ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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水星の魔女

 

 

『お母さんが言ってました……逃げたら一つ、進めば二つ、手に入るって……!』

 

 

主題歌の『祝福』をバックに鳴らしながら、お台場に用意された巨大スクリーンで流れるPV映像。

 

これこそが、『鉄血のオルフェンズ』より数年ぶりに展開される現在ガンダムシリーズの最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

 

水星からやってきたガンダムシリーズ初の女性主人公『スレッタ・マーキューリー』が物語の舞台となるアスティカシア高等専門学園にて、ヒロインのミオリネ・レンブランやライバル?のグエル・ジェターク達と出会い、成長していく学園ドラマ……に見せかけて、その実ガンダムらしい重い設定や宇宙民と地球民による優劣の差など、決してただの学園もので終わらせない奥の深い作品となっている。

今年のガンフェスでは数年ぶりのTVシリーズの新作という事で、当然のごとく大々的に取り扱われ、ガンプラやキャラクターグッズの販売、主人公機であるガンダム・エアリアルの立像の設置、GBNへのディメンション実装などなど、かなり力を入れた展開をしている。

 

 

「「うわぁ……!」」

 

 

そして、スクリーンに映し出された『水星の魔女』の映像に目を輝かせる者がここに2人。

ニジガクのガンダム好き筆頭……エマ・ヴェルデと三船栞子の2人。

初報からずっと楽しみにしていて、次々に発表される設定やガンプラ、先行配信されたバースデイソングがトラウマになるプロローグ、そしてついに先日放送開始。

放送当日は栞子の家に集まって現同好会13人(当時はランジュとミアはスクールアイドル部)で鑑賞会が行われ、考察も大いに捗った。

 

 

「さすがは数年ぶりの新シリーズ、力の入れ具合がほかの作品に比べて圧倒的です!」

「凄いよ栞子ちゃん!ほらあれ、エアリアルの立像まであるよ!」

「やはり今年のガンフェスの目玉なだけあって、人も多いですね。」

「そうだねぇ……。」

 

 

エアリアルの立像の写真を撮っていると、突然エマのお腹が鳴った。

その次に栞子も同じようにお腹が鳴り、2人とも恥ずかしそうに向かい合った。

 

 

「えへへ、お腹空いてきちゃったねぇ。」

「どこかご飯を戴ける場所を探しましょう。エマさん、何か食べたいものはありますか?」

「栞子ちゃん、水星の魔女といえばのものがあるよね!」

 

 

エマが笑顔でそう言うと、栞子も彼女の食べたいものを察して、お店を探した。

するとそのお店は『水星の魔女』のイベントブースの入口付近にあり、簡単に見つかった。

昼食時から時間が空いていたという事もありお店の中は比較的空いており、すぐに二人分の席を確保できたエマと栞子は、そのお店のメニュー表を手に取った。

 

 

「『ミオリネのトマト菜園』……そのままの名前なんですね、このお店。」

「美味しいトマト料理専門のお店なんだって!」

 

 

『水星の魔女』のヒロイン ミオリネ・レンブランは、母の遺した新しい品種のトマトを栽培しているという事で、第1話では主人公のスレッタにトマトを与えていた。

その後グエルに菜園を壊されて、それが原因でスレッタとグエルが戦う事になり、そこから物語が展開していくという……ある意味水星の魔女を代表する食べ物となっている。

メニュー表を見ている2人の前に、店員がコップに入った水と、そのまま丸かじりするためのトマトを持ってきてくれて、エマも栞子も驚いた。

 

 

「わぁ!ここ、『おとおし』でトマトが出るんだね!」

「食べたい料理だけではなく、スレッタさんと同じような体験もできるだなんて、ファンサービスの行き届いたお店なんですね。」

「さっそく食べようよ!いただきまーす!」

「いただきます。」

「ん~!ボ~ノ♡」

「これは……甘くて、それでいて野菜特有の青臭さも無い、とても美味しいトマトです!これならいくらでも食べられちゃいそうですね!」

「すいませーん!おかわりくださーい!」

「え、エマさん!その前に注文しましょう!ほら、ピザやパスタもとても美味しそうですよ!おかわりはその後にしませんか?」

 

 

とても美味しいトマトと、エマはピザ、栞子はトマトチャーハンを堪能。

ちなみに同時刻、せつ菜とランジュとマリナはうまい水とパンで昼食を済ませていた。

 

 

「この後どうしよっか?」

「ダリルバルデやガンダム・ファラクトの先行販売やGVBでのバトル体験もできるみたいですよ。」

「GVB?」

「GBNやGPDに次ぐ新しいガンプラバトルだそうです。以前せつ菜さんも体験したと言っていました。」

「面白そう!それやってみたいなぁ!」

「あとは……あ、トークショーもあるようです。ゲストはハリウッド女優のミホシさんという方ですね。」

「ミホシさん来るの!?すごーい!」

「エマさん、ハリウッド女優さんにも詳しいのですか?」

「ううん、そっちは詳しくないんだけど、ミホシさんって、昔は『キララ』っていう名前でガンプラアイドルやってたんだよ。」

「なるほど。私たちの先輩のような方なんですね。」

 

 

次の目的地をダイバーギアを開きながら相談するエマと栞子。

とりあえず無難に水星の魔女のガンプラ先行体験会に参加しようかなと話していると、店のドアが開かれた。

見覚えのある男たちが2名、席に座ってお通しのトマトを食べながら何かの相談を深刻そうな顔で始めた。

その様子が気になったエマは、いまだにダイバーギアで開催中のイベントを見ている栞子の手を指でコンコンと小突いた。

 

 

「ねぇねぇ栞子ちゃん。」

「はい?」

「あの人たちって……。」

「あの人たち?」

 

 

エマの視線の先に目をやった栞子。

深刻そうにトマトを齧っている彼らの姿を確認すると、挨拶するために席を立った。

 

 

「あの……どうかされたんですか?」

「ん……?やぁ、ヴェルデさん、三船さん、こんにちわ。」

「ちっ。どうかしてるんだと思ってんなら話しかけんな。」

「おいツカサ。その態度はないだろ。心配して話しかけてくれてるんだから。」

 

 

そこにいたのはビルドダイバーズのナナセ・コウイチと、友人のシバ・ツカサ。

2人とも今年のガンフェスの実行委員に名を連ねており、いわゆる中間管理職としてここ数日はかなり忙しそうにしていた。

その忙しさのあまりGBNにログインできず、せっかくのリクとセイのバトルを生で見る事が出来なかったほど。

ユニコーンガンダム立像に稼働用関節を入れる工事を指揮したり、お台場で行われているすべてのガンプラ体験会のコーチャーとして回ったりと、彼らの仕事はあげだしたらキリがない。

 

 

「何か困りごと?」

「うーん……まぁ、ちょっとね。」

「主演のやつが来られないんだとよ。」

「主演?」

「お前ら、この後『水星の魔女』の舞台を使ったGVBのデモンストレーションがあるの知ってるか?」

「うん。さっきイベントスケジュールで見たよ~。」

「スレッタ・マーキューリー役の方が実際にGVBでバトルをされるんですよね。」

「……実はそのスレッタ役の人が急遽来られなくなったんだ……。」

「えぇ!?ど、どうして!?」

「車のエンジントラブルだとよ。電車とかバスとか使って今向かってるらしいが、さすがに間に合わねぇ。公演は3回あるから後の2回は大丈夫だが、肝心の初回がつぶれるんじゃガンフェスの面目丸つぶれだ。チっ……せっかくの数年ぶりの新作だっていうのに……。」

「代役を立てるにしても、ボクとツカサは他の仕事もあるからなぁ……。」

 

 

 

スケジュールを確認すると、確かに水星の魔女のイベントまでもうあまり時間がない。

最悪公演回数を減らすことを検討しているというコウイチとツカサ。

エマと栞子もこんな話を聞いてしまった以上、何か2人の力になりたいとは思うが、なかなかいい案が浮かばない。

すると、ツカサがエマと栞子の顔をマジマジと見て、彼女たちに言った。

 

 

「おい。」

「あ、はい。なんでしょうか?」

「お前ら、GVBでバトルしてみる気ねぇか?」

「「えー!?」」

「ツカサ!?何考えてるんだ!?」

「こいつらはそこそこ知名度あるし、GVBの宣伝にもなる。今から他の奴を探す時間もねぇし、イベントを減らすのは得策じゃねぇ。他にいいアイデアがあるなら言ってみろ、コウイチ。」

「そんな事言われても……。」

 

 

ツカサの提案に驚いて、思わずエマと栞子は顔を向かい合わせた。

ニジガクのイベントは残すところあとは最終日のライブだけとなっていたので、唐突なイベント出演に困惑する2人。

 

 

「で、どうするお前ら?お前らが断るなら、このイベントはいったん中止せざるを得ねぇ。」

「そういう言い方するなよツカサ……はぁ……えっと、2人とも、どうかな?ボクとしても、ぜひ2人に出てもらえたら嬉しいんだけど。」

 

 

改めてコウイチからもお願いされたが、エマも栞子もすでに返事は決めていた。

2人は再び顔を見合わせて頷くと、ツカサとコウイチに向き合った。

 

 

「コウイチさん、ツカサさん。是非、私たちをそのイベントに出演させてください!」

「新しいガンプラバトル、やってみたい!お願いします!」

「決まりだ。」

 

 

エマと栞子が頭を下げると、ツカサはニヤリと笑った。

イベントに出演してもらうお礼として2人の分の食事代はコウイチとツカサで立て替えて、さっそく4人でイベント会場へと向かう事にした。

 

 

 

~~

 

 

イベント会場へと到着すると、すでに準備は万端であり、用意されたステージの上にはGPDの物によく似た筐体と、水星の魔女に登場するキャラクター達の等身大パネル。

司会者と思わしき女性がコウイチ達の下へと駆け寄り、ツカサは女性司会者へエマと栞子を引き渡した。

 

 

「ナナセさん!シバさん!まだ役の方が到着していないんですけが!」

「それなら問題ねぇ。1回目のイベントはこいつらで繋ぐ。」

「こいつらって……え!?ニジガクのエマちゃんに栞子ちゃん!?うわー!私ファンなんですサインお願いします!!……って、代役!?そんな事して大丈夫なんですか!?」

「イベントが中止になるよりはダメージが少ないからね……お客さんへの説明はお願いします。」

「わ、わかりました……。」

 

 

司会者の人もイベントの急な路線変更に戸惑いを隠せていないが、お願いされた通りサインはしてあげた。

裏側へと案内されたエマと栞子は、司会者の女性から今回のイベントの説明を受ける。

 

 

「それじゃあ今回のイベントの説明をしますね。まず、今回のバトルはGVBというバトルシステムによって行われます。これはGPDとGBNを合わせたようなシステムで、筐体の上で戦うのはGPDと同じなんだけど、実際に戦っているのはあなたたちのガンプラではなく、そのガンプラを細部まで読み込んだデータなんです。」

「なるほど。ではダメージを負っても、実際に自分のガンダムは壊れない……という事ですね。」

「そうです。」

「司会者さん、バトルのステージっていうのはやっぱり……、」

「はい。『水星の魔女』の舞台『アスティカシア高等専門学園』。そこの決闘のルールに則って、我々決闘委員会があなたたちの決闘を仕切ります。」

 

 

『水星の魔女』には、一般的なガンダムシリーズのおける戦争のようなバトルのほかに、物語のメインとなるバトルルール『決闘』というものが存在する。

このルールで戦うためには相手のガンプラを破壊する必要がある。

GPDのように戦いつつも実際に相手のガンプラを壊さないGVBの宣伝に使うにはうってつけのルールという事だ。

 

 

「だいたいのルールはわかったよ。ね、栞子ちゃん!」

「はい!今からとても楽しみです!」

「2人とも、気合いは十分ですね!それじゃあこれから本番ですけど、2人とも、賭けるものを考えておいてください。」

「「掛けるもの?」」

「『水星の魔女』の決闘では、必ず何かをかけて戦いますよね?今回のバトルでも実際に賭けをやる予定だったんですけど……あれ?ナナセさんとシバさんから聞いていませんか?」

「ううん、何も聞いてないけど……。」

 

 

確かに、『決闘』のルールに従うのならば何かを賭ける必要がある。

目を合わせて戸惑うエマと栞子。

もうすぐイベントの本番だ。

 

 

 

「賭けるもの……かぁ……。」

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第117回:遥の誕生日

彼方「うおぉおおおお!!!待ちに待っていたぞ……この時をぉぉおおおお!!!」

果林「相変わらず遥ちゃんの事になるとせつ菜以上に大きな声出るわね、彼方。」

彼方「当たり前だよ果林ちゃん!!だって世界一可愛い遥ちゃんの誕生日なんだから!!!張り切ってご馳走作るぞぉおおおお!!!!」

果林「世界一可愛い……ねぇ……。」

彼方「なに!?もしかして世界一可愛いのが遥ちゃんじゃないって言いたいわけ!?いくら果林ちゃんでも許さないよ!!!」

果林「そういうわけじゃないけど、私は……、」

彼方「え?」

果林「彼方も遥ちゃんに負けないぐらい、かわいい……って、思ってるわよ。(顎クイ」

彼方「え……は……え///!?」

果林「ウフフ、可愛い♡」

彼方「うぇぇぇぇ///!!?へ、変な事言わないで~!!」



ミア「なにしてんのあれ。」

エマ「彼方ちゃんが遥ちゃんの事で我を忘れると、ああやって果林ちゃんが落ち着かせてくれてるんだよ。」

ミア「落ち着かせるっていうか、落ちてんじゃん、あれ。」


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