その日、歩夢、せつ菜、しずくの三人は、三人だけでGBNにログインしていた。
ユニット別の練習をした後、練習の息抜きにと、来るべきBUILD DiVERSとのフォースバトルに備えてガンプラバトルの特訓をすることに。
アユムのガンダムドリームインパルスを相手に、セツナのガンダムスカーレットエクシアと、しずこのO-ドリーガンダムが対峙する。
ビームサーベルを構えるドリームインパルス……彼女を見据え、セツナはスカーレットエクシアの中で叫ぶ。
「行きますよアユムさん!!トランザム!!」
『TRANS-AM』
セツナが叫ぶと同時に、背中の太陽炉が光を放った。
赤いスカーレットエクシアの体がさらに赤く発光したと思ったら、次の瞬間、残像を残しながら目にも止まらぬスピードで飛び出した。
GNソードSSPを振りかざし、ドリームインパルスのビームサーベルにぶつける。
勢いのあまり地面に落ちてきたドリームインパルスだったが、アユムはとっさにブースターの出力を全開に。
地面に激突するギリギリの位置で止まると、もう片方の手に二本目のビームサーベルを持ち、スカーレットエクシアを切り裂こうとした。
セツナもそれを見切り、寸前でかわし、二人は一定の距離を取る。
「……ふぅ……うん!今の動き、すごく良かったよセツナちゃん!」
『ありがとうございますアユムさん!おかげ様で、トランザム中の動きもマスターできました!』
「トランザム……凄いシステムだよね。こんな簡単にガンプラが強くなるなんて。」
『いえ、簡単な事ではありませんよ。GBNでトランザムを使う為には、ガンプラの精度を上げる必要があるんです。雑な作りでは、機体が耐え切れずにすぐにパワーダウンしてしまうんですよ。』
「へぇ、そうなんだ。そういえばセツナちゃん、最近ガンプラ作り頑張ってたもんね!」
『はい!ファンの方々が色々アドバイスをくれるんですよ!』
「じゃあ、次はしずこちゃんの番だよ!」
『はい、よろしくお願いしますアユムさん!』
スカーレットエクシアが下がり、今度はO-ドリーがドリームインパルスの前に立つ。
ライフルとシールドを構え、O-ドリーがドリームインパルスへ先制射撃を仕掛ける。
それを左腕のシールドで防ぎ、ドリームインパルスが一気に加速。
ビームサーベルでO-ドリーをとらえ、一撃を喰らわせた。
「うぅぅ……!や、やっぱり強い……アユムさん……!」
『しずこちゃん、全力で来ていいよ!私、いくらでも受け止めるから!』
「わかりました!では、私も行きます……いけるよね、O-ドリー!」
O-ドリーガンダムのベース機は、Oガンダムとノーベルガンダム。
Oガンダムにはエクシアと同じく、太陽炉が搭載されている。
操縦桿を操作し、コントロールパネルを開くと、そこにある赤いボタンをタッチした。
『TRANS-AM』
「しずこ、参ります!!トランザム!!」
『DANGER』
「え?きゃあ!!」
『しずこちゃん!?』
『どうしたんですか、しずこさん!!』
セツナと同じように、トランザムを発動しようとしたしずこ。
だが、発動と同時にO-ドリーの太陽炉が爆発を起こし、機能が停止してしまった。
膝をつき、コックピットから転げ落ちてきたしずこを、ドリームインパルスが掌で受け止めた。
しずこを地面に卸すと、アユムとセツナはそれぞれのガンプラから降りて彼女へ駆け寄った。
「しずこちゃん大丈夫!?」
「はい……ありがとうございます、アユムさん……。」
「トランザムが暴発したんでしょうか?」
「でも、しずこちゃんのO-ドリー、とってもよく出来てるのに……。」
「ッ……! アユムさんセツナさん!もう一回お願いします!」
「でもしずこさん……。」
「お願いします!!」
「……わかったよ!やろう、しずこちゃん!」
「ありがとうございます!」
O-ドリーをインターミッションエリアで回復させると、再びドリームインパルス、スカーレットエクシアと模擬戦を行うしずこ。
だが、彼女は何度やってもトランザムの発動を安定させることが出来ず、結局その日、しずこはトランザムを使いこなすことが出来なかった。
~~
「……はぁ~……。」
「しずくちゃん、すごく大きなため息……。」
翌日のお昼休み、しずくはO-ドリーガンダムを手に大きなため息をついていた。
いつも通り1年生4人で集まってお昼ご飯を食べながら、スクールアイドル談義やガンプラ談義で盛り上がっている中、一人だけ思い悩むしずくに璃奈が声を掛ける。
「どうかしたの?」
「うん。実は、昨日A・ZU・NAの3人でガンプラバトルの特訓をしてたんだけど……。」
「うぇぇ!?秘密の特訓!?かすみん達も誘ってよぉ!!」
「歩夢さん……私の事は誘ってくれなかったんですね…………泣いてませんよ?」
「いや、だからA・ZU・NAの特訓だって……。それで私、歩夢さんと模擬戦をやったの。でも、私だけうまくトランザムを使いこなせなくて……。」
「トランザムを?そういえばしずくちゃんのガンプラ、元々はOガンダムだったっけ。」
「「とらんざむ……?」」
聞きなれない単語に、首をかしげたかすみと栞子。
実はしずくも、トランザムは強くなる機能という認識しかなかったため、よくわかっていない。
「トランザム。太陽炉、およびGNコンデンサーに蓄積された高濃度圧縮粒子を全開放することで、機体が赤く発光して、一定時間だけ出力が3倍になる。発動中は残像が出来るぐらい速くなる。璃奈ちゃんボード『了解、トランザム』」
「えー!じゃあトランザム使えるガンプラ使った方が得じゃん!しず子ずるーい!」
璃奈の説明に、頬を膨らませたかすみ、それを抑えようとする栞子。
しずくは真面目にメモを取っていて、璃奈は説明を続けた。
「でも、いいことばかりじゃない。トランザムは発動中にGN粒子を大量に消費するから、再チャージするまでの間出力が大幅低下する。まさに、諸刃の剣。璃奈ちゃんボード『トランザムは使うなよ』」
「なるほど、その弱点が大きいから、皆が皆トランザムを搭載しているわけではないんですね。」
「だからそのトランザムを完璧に使いこなせるビルドダイバーズのリクさん、すごく憧れる。」
「ふーん。使えればいいってもんでもないんだねぇ。」
感心して頷くかすみと栞子。
しかし、このトランザムを使いこなせないというのは、しずくにとって大きなコンプレックスになりつつあった。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のガンプラ11機の中で、トランザムが使えるのはせつ菜のスカーレットエクシアとしずくのO-ドリーのみ。
そのせつ菜はトランザムを理解して使いこなし、実力では上のはずの歩夢と互角に渡り合った。
しかし、自分はそのトランザムの発動すらままならず、このままでは足手まとい……そう考えていた。
「私……どうすればいいんだろう……。」
「今日もユニット練習だけど、しずくちゃんは今日もGBNに行くの?」
「うん、そのつもりだよ。」
「ユニット練習……。」
「しお子、どこのユニットにも入ってないからってそんな涙目にならなくても……。」
「泣いてませんってば!!いいんですよ私は一人で集中して練習したいので!!」
「困ってるなら、マギーさんに相談してみればいい。あの人、すごく頼りになる!璃奈ちゃんボード『にっこりん♪』」
「マギーさんか……前にシャフリさんと一緒にかすみさんの事も助けてくれたし、相談してみるよ!ありがとう璃奈さん!」
「うん、ファイト!」
今後の方針が決まり、決意を新たに立ち上がるしずく。
するとお昼休み終了のチャイムが聞こえ、お昼をまだ食べていない事を思い出して4人は慌ててご飯を口に詰め込んだ。
~~
放課後になり、しずくは歩夢とせつ菜と共にガンダムベースへと急いだ。
すぐにGBNへログインし、しずことなり、ロビーでマギーを探す。
相変わらずほかのダイバーのお節介をやいていたマギーはやって来た3人を発見すると、彼女たちへ手を振った。
「あら~!アユムちゃん達お久しぶり~♡」
「こんにちわマギーさん!」
「聞いたわよ。あなた達、今度メイちゃん達とバトルするんでしょう?絶対応援に行くわね!」
「ありがとうございます!私たち、頑張ります!」
「でも、今回のフォース戦は5対5で行うんでしょ?あなた達、11人もいるけど大丈夫?選抜決めで揉めたりなんかしちゃダメよ?」
「アハハ、それはまたフォースを組んでから考えます。Dランク以上は私とユウちゃん、しおこちゃんとカリンさん、エマさん、カナタさんだけなので。」
新しくアカウントを作り直したカリンとエマ、そして二人の再始動と同時にGBNを始めたカナタの3人は、驚異的なスピードでポイントを稼ぎまくり、すでに誰よりもダイバーポイントを多く稼いでいた。
しおこ以外の1年生やアイ、セツナの5人は、何度かミッション失敗もしているため、なかなかDランク以上に慣れていない。
特に、その中でも一番ポイント獲得数が少ないのはしずこで、単独撃破数はいまだに0。
その理由は、O-ドリーガンダムの操作性の悪さにあった。
「マギーさん!!」
「あら、どうしたのしずこちゃん?」
「私、トランザムがどうしても使いこなせないんです……このままじゃ、皆の足手まといになってしまいます……。どうやったらもっと強くなれるでしょうか!?」
「ん~……そうねぇ。強くなりたいって事なら、アタシよりもっと適任がいるのだけれど、よければ紹介しましょうか?」
「本当ですか!?ぜひお願いします!」
「OK!じゃあ、今から送る座標に向かってみて。紹介状はアタシの方から出しておくから♪」
「ありがとうございますマギーさん!」
マギーからもらった座標をインストールすると、さっそくしずこはカタパルトへと向かった。
アユムとセツナも彼女を追いかけようとするが、それを一旦マギーに止められた。
「しずこちゃん、ずいぶん焦ってるみたいね。」
「はい……トランザムが使えない事を、かなり気にしてるみたいで……。」
「それは見たらわかるわ。でも、無理もないわね……だってあの子のガンプラって、Oガンダムとノーベルガンダムの組み合わせでしょ?」
「そのようですが……それが何か問題あるんですか?」
「本当なら、シャフリちゃんにお願いしたいところなんだけど、あの子の焦りっぷりなら、たぶん今から会いに行く子の方がいいかもしれないわ。二人とも、しずこちゃんの事、よろしく頼むわね。」
「「はい!」」
マギーに頭を下げ、アユムとセツナもカタパルトへ。
それぞれのガンプラに乗り込むと、三人は目的地を目指して飛び立った。
~~
三人が向かった場所は、高山エリアにある、カンフー映画に登場しそうなフォースネスト。
入り口には門番のジムが2機立っており、それを見てアユムはポカンと口を開ける。
「ほ……本当にここなの……?強くなれそうではあるけど……ちょっと怖いなぁ……。」
「マギーさんの紹介なら間違いないはずです!では、さっそく入りましょう!」
「今日のしずこちゃん、なんだかいつものセツナちゃんみたい。」
アユムがそう呟くころには、しずこもセツナも入り口前まで来ていた。
彼女も急いで二人に駆け寄ると、門番ジムが行く手を阻む。
『何者だ!ここは、神聖なるフォース『虎武龍』の縄張りであるぞ!』
『我らが聖域を犯す者ならば、即刻立ち去れ!!』
「えぇ!?ど、どうしよう二人ともぉ!」
「あの、私たち、マギーさんの紹介でこちらにやって来たのですが……こちら、招待状です。」
『ムッ!確かに……!失礼いたしました!御客人様!』
『ご案内いたします!どうぞ中へ!!』
いかつい風貌の二機が、紹介状を見せただけでこんなにもあっさり頭を下げる。
改めてマギーの凄さを思い知ったA・ZU・NAは、ジムのダイバーである門下生たちに連れられ、フォースネスト本部へ。
道中、何故かダイバーのままで拳法を習っている男たちを多く見かけたが、アユムは見て見ぬふりをした。
辺りを見渡しながらセツナは目を輝かせているが、しずこの目は真剣そのもので、目的地にたどり着くまで一言も言葉を発しない。
やがて本部につくと、中から一人の男が出迎えた。
一人……?いや、一匹……?
「よく来たなお前ら。俺がこのフォース『虎武龍』のリーダー、その名もタイガーウルフだ。」
(虎みたいなオオカミだーーーーー!!?)
「ん?そっちのピンク髪のやつ、どうかしたか?」
「い、いえ!!なんでもありません!!」
「や、やっぱりタイガーウルフさん!!このフォースネストを見た時から、まさかとは思ったんです!!まさかマギーさんの紹介でお会い出来るだなんて……わ、私!感激です!!」
「お、おう……そ、そうか……。なんでマギーの紹介で来る連中ってこういうのばっかなんだ……?」
現れたのは、虎みたいなオオカミみたいな、とにかく大柄な動物のようなダイバールックの男。
その名も『タイガーウルフ』
近接格闘専門フォース『虎武龍』のリーダーであり、あのビルドダイバーズのリクの師匠でもある男だ。
その風貌に驚くアユムと、感激するセツナ。
しずこは彼の姿に一切動じず、タイガーウルフへと詰め寄った。
「あ、あの!私、しずこと申します!マギーさんから、強くなりたければあなたに会えと言われて来ました!どうか……どうか私を鍛えていただけませんか!?」
「ほう……。で?」
「え?」
「どうしてお前は強くなりたいんだ?」
「私、皆の足を引っ張りたくないんです……そのために、トランザムを使いこなせるようになりたい……だから!」
「帰れ。」
「へ?」
「帰れと言ったんだ。足を引っ張りたくないなんて、そんなのは強くなりたい理由にはならねぇ。俺は本気で強くなりたい奴しか相手にしねぇ。」
「そんな!!私は本気です!!」
「いいや本気じゃねぇ。俺の知ってる本気ってのは、もっとでかい目標を持った奴だ。たとえば、チャンピオンに近づきたい……とかな。」
タイガーウルフに拒否されてしまい、しずこは俯いた。
セツナが崩れ落ちそうになるしずこを支え、アユムがタイガーウルフに抗議しようとしたその時、フォースネストの入り口から別の男が姿を見せた。
「相変わらず、女性に対する礼儀がなっていないようだね。このバトル馬鹿め。」
「ん……?ゲッ!?てめぇ……ガンプラ馬鹿!!」
そこに姿を現したのは、妖狐の様な姿をした男……シャフリヤールだった。
彼は持っていた団扇でタイガーウルフの鼻を煽り……もとい仰ぐ。
「しゃ……シャフリさん……?」
「やぁ、久しぶりだね、しずこくん。マギーさんから、君たちがこのバトル馬鹿に会いに行くと聞いてね。心配で見に来たんだが、案の定のようだ。」
「ケッ……余計な事しやがって。テメェこそ帰んな。臭いが移っちまうだろ!」
「おやおや~?私の気のせいかな?もうすでに獣臭いような気がするんだが~?」
「テメェ喧嘩売ってんのか……?」
「理解する知能があるとは驚きだ。」
互いに目線で火花を散らしながら、お互いを煽りあうタイガーウルフとシャフリヤール。
そういえば以前、シャフリヤールには犬猿の仲の相手がいるとマギーから聞いてはいたが、それがどうやらこのタイガーウルフのようだ。
シャフリヤールに気を取られているタイガーウルフを見て、今がチャンスと言わんばかりにアユムとセツナが上目づかいでタイガーウルフに詰め寄った。
「お願いしますタイガーさん!しずこちゃんの力になってあげてください!」
「タイガーウルフさんともあろう方がこんなか弱い女の子から逃げるんですか!?幻滅しました!虎武龍のファンやめます!!」
「ぐぬぬ……!」
「ハハハ、やめておきたまえ君たち!こんな脳みそまで筋肉で出来ているようなバトル馬鹿に、しずこくんのように可憐な御嬢さんの修行の相手が務まるとはとても思えないよ!」
「言ってくれるじゃねぇかこの野郎……!おい、しずこ!!」
「は、はい!!」
さんざん煽られてさすがに参ったのか、タイガーウルフはついに折れてしまった。
なお、彼は女性に対する免疫が皆無のため、だいたいこの方法を使えば女性ダイバーなら相手をしてくれる。
証言者はかの有名なビルドダイバーズのモモ。
「おほんっ!あー……まぁ、さっきは色々言って悪かった。一回だけなら相手をしてやる。それでお前を見極めてやるよ。」
「あ……ありがとうございます、タイガーウルフさん!」
「じゃあガンプラ準備して中庭まで来い。」
~~
タイガーウルフに案内され、中庭までやってきたA・ZU・NA。
中庭と言っても、1/1サイズのガンダムが戦えるだけの広さがあり、虹ヶ咲学園のグラウンドよりも圧倒的に広い。
O-ドリーガンダムに乗り込み、タイガーウルフを待つしずこ。
アユム、セツナ、シャフリヤールの三人は防護バリアが張られたエリアのベンチに座り、戦いを見学。
しばらくするとタイガーウルフの乗る緑色のガンダムが姿を見せた。
右肩にオオカミ、左からに虎の意標を持つ、『新機動戦記ガンダムW』に登場するアルトロンガンダムの改造機だ。
『こいつが俺の相棒、『ガンダムジーエンアルトロン』だ。そいつがお前の相棒か?』
「はい、O-ドリーガンダムです。大女優を志す、私の心を現したガンプラです!」
『心を現した……ねぇ……。』
「さぁ、皆さんお待ちかね!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が誇る、演劇界の期待の新星!桜坂しずくことしずこの操るO-ドリーガンダム!!迎え撃つは、あの有志連合戦でも大活躍!フォース『虎武龍』が誇る最強の武人タイガーウルフの乗るガンダムジーエンアルトロン!!はたしてしずこは、タイガーウルフに一矢報いることが出来るのか!?ガンプラバトル、レディ………ゴー!!!」
「………セツナちゃんどうしたの?」
「お約束です!!」
セツナが謎の掛け声をかけると同時に、番人ジムが巨大銅鑼を鳴らした。
戦いのゴングが鳴り、O-ドリーガンダムがジーエンアルトロンから遠ざかった。
腰にマウントしていたライフルを手に取り、ジーエンアルトロンへ先制射撃。
だが、ジーエンアルトロンはその弾丸を全て手で掴んで受け止めた。
規格外の反射神経に驚くしずこだったが、今度はビームガンに持ち替え、ジーエンアルトロンを狙撃した。
『実弾がダメならビームで……か……悪くない判断だが……!』
ビームが命中する寸前、ジーエンアルトロンは空高く飛び上がる。
さらに両肩のタイガー拳とウルフ拳を両腕に装備し、空を蹴って一気にO-ドリーへ接近。
彼女の顎を殴り飛ばし、一気にHPを削った。
『きゃあああ!!』
「し、しずこちゃん!」
「あーーーーっとなんという事でしょう!!タイガーウルフの一撃が、しずこのO-ドリーを大きく吹き飛ばしたーーー!!はたして、しずこは立ち上がれるのでしょうか!!」
「セツナちゃんちょっと落ち着いて!!」
「ふむ……あのガンプラ、やはり……。」
強すぎる。
少なくとも、自分から見ても鬼のように強い三年生組……彼女たちとは比べものにならない位に。
反射神経、攻撃力、スピード、どれをとっても一級品だ。
「こ、これが上位ランカーのガンプラ……でも、あの人に喰らいつけていければ……私だって、きっと……!いけるよね、O-ドリー?」
O-ドリーのコックピットに表示された『TRANS-AM』の文字。
これを使いこなすために、今自分はここにいる。
全ては同好会の皆のために、初めてのフォースバトルで勝つために。
『TRANS-AM』
「しずこ、参ります………!行くよO-ドリー、トランザム!!」
「!! ダメだ、しずこくん!!」
「シャフリさん?」
『DANGER』
O-ドリーのトランザムを発動したしずこ。
だが、O-ドリーガンダムの体は赤くなると同時に、体中から煙とGN粒子を放出しはじめた。
エネルギーが逆流し、O-ドリーは膝をつく。
HPは減っていないが、もはや戦える状態ではない。
「そ、そんな……動いてO-ドリー!今立ち上がらなきゃ、私は……!」
『もういい。十分わかった。』
「え、ちょ、ちょっと待ってください!私はまだ……!」
ジーエンアルトロンから降りたタイガーウルフ。
しずこもO-ドリーがもう動かない事を確認すると、仕方なくコックピットから降りてきた。
タイガーウルフはO-ドリーを見上げ、腕を組んだ。
「しずこ、なんでお前がトランザムを使いこなせないかわかるか?」
「わかっています……それは、私がまだ未熟だから……。」
「いや、違う。」
しずこの言葉に、タイガーウルフは首を振る。
彼はしずこへ背中を向けると、彼女へ言った。
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。」
「え?」
「この言葉の意味を理解したら、また来るといい。その時、お前はもっと強くなれる。」
「あの、それってどういう……!」
それだけを言い残し、タイガーウルフはしずこの前から立ち去った。
アユムとセツナがしずこの下へ来ると、彼女たちはGBNからログアウトして行った。
~~
歩夢、せつ菜と別れ、しずくは鎌倉にある自宅へと帰宅した。
お風呂から上がり、パジャマに着替えた彼女は、自室に入ってきた愛犬のオフィーリアを撫でる。
タイガーウルフの毛は固いので、柔らかいオフィーリアを見ていると癒される。
「わんっ!」
「フフフ、オフィーリアはいい子だね。………敵を知り、己を知れば、百戦危うからず……。」
オフィーリアを撫でながら、机の上に置いたO-ドリーガンダムを見つめる。
シャフリヤール……リュックの指導を受けながら、かすみ、璃奈と一緒に作ったO-ドリー。
何故自分がトランザムが使えないのか……そのことを考えながら、タイガーウルフの言った言葉を繰り返し口にした。
「敵を知り………己を、知る………。私を……O-ドリーを……知る……?」
~にじビル毎回劇場~
第10回:素朴な疑問
マギー「あら~、やっぱりしずこちゃん、やられちゃったのねぇ。」
歩夢「はい……しずこちゃん、頑張ったんですけど……。」
マギー「タイガちゃん、手加減が出来ない子だからねぇ。」
歩夢「でも、タイガーさんいい人でしたよ。見学している私たちに席を準備してくれたり、お茶をご馳走してくれたりしました!」
マギー「あの子、女の子に免疫無いから、普段は必要以上に気を使うのよ。」
歩夢「あ、あはは……そうなんですね。」
マギー「……………。」
歩夢「どうしたんですかマギーさん?」
マギー「素朴な疑問なんだけど……どうしてタイガちゃん、アタシには優しくないのかしら?アタシも同じレディなのに。」
歩夢「え?」
マギー「え?」