ガンフェスはガンダム最大のお祭りという事もあり、バトルやガンプラ作成以外のイベントも充実している。
代表的なのは、やはりガンダムシリーズに出てくるキャラクターの衣装を自由に着ることのできるコスプレイベントだろう。
初代から鉄血のオルフェンズまでの作品はおろか、最新作の水星の魔女の衣装まで完全網羅したこのイベントは、ヴィーナスフォートを貸し切って執り行われている。
全シリーズの主要な衣装のほかにも、モビルスーツをイメージしたオリジナルファッションなども楽しめる為、特に女性人気の高いこのイベント。
ニジカクからこのイベントに参加したのは、もちろんこの2人。
「じゃじゃーん!どうですかどうですか!果林先輩!かすみん可愛いですか!」
「えぇ。とってもかわいいわよかすみちゃん。」
「むふふ~♪まぁ、かすみんならどんな衣装でも可愛く着こなせちゃいますからねぇ!」
「やっぱりルナマリアの衣装は特にかわいいわよね。次はー……んー……そうね、これなんてどうかしら?ルナマリアの妹のメイリンって子の服なんだけど。」
「じゃんじゃんいきますよ~!」
かすみと果林だった。
この2人はリクとセイのバトル後の自由時間の後、すぐにここにやってきてイベントを満喫している。
本当はしずくも一緒に来るはずだったのだが、途中で出会ったカザミ達から誘われてGBNの方へ行ってしまったので2人だけでやってきた。
かすみと果林、それとしずくは同好会の中では『衣装&グッズ考案チーム』として、日々メンバーの衣装のデザインを各々出し合ったりしているので、服への関心は人一倍強い。
最初は果林もどの服を着ようかと物色していたが、徐々にかすみを着せ替え人形にして遊ぶ方向へシフトしていき、かすみもまんざらではない様子。
「たくさんお着替えしてかすみん疲れちゃいました~……次、果林先輩の番ですよ!」
「私?」
「そうです!かすみんも果林先輩を着せ替え人形にして遊んじゃいますよ~!」
「フフフ、いいわよ。じゃあ交代ね。」
(クフフ……かすみんが選んだ恥ずかしい~衣装を着せて、恥ずかしがってる果林先輩の弱みを握ってやります……にっしっし!)
「それで?どの服を着せてくれるのかしら?」
「へ?あ、はい!これです!これをお願いします!」
「コレ……?仕方ないわね、いいわよ。」
かすみから受け取った服をもって試着室へと入り込んだ果林。
数分後、かすみから受け取った服に身を包んだ果林が出てくると、かすみはその姿に驚いた。
かすみが渡した衣装は、『機動戦士ガンダムZZ』のラスボス、ハマーン・カーンの衣装。
果林が使っているキュベレイ・ビューティーのベース機・キュベレイのパイロットであり、ガンダムシリーズを代表する女敵役のハマーン。
その服装は大胆に胸元の開いたスーツとマントであり、ハッキリ言って非常にいかかがわしい。
そんな服を着せられた果林は絶対に恥ずかしがると、かすみは確信していたのだが……、
「ウフフ♡どうかしら?」
「うぇっ!?ど……どうって言われても……!」
「あらら?かすみちゃんには少し刺激が強すぎたみたいね♡」
なんと、果林は全く動じる事無く、ハマーンの衣装を着こなして見せた。
逆にあまりにも堂々としているので、着せたかすみの方が恥ずかしくなってしまった。
そんなかすみの様子を見て果林は面白くなったのか、さらに刺激的な衣装に着替えてかすみを挑発する。
「果林先輩恥ずかしくないんですかぁ!?」
「モデルの仕事やってるとこれぐらい肌を見せる事なんて日常茶飯事よ。私のセクシーさを存分に魅せられる衣装を選んでくれてありがとね、かすみちゃん♪」
「ぐぬぬぬ……か、かすみんだって3年生になる頃にはきっと……!」
ちなみに果林は1年生の頃からスタイル抜群だったので、あと2年でかすみが果林レベルになるのは相当難しいと思われる。
「それにしても、毎年このイベントって結構人がくるって聞いたけど、今年はそんなにね。」
「たぶんそれって、コレのせいですよ。」
「コレ?」
果林が疑問に思っていると、かすみがスマホで検索したガンフェスのイベント一覧を果林に見せた。
一番上にはすでに終了したエキシビションマッチの事が書かれており、その次には大きく、『水星の魔女トークショー』というイベントが掲載されている。
「これって、エマと栞子ちゃんが行ったイベントよね?確かに最新作のイベントは盛り上がりそうだけど……。」
「それだけじゃないんですよ。ゲストを見てください。」
「ゲストって……あぁ、そういう事……。」
この『水星の魔女トークショー』は、スレッタ・マーキューリー役の声優以外にも、大物ゲストが呼ばれている。
元ガンプラアイドルとして名を馳せて、伝説となった第7回ガンプラ世界大会の実況を務め、そのままハリウッドまで羽ばたいていった世界的大スター。
「なんといってもあの『キララ』が来るんですよぉ!今や日本が誇るトップオブスター!そんなスターが間近で見れるんだったらそりゃ皆そっちに行っちゃいますよ!」
「確かに……憧れのスターが来るんなら皆そっちに行きたいわよね。」
「だったら、どうしてあなたはそっちのステージに行かないの?」
「ま、まぁ……気にならないといえば嘘になっちゃいますけど……それよりかすみんはこのコスプレイベントでさらに可愛さに磨きを掛けて、誰にも負けないスクールアイドルになるんです!かすみんの可愛い写真は早速SNSにアップして、いいねをたくさんもらっちゃうんです!」
「頑張り屋さんで偉いわねー!よしよししてあげるわ!」
「えへへ~!もっと褒めてくださ~い!」
「2人とも、そんなところでじゃれ合うと他の人の迷惑になっちゃうわよ。」
「………ん?」
その時、かすみはある事に気が付いた。
自分は果林と会話していたはず。
それなのに、返事が一つ多い。
顔を上げると、果林のすぐ隣に、全身コートにサングラスという怪しい出で立ちの女性がかすみのスマホをのぞき込んでおり、それに気が付いたかすみは絶叫を上げた。
「ぎゃーーーーー!!だ、誰ですかーーーー!!?」
「大丈夫大丈夫、怪しい物じゃないわ。」
「いやいやいやいや十分怪しいですから!!果林先輩助けてくださ~い!!」
「……もう、あんまり私の可愛いかすみちゃんをいじめないでください。ミホシさん。」
「ごめんごめん、可愛いからつい♪」
「え……?み、ミホシ……?」
何故か果林と親しげに喋る怪しい女性。
彼女は身に着けていた帽子とサングラスをとると、帽子の中で束ねていた腰まで届くほどの長い髪をほどいた。
その顔を見た瞬間、かすみは『ミホシ』と呼ばれた女性とスマホの画像を交互に見比べると、再び絶叫を上げた。
「って、ハリウッド女優のキララーーーーー!!?」
「しっ!!声が大きいわよかすみちゃん!」
「ここじゃ少し目立つわね。走って!」
「え!?えーーーーー!!?」
~~
たこ焼きミュージアム
「ん~♡美味しい!ここのたこ焼き最高!」
「ここ、スクールアイドル同好会の宮下愛って子がイメージガールやってるんです。それより、ご馳走になっちゃってすみません。」
「いいのいいの!なんていったって私、大女優だし。」
「……いやいやいや!なんでですか!!」
「どうしたのかすみちゃん?」
「どうしたのかすみちゃん?じゃないですよ果林先輩!!なんでハリウッド女優のキララ……さんがここにいるんですか!!っていうかどういう知り合いなんですか!!」
先ほどかすみと果林のところに突然現れた女性。
彼女の名前はミホシ、またの名を、『ガンプラアイドル キララ』
14年前に行われたガンプラ世界大会から一気に名をとどろかせた大女優。
現在は本名であるミホシの名前で活躍している。
ちなみに今年で41歳というなかなかの年齢だが、童顔なうえに日頃からの努力の賜物で20代前半にしか見えない。
「彼女、私の事務所の社長と知り合いなのよ。その縁で私も何度かお会いした事があるの。」
「私と一緒でアイドルやってる子で、しかもガンプラバトルでも有名人ってところにシンパシー感じちゃってね。それから果林ちゃんとは仲良くしてるの。」
「ほ……ほえ~……果林先輩、そんなすごい人とお知り合いだなんて……。」
「それにしてもしずくちゃんがこの場にいないのは残念だわ。せっかくならミホシさんにも会わせたかったんだけど。」
「桜坂しずくちゃんねぇ。あの子、演技に関しては私以上の才能を持ってるわ。ちゃんと磨くと光るわよ~!」
「え?しず子の事、知ってるんですか?」
「彼女の事だけじゃないわ。中須かすみちゃん、あなたの事も知ってるわよ。」
「えぇ!?」
「果林ちゃんたちの活躍はいつもチェックしてるの。特にかすみちゃん、あなたは自分を可愛く見せるためならどんな努力も惜しまない、そんなひたむきなところが昔の私によく似ててね。いわゆる、私の『推し』なの♪」
「か……かすみんが推し……?あ、あのキララさんの……かすみんがぁ……!?」
「ミホシさん、前からの知り合いの私を差し置いてかすみちゃんを推すなんて、ちょっと酷いんじゃありません?」
「果林ちゃん拗ねちゃった?」
「まさか。負けたくないって思っただけですよ。」
まさかの大女優から推し宣言されたかすみは、周りの声など届かないぐらい舞い上がってしまった。
ミホシは14年前、まだアイドルとして駆け出しだったころに事務所から無理やりガンプラアイドルとして売り出されて、当時はガンダムなんて全然興味が無かった彼女だったが、アイドルとして成功するために当時のガンダムシリーズを全制覇したというとんでもない過去を持つ。
その努力はすさまじく、ガンダムに全く興味がないにもかかわらず重度なガンダムオタクだった当時中学生のセイと相当コアな内容のガンダムトークが出来るほど。
だからこそかすみのスクールアイドルとして成功するための努力を惜しまず、常にアイドルとして振る舞うその直向きな姿勢に共感したようだった。
「………。」
「どうしたんですか果林先輩?」
「ううん。何でもないわ。ごめんなさい、ちょっとメイク直してくるわね。」
「メイクだったら私がやってあげるわよ。」
「飲み物も一緒に買ってきますから。ミホシさんはコーヒーでいいですか?」
「かすみんはオレンジジュースがいいです!」
「じゃあお願いしようかな。」
「わかりました。少し待っててください。」
席を立つとき、果林が少し険しい顔をしたのを、かすみもミホシも気が付かなかった。
果林が席を外してからは、かすみはミホシからアイドル時代の話を聞かせてもらった。
それと同時にセイやマオ達、当時のビルドファイターの事も。
「へ~、やっぱり凄いんですねぇ、イオリ・セイさんって。」
「ホントそれ。レイジもだけど、どんだけ強くなるのよって話。一回戦ったことあるけど、その時はそこまででもなかったのに、まさか世界大会で優勝しちゃうなんて。」
「かすみん、りな子におすすめされて世界大会の動画見ました!本戦も凄かったけど、予選も盛り上がってましたね!特にセイさんとリカルド・フェリーニって人のバトルがせつ菜先輩もおすすめで……。」
「……リカルド?」
「知ってますよねリカルド・フェリーニさん!この人のウイングガンダムとビルドストライクのバトルがりな子とせつ菜先輩の一押しみたいなんです。あれ?そういえばリカルド・フェリーニさんって、確かミホシさんの婚約者って噂が前にあったような……。」
ドンッ!!と、かすみが言いかけたタイミングで、ミホシがテーブルを思いっきり殴った。
それに驚いたかすみはビクッと肩を震わせ、恐る恐るミホシを見る。
「あ……あの~……み、ミホシさん……?」
「……その男の名前を出すな……。」
「その男って……リカルド……、」
「出すなって言ってんでしょうがぁ!!」
「ひぃぃ~!?ごめんなさいごめんなさーーーーい!!」
~~
メイク直しの為、席を外れた果林。
しかし、彼女が向かった先は、化粧室とは真逆の方向。
これはいつものように方向音痴な果林が道を間違えたから……ではない。
何故なら彼女は、とある人物を追ってきたからだ。
「盗撮かしら?それともストーカー?」
「……!!」
彼女が追ってきたのは、黒いコートに身を包んだ長身の男。
ミホシが果林たちと合流したあたりから、ずっと彼女たちの後をつけてきていた。
ミホシとかすみが話している最中に果林が彼に視線を向けると、それに気づいた彼は逃亡。
そして果林はそんな彼を追ってきた。
「お、俺はストーカーなんかじゃない!」
「そんな話信じられるわけないでしょう。ヴィーナスフォートからダイバーシティまでずっとつけてきたのよね?狙いはミホシさんかしら?いくら憧れの大スターだからって、やっていいことと悪いことの分別ぐらいつけられるでしょ。」
「違う!俺はただ……彼女に……!」
そう言って、再び男は逃げようとした。
だが、男は焦って階段に躓いてしまい、そのまま階段の下まで転がり落ちた。
幸い段数の少ない階段だったので怪我はしなかったが、見たところそんなに若くは見えなかったので果林は慌てて男へ駆け寄った。
「いててて……!」
「ちょ、ちょっとあなた!大丈夫!?」
「ちっくしょ~……イタリアの伊達男と呼ばれた男が……情けなくて涙が出てきやがる……。」
「……あら?あなた……。」
転げた拍子に男が被っていた帽子が外れ、素顔が露になった。
駆け寄った果林はその男の顔に見覚えがある。
ガンプラを少しでも齧った事のある者なら、この男の事を知らない者はいないからだ。
「あなたは……リカルド……フェリーニさん……?」
~にじビル毎回劇場~
第124回:休業
せつ菜「今週は土日を利用して福岡県までやってきました!!」
栞子「目指すはもちろん、ガンダムベース福岡です!」
エマ「ららぽーとにはνガンダムもあるから、それもばっちり見ないとね!」
せつ菜「ガンダムベース福岡は東京よりも規模は小さいですが、限定品が多く、中でも赤いユニコーンガンダムやロングレンジフィンファンネルのνガンダムといった福岡県でしか買えないガンプラが最大の目玉です!」
栞子「一説によると、赤いユニコーンガンダムは福岡県の名物である明太子や苺の品種の一つでもある『あまおう』をイメージしていると言われています。」
エマ「そう聞くとなんだか美味しそうに思えてきたよ~!早く行こう、せつ菜ちゃん!栞子ちゃん!」
せつ菜「もちろんです!行きますよ!!うおぉおおおお!!」
栞子「せつ菜さん!走ってはダメです!」
~間~
『ガンダムベース福岡改装のお知らせ 改装機関1月16日~3月下旬予定』
『改装期間中の営業について キャナルシティ5F 1月30日~3月下旬』
せつしおエマ「「「………。」」」
せつ菜「え?………え?」
栞子「かい……そう……?」
せつ菜「そ……そんな……私たちは……何のために……。」
エマ「元気を出してせつ菜ちゃん、栞子ちゃん。ほら、あれを見て。」
栞子「!! あ、あれは!!」
エマ「ガンダムベースはお休みだった。だけど、私たちがここに来たのは無駄なんかじゃないよ。だって、私たちにはまだ、あそこが残ってるんだから!」
せつ菜「え、エマさん!」
エマ「さぁ、行こうよ2人とも!いざ、ラーメンスタジアムへ~!!」