「ここがお台場か……久しぶりに来たね。」
「そうね。あ、ほらセイくん、あそこ。おーい!キャロちゃーん!」
「~~~チナさん!キャロちゃんと呼ばないでと何年言い続けたら理解していただけますの!?」
ついにガンフェス開催の地である、お台場へと足を踏み入れた2人の男女。
背丈は平均より少し低めで、実年齢より若く見える青髪の男……イオリ・セイ。
そしてその隣にいるのは彼の妻であり眼鏡がよく似合う長髪の女性……イオリ・チナ、旧姓はコウサカ・チナ。
そんな2人を出迎えるのは、もちろんガンフェスの主催者であるニルスとキャロライン。
セイとニルスはかつてガンプラバトル世界大会で競い合ったライバル同士、チナとキャロラインは幼馴染と、両夫婦そろって浅からぬ縁を持つ。
今朝マリナをニジガクへ送り届けた時は落ち着いた雰囲気をまとっていたキャロラインだが、幼馴染のチナを前にすると昔の口調がついつい出てしまっていた。
「セイくん、よく来てくれました。」
「こちらこそ!招待してくれてありがとうニルスくん!」
「チナさんも歓迎します。是非ガンフェスを楽しんでいかれてください。もちろん、セイくんの雄姿もね。」
「うん。キャロちゃんも、招待してくれてありがとうね。」
「あなた何年経ってもわたくしへの呼び方は改めないんですのね。」
「ハハハ……。ん?あ、見てチナ!」
セイが嬉しそうに視線を向けると、その先から甚平姿に麦わら帽子という出で立ちの男が、大手を振って走ってきていた。
彼はセイの方へやってくると、そのまま左手でセイの右肩を掴み、もう片方の手でセイの左肩を叩いた。
その特徴的な糸目を見たセイは、嬉しそうに彼の名を呼んだ。
「マオくん!久しぶり!!」
「セイはんこそお元気そうで!いやぁ、開会式の前に会えて嬉しいわぁ!」
やってきた男は、ミオの父親であるヤサカ・マオ。
ファイターとしてデビューする前からセイをライバル視していたこの男は、第7回ガンプラバトル世界大会の上位入賞者の中ではセイとは最も長い付き合いとなる。
今日もセイとようやく会えるという事で、家族で朝から車を飛ばしてお台場までやってきた。
「あれ?ミオちゃんはいないの?」
「あぁ、ミオちゃんなら限定品のガンプラを買いに行ったんや。ミサキちゃんはもうすぐ来ると思う。」
「え?マオくんあんな小さい子一人にして大丈夫なの!?」
「その辺は心配あらへん!ミオちゃんと仲良くしてくれてる子がおって、その子たちが一緒に遊んでくれとるさかい。」
「あ、もしかしてそれって、虹ヶ咲の子たち?」
「そうそう。そっか、セイはん達もあの子らと面識あるんやったっけ。」
「達っていうか、私は直接は会った事は無いけど……ね、セイくん。」
「うん。りなこちゃんには2回も助けられたよ。」
そう言いながら、セイは数か月前の事を思い出す。
ぺリシアでのガンプラの暴走や、ガンプラマフィアによるアバターの人身売買。
その時に手助けしてくれたりなこ……天王寺璃奈の存在。
そして彼女の所属している虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会といえば、昨日とある偉業を成し遂げた。
「……ニルスくん、バンシィの件、力になれなくてごめん……。」
「……いえ、セイくんにはセイくんのやるべき事があったんです。世界中に蔓延っていた残りのブレイクデカールとガンプラマフィアの排除……本当に助かりました。バンシィの件はこちらで4代目やカミキ・セカイくんに依頼をしていたんですが……まさか、あの子たちが最後までやり遂げてしまうとは思いもしませんでしたよ。」
「もうあんな事件はこりごりやなぁ。」
バンシィ・ノワールの事件の時、セイはガンフェスに向けて機体を調整しながら、残りのブレイクデカールの処理と、彼らと因縁深いガンプラマフィアの残党の制圧をしていた。
マオの方も本業の旅館があるため、かつての同胞の中でこの事件に対処できたのはニルスだけだった。
バンシィに対して力になれなかったセイとマオをニルスが励ましていると、チナが『あ。』と声を上げた。
「そういえばニルスくん、フェリーニさんは?来ていないの?」
「リカルド・フェリーニですか……どうでしょうか……。」
「あー、そういや最近フェリーニさんの話って聞かへんなぁ。連絡とってへんの?」
「いえ、連絡を取ろうとはしているのですが……。」
「何かあったの?」
「一度連絡が取れた際、『放っておいてくれ』と言われて、それっきり……。」
「フェリーニさん、何かあったのかな……。」
「もうあの人も若く無いし、病気とかやろか?」
「身体に異常は無いそうですが……何分それ以上語ってくれなくて……。ガンフェスに来ていればいいのですが……。」
リカルド・フェリーニとは、セイ達の仲間であり先輩でもあるベテランガンプラファイター。
去年までは普通に連絡が取れていたのだが、今年は何故か彼と連絡がつかない。
奇妙に思いつつも、ニルスはセイへ提案した。
「それではセイくん、会場へ向かいましょう。皆、君の登場を今か今かと待ち望んでいますよ。」
「ハハハ……なんだか照れるな……いよいよ、リクくんとバトルできるのか……。」
セイがずっと戦いたがっていたダイバー……リク。
その彼との戦いが、もう目前まで迫ってきている。
この日の為に作り上げたセイの集大成であるビルドストライクレイジングスターを手に、セイは会場へと向かった。
~~
リクの応援のためにガンダムベースのダイバーシティ店へとやってきた同好会一行とマリナ、ミオ。
中へ入ると、ビルドスペースはこの時間は貸し切りになっていた。
入口付近には忙しそうにガンフェスの準備をしているコウイチとツカサの姿があり、2人と交流の深い彼方が声をかけた。
「お~い、コウイチさーん、ツカサさーん。」
「あん?よう、来たかお前ら。」
「へ?あ、い、いらっしゃい皆!ごめん、今ちょっと忙しくて手が離せなくて!リクくん達ならビルドスペースにいるから入っていいよ!」
「貸し切りだけど入っていいのー?」
「お前らは今更だろ。つーか、そんなところでこんな人数でボーっと突っ立てる方が邪魔だ。」
「むむむ……相変わらず言い方に棘のある人ですねぇ……。」
「それがツカサさんだからねぇ~。じゃあ入ろうか。」
コウイチとツカサの許可ももらえたので、ビルドスペースへと入っていく14人。
するとそこにはビルドダイバーズのメンバーと、BUILD DiVERSのメンバーが勢ぞろいしており、リクとヒロトが机に座ってダブルオーの最終チェックを行っていた。
リクはダブルオーセイバーを、ヒロトはインフィニティライザーの調整を行っているが、2人とも額に汗をかきながら真剣な表情で機体に向き合っていた。
「うわー……なんか、コレ入っていい雰囲気じゃ無くない……?」
「う、うん……そうかも……。」
愛と歩夢が外のお祭り感と真逆の雰囲気が漂うこの場に息をのんでいると、彼女たちの存在に気が付いたモモカとカザミが大きく手を振ってくれた。
「よーう!来たなお前ら!まぁ座れよ!」
「君たちが来るの待ってたんだから!ほらほら!」
「わっ!?も、モモちゃんカザミくん、ちょっと!」
モモカが侑の手を引き、皆のところへと連れていく。
侑が全員の前に連れていかれると、リクとヒロト含めてその場にいた全員が彼女たちの周りに集まってきた。
「皆さん!お疲れ様です!」
「パルくんこんにちわ。」
「昨日のライブ、最後までしっかりと目に焼き付けたわ。凄いじゃない、皆!」
「アヤさん……ありがとうございます!」
昨日のライブと、侑とバンシィ・ノワールによるGBNの命運をかけたラストバトル。
当事者であったビルドダイバーズやBUILD DiVERSも、当然その雄姿を見届けてくれていた。
あの時のフルユニット・レインボーユニコーンガンダムは、間違いなくこのGBNの中で最強のガンダムであった。
残念ながらあの時のバトルは中継されておらずに見る事は出来なかったが、サラから話を聞いて闘志を燃やしたリクは、ヒロトと共にこれから始まるイオリ・セイとのバトルに備えていた。
「サラから話は聞いた。本当に凄いよ、侑!それにみんなも!最高のライブだった!」
「今は、ダブルオーの最終調整をしているんだ。よかったら見て行ってくれ。」
「いいの?」
「もちろん!」
再び席に着き、ダブルオーの調整に入るリクとヒロト。
塗装剥がれやプラのカス、埃など、ほんの少しの傷や汚れでさえ影響が出てしまうGBN。
ダブルオーセイバーほどのガンプラになればその程度の差など、ガンプラの性能差とリクの技量でどうにでもなるが、今回は普通の相手とは違う。
なぜなら相手はあのイオリ・セイ。
ダブルオーを弄りながら、リクは今の思いを口にした。
「俺さ。正直、イオリ・セイさんに勝てるかどうかって、あんまり自信が無かったんだ。」
「えぇ!?り、リクくんみたいに強い人が!?」
「あの人は凄い人だよ。あの人のガンプラはどこをどう見ても完璧そのものだ。もちろん、コウイチさんやシャフリさんみたいに、俺の周りには凄いビルダーがたくさんいるけど、彼らとは違う……あの人にしかない強さみたいなものを感じるんだ。」
「どういう事?」
「俺もよくわかんない。でも何っていうか……あの人の強さは、あの人にしかないけど、あの人だけのものじゃない感じがするっていうか……。」
「説明が下手くそねぇ。」
「ランジュ!余計な口を挟まないでください!」
余計な茶々を入れるランジュの口を押さえて栞子がランジュを連れていく。
ハハハと笑いながら、リクは続けた。
「初めて今回のエキシビションの話が出た時、ヒロトが俺にダブルオーにプラネットシステムを組み込むことを提案してくれたんだ。ありがとう、ヒロト。ここまで協力してくれて。」
「いや、俺もリクの為に何かしたかったんだ。今の俺があるのは、BUILD DiVERSやエルドラの皆もそうだけど、リクがあの時にサラを諦めなかったからだって。だから、その恩返しがしたかった。」
「……でもやっぱり、イオリ・セイさんは凄くて……勝てるかどうか悩んでいる時に、君たちと出会ったんだ。」
「私たちと?」
「うん。」
ダブルオーインフィニティーセイバーやクジョウ・キョウヤのガンダムTRYAGEマグナムにも劣らない強力な機体。
だが、そんなガンプラを持ってしても、イオリ・セイに勝てるかどうかわからない。
伝説のビルドファイターとのバトル……絶対に勝ちたい。
そう思っていた時、リクはモモカとコウイチから、『面白い子たちがいる』と聞いた。
そして実際にその子たちと出会ってから、リクは思い出した。
「君たちは心の底からガンプラバトルを楽しんで、バトルを通じて笑ったり、励まし合ったり、それを自分たちのステージで生かそうとしたり……俺がずっと大切にしてた事を、ガンプラバトルとライブを通じて思い出させてくれたんだ。」
「………。」
「歩夢、愛、彼方さん、璃奈の友達を大事に思う気持ち……かすみ、しずく、果林さん、ミアの上を目指したいっていう気持ち……せつ菜、エマさん、栞子、ランジュの大好きって気持ち……そして、侑の絶対に諦めないっていう気持ち。どれも、俺がずっと大事にしていた気持ちだ。それを、君たちを通じて改めて思い知ったよ!」
そう言いながら笑うリク。
同好会の13人は、どんな状況であっても決して諦めず、大好きという気持ちを貫いてきた。
それは3年前、リクがサラを助けた時と同じ。
そんな彼女たちを見て勇気づけられたリクは、ぐッとこぶしを握り、宣言した。
「俺は絶対に、イオリ・セイさんに勝つ!ここにいる全員と、約束だ!!」
「よっ!それでこそアタシ達のリーダー!」
「リっくんなら絶対に勝てるよ!」
「えぇ、応援してるわ、リク!」
リクのその言葉に真っ先に頷いてくれたのは、同じビルドダイバーズのメンバーたち。
モビルドール姿のサラもリクにクスッと笑いかけ、彼が調整していたダブルオーセイバーの前にいき、ダブルオーセイバーの手を取った。
『頑張って、リク。そしてダブルオー……リクをよろしくね。』
サラが言うと、ダブルオーの瞳が光を帯びたような気がした。
ビルドダイバーズの友情を前に、全員気合いが入り、リクのダブルオーの最終調整をみんなで手伝う事になった。
しばらく調整をしていると、サラが周りをきょろきょろと見渡す。
誰かを探しているのか、そんなサラに、同じくモビルドール姿のメイが話しかけてきた。
『どうしたのですか姉さん?』
『ノワールとマリナはどこに行ったのかな?』
『あの二人なら、少し前から姿が見えませんが……カザミ、探してこい。』
「いやなんで俺なんだよ!?」
「私が探してくる。璃奈ちゃんボード『むんっ』!」
「じゃあボクも行くよ璃奈。」
マリナとバンシィ・ノワールの姿が見えない事に気づいたサラ。
璃奈とミアが探しに行くと、割とあっさり2人は見つかった。
ガンダムベースを出らエスカレーター付近に2人はいて、何かを話しているのかすぐには出ていかずに聞き耳を立てた。
~~
「はぁ………。」
『マリナ、先ほどからため息が多いぞ。』
「うん……ごめんね、ノワール。」
『どうするのか決めたのか?』
「んー……まだ、かな……。」
『そうか。』
ガンダムベースに入る前、侑から持ち出された話。
ガンフェスの最終日、マリナもステージに上がらないかという話。
実は侑は、マリナがスクールアイドルに憧れているという話を聞いた時から、彼女の為の曲を作っていた。
『ColorfulDreams!ColorfulSmiles!』と同時進行で作り進めていた曲こそが、マリナの為の曲。
ミアの曲のように、ダンスを必要としない曲調で、マリナにはとても歌いやすい曲。
憧れのスクールアイドルになれるかもしれない……義足でも、同好会の皆とならステージに上がれるかもしれない。
そんな思いを抱えたマリナだが、彼女にはそれ以外にもステージに上がることを躊躇う理由があった。
『あの話、まだ奴らにはしていないんだな。』
「…………。」
『話しにくいのなら、俺から話そう。』
「それはダメ!大事な話だから、私からしたいの……。ねぇ、ノワールはどう思う?私、歌った方がいいかな?」
『俺に、それを答える資格はない。』
「……? 何の話をしているんだ?よく聞こえないな……。」
「最終日のライブの話だと思うけど……あ。」
物陰から聞き耳を立てていた璃奈とミアが、マリナを見てハッとした。
彼女の車椅子が、段差から落ちそうになっていた。
慌てて璃奈とミアがマリナを助けようと飛び出したが、その瞬間彼女の傍まで来ていた男性がマリナの車椅子を掴み、何とか難を逃れた。
『マリナ!大丈夫か!』
「う……うん……大丈夫……あの、ありがとうございます……。」
「ううん。無事でよかったよ。」
マリナを助けてくれた人物の顔を見て、飛び出した璃奈とミアは驚いた。
なぜならそこにいたのは、彼女のあこがれの人物だったから。
「セイさん!」
「ん?君は……もしかして、りなこちゃんと、ミアちゃん……かな?」
「え?イオリ・セイさんって……!?」
現れたのはイオリ・セイ。
彼だけではなく、彼の妻のチナや、ミオの父親のマオ、それにニルスもいた。
キャロラインは仕事で別行動をとっているようだ。
マリナを助けてくれたセイは、リアルでは初対面となる璃奈とミアにペコリと頭を下げた。
「リアルでは初めまして。イオリ・セイです。」
「天王寺璃奈です。こっちはミア・テイラーちゃん。」
「よ、よろしく。」
「それとそっちが……、」
「へ!?あ、あの、か、カツラギ・マリナです!この子はノワールです!」
『こいつが……イオリ・セイ……。』
「君がバンシィ・ノワールだね。いろいろと話は聞いてるよ。」
ノワールがセイを睨みつけるが、当の本人は特に気にしていない様子。
先ほどの事でチナがマリナに怪我が無かったかどうか確認していると、セイは璃奈に向き合った。
「試合を見に来てくれたんだよね。もうすぐ始まるから、そろそろGBNにログインしないと。」
「あの!セイさん!」
「璃奈ちゃん?」
「私、リクさんの事も応援してるけど、セイさんの事も応援する!たくさん応援するから!」
「璃奈がそういうならボクもそうするよ。あんたには恩もあるしね。」
「うん、ありがとう!頑張るよ!」
そう言ってサムズアップするセイ。
試合に備えてGBNへ向かおうとするセイ達だったが、その途中でニルスがマリナへ駆け寄り、彼女の耳元でささやいた。
「あのお話……良いお返事がもらえる事を期待していますね。」
「!」
「……フフ、では、また後程。」
『…………。』
そう言い残し、去っていった一同。
彼らを呆然と見つめるマリナを見ながら、ノワールは自身の胸を抑えつけた。
~にじビル毎回劇場~
第107回:新作マダー!?
ランジュ「マリナ!この漫画とっても面白いわ!ランジュこういうお話大好き!」
マリナ「喜んでくれて良かった!」
ノワール『SD戦国伝シリーズか。』
せつ菜「マリナさんはSDもお好きなんですね。私、七人の超将軍編までは電子で読んだんですが、その続きは読めてなくて……。マリナさんが本を持ってて助かりました!」
ランジュ「ねぇ、ランジュこの子達のガンプラも作ってみたいわ!もちろん出てるんでしょ!」
マリナ「うん。武者號斗丸や武者飛駆鳥はレジェンドBBで新規造形で出てるよ。」
ノワール『マリナ、積んでいるのがあっただろう。皆で作ってはどうだ?』
せつ菜「いいんですか!?」
マリナ「もちろん!」
ランジュ「きゃあ!嬉しいわ!號斗丸まで出てるって事は、次はこの天零頑駄無っていうのが出るのかしら?発売が楽しみね!」
マリナ「…………。」
ノワール『…………。』
ランジュ「どうしたの2人とも?急に黙っちゃって。」
せつ菜「ランジュさん。このレジェンドBBというシリーズなんですが……実はもう2年近く新作が出ていないんです……。」
ランジュ「えぇ!?」
マリナ「しかもそれ、限定品も含めてだから……一般販売だともう5年も出てないんだ……。」
ランジュ「どういうことよそれ!?」
マリナ「バンダイさん!!レジェンドBBの新作発表いつまでも待ってます!!」