

 

「……凄い」

 

「これが……この武器の、本当の威力……」

 

予想以上の破壊力に、撃ったクサカ達の方が唖然としてしまった。砲撃の通った跡は地面すら抉られ、完全に道になってしまっている。

その砲撃跡の道を通り、105mmライフルを構えたリーオー達は低空飛行で一気に間合いを詰めて来るが、それでもまだ距離がある。

 

「第二射」

 

「わ、わかった!」

 

体勢そのままに、白き巨人はもう一度、光の奔流を放った。砲身各部の廃熱口が蒸気を吹き上げ、反動に抗うためにスラスターが自動で噴射される。正面を向けないその頭部は、まるでもたらされる破壊から目を背けるかのようでもある。

流石に第二射は相手が既に気づいていたこともあって反応され、中心に捉えた一機を巻き込むに留まった。砲撃を避けるために上昇した二機はそのまま105mmライフルを連射しながらトップアタックを仕掛けてきた。

しかしミオもバックパックと脚部のスラスターを点火、前回から遙かに向上した推力によって後退しながら上昇し、射線を振り切る。

 

「頼む」

 

最大出力を維持したまま機体を上昇させ、右手側を追撃してくる二機に向ける。ハイパー・メガ・カノンがあるためダブル・ビームライフルの射線はかなり制限されているが、この体勢であれば照準に不都合はない。

 

「ありがと!」

 

クサカは火器管制をダブル・ビームライフルに回し、サブモニターの照準をダブル・ビームライフルのセンサーと同期させた。追撃のため真っ直ぐ向かってくるリーオー達は容易に照準円に収まる。

 

「これで!」

 

クサカが引き金を引くと、二つの銃身からメガ粒子の束が同時に放たれた。こちらもまた本来独立したジェネレーターを内蔵した強力な武器である。

そういった設定がそのまま反映されるわけではないとしても、単純に強力な武装である事に変わりは無い。そして今回は前回より格段に武装の完成度が増しており、威力は前回とは桁違いである。逆撃を受けた一機は頭部と右腕を同時に撃ち抜かれ、頭部に当たったビームはそのまま股下までを貫通して突き抜け、一撃で爆散せしめた。

続いてもう一機にも射撃を行う。シールドを構えて攻撃を防ごうとするが、二条のビームが直撃すると防いだシールドごと左腕がもぎ取られ、大きく体勢を崩した。

 

「今」

 

体勢を崩した相手に対し、ミオは推進を切って機体を降下させた。その狙いは正確であり、体勢を立て直しかけたリーオーの胸部に右足が直撃する。FAZZの全高はリーオーより二回りは大きい。加えてハイパー・メガ・カノンの重量もあり、リーオーのパワーでは振り切ることが出来ない。

踏みつけられたまま、リーオーは地面に落下した。踏みつけられていた胸部は落下の衝撃とFAZZの重量によって半ば程まで陥没し、内部機構の圧壊によって抵抗しようとした四肢が動きを止める。再びスラスターを吹かして飛び上がると、踏みつぶされたリーオーが爆散した。

 

「やった」

 

「“あの”リーオーが、五機纏めて……」

 

ミッション達成の表示と共に、報酬であるBCとランナーデータが二人のアカウントに振り込まれた。

地獄のチュートリアルに満身創痍で勝利した二人である。初報酬の感動もひとしおであった。

森の中に開けた小高い草原に機体を降ろし、機体を出現させたまま機外に出る。

見上げた姿は殆どガレージで見た時のままであり、白い装甲が陽光を照り返し、光り輝いている。

よく見れば激しい衝突のあった右足は塗装が剥がれており、ライフル弾の幾つかが命中した胸部装甲にも傷や跡が付いている。しかしその程度は前回と比べれば軽傷と言って良いレベルだった。部品の噛み合せの改善による機体強度の向上や、全体の完成度が向上した事によるエネルギー面の改善等、リアルでの頑張りが確かにゲーム内に反映されている事を、二人は身を以て実感していた。

 

「もう一回、別のミッション」

 

「うん、やってみよう!」

 

ミオの提案に頷き返し、クサカが機体への搭乗を行おうとしたその時、轟々と突風が吹きつけた。

 

「うわ!?」

 

「んむっ」

 

それは横からではなく、上空から吹きつけられたもの。木々がガサガサと音を立て、草葉が引きちぎられて辺りを飛び交う。

思わず顔を背けた二人の耳に、いや、この場所全体に響き渡る声があった。

 

 

 

『ギャハハハハ! 見てたよルーキー!』

 







大体一更新分がアニメ一話分くらいの内容になれば良いなーと思っています。

そして次回は、多分皆恒例のあれをやりたいと思っています。
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