ガンダムビルドダイバーズ ちゃれんじゃーず   作:tbrh

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四話を書いてから続きが書けなくなってしまっていたので、AIにネタ出しをしてもらいながらなんとか形に……。
文章自体は自分で書き直したものの展開が滅茶苦茶で笑っちゃう。
読まれなくても良いけど、何とか最後まで書きあげたいなぁ。




第五話 盾裏のキツネさん

「え~っとこれで……うん、足りた!」

 

ミッションカウンターの存在する初期エリア。巨大なビルの林立する都市の一角で、眼鏡をかけた青年が個人商店の商品を前に歓声を上げた。特徴に乏しい彼の名はクサカ。

 

「おー」

 

一見無感動に、しかしキラキラと嬉しいオーラを発散させながらその隣で相槌を打つのは、彼より二回りは小さい長い金髪の少女。0030、通称ミオ。クサカと共にGBNを始めた、彼と二人一組のダイバーである。

今時のMMOで個人商店の不可能なゲームなど殆ど無いが、それはGBNにも当てはまる。この個人商店『貴重な水』は、初期エリアのビルに設けられた小規模フォースの集会所がそのまま店舗として利用されており、アイテムのやり取りを行っている。扱われる商品は主にゲーム内で入手できるランナーデータ。それ以外にも、ゲーム内の資材を利用して自作したランナーデータも取り扱っている。

 

「ギリギリだったけど、ちゃんと期限に間に合ったねぇ。それじゃ、これデータね」

 

受付に立つ恰幅の良い禿頭のダイバーが操作を行うと、取り置きされていた商品が購入可能な状態になった。

 

「ん、それじゃ」

 

「購入!」

 

頷き合った二人が同時にボタンに触れると、彼らの所持していたBCが一桁台にまで減少し、クサカのストレージにランナーデータが追加された。

 

「おめでとー! でもそれでホントに合ってるの? もう持ってる奴じゃない?」

 

その様子を後ろから眺めていた小麦色の髪と狐のような耳が特徴的なその少女が笑顔で拍手し、彼らが入手したデータを覗き込む。名前はキツネさん。まだGBNを初めて間もない新人ダイバーである。

彼女の言うとおり彼らの購入した物は一見、彼らの愛機であるFAZZが搭載するダブル・ビームライフルである。

 

「合ってるよ。自分らが持ってる奴より新しいキットの奴だから少し形も違うしね」

 

「しかもランナー時点でディティールアップを施している、ここでしか手に入らない逸品だからね。いやぁお客さん方はお目が高い!」

 

「んむ」

 

店員のおだてに乗ったミオが上機嫌に頷き、手を振りながら彼らは店を後にした。

 

 

 

「とりあえずこれで、GBN内で欲しいものは全部揃ったかな」

 

所持するランナーデータを閲覧しながら、クサカは満足げに頷いた。

キツネさんの初戦以降も、彼らは数日にわたって出撃をこなしていた。当然失敗することもあったが、着実にミッションを成功させることでBCやランナーデータを集め、彼らのFAZZを改修する為の必要資材が遂に今日出揃ったのである。

 

「ん、よし」

 

「やったじゃない! それじゃ、今日から早速始めちゃう?」

 

「だね! あ、でもそうすると……」

 

キツネさんの言葉に頷きかけたクサカだが、少々躊躇することがあった。改造には数日、下手をすれば一週間以上の期間をかけてしまうことが予想され、その間キツネさんと共にGBNへログインすることが出来なくなってしまう。

その事に気づいたキツネさんは「ああ!」と手を打った。

 

「私の事は気にしなくて良いわよー。別に何人かでやらなきゃ行けないって訳じゃないしね。一人で適当に楽しんでるわ」

 

あはは、と笑うキツネさんを下から見上げながら、ミオは小さく頭を下げた。

 

「ごめん。なるべくすぐ、完成させる」

 

「ああもう! ミオちゃんは可愛いなぁ!」

 

その上目遣いに理性をやられたキツネさんがミオを揉みくちゃにする間に、クサカは改造の概要を反芻した。

 

(可動域の拡大に使う間接部は自分の持ってるガンプラから抜き出す。新たに搭載する武装は集めてきた。排除する部位はちゃんとノートに纏めた。改造動画はミオさんと一緒に見れるだけ見た。……よし)

 

彼の頭には、新たな愛機の姿が見え始めていた。

 

 

 

 

 

 

Episode 5 盾裏のキツネさん

 

 

 

 

 

 

澄み渡るように青い電子の空を、黒い翼を広げた巨大な人影が青い推進光と共に駆け抜けていく。

その眼下には、のどかな青空とは不釣り合いなほどに荒涼としたむき出しの岩肌を晒す巨大な断層帯が連なる。

ここは北米大陸西部のグランドキャニオンを模したディメンション。

その赤い岩と砂に覆われた世界は現実では世界遺産に指定された地域であり、戦闘行為が容認されることなどありえない。しかし、見渡せばそこかしこにミッションエリアが形成されており、戦闘の喧噪が大気を揺らし、砂埃を吹き上げている。

初代ガンダムで重要な戦闘の舞台になったという経緯や地形戦に向いた複雑な環境が好まれ、この場所で戦闘を行いたいと思うダイバーは多い。

尤も、今上空を通過していく機体の搭乗者はガンダム作品の知識に疎く、そんな感慨を持っているわけではない。丁度良さそうなミッションを見つけ、散歩がてらに人気のエリアを訪れてみた、という所なのである。

 

「~♪」

 

黒い翼の巨人、ZGMF-X20A ストライクフリーダムのガンプラに搭乗するダイバー、キツネさんは軽く鼻歌を歌いながら、眼下に戦闘の様子を眺めていた。

このガンプラ自体は借り物だが、持ち主の好意によって自分の機体を作るまでという条件付きではあるが、無期限で貸し出されているのである。

GBNを始めてからの彼女は、主に三人一組でミッションを受けていた。しかし、その相方二人は愛機の大掛かりな改造作業に取りかかっており、ログインする暇が無くなってしまったため、今回キツネさんは一人でログインしている。

見物ついでに受けたミッションの目標地点は近い。

段々と速度を落としながら、ストライクフリーダムはゆっくりと着陸姿勢に入っていった。

 

 

 

入り組んだ渓谷の合間、巨大な岩壁を両脇に、ストライクフリーダムは地面に降り立った。渓谷の向こうには今にも砂に埋もれてしまいそうな、しかし巨大な都市の跡があり、その様は最早遺跡と呼んでも差し支えない。

 

「よっと!」

 

ガンプラの外に出たキツネさんがコンソールを操作すると、彼女を降ろすために跪いた格好をしていたストライクフリーダムは電子の風と共に、溶けるように消えていった。

 

「えーっと、あそこかしら」

 

掌を額に翳して目を凝らすと、遺跡の中で爆発が起こった。駆動音と炸裂音が連続し、噴き上がった黒煙の中から橙色の粒子を撒き散らし、一機のガンプラが姿を現わす。更に黒煙の中でスラスターの吹き出す青い炎が煌めき、数機のガンプラが先の一機を追って姿を現わした。

彼らは放火を交わし激しく争いながら、再び崩れたビルの林立する遺跡の中に飛び込んでいく。彼らの引き起こす爆炎と推進光が遺跡を彩り、それに引き寄せられるように更なるガンプラが後に続き、戦闘は激しさを増していった。

 

「おお!? やってるみたいねー」

 

驚いた拍子に狐耳が跳ねるが、すぐに彼女は呑気そうな笑顔を取り戻した。

戦闘が発生しているが、ミッションエリアが形成されている様子はない。しかしそれはバグや不具合ではなく、この戦闘の仕掛け人は運営である。

GBNではミッションカウンターで受け取るミッションとは別に、時折大人数の人間が無差別に参加できるレイドバトル形式のミッションが開催されることがある。大抵の場合それは、強力な戦闘能力を持ったNPDの操るガンプラをイベントの発生を察知して集まってきた不特定多数のダイバーが協力して撃破する内容となるが、今回もその形式となっている。

キツネさんはミッションカウンターで偶々告知を見つけ、移動がそう手間になる場所ではなかった為、参加しようと考えたのである。

大規模な物であれば数百機のガンプラが一機の大型MAを攻撃するような物もあるが、今回の標的は通常のMSサイズであり、ランダム発生のイベントであるためそこまで集まってきたダイバーも多くはない。

しかし腐ってもレイドバトル用の強敵。そう簡単に倒せる相手ではない。

両腕から橙色の粒子を漂わせながら、ワインレッドに塗装された単眼の機体が再び宙に舞い上がる。それは両肩と両脇の砲台を眼下に向け、猛烈な勢いで粒子ビームを連射した。

多くの機体はその攻撃を盾や防御機構で防ぐか、機動力を生かした回避行動でいなしていくが、一部の機体は苛烈な弾幕を避けきれず連続で被弾を許し、致命傷を受けると撃墜された。

防御を試みる機体に、単眼の機体は左腕に装着されたライフルの銃口が照準を合わせる。一瞬後、それは殆どチャージ時間を経ることもなく、巨大な粒子ビームの束を放出した。気づいた数機は回避するが、巻き込まれた機体は盾ごと光の渦に飲み込まれ、爆発と共に消滅する。

 

「すんごい火力……」

 

同じく火力に秀でた相方の機体を思い出し、その差に戦慄して青ざめるキツネさんを余所に、体勢を立て直したダイバー達のガンプラが攻撃を再開する。しかし赤い機体は砲撃を行いつつも回避行動に移り、未だ撃墜される様子はない。

キツネさんは知らないが、ボスキャラの元になっているガンプラの名は機動戦士ガンダムOOにてラスボスを務めたMS、リボーンズキャノン。ツインドライブによって得られる莫大な出力を元とした大火力、イノベイドであるパイロットの能力を生かしたオールレンジ攻撃能力、そして衝撃的な変形機構を備えた強力な機体である。元々が対多数戦に対応した機体の上、レイドボスとして性能が大幅に底上げされている為、その脅威度は計り知れない。

見ている間にも次々とガンプラは撃墜されていくが、それでも流石にダイバー達の数は多く、その攻撃全てに対応することは出来ずリボーンズキャノンも被弾箇所が増えていく。このまま戦闘が続けば、いずれ撃墜することが出来るだろう。

 

「こうしちゃいられない! 私も参加しなきゃ!」

 

コンソールを操作して自身のガンプラを選択すると、彼女の愛機であるストライクフリーダムが現れる。跪いた愛機を見上げながら更に操作を行い、コックピット内に移動したキツネさんは「よし!」と気合いを入れて操縦桿を握った。

彼女の操作に従い、ストライクフリーダムの機体は翼を広げながら立ち上がる。直ぐさまスラスターが蒼炎を吹き上げ、機体は空へと舞い上がった。

 

「目標は……いた!」

 

メインモニターに映った戦闘をサブモニターに拡大投影し、粒子ビームを撒き散らすリボーンズキャノンを追跡させる。それを横目にしながら、彼女は機体を戦場へと加速させた。

 

「おーいみんなー、私も混ぜてゅわぁ!?」

 

モニターの右半分が橙色の光に包まれる。不用意に接近しようとした為、ロックオンされてしまったのだ。

 

「ちょ、タンマタンマ!?」

 

キツネさんが咄嗟に操縦桿を振り回すと、それに応えた機体は翼を羽ばたかせて激しくロールを始める。機体の描く複雑な軌道が偶然にも予測射撃を狂わせ、何とかストライクフリーダムは離脱に成功するが、彼女を中心に連射されたビームは回避機動に添ってその周辺の機体へと襲いかかった。

 

『何やってんだてめぇ!』

 

『万死に値する!』

 

『お前はガンダムではない!』

 

被害を受けた機体から全体通信が放たれる。

 

「えー!? 今のは不可抗力でしょ!」

 

罵声に口を尖らせるキツネさんだが、単独での接近が極めて危険である事は理解した。よくよく見れば、接近を試みる機体は複数機が連携し、同時に攻撃を仕掛けることで照準を分散している。

 

「んー……それなら、こっちに混ざれば良いのかな?」

 

キツネさんが目をつけたのは、中距離あたりに陣取って砲撃戦を行っているグループである。主にダメージを与えているのは彼らのようであり、接近戦を行う機体は囮役と言うことなのだろう。

離脱していた機体を再加速させ、再びリボーンズキャノンの追撃を開始する。戦場は都市の中へと移っており、射線は遠距離からでは通らない。地形を縫うようにして戦うガンプラ達に何とか追いつきながら、キツネさんは連結させたビームライフルを構えた。

しかし、リボーンズキャノンは照準に収めようとする度に急激な機動を行い、それを振り切ってしまう。

 

「あ! ちょっ! この! 大人しくしなさいよ!」

 

実際の所、これは狙撃用の形態であるため視界が狭くなってしまっているのが原因だが、まだキツネさんにはそこまで分かっていない。そして、長いビームライフルを振り回しながら右往左往するストライクフリーダムは、翼の面積の広さも合って周囲の機体にとっては邪魔そのものである。ガツンガツンと密集した機体に衝突してしまい、再び罵声が飛ぶ。

 

『邪魔すんな!』

 

『錯乱したか、ガンダムのパイロット!』

 

『てめぇ……○すぞ!』

 

「ひええ!? ごめんなさーい!」

 

中にはこちらに銃口を向けている者もおり、ビビったキツネさんは反射的に機体の頭を下げて90°のお辞儀をさせた。

 

『おい後衛! そっち行ったぞ!!』

 

突然の全体通信。同時に、前衛を振り切ってこちらに飛来したリボーンズキャノンが四基のGNフィンファングとGNバスターライフルから粒子ビームの束を撃ち放つ。それはキツネさんを含む砲撃役のガンプラ全てを照準しての攻撃であり、初めから特定行動へのカウンターとして用意された攻撃である。そんなことは経験者ならば皆承知しており、本来ならば避けられる筈だったが、丁度意識が逸れていた所へ完全な不意打ちとして行われた大規模攻撃は多数のガンプラを飲み込んでいった。

 

「え!? なになになに!?」

 

『GNドライブから、光が逆流する!? ギャアアアアアアア!!』

 

『おいマジかよ!? 夢なら醒め』

 

次々に直撃を受けるガンプラ達の中にあって、キツネさんのストライクフリーダムのみは何故か直撃を避けた。それは即ち、砲撃直前にロックオン部位である胸部の位置がお辞儀によって偶然射線を外れたからである。

しかし直撃を受けた機体群が一斉に爆発すると、その爆風に煽られストライクフリーダムは墜落を開始する。

 

「きゃああああ!? 一体何がどうなってんのよー!?」

 

錐揉み回転しながら落下するストライクフリーダムの中でキツネさんは何とかバランスを立て直そうと操縦桿を動かすが、勢いがつきすぎているのか上手くいかない。

そして、撃ち漏らしたキツネさんに止めを刺すため、リボーンズキャノンは左腕のGNバスターライフルを墜落していくストライクフリーダムに向ける。

その様子がサブモニターに表示されるが、混乱した頭で悪戦苦闘するキツネさんは気づかない。

砲口内に橙色の粒子が集約され、光を放ち始める。短いチャージの後、それは光の奔流となって放たれた。

 

(あ、やば……)

 

機体はいまだ安定せず、回避行動もままならない。モニターに映し出された粒子ビームの光に、キツネさんの頬を冷や汗が伝う。

しかし直撃を受ける寸前、GN粒子の放つ橙色の光とは違う薄い光の膜が、ビームとストライクフリーダムの間に割り込んだ。

ビーム同士の接触によって激しいスパークが発生し、リボーンズキャノンとストライクフリーダムはその衝撃でそれぞれ反対側に弾かれる。

炸裂した閃光で反射的に目を閉じていたキツネさんは困惑しながらも機体を立て直し、何とか地面に着地することが出来た。

 

「い、一体何が起きて……」

 

『大丈夫ですか~?』

 

頭を振って気分を落ち着かせたキツネさんの耳に、間延びした女性の声が通信機越しに届く。顔を上げると、丁度機体の正面に一機のガンプラが歩み寄ってきていた。知識のある者ならそれがAGMF-1000ザクウォーリアの改造機であるとわかっただろう。フリッツヘルメットを被ったような頭部と、右腕に構えた巨大な円盾が特徴的な、白い機体である。左肩には四方に出っ張りのある円形の部品が八つ、二列に纏まって長方形を形成するパーツが装着されていた。

 

「えっと……貴女が助けてくれたの?」

 

『撃墜されそうになっていたように見えたので……余計なお世話でなければよかったのですけど~』

 

コンソールを操作してダイバーの映像を表示させると、モニターに映し出されたのは声の印象通りの女の子である。前髪を水平に切りそろえられた鮮やかな銀色のセミロングと、大きな丸メガネが特徴的な少女が、おずおずと言った調子でこちらを覗き込んでいた。

 

「そんな事ないない! ホントに撃墜されかかってたし、助けてくれてありがと!」

 

『それならよかったです~』

 

慌てて感謝の意を示すと、少女もまた柔らかい笑顔でそれに応えた。

 

「それにしてもさっきの光、あれって一体……」

 

『おい後衛! 残ってるなら援護しろよ!』

 

会話を続けようとするキツネさんの言葉を、上空で戦闘を続けるダイバーの焦った叫びが遮る。後衛が減ったことで砲撃の圧が減り、前衛のガンプラ達も押され始めていたのだ。

 

「やば! 今度はちゃんと援護しないと!」

 

まだ戦闘が続いていることを思い出したキツネさんは、ストライクフリーダムを飛翔させた。先ほどのようなヘマを繰り返すわけにはいかない。キツネさんにとってはありがたいことに、同列で戦うガンプラの数が減ったことで衝突の危険は最初より少なくなっている。

 

『あの~』

 

連結状態のままになっていたビームライフルをストライクフリーダムに構えさせるキツネさんに、女の子が再び声をかける。

 

『良ければ、私もお手伝いしましょうか~?』

 

「え? 良いの? 凄い助かる!」

 

『と言っても、武装は何もないんですけど~……』

 

「ええ!? それでどうやって戦うの!?」

 

ビームライフルを連射させるキツネさんが驚いた声を上げると、再びリボーンズキャノンの動きが変わった。後衛を壊滅させた、あの動きである。

 

「うわわわ!?」

 

今度は即座に反応した後衛のガンプラ達だが、偶然回避しただけのキツネさんは何があったのか把握しておらず、動き出しが遅れる。リボーンズキャノンはそこに容赦なくGNフィンファングとGNバスターライフルによる制圧射撃を行った。

 

『ええ~い!』

 

しかしそこに円盤状のパーツ八基が飛来し、互いが励起し合うと共に薄い光の膜を展開する。それはストライクフリーダムの前面を覆い隠し、レイドボスとして強力な出力を持つはずのリボーンズキャノンの放つビーム群を弾き返し、GN粒子の残滓として周囲に拡散させてしまった。

 

「これって、さっきの……!?」

 

続いてリボーンズキャノンは残ったターゲットである白いザクウォーリアに照準を定める。GNバスターライフルの銃身がそちらを向き、NPDならではの精密さで長距離砲撃を敢行した。

 

「あ、危ない!」

 

キツネさんが止めようとするのも間に合わない。数多のダイバー達を葬った光の束が女の子のザクウォーリアを飲み込もうとした刹那、ザクウォーリアの持っていた巨大な円盾が眩い光を放つ。虹色に輝く光の膜は機体全高の倍以上はあろうかという巨大な光の盾を形成し、真正面からGNバスターライフルのビームを受け止めた。拡散するビームが地形粉々に破壊していくが、その破壊を真正面から受け止めるザクウォーリアは光の盾を構え、微動だにしない。

 

『大丈夫、これくらいなら心配いりませんよ~』

 

唖然とするキツネさんに場違いなほど呑気な声音で女の子が答えると、チャージしていたエネルギーを出し尽くしたことでリボーンズキャノンの砲撃がやんだ。盾の後ろに隠れていた本体は無傷であり、彼女の言葉通り何の心配もいらなさそうである。

 

『攻撃はできないですけど、囮と防御くらいならできると思いますよ~。危なくなったら、私の後ろに隠れてください』

 

「うへぇ。心配されるのは私の方だったのね……。あ、そうだ!」

 

他のガンプラ達と共に白いザクウォーリアの周りに集まりながら、キツネさんはハッとして声を上げた。

 

「私キツネさんっていうんだけど……あなたの名前、聞いてもいい?」

 

『ミコさんって名乗ってます~。よろしくお願いしますね~、キツネさん』

 

「なんかネーミングが似てる……。こっちこそよろしくね、ミコさん!」

 

ミコさんのザクウォーリアによる防御が加わったことで、ダイバーたちの攻撃はより効果的になった。後衛が安全に攻撃できるようになったことで前衛も入り組んだ地形にまで無理に追撃を行う必要がなくなり、攻撃効率が増したのである。

 

「こっちが動かなくていいなら……!」

 

ストライクフリーダムの両脚を地面にどっしりと構え、連結させたビームライフルを発射させる。今度は照準を振り切られるようなこともなく、発射されたビームは回避されるものの脚部を掠め、その隙を突くように襲い掛かる砲撃の雨が着実に手傷を増やしていく。

機体の周囲を高速で飛翔し攻撃を行っていたGNフィンファングも数を減らし、最後の一つが破壊された。

 

『後は私に任せておけ!』

 

濃紺色を基調に再塗装されたトールギス(素体はHGリーオー、旧キットのトールギスの部品をミキシングしてHGAC風に再現している。ビームサーベルの代わりに黄色く塗装された旧キットエピオンのハイパービームソードを装備)が蒼色に輝く巨大なビームソードを掲げ、突進を仕掛ける。損傷の増え、動きの鈍ったリボーンズキャノンを一気に撃墜する魂胆である。

リボーンズキャノンはトールギスの突進を避けつつGNバスターライフルを連射するが、既に限界に達しつつあるリボーンズキャノンの機動力では照準を合わせることが出来ない。

遂に間合いに入ると、トールギスはリボーンズキャノンにビームソードを振り下ろした。リボーンズキャノンはGNバスターライフルでそれを防ごうとするが、巨大な刃はGNバスターライフルの銃身を切断し、更に押し込むようにエピオンは両腕の出力を上げる。

 

『これが私のガンプラだ。よく見ておくんだな!』

 

押し込まれるように振り下ろされたビームの束はリボーンズキャノンの右腕を肩口から切り落とし、胸部装甲を焼き切った。トールギスは機体を翻し、その巨大な剣を振り下ろす。

 

「やったー! ……ん?」

 

ビームソードはリボーンズキャノンの右半身を焼き切ったものの、両断とは行かなかった。胸部装甲が焼け落ちて破損はしているものの、まだ中枢を破壊しきれていない。しかしトールギスはもう一度斬りかかることはせず、その場から飛び去った。

 

「あれ? どしたの?」

 

『慌てるな……必ずしも私が倒す必要もないだろう』

 

見れば、黄金に輝く柄から発せられるビームソードの長さが、短剣ほどにまで短くなっている。早い話が、本体エネルギーを使い切ってしまったのである。

 

「あー! 格好つけてる! それなら私にやらせてよー!」

 

キツネさんが手を上げると、トールギスのダイバーはストライクフリーダムに道を譲った。

 

「やった! ありがとね!」

 

ストライクフリーダムは推進器を全開にしてリボーンズキャノンに接近し、シュペールラケルタビームサーベルを引き抜いた。その瞬間ビームサーベルは光の刃を形成し、ストライクフリーダムは腰を落として構える。

 

「はぁぁぁぁ……」

 

左手を後ろに引き、右手に持ったビームサーベルを身体の前面で構えながら、ビームサーベルの刃を大きく振りかぶる。

 

「せいやぁぁぁ!!」

 

両手でビームサーベルを握り締め、腰の回転も加えながら全力で振り抜く。光の刃はリボーンズキャノンの左半身をも焼き切り、胴体を上下に切断した。

 

「やったわねー! ……あれ?」

 

倒したことに喜ぼうとするキツネさんだが、すぐに彼女は奇妙なことに気づいた。普通なら撃墜されたガンプラはそのままデータの粒子になって消滅するのだが、切断されたリボーンズキャノンは光の粒子になることなくその場に留まっている。しかもその機体は胸部から強烈な光を放ち始めた。

 

「ちょ、ちょっとちょっと!? どうなってんのよこれ!?」

 

『これは……!?』

 

上空で観戦していたダイバーたちが異変に気づき、慌ててその場から離れようとする。しかし上昇したリボーンズキャノンはその場で変形を開始し、全身の装甲が展開した。

 

『な、なんか危ないと思うので、私の後ろへ~!』

 

ミコさんが警告を発し、白いザクウォーリアの盾の後ろにダイバーたちが一斉に集結する。リボーンズキャノンが変形を終えると、機体が金色の光に包まれ、それと同時にその背後に巨大なGNドライブが現れた。なおも変形を続けるリボーンズキャノンはGNドライブのサイズに見合った巨大なGNバスターライフルへとその姿を変じ、その砲口が眩いばかりの閃光を発する。

 

「え!? なになになに!? 何がどうなってんの!?」

 

『なにこれ……ふざけてるの?』

 

『レイドボスの癖にどういう調整を受け……!?』

 

『ひえぇ!? 無理だ! 離脱する! 無理だぜこんなの!』

 

『彼女の後ろを離れるのは、やめておけ……』

 

ミコさんの盾の後ろに集まりながら、ダイバー達は絶叫した。戦闘エリアは先ほどまでの戦闘でかなり遮蔽物が減っており、サイズから推し量れる破壊規模を考えれば今更逃げるのも難しい。

そして遂に、GNバスターライフルの砲身からとてつもない量の粒子ビームが放たれた。放たれると同時に圧倒的な熱量と衝撃波が周囲一帯を吹き飛ばし、その破壊をもたらしたビームそのものがダイバーたちに殺到する。

 

『プラネイトディフェンサー、アルミューレ・リュミエール、出力全開です!』

 

紅に輝く光の濁流に対し、白いザクウォーリアはその全力を以て光の防壁を展開し、防波堤となって破壊の波を押し留めた。

ミコさんの盾の後ろに集まっていなければ今頃全員衝撃波とビームの照射に巻き込まれ、蒸発していただろう。しかしこれ程の暴威を前にしては、彼女の盾も無傷とはいかない。激突の衝撃で機体は数メートル押し込まれ、装甲表面が赤熱化を始める。

 

「ミ、ミコさん! 大丈夫なの!?」

 

『あ、あわわわ……大丈夫、まだ大丈夫です~!』

 

円盾から発せられるビームの盾と八機の円盤が発するバリアは確かに強固だが、限界はある。円盤が一枚、また一枚と力尽き、吹き飛ばされていく度に衝撃波が周囲を襲い、ストライクフリーダムのコックピット内も激しく揺さぶられる。

 

『三途の渡しの六文銭……』

 

「縁起でもない事言わないでよー!」

 

『くるんじゃなかった……こんなボス戦……』

 

白いザクウォーリアを先頭に一列に並んだ彼らの姿は実に滑稽だが、本人たちはいたって真面目である。衝撃に耐えながらダイバーたちは盾が剥がれる様を呆然と見つめ、更に一枚の円盤が脱落した。

盾の発するビームも次第に消耗し盾そのものにもヒビが入り始める。皆が諦めかけた時、遂に破壊の津波は終わりを迎えた。ミコさんの盾は砕けて消滅したが、自身を含む生き残り全員が無事である。周囲にはミコさんの盾の破片とリボーンズキャノンの放出したGN粒子が混ざり合い、まるでキラキラと光る桜吹雪が舞っているかのような景色が広がっていた。そしてビームの照射が終わったということはつまり、ミッションは終わったのである。

 

『Mission Complete』

 

ストライクフリーダムのコンソールにミッション達成の文字が表示され、ダイバー達はようやく緊張を解いた。

 

「やったぁ! ミッション達成ー!」

 

『ミッション達成だってさ! やったぜ!』

 

『終わった……のか?』

 

『助かった……』

 

『あー疲れたー』

 

『えー!? 今ので終わりなのー!?』

 

『まだやんのかよ!?』

 

『やるかバカ! そんなことより報酬だ!』

 

ダイバーたちが達成の喜びを分かち合う。

 

『慌てるな。最も損傷を与え貢献したのは私だろう』

 

『えー? そうかなー?』

 

『面倒な奴だ……』

 

『まあまあ~。最後はみんなで一緒に倒したってことでいいじゃないですか~』

 

外部音声で機体越しに語り合う皆のコンソールに、ミッションの報酬が配布された。これ

はダメージ量や、または味方へのダメージを防いだ頻度等総合的な貢献度を計算して乗算されるものであり、例え途中で撃墜されたダイバーに対しても生き残ったダイバーと同じ計算方法によって配布される。キツネさんのコンソールに表示された報酬額は最低保証値に多少のプラスが付いた程度だったが、彼女の基準で見れば相当量の報酬となった。

 

「大漁大漁♪ またミオちゃん達と遊べるようになったら自慢しちゃお」

 

報酬額を目にしたキツネさんはコクピット内で小躍りした。共に戦ったダイバーたちの間を揺れるその視線が、恐らく今回の勝利に最も貢献したであろう白いザクウォーリアに止まった。最後の攻撃を最前列で文字通り皆の盾となり凌ぎ切ったその機体は、本来純白に塗装されていた装甲の大半がボロボロに傷ついており、最大の自慢であろう丸い大盾もなくなってしまっている。

 

「それにしてもミコさん! 今回は本当にありがとうね! 機体もそんなボロボロになっちゃって……」

 

『いえいえ~。GPDと違って本当にガンプラが壊れる訳じゃないので大丈夫ですよ~』

 

プライベート回線を繋ぐと、案の定柔和な笑みを浮かべたミコさんの顔が表示された。

ミコさんの言うとおり、これはゲームであり現実とは違う。ボロボロの機体はガレージに戻り、一定時間を過ぎれば元通りに修復される。勿論、元となったリアルのガンプラは無傷である。それはキツネさんもわかっているのだが。

 

「そうは言ってもさ……」

 

それでもやはり、傷だらけのザクォーリアと殆ど無傷のストライクフリーダムの状況を見比べると、やはり申し訳ない気持ちが湧き上がってくるキツネさんである。

 

「うーんやっぱり情けないかもしれない……」

 

『そんなに気にしなくても大丈夫ですから……』

 

そんなキツネさんの言葉に困ったような笑みを浮かべながらミコさんは首を振った。そして何かを思いついたように手を打ち、その顔が明るくなる。

 

『それなら、今度一緒にミッションをやりませんか~? 私の方はまだ当分予定が空いていますので~』

 

「え? 良いの? あたしは全然OKだけど……」

 

『決まりですね~。よろしくお願いします~』

 

ミコさんの顔が嬉しそうにほころぶ。彼女にとっても戦いが終わってからもダイバーと交流できるというのは珍しいことであり、ミコさんは心の中でこっそりガッツポーズを決めた。

 

「うん! こっちこそよろしくね! ミコさん!」

 

『はい~。またお会いしましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オリジナル機体説明

 

機体名 アイギス・ザク

ベース機体 ザクウォーリア

 

レイドバトルに臨むキツネさん達の前に現れた少女、ミコさん。彼女の駆るザクォーリアをベースに製作されたガンプラ。

本体部分は合わせ目消しや塗装、墨入れ等が施されただけでほぼベースとなったガンプラそのままであるが、仕上げ自体は時間をかけて丁寧に行われているため性能は高い。またゲーム内ではほぼ標準となっている飛翔能力を放棄しており、浮いた出力は全て装備に回されている。本機は相手を攻撃するための武装を一切所持しておらず、守りに特化して製作されている。

元々シールドのついていた左肩部には、二列十基で纏められたプラネイトディフェンサーが接続されている。これは他キットからの移植ではなく全て削り出しによるフルスクラッチで製作されており、一枚一枚にかなりの時間と手間が掛けられている。掛けた時間の分極めて高精度に仕上げられた本機の防御性能は高く、貫通性能に特化したヴェスバー等であってもそれがビームであるなら余程の性能を有していない限り射貫は困難を極める。

右手には円盾が持たされており、そのサイズはほぼ自機と同サイズである。これもまた、見た目自体はギャンシュトロームの装備に似ているが積層プラバンの削りだしをメインに製作されたフルスクラッチのオリジナル品であり、相当な手間暇をかけて制作されている。三角形を四つ束ねたような形のモールドが表面から浮き出るように十字状に四基備えられており、これはアルミューレ・リュミエールの発振装置となっている。通常は盾の表面を覆うように展開されるが、出力を上げれば更に大きな光の大盾を形成し、周囲の味方をも覆い隠すことが出来る。これだけでもあらゆる攻撃に対し高い耐性を持つ鉄壁の守りだが、盾自体が大きさに見合った分厚さと工作制度に見合った強度を誇るため、これら二枚が重なった防御性能は凄まじいものとなっておりトップ勢の必殺技を以てしても一撃での破壊は困難である。

武装はないため単機で戦闘を行うことはできないが、プラネイトディフェンサーと複合シールドの守りは極めて頑強であり、味方に一機居ればパーティの稼働率を飛躍的に向上させる効果が望める。

本機は最初から守りに特化して製作された訳ではなく、特にコンセプトを定めず作った装備を順番に搭載されている最中である。しかし製作者のミコさんはあまり相手を攻撃するのが本意ではなく、今後も武装類が搭載される予定はない様子。更に言えば彼女は本体より装備を考え製作する方が得意であり、機体選びは「何となく女性が乗ってる印象が強い機体なので」と適当である。

 






もう五年も経過している……。
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