ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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ビルドファイター

GBNのバグ。

 

それが最初に発見されたのは今から3年間のブレイクデカール事件の時だった。

ガンプラのデータに不正に手を加え、ステータス上ありえない数値を叩き出すことの出来るブレイクデカール……それを使うマスダイバー。

それによりシステムが不安定となり、GBNの世界中に様々なバグが発生した。

だが、有志連合の活躍によってマスダイバーは根絶され、すべてのプログラムはビルドダイバーズのガンダムダブルオーダイバーエースの光の翼により修復・修正。

後にそれを参考に運営が修正パッチを開発し、ブレイクデカール事件は幕を閉じた。

 

2回目の時は、ELダイバー『サラ』が存在する事によって起きたGBNの崩壊の危機。

サラが存在する事でGBN全土に渡り様々なバグを見受けられ、例を上げればレイドボス各機が単独プレイヤーでは撃破不能なレベルまで強化されるという事件が発生。

サラのデータを現実のモビルドールに移植する事で、GBNへの負荷を軽減することにより、2回目のバグ騒動は収束。

 

3回目はBUILD DiVERSが参加したエルドラミッション……実際、これらはミッションではなく、別の惑星『エルドラ』で起きた本当の戦い。

その元凶であるエルドラの救済プログラム『アルス』が、GBNへ侵攻して来た時。

アルスはGBNのサーバーそのものへの攻撃を開始したが、有志連合の面々やそれ以外のダイバーたち、そしてBUILD DiVERSとビルドダイバーズが手を取り、元凶たるアルスを撃破。

 

 

 

これらの度重なる騒動が積み重なり、GBNの中では今でもなお、小さいながらもバグが生まれ続けている。

 

 

 

 

 

 

~~

 

 

「エマさんもカルナさんもエミリアさんもいない……りなこちゃんボード『しょぼ~ん』」

「ここで別れたんだよね?」

「うん……ここからこの子を追って、皆とはぐれたの。」

『にゃー。』

 

エマたちとはぐれた所までセイとやってきたりなこだったが、すでにそこには3人はいなかった。

相変わらず通信は繋がらず、ため息をついてしまう。

不安そうな態度を見せるりなこを見兼ね、セイは近くの店で肉まんを買ってくると、彼女に渡した。

 

「はい、これ食べて元気出して。ほら、お前もお食べ。」

『にゃー!』

「うん……セイさん、ありがとう……。」

「とはいっても、GBNじゃ味覚はあるけどお腹は膨れないけどね。コレ、僕の相棒が大好きだったんだ。」

「そうなの?」

「昔、大事なガンプラバトルの大事な大会の開会式をほったらかして、肉まんを買いに行った事があって……まぁあの時は結局買えなかったみたいだけど……それから肉まんに対して凄い執念見せるようになったなぁ……。」

「変わった人だね、その人。」

「ホントにね。りなこちゃんの友達は?どんな人なの?」

「エマさんは凄く頼りになる。ガンプラバトルもすっごく強い!かすみちゃんは凄く可愛い。でも、よくいたずらしてる。カナタさんはよく寝てるけど、すごく頑張り屋さん!」

「そうなんだ。早く見つけようね。」

「頑張る!りなこちゃんボード『むんっ』!」

 

肉まんを食べ、元気が漲ってきたりなこは勢いよく立ち上がった。 

折角なのでただエマたちを探すのではなく、セイと一緒にペリシアに展示されているガンプラたちを見て回る事にした。

本当はQU4RTZの4人で見て回るはずだったのだが、かすみんとカナタは瀕死、エマとははぐれてしまってるので仕方がない。

 

 

「セイさんの作品、たくさんあるね。」

「本当はレイジングガンダムだけを持ってくる予定だったんだけど、創作意欲沸いちゃって……ハハハ、僕、昔からガンプラの事になると周りが見えなくなっちゃうんだよね……。」

「それだけガンプラが好きって事、伝わってくるよ。」

「りなこちゃんはどんなガンプラに乗ってるの?」

「見てほしい!私の自慢のAEドム!!」

 

 

待ってましたと言わんばかりに、りなこはコンソールパネルからAEドムのデータをセイに見せた。

AEドムはりなこの得意分野を生かし、背中の電池パックから送られた電力で実際にモーター駆動する、プラモデルではなくロボットとして作ったガンプラ。

セイはそれを見て、彼女の創意工夫に関心し、深くうなずいた。

 

 

「凄いよりなこちゃん!この構造なら、並大抵の攻撃じゃビクともしないだろうね!」

「皆に負けないように頑張った!」

『にゃあー!』

「この子も褒めてくれた!」

「君にはりなこちゃんのガンプラの凄さがわかるの?」

『にゃ~♪』

 

 

りなこの抱く電子ペットを撫でるセイ。

両親とほとんど一緒に過ごしたことのないりなこ……璃奈は、もし自分に兄がいれば、こんな感じなのかなと思ってしまった。

愛をはじめ、同好会の先輩たちは璃奈にとっては、理想の姉のような存在。

もし仮に兄がいたとすれば、このセイのような、好きな事に打ち込める、優しい人だったらいいなと思う。

 

 

 

「私、この街好き。みんなの、ガンプラが好きな気持ちで満たされたこの街が、すごく気に入った!」

「僕も好きだよ。この街も、ガンプラも。」

『にゃ~。』

「この子も好きって言ってる!」

 

 

 

セイと共に過ごす時間は、とても穏やかだった。

そんな時間を過ごすりなこは、

 

 

展示されていたガンプラの瞳が、赤く光るのが見えていなかった。

 

 

 

 

 

 

~~

 

りなことバグの手がかりを探していたカルナとエミリアは、途方に暮れていた。

今回の調査目的のバグは、現時点ではとても小さい。

何しろ普通の猫と大差ない大きさだ。

それをこんな広い街で見つけろという方が無理がある。

 

「全く、隊長も面倒な任務を押し付けてくるよなぁ。そう思いませんエミリアさーん?」

「思わないわ。あなたも真面目に探しなさい。」

「はいはい。エミリアさんは真面目なんだから……。りなこちゃんの手掛かりもないし、どうすっかなー。」

 

ただでさえ、この街はビルダーの聖地として人とガンプラで溢れ返っている。

それを猫と小さな女の子、二つを見つけるなど難易度が高すぎる。

 

 

「でも、どうしてりなこさんとだけ通信が出来ないのかしら?」

「ひょっとして、そのバグ猫、りなこちゃんといたりして。」

「そうだとすれば、りなこさんを見つけるだけでいいのだけれど……急がないと、バグの影響で何が起こるかわからない。」

「今回のバグって、何が起こるんスかね?たとえば、展示されてるガンプラが動き出したりー……なんて?」

 

 

 

ドカアアアアアアン!!!!

 

 

 

「……へ?」

 

 

 

カルナが冗談交じりにそう言った瞬間、街中に突然爆発音が聞こえた。

振り返ってみると、そこにいたのは展示されていたガンプラ……RGのシャア専用ザク。

シャアザクはライフルを構えると、そこにいたダイバー達や建物を次々と破壊し始めた。

 

 

「なななな……なんだありゃ!?」

「まさか、バグ!?」

 

 

シャアザクだけではない。

展示されていたガンプラが次々と瞳を赤く光らせて起動し始めた。

1/144のデスティニーガンダムやストライクフリーダムガンダムと言った主役機や、SDガンダム、モビルアーマー、さらにはペリシアの入り口に展示されていたメガサイズガンダムまで。

カルナとエミリアは顔を見合わせると、すぐさま自分たちのガンプラを呼び出し、事態に収拾にあたった。

 

 

 

 

 

~~

 

その頃、りなことセイは、電子ペットを抱えて街中を逃げ惑っていた。

突如動き始めたガンプラたち……その中の一体であるセイ作のドムが、りなこ達に襲い掛かって来たからだ。

どこへ逃げても追いかけてくるドム……セイはりなこの後ろにつき、彼女の盾になるように走り続ける。

 

「ど、どうしてガンプラが私たちを襲ってるの!?」

「わからない!とにかく走って!」

 

すでに多くのダイバー達はログアウトしてペリシアから去っている。

残っているのは暴走しているガンプラの製作者たちと、何故かログアウト出来ないりなこと、セイをはじめとする一部のダイバー。

コンソールパネルを開いてもログアウトの文字が消えており、明らかな異常事態だ。

やがて二人は壁際に追い込まれ、逃げ道を失った。

 

 

「!? い、行き止まり!?」

「しまった……こっちの道じゃなかったのか!!」

「ど、どうすれば……あ……。」

「どうしたのりなこちゃん?」

「私、やってみる!」

 

 

コンソールパネルを開き、唯一選択できた画面。

それは、このペリシアでは一部のダイバーしか出来ないガンプラの呼び出しコマンド。

そこをタッチすると同時に、りなこの体は出現したガンプラに包まれ、ドムの前に、もう一体のドムが現れた。

 

 

これがりなこの愛機……『AE(オートエモーション)ドム』だ。

 

 

 

「りなこちゃん!!」

『私がなんとかする!りなこちゃんパーンチ!』

 

 

バックパックのスイッチを起動させると、AEドム内部の電動フレームのモーターがフル回転を始める。

このAEドムの中には、世界的に有名なあのレーシングカーのおもちゃと同じモーターを搭載しており、それが1/1サイズとなるGBNでは驚異的な運動能力を発揮する。

襲い掛かってきたドムをパンチ一発で吹き飛ばし、AEドムは街の中へと進出していった。

 

 

「りなこ、AEドム!行きます!」

『にゃ~!』

 

 

ダイバー達へと襲い掛かっていくガンプラたちを、その怪力で次々となぎ倒していくAEドム。

さすがに展示されているガンプラたちは、それぞれの強みはあれど、単純な腕力でAEドムに敵う様な機体はいない。

ガンプラたちを地面に叩き付けて機能を停止させていくAEドム……だが、彼女は決して無作為にガンプラたちを攻撃しているわけではない。

それを見ていたセイは、りなこが何をしたいのかすぐに理解した。

 

 

 

「りなこちゃん……もしかして、ガンプラたちを傷つけないように戦っている……?」

 

 

 

AEドムの攻撃は、あくまで暴れているガンプラたちの鎮圧のためのもの。

ガンプラに傷をつけないように関節部を狙い、パーツを外すことで、その動きを止めている。

だがもちろん、そんな集中力を使う事を長時間……それも何体もまとめてやっていては、限界が来てしまう。

 

 

「私、頑張る……皆が頑張って作ったガンプラ、絶対に壊させない!」

 

 

攻撃を続け、人々を守るAEドム。

メイン武器であるロケットランチャーは使用せず、近接格闘だけでガンプラ軍団を戦いを続ける。

だが、セイが上を見上げると、そんなAEドムを上空から狙おうとしている、ストライクフリーダムガンダムの姿が。

 

 

「りなこちゃん、上だ!!」

『上……!?』

 

 

すでに、ストライクフリーダムは、AEドムに対してフルバーストの構えに入っていた。

エネルギーを溜め、AEドムに狙いを定める。

避けようにも、周りを大型のモビルスーツに囲まれて身動きが取れない。

 

 

「あぁ……ッ!?」

 

 

 

 

 

 

『ところがぎっちょん、ってか!!!』

 

 

 

 

 

 

その時、ストライクフリーダムが、真横から突撃してきたガンプラに、地面にたたき落とされた。

さらに、AEドムの周りを囲んでいるガンプラ達にも、一緒に飛んできたガンプラによってビームガンで撃たれていく。

二体のガンプラはAEドムを守るように降りてくると、彼女へ振り返った。

 

『よっ!大丈夫かい、りなこちゃん!』

「その声……もしかして、カルナさん?」

『無事で良かった……と、言っていいのかしら?』

「エミリアさんも……。」

『悪いな、見つけるのが遅れちまって。バグのせいで、ここら一帯のガンプラが暴走してんだ。』

『私たちに任せて、と言いたいところだけど……この敵の数、力を貸してくれる?』

「ドムちゃんボード『了解』!」

 

ストライクフリーダムを叩き落とした赤いガンプラは、カルナの『インパルスガンダムランシエ』

巨大なビームガンを持つ青いガンプラは、エミリアの『インパルスガンダムアルク』

共に、チャンピオンを支える強力なガンプラだ。

 

両サイドから攻めてきたMGのユニコーンガンダムクリアVerと、MGのガンダム クリアVerを、ランシエとアルクでそれぞれ抑え、AEドムは群がってきた武者頑駄無7人衆と交戦を開始。

いかんせん数が多すぎて、3人だけでは捌き切れない。

だが、そんな敵を、まとめて狙い撃つガンプラが、数十メートル先にはいた。

 

 

 

『この弾道……!腕は衰えていないようね、エマ!』

『もちろん!』

 

 

 

そこにいたのは、エマの愛機であるヴェルデブラストガンダム。

大砲のように巨大なスナイパーライフルを構え、次々とガンプラ達を落していく。

その命中精度は百発百中で、狙った相手は絶対にはずさない。

さらに、そんなヴェルデブラストガンダムの後ろから、新たに二体のガンプラが飛び出し、AEドムの周りのガンプラへと襲い掛かっていった。

 

 

 

『カナタちゃんふっかーーーーーつ!!!てぇい!!』

『ザクみんワンダーランドを見せちゃいますよーーー!!』

 

 

 

メイスを持って戦場に飛び出してきた、カナタのガンダムビヨンドバルバトス。

火縄銃と刀を持った黄色いシャアザクのSDガンダム、かすみんのザクみん。

さらにザクみんは、サソリの様な巨大支援メカ『ヤミちゃん』に乗っている。

りなこの乗るAEドムを囲むように、ランシエ、アルク、ビヨンドバルバトス、ザクみん、ヴェルデブラストが並んだ。

 

 

『りなこちゃん!やっと見つけたよ~……。』

「ごめんなさい、エマさん……。」

『カナタちゃん達も心配したんだからね。』

『あれ?りなこ、その猫ちゃん何?』

「あ、これはさっき見つけた子で……それより皆、お願いがあるの!あのガンプラ達を、傷つけずに止めたいの!」

『何を言っているの!!そんな事、できるわけないでしょう!?』

 

 

りなこの提案に、エミリアが声を上げた。

だがりなこは首を振り、ダイバールックのりなこちゃんボードを非表示にして、素顔でエミリアを見つめた。

 

 

「あのガンプラ達、暴れたくて暴れてるわけじゃないと思う。それに、あれはここにいるビルダーの皆が頑張って作ったガンプラだから……傷つけたくない。」

『でも、GBNで破壊しても、実際のガンプラが壊れるわけじゃ……!』

『まぁまぁ、いいじゃ無いッスかエミリアさん!こういう時こそ、俺たちAVALONの腕の見せ所ッスよ!』

『うん、私は賛成かな?』

『よーし……カナタちゃんも頑張っちゃうぞー!』

『一番活躍するのはかすみんのザクみんですからね!!』

『あなた達……はぁ、わかったわ……好きにしなさい。』

「みんな、ありがとう!」

 

 

 

りなこがお礼を言った瞬間、飛び出した6機のガンプラ。

ヴェルデブラストとアルクは空を舞うウイングガンダムゼロを狙撃。

ランシエとビヨンドバルバトスは殴り掛かってきたガンダムバルバトス第4形態と近接戦闘を開始。

当然狙うのは、関節のポリキャップ。

上手いことを其処を狙う事が出来れば、パーツを簡単に取り外すことができ、動きを封じることが出来る。

 

そして、AEドムとザクみんは、メガサイズガンダムと交戦。

 

 

『ひょえぇ~!?な、なんなのこの大きなガンプラ~!?』

「メガサイズのガンダム……絶対に強い!」

『強いに決まってるでしょこんなの!!』

 

 

大きな腕を振りかぶり、襲い掛かってきたメガサイズガンダム。

ザクみんは逃げようとするが、AEドムはそれに立ち向かう。

なんと、メガサイズガンダムのパンチに、真っ向から殴り掛かっていった。

絶対に負けると確信していたかすみんだったが、AEドムはその拳を受け止め、それどころか押し返そうとしている。

 

 

『えぇ!?りなこのドムすっご!?』

「このAEドムは、全身に電動フレームが搭載してる。ザクみんとは違うんだよザクみんとは!」

『むっ!言ったな~……かすみんだって、ザクみんの凄いところ見せられますけど!!ヤミちゃん!!』

 

 

『MUTEKI MAZAKU-MIN』

 

 

ザクみんが乗っていたサソリの様な支援機……『ヤミちゃん』

ザクみんがそれから飛び降りると、ヤミちゃんは変形を開始し、MGサイズのガンダムの形へと差し替え変形。

胸のハッチが開き、そこへザクみんが搭載され、額に巨大な兜飾りを装着。

 

 

 

『無敵合体!!魔殺駆罠!!』

 

 

 

「が、合体した……!?SDガンダムがリアルタイプに!?」

 

 

思わず、その光景を見ていたセイが声を上げた。

 

かすみんのザクみんのベース機は、レジェンドBBの殺駆頭

だが、その改造とヤミちゃんの製作に使ったガンプラは、『戦国伝シリーズ 七人の超将軍編』で登場した巨大SDガンダム『覇道武者 魔殺駆』

ヤミちゃんは、その魔殺駆がリアルタイプに合体する時に使用される支援メカの『超呪導武者クラヤミ』の改造機だった。

殺駆頭を改造した『ザクみん』と、魔殺駆を改造した『ヤミちゃん』、その二つが合体する事で誕生するのが、かすみんの真のガンプラ『無敵武者 魔殺駆罠(マザクみん)』だ。

 

 

『いっきますよーーーー!!それーーーー!!』

 

 

手にした巨大な刀で、メガサイズガンダムの拳を受け止める。

さらに、メガサイズガンダムの腕に乗ると、そのまま胴体まで駆け上がっていった。

上半身と下半身の付け根部分まで上がると、AEドムがメガサイズガンダムを受け止めているうちに、胴体の隙間に刀を差しこむ。

 

 

『いくよりなこ!!』

「うん!せーのっ!!」

 

 

AEドムがメガサイズガンダムを押し返すと同時に、魔殺駆罠が刀を思いっきり押した。

梃子の原理で、メガサイズガンダムの上半身と下半身が外れると、上半身がそのまま地面へ落下。

動力源を失った下半身も動きを停止し、メガサイズガンダムは無傷のまま稼働を停止した。

 

 

『すごいよ二人とも!』

『うちの一年生はパワフルだねぇ~。カナタちゃんも見習いたいよ~。』

『えー……ウソだろあの二人……メガサイズ倒しやがった……。』

 

 

まさかの事態に、二人を称賛するエマとカナタ、対してちょっと引いたカルナ。

大方の敵は動きを止め、全員ほぼ無傷で機能停止している。

これでようやく一安心……その場を見ていたセイは胸をなでおろす。

だが、次の瞬間、彼は全員の奥に見えたガンプラを見て、目を見開いた。

 

 

 

「皆!!まだだ!!」

 

 

 

 

「え……?」

 

 

セイの言葉が聞こえた時には、すでに遅かった。

突然、エマの乗るヴェルデブラストガンダムの肩が爆発し、そのまま倒れこむ。

驚いたカナタも、次の瞬間、ビヨンドバルバトスの脚を何者かに狙撃され、地面に倒れた。

 

『い、今の何!?』

『カナタちゃんやられちゃったよぉ~!?』

「あ……あのガンプラ………!?」

 

 

そこにいたのは、赤いボディを持つ、今まで見た中では桁違いの完成度を誇るガンプラ。

ベース機は存在しない、ビルダー完全オリジナルのフルスクラッチ。

セイの最高傑作にして、大事なガンプラ。

 

 

レイジングガンダムだ。

 

 

 

「レイジングまで……!」

 

 

 

『な、なんですかぁ!?あのガンプラ!?めちゃめちゃ強そうなんですけどぉ!?』

「あれは、セイさんのレイジングガンダム……でも、どうして……?」

『フー………ッ!』

「え……ど、どうしたの?」

 

 

レイジングガンダムを目の前にして、突如、りなこの膝の上の電子ペットの毛が逆立った。

そこへ偶然エミリアが通信を繋ぎ、りなこの膝の上を見て声を上げた。

 

 

『りなこさん!!あなた、それは……!?』

「え、ま、迷子だったから……飼い主を捜してあげようと思って……、」

 

 

 

『今すぐソイツをコックピットから出しなさい!!そいつが今回の元凶……GBNで新しく生まれたバグの一種なのよ!!』

 

 

 

 

エミリアが叫んだ瞬間、りなこの膝の上から電子ペットの姿が消えた。

電子ペットはレイジングガンダムのコックピットへと転送され、レイジングガンダムの瞳が赤く光る。

全身のフレームが青白い光を放ち、全身から炎が噴き出したレイジングガンダム。

背中に背負った大剣『アリアンブレード』と、手の甲に仕込んでいたビームシールド『アリアンディフェンサー』を展開すると、狙いをランシエとアルクに定め、一瞬で間合いを詰めてきた。

 

 

『『!?』』

 

 

咄嗟にランスを構えたランシエだったが、アリアンブレードによって一瞬で斬り落とされた。

緊急回避の体勢に入ろうとするアンクの首を掴み、ランシエにぶつける。

まとめて吹き飛ばされた二体を、今度は武装を腰に下げたビームライフル『RGエナジーライフル』に持ち替え、二体目掛けて撃った。

あっという間にAVALONの副隊長二体を屠り、レイジングガンダムはけたたましい雄たけびを上げた。

 

 

 

『ウオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 

 

『くっそ……油断した……!』

『あれが、I・Sのガンプラ……な、なんて強さなの……!!』

 

 

まさに、『RAGE(怒り)』を体現したかのようなモビルスーツ。

バグの影響でその強さは最大まで強化され、先ほどりなこ達が戦ったメガサイズガンダムなど比較にならないぐらい強い。

AVALONの副隊長二人と、ニジガクトップの実力者であるエマとカナタ……この四人が倒され、残るはりなことかすみんの二人。

ジリジリと迫ってくるレイジングガンダムを相手に、AEドムと魔殺駆罠は後ずさる。

 

『ひぃぃ~!?な、なんですかあれぇ!?かすみんあんなのと戦いたくありませんよぉ!!』

「あれはセイさんの大切なガンプラ……それに、あの子もあれに乗ってる……わ、私も戦えない……!」

『今すぐ逃げなさい二人とも!』

『そうだぜ!!あんなの、お前らが敵う相手じゃない!!』

 

再びアリアンブレードを握りるレイジングガンダム。

AEドムも魔殺駆罠も、すでに戦意喪失状態だ。

唾を飲み込み、負けを覚悟した二人。

しかし、その時……上空から一筋の光が走り、その光はレイジングガンダムを襲った。

 

 

 

 

「あ……あれは……!」

 

 

 

 

上を見上げるりなこ。

そこにいたのは、いつか彼方が戦ったスカービルドストライクガンダムによく似たトリコロールのモビルスーツ。

背中には星型のバックパックを装備し、右手には強化ビームライフル、左手にはアブソーブシールドを構えたそのガンダムは、はるか上空からレイジングガンダムを見据える。

 

 

「………セイ、さん……?」

 

 

『ありがとうりなこちゃん……ガンプラを大事にしてくれて……。ここからは、僕が引き受ける!!』

 

 

そのモビルスーツに乗っているダイバーはセイ。

ダイバーネームは『I・S』、そして、彼のリアルネームは……、

 

 

 

 

「イオリ・セイ!!ビルドストライクギャラクシーコスモス!!行きます!!」

 

 

 

ビルドストライクギャラクシーコスモス……それが、イオリ・セイの愛機の名前。

背中に装備したギャラクシーブースターを最大まで加速させ、ギャラクシーコスモスはレイジングガンダムとの距離を一気に縮める。

構えたビームサーベルをレイジングガンダムのアリアンブレードにぶつけ、レイジングガンダムを後退させた。

当然レイジングガンダムもそれに抵抗し、反対側の手に握ったRGエナジーライフルで、ギャラクシーコスモスを至近距離から撃つ。

だが、それを読んでいたセイは素早くアブソーブシールドを前方に構え、その攻撃を全て吸収した。

 

 

「RGシステム、スターシステム、同時解放!!」

 

 

セイがコマンドを操作すると、ギャラクシーブースターの五枚の翼が展開し、合計12枚の翼に変形。

さらに全身からプラフスキー粒子を放出しはじめ、レイジングガンダムとの間に巨大なプラフスキーパワーゲートを生成した。

そこをくぐる事でギャラクシーコスモスのスピードは最大まで強化され、その勢いのままレイジングガンダムを殴り飛ばした。

先ほどまでAVALONの副隊長二人を相手に圧倒していたレイジングガンダムが、セイの操るギャラクシーコスモスを前に、赤子同前にやられていく。

 

 

「せ、セイさん!!それ以上戦うと、セイさんの大事なガンプラが……!」

『いいんだりなこちゃん。ガンプラを壊すことは、僕とアイツとの、信頼の証だから。』

「ど……どういう事……?」

 

 

 

戦いながら、セイは14年前の事を思い出す。

相棒と過ごした日々、共にガンプラバトルに明け暮れていた日々を。

創り上げては壊して、また創っていたあの日々を。

 

 

 

~~

 

(あ~、もうレイジったら!またこんな無茶苦茶に壊して……。)

 

(仕方ねーだろ壊れちまったもんは。それに、どんだけ壊しても、絶対にお前が直してくれるってわかってるしな!そうだろ、セイ。)

 

(全く……レイジは調子いいんだから。)

 

 

~~

 

 

 

「壊すことは信頼の証……そうだろ、レイジ!!」

 

 

RGシステムを完全開放し、プラフスキー粒子を機体内部のフレームに行き渡らせる。

機体が青白く発光し、すべての力を右手に注いだ。

レイジングガンダムの顔面を見据えたセイは、GBNでCランク以上のダイバーのみが使用できる『必殺技』を、相棒の機体の顔面目掛け、思いっきり叩き込んだ。

 

 

 

「ビルド……ナックル!!!」

『グオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 

 

ギャラクシーコスモスの必殺技『ビルドナックル』が、レイジングガンダムの顔面を貫いた。

頭部を失ったレイジングガンダムはその場で膝をつき、力無く崩れ落ちる。

完全に破壊されたレイジングガンダムは沈黙し、中からバグの原因となった電子ペットが姿を見せた。

瀕死になったその電子ペットへ、AEドムから降りたりなこが急いで駆け寄る。

急いで電子ペットを抱え上げると、インパルスガンダムアンクから降りてきたエミリアに止められる。

 

『に゛ゃあ……。』

 

「何をしているのあなた!!それは電子ペットではなくバグ……今回の事件の元凶なのよ!?」

「だけど、この子苦しがってる!助けてあげたい!」

「けど……、」

 

「助けてあげようよ、エミリアさん!」

 

 

そんなエミリアに駆け寄ったのは、エマだった。

彼女は第二次有志連合戦で、サラの事もGBNの事も、最後までどっちを助けるか選べなかった。

だからこそ、今回は大事な仲間であるりなこの意志を汲み、このバグペットを助ける道を選んだ。

 

 

「でも……このバグを消去しなければ、またどんな被害が出るか……!」

「でもさぁエミリアさん。ELダイバーだって最初はそんな事言われてても、結局は大丈夫だったじゃん?今回も大丈夫だって!」

「あなたはどうしてそう楽観的なのカルナ!」

「いや、別に俺だって適当で言ってるわけじゃ無いッスよ?けど、助けたいって思うのに助けられない……そんな想い、りなこちゃん達にさせたいんスか?ああいうの経験すんのは、あの時だけで十分じゃないッスか。」

「それは……、」

 

 

 

「あ、じゃあカナタちゃんから一つ提案がありま~す。」

 

 

 

「提案?」

 

 

そこへやってきたのは、かすみんと一緒にやってきたカナタ。

彼女はどこかへ通信を繋げると、その相手と親しげに話し始めた。

『りょうか~い』と間の抜けた声で返事をすると通信を切り、ニコニコしながらりなこへ言った。

 

 

「その子、助けられるかもしれないよ、璃奈ちゃん。」

「本当!?」

「うん、カナタちゃんのお知り合いは凄い人なのです。あ、ちなみに皆も知ってる人だよ~。」

「誰なんですかカナタ先輩?」

「それは会ってからのお楽しみだよ~。それじゃあ、行こう!」

 

 

カナタに案内され、ペリシアを後にしようとする6人。

りなこは最後に、ビルドストライクギャラクシーコスモスから降りてきたセイに頭を下げた。

 

 

「セイさん、今日はありがとう。」

「僕の方こそありがとう。僕たちビルダーの、何よりも大事なガンプラを、大切にしてくれて。」

「セイさんはこの後どうするの?」

「ここで奥さんと落ち合う約束をしてるから、もう少しここに残るよ。そうだ!良かったら、再来月のガンフェス、来てくれないかな?実は僕、そこでエキシビションマッチをするんだ。」

「そうなの?絶対行く!応援する!りなこちゃんボード『キラキラ~☆』」

「じゃあ今度、人数分の招待状をメッセージで送るよ。僕とフレンド登録してくれるかな?」

 

 

セイとフレンド登録をしたりなこ。

彼のダイバーネームは『I・S』だが、これまで通りセイと呼んでほしいとのこと。

りなこはセイにペコリと頭を下げると、かすみん達と共にカナタの案内する場所まで行ってしまった。

 

 

 

それから数十分後、セイの下へ、約束の人物が現れた。

 

 

 

「セイくーん!」

「チナ!ごめん……色々あって、約束のガンプラ見せられなくなっちゃって……今度リアルで見せるから……。」

 

 

メガネを掛けた美しい女性が、セイの下へやって来た。

本当は今日、親友のために作ったガンプラを、1/1サイズで見せる約束をしていたのだが、実際に見せられたのは荒れ果てたペリシアと、撃墜されたレイジングガンダム。

それを見て、チナと呼ばれた女性は、思わず笑った。

 

 

「なんだか、懐かしいね。」

「懐かしい?」

「うん。レイジくんがいた頃は、よくこうやって壊してたなーって。これから直すんでしょ、ガンプラ。」

「もちろん!だって、僕はガンプラビルダーだからね。」

 

 

そしていつか、このレイジングガンダムを操る相棒と……レイジと、セイのビルドストライクで、最高のバトルをしよう。

動かなくなったレイジングガンダムに手を伸ばし、セイは心の中で、改めてそう誓った。

 

 

 

 

 

 

~~

 

ELバースセンターとは、GBN内で突如として生まれる電子生命体『ELダイバー』をGBNのプログラムに登録し、リアルでのボディであるモビルドールを提供するための施設。

カナタに案内されてついたそこの事は、カルナもエミリアも勿論知っていた。

そして、そこでELダイバーを登録するために雇われている人物こそ、カナタの知り合いにして恩人……シバ・ツカサだ。

 

 

『まさかお前がこんな所に来るとはな近江。』

「………ツカサさんだよね?」

『見りゃわかんだろ。』

「いや、カナタちゃん的にはわかんないかなー……。」

 

 

そこにいたのは、目つきの悪い黒いハロ。

エルフ耳の男に抱きかかえられながら、りなこの連れてきたバグペットを診察しはじめる。

 

この黒いハロこそがシバ・ツカサのGBNでの姿……ダイバーネーム『アンシュ』

彼を抱きかかえているエルフ耳の男はナナセ・コウイチのGBNでの姿……ダイバーネーム『コーイチ』だ。

ELバースセンターでの仕事が、彼らの言っていた『本業』だ。

 

 

「どう……?助かる……?」

『ふむ。要するにお前らは、このバグ猫をELダイバーとして生かせ……そう言ってんのか?』

「出来る……?」

『俺を誰だと思ってんだ。出来ないわけねぇだろ。』

「だけど、すごく難しい事だよ。本来、ELダイバーはリアルで活動するためにはモビルドールっていうガンプラのボディが必要なんだけど、バグであるこの子がそれに適応できるかどうか……。」

「ボディはガンプラじゃなきゃダメなの?」

『GPDのプラネットコーティングさえ施せればガンプラじゃなくても問題はねぇ。』

「わかった。私、用意する。」

「りなこ、どうするの?」

「うん。実は……、」

 

 

りなこの提案に賛同したコーイチは、りなこと共にログアウト。

彼女に用意してもらったボディへ、すぐさまバグ猫の転送を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

 

翌日、生徒会お散歩役員の委員長でもあるはんぺんは、いつも通り我が物顔で校内を歩き回っていた。

すると、いつも自分が寝ているお気に入りのスペースに寝転がっている、一匹の猫を発見。

興味本位で近づき、体を触ってみる。

 

固い。

 

まるで、プラスチックの様な、機械の様な……そんな感触だ。

 

 

 

「アラーン!どこー?」

 

 

 

『にゃっ!』

 

ご主人様の声を聞き、『アラン』と呼ばれた機械猫は起き上がった。

校内を探し回っていた璃奈と愛に向かってはんぺんと共に飛びつくと、璃奈はアランを、愛ははんぺんを抱きかかえた。

 

 

「アラン!こんな所にいたの?」

「へー!本当にアランが動いてるんだね!」

「うん。前まではコントローラーが必要だったけど、コウイチさん達に命をもらった。今のアランは、れっきとした生き物!本物の猫!」

「ELダイバー……だっけ?」

「うん。あの子も生きててくれて、アランも動けるようになって、嬉しい。」

 

 

『アラン』とは、璃奈が以前に友達として作った機械の猫。

そのアランのボディにプラネットコーティングを施し、あのバグ猫をELダイバーとして取り入れた。

そのおかげでアランは体の構造以外は本物の生き物と変わらない。

 

 

『にゃあ。』

「よしよし、アラン、可愛い!」

「コラコラりなりー、アランばっかかわいがると、はんぺんが拗ねちゃうぞー。」

 

 

こうして、アランははんぺんの部下……生徒会お散歩役員の二匹目の役員となった。

それからしばらくの間、二匹はスクールアイドル同好会を差し置いてこの学園のアイドルとして持て囃されるのだった。

 

 

 

 




~にじビル毎回劇場~

第13回:はんぺんパイセン

果林「やれやれ、どうやら……また迷ってしまったようね。」

はんぺん「にゃあ(どうしたんだい御嬢さん)?」

果林「あら?あなたは確か……璃奈ちゃんの。」

はんぺん「にゃあ(迷ってんのかい)?にゃにゃにゃ(だったら俺についてきな。)」

果林「もしかして、案内してくれるの?」

はんぺん「にゃあ(行先はどこだい)。」

果林「じゃあ、職員室までお願いしようかしら。」

はんぺん「にゃー(おやすいごようさ)。」


~間~


果林「本当に職員室に着いたわ……。」

はんぺん「にゃあ、にゃにゃにゃ(じゃあな、あばよ)」

果林「ありがとう、はんぺん!今度お礼に何か美味しいもの持ってきてあげるわね!」


~間~


果林「さて……用事は済んだわね。それで、教室はどっちだったかしら?」




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