バンシィ・ノワールとデルタソニックの戦いは、まさに熾烈を極めていた。
圧倒的スピードとバンシィ・ノワールに特攻したシステムを搭載し、相手を翻弄し続けるデルタソニックと、異常なまでの機体スペックによる攻撃力を繰り出すバンシィ・ノワール。
どちらも実力が拮抗し、すでに数時間もの間戦いを続けている。
ここまでの長丁場の戦いはバンシィ・ノワールは経験した事が無く、さらに戦っている機体そのものが肉体でもあるバンシィ・ノワールは、徐々にデルタソニックに対する反応スピードが落ち始めていた。
対するデルタソニックは、覚悟を決めたカツラギが操縦するだけありそう言った衰えを一切見せず、戦況は少しずつカツラギに傾いてきている。
『貴様……まだスピードがあがるのか……!』
「当然だ。俺は今、全てを捨ててここに立っている。全てはノワール、貴様からマリナを取り戻す為!」
『ありえない……マリナに必要なのは俺だけだ……!!』
バンシィ・ノワールがそう叫ぶと、彼は脚部のロックを外し、多重関節を仕込んだ左脚でキックを放ってきた。
ノワールブラスターやノワールクローなどのアームドアーマーとは異なり、バンシィ・ノワールの基本兵装の一つではあるが、その威力はアームドアーマーとは比にならない。
デルタソニックはその攻撃を両腕で受け止めるが、勢いを殺せずにそのまま壁に激突。
その左脚を見ながら、カツラギは呟いた。
「これは……マリナが最初にお前に与えた武装……!」
『そうだ。マリナは自分に無い物を、俺に与えてくれた。何物にも負けない、とびきり強い脚を俺にくれたんだ。』
「だがその力は、マリナを……ましてや、GBNや他の人間を苦しめる為の力では無い!!」
『違う!!コレは、彼女の大嫌いな物を全て壊すための力だ!!』
右脚でキックを受け止めているデルタソニックの腕を蹴り飛ばし、再び左脚でデルタソニックを攻撃。
今度こそ攻撃が直撃したデルタソニックは勢いよく地面に激突し、その衝撃で右腕がひしゃげてしまい、フレームが破損。
なんとか立ち上がるが、その自重に耐え切れずにもぎ取れてしまった。
「くっ……う、腕が……!」
『これで終わらせてやるぞカツラギ……俺とマリナの、最大の目的の為に……!』
「その目的の為に、ここに来たと言うのか?」
『そうだ。このディメンションにいる事の意味……お前ならわかるだろう?カツラギ。』
ゴクリと唾を飲みこんだカツラギ。
バンシィ・ノワールの言っている事がカツラギの想像通りだとすれば、彼は非常に恐ろしい事をたくらんでいる。
恐る恐る、カツラギはそれを口にした。
「このディメンション『ユニコーンTWC』は、ダイバーシティのユニコーンガンダム立像の制御用ディメンション……このシステムをハッキングすれば、実物大のユニコーンガンダムを、お前の意のままに操れてしまう。」
『その通り。俺は、本物のユニコーンガンダムを使って、マリナの夢を踏みにじったあの場所を、跡形も無く壊す……!』
「……虹ヶ咲学園……それが貴様の目的か!!」
バンシィ・ノワールの真の目的。
それは、ダイバーシティの等身大ユニコーンガンダムを使い、虹ヶ咲学園を壊す事。
ガンフェスのパフォーマンス用に改造されたユニコーンガンダム立像は、ELダイバーを専用のディメンションに組み込む事で動かせるようになっている。
しかし、動かせるとは言ってもあくまでパフォーマンス用なので、そこまで激しい動きは出来ない作りになっているはず。
いくらバンシィ・ノワールがユニコーンガンダムを操ったとしても、虹ヶ咲学園を壊せる程の動きは出来ない。
「しかし、貴様がユニコーンガンダムを乗っ取ったところで学園を壊せるほどのパワーは無い。それどころか、ELバースセンターに制御を取り戻されるのがオチだ。」
『そうだ……だが、それを可能にする事の出来るプログラムを、俺は構築した……今まで各地にブレイクデカールとしてばら撒いていた俺のデータを回収し、組み上げた究極の『生きる』ブレイクデカール……。』
「それが、貴様の後ろにある巨大な塊の正体か。」
カツラギの視線はバンシィ・ノワールの背後のプログラムに移った。
ここでバンシィ・ノワールとこのプログラムを破壊しなければ、多大な犠牲出てしまう。
それもGBNという仮想空間では無く、リアルで。
そんな事を、心優しいマリナが望むはずが無い。
あの学園にはマリナを受け入れてくれた友達や、マリナの思い出が詰まっている。
「ノワール、やはり貴様はこの世界に存在してはいけない。GBNを作った者の家族として、そしてマリナの家族として……バンシィ・ノワール、貴様を消去する!!」
『言いたい事は……それだけか!!』
グワッと開いたノワールクローがデルタソニックを襲う。
抜き取ったビームサーベルでそれを防ぎ、デルタソニックはビームサーベルをバンシィ・ノワールの胸に突き立てた。
それはバンシィ・ノワールの胸をそのまま貫き、モビルスーツであるはずのバンシィ・ノワールの表情がわずかに歪む。
バンシィ・ノワールはそれでも必死に腕を伸ばし。デルタソニックの腹を掴み、ノワールクローで握りつぶした。
それによりデルタソニックのボディが歪み、パーツが破損。
バキバキという痛々しい音を立てながらデルタソニックの腹部が握りつぶされ、下半身と上半身が完全に分離してしまった。
だが、上半身だけとなったデルタソニックは背面のブースターの出力を上げながらも高度を保ち、ビームサーベルへ送るエネルギー供給量を上げてデリートシステムのパワーをバンシィ・ノワールへと流し込み続ける。
ビームサーベルで貫かれた箇所から徐々にバンシィ・ノワールの身体も崩壊しはじめ、彼は苦しみの声を上げる。
『グアァァァ……!!』
「GBNの塵となれ、ノワール!!」
『ふ……ふざけるなぁぁぁ……!!』
下半身を失いながらも、なんとかビームサーベルを振り抜き、バンシィ・ノワールを切り裂いたデルタソニック。
その場で膝をつくバンシィ・ノワールを置き去りにし、そのまま彼はバンシィ・ノワールの背後にいる巨大な黒い塊へと迫る。
このプログラムさえ破壊してしまえば、バンシィ・ノワールの目的は潰える。
バンシィ・ノワールの身体から作られた存在であるならば、このプログラムにもデリートシステムが通用するはずだ。
「このプログラムを破壊すればすべてが終わる……デルタソニック、もう少しだけ俺に力を貸せ!!」
背面のスラスターの出力を限界以上に絞りだし、勢いよくビームサーベルをプログラムに突き刺そうとするカツラギ。
これですべてが終わる……彼はそう信じていた。
バキッ!!
「……な……んだと……!?」
しかし、その想いは一瞬で崩れ去った。
モニターを覗くと、目の前にいた黒い塊から伸びた触手の様なものが、デルタソニックの胸部を貫いていた。
更にその触手はバンシィ・ノワールへと突き刺さり、デルタソニックが破壊されたのとは逆に、貫かれた箇所が徐々に修復を始めていた。
バンシィ・ノワールの修復が終わると、彼は立ち上がり、デルタソニックの方を見た。
それと同時に、バンシィ・ノワールの背面バックパックが展開し、ベース機となっているバンシィの発展型モビルスーツ『バンシィ・ノルン』に装備されているアームドアーマーXC(ゼノコネクト)と似た形の兵装が出現した。
「あ……新しいアームドアーマーだと……!?」
『ようやく……完成した……コレが、俺とマリナの願いを叶えてくれる、究極のモビルアーマー……。』
バンシィ・ノワールの新型アームドアーマー『ノワールジャッカー』が黒い光を帯びると同時に、黒い塊が徐々に装甲を開き始め、展開しだした。
本体を覆っていた黒い塊だったパーツは、まるで翼のような形状へと変化し、その姿は『機動戦士ガンダムAGE』のラスボスである『ヴェイガンギア・シド』を思わせる。
更に中から現れた本体は、『機動戦士ガンダムOO』の第1期ラスボスの『アルヴァトーレ』の様な形状のモビルアーマーから、『機動新世紀ガンダムX』のラスボスの『ガンダムヴァサーゴチェストブレイク』に似たモビルスーツが生える様な形で接続されており、『機動武闘伝Gガンダム』のラスボス『デビルガンダム』を彷彿とさせる形状をしている。
先ほどデルタソニックを貫いた触手は『新機動戦記ガンダムW』の『ガンダムエピオン』のヒートロッドに酷似している。
全身にまとわりつく棘の様なパーツは、『機動戦士ガンダムSEED』における『プロヴィデンスガンダム』のドラグーンシステムと同様であり、姿を現したモビルアーマーはドラグーンを周囲に展開。
更に右腕にはそれらを統率するためのアンテナ兼近接用武器としても使用する『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の『レギンレイズ・ジュリア』のジュリアンソードとよく似た長剣が備え付けられている。
まるでアナザーガンダムのラスボスを一纏めにしたかのような姿のモビルアーマーは、バンシィ・ノワールへのエネルギー供給を終えると、その凶悪な姿を満身創痍のカツラギに嫌という程見せつけた。
余りにもありえない姿をしたそのモビルアーマーに、一瞬驚いたカツラギ。
しかし、その一瞬が彼の命取りとなった。
「ぐああああああ!!!」
モビルアーマーが右腕を振うと、全身から切り放されたドラグーン達が一斉にデルタソニックを襲い始めた。
しかも丁寧に、逃げられないようにヒートロッドでデルタソニックを拘束した状態で。
もはやすでに戦闘不能状態となったデルタソニックへ、復活したバンシィ・ノワールが歩み寄る。
ノワールクローでデルタソニックのコックピットを引っぺがし、パイロットのカツラギがその姿を露わにした。
「………………。」
『ここまで俺を追い詰めるとは……さすがはカツラギ……。だが、この究極のモビルアーマー『アナザーノワール』の前では、何者も勝てはしない。それがたとえ、クジョウ・キョウヤであろうとも、ミカミ・リクであろうとも……高咲侑であろうともだ。』
「アナザー……ノワール……。」
自分の身体を使って作り上げた存在であるこのモビルアーマーは、まさにもう一人のバンシィ・ノワールともいえる存在。
薄れゆく意識の中で、カツラギは必死に指を動かす。
(伝えなければ……ミス・トーリに……繋げなければ……次の希望に……!)
『さらばだカツラギ。……マリナは、俺が守る。』
グシャッ!という嫌な音を立てて、デルタソニックはバンシィ・ノワールのノワールクローによってカツラギごと潰されてしまった。
それによりデルタソニックは大爆発を起こし、カツラギごと消滅。
その場には、バンシィ・ノワールと、彼から生み出された最強最悪のモビルアーマーである、アナザーノワールだけが残された。
~~
「………カツラギさん………。」
それからしばらくして……キョウヤはミス・トーリからの知らせを聞いて病院へと駆けつけた。
ガンフェスの準備中に呼び出されたと言う事もあり、キョウヤの他にもニジガクを代表して侑、歩夢、エマの3人と、リクとサラもキョウヤと共に病院へとやって来た。
彼らの目の前にいたのは、以前のランジュと同様に意識を失ってしまったカツラギと、その隣で椅子に座るミス・トーリ。
キョウヤはその姿を見て言葉を無くし、首を横に振った。
「どうして……どうしてなんだカツラギさん……!!」
「彼は、バンシィ・ノワールを消滅させるために、ヤツと戦ったわ。結果はご覧の通り。」
「戦ったって……GBNの話なんですよね!?なのに、どうして!?アシムレイトが使えるのって、私だけじゃ!?」
「GBNは限りなく現実に近い仮想空間。ゲームの仕様上ありえないほどのダメージを負えば、精神崩壊を起こして意識不明になってしまう可能性だってある……彼は、バンシィ戦ではその事を覚悟した上で戦ったのよ。」
ミス・トーリの言葉に、侑、歩夢、エマはゾッとしてしまった。
そんな彼女たちを心配そうに見るリクの頬を、サラがそっとなでる。
「サラ?」
『バンシィ・ノワールには、まだ私達の知らない秘密がある……彼は、それを暴こうとしたのかも……。』
ミス・トーリが鞄を開けると、その中からUSBメモリを取り出した。
彼女はそれをその場にいる全員に見せつけると、それが何であるのかを教えてくれた。
「ここには、カツラギがバンシィ・ノワールと戦った座標と、その戦いの記録が記されています。」
「「「!!」」」
「カツラギさん……あなたは、自分を犠牲にしてまで、ボク達にこれを託してくれたのか……。」
「高咲侑さん。」
「は、はい。」
「キョウヤから話は聞きました。あなたが、バンシィ・ノワールと戦うのですね?であれば、コレはあなたが受け取るべきです。」
ゴクリと唾を飲みこむ侑。
USBメモリと、意識を失ったカツラギの姿を交互に見る。
カツラギの姿を見るたびに、彼女の中にはバンシィ・ノワールに対する恐怖が湧きあがって来た。
「勿論強制はしません。今ならば、私はこれを持ち帰り、ヤジマ商事の総力を挙げてバンシィ・ノワールを倒す事が出来ます。どうしますか?」
確かに、侑1人が戦うよりもそちらの方が断然勝率は高い。
だが、それでバンシィ・ノワールを倒したとしても、それは根本的な解決になるとは思えない。
不安になる侑……その肩を、歩夢とエマが叩いてくれた。
「歩夢……エマさん……。」
「侑ちゃん。私はあなたのやりたい事をすればいいと思う。」
「侑ちゃんはどうしたい?」
「私は……。」
あのまま大嫌いという気持ちを抱えさせたまま、バンシィ・ノワールを倒したくない。
ただ力で屈服させるのではなく、バンシィ・ノワールに、そしてマリナに、本当の『大好き』を伝えたい。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の12人にはそれが出来る。
高咲侑にはそれを伝えることが出来る。
恐怖を振り払い、覚悟を決めて、侑はミス・トーリからUSBメモリを受け取った。
「私、やります!バンシィ・ノワールは、私達が絶対に止める!」
ガンフェス前夜祭ライブまで、残り二日。
~にじビル毎回劇場~
第100回:祝・毎回劇場100回記念
侑「毎回劇場100回突破おめでとーーー!!」
果林「でもこれ、実は毎回やってないのよね。」
エマ「バンシィ初登場の時とか、せつ菜ちゃんとランジュちゃんがバンシィと戦った回はやって無かったね。」
侑「ま、まぁそれはやる余裕が無かったと言うか……。」
ミア「ちょうど先週アニメでも同好会が全員そろったし、そのお祝いも兼ねればいいんじゃない?」
璃奈「ミアちゃん、ナイスアイデア。やろう、お祝い。」
栞子「と言っても、先日100話記念のお祝いをしたばかりですし……。」
かすみ「かすみんはあれをお祝いしたとは認めないよ!」
愛「じゃあお祝いに皆でもんじゃ100人前大食いチャレンジなんてどう?愛さん腕によりをかけるよ!」
彼方「1人8人前弱かぁ……。」
ランジュ「ランジュなら余裕よ!愛のもんじゃは美味しいもの!」
せつ菜「でしたら私もお手伝いします!!」
しずく「せ、せつ菜さんは飲み物の用意をお願いします……。」
歩夢「それじゃあ早速お皿100皿持ってくるね。」
愛「一番早く完食できた人にはご褒美もあるよ!」
せつ菜「それは腕が鳴りますね!」
エマ「どうすればたくさん食べられるかなぁ?」
歩夢「出来るだけ小さくして少しずつ食べるとか……?」
栞子「いえ、それでは噛む回数が多くなる分満腹中枢が刺激されてしまいます。かと言って大きくし過ぎても……、」
侑「……いやちょっと待って!?いつの間にかお祝いの話じゃなくていかにもんじゃをたくさん攻略出来るかの話になってない!?」
愛「もんじゃだけに?」
エマ「何にもかかって無くて草。」
ランジュ「細かい事は良いわよ!!早く行きましょう!!」
果林「そうね。早く行かないと100人前焼けないだろうし。」
歩夢「行こう、侑ちゃん!」
侑「……そうだね。よーし、100人前頑張って食べるぞーー!!」
エマ「ツッコミ不在になって草。」