ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

144 / 158
最後の夜

 

ガンフェス一日目を終えて、それぞれの家路についた同好会13人とマリナ。

前日のライブから本当に色々な事があったが、なんとか無事にイベントの一日目を終えることができて、帰り着いてもいまだに興奮冷めやらない。

すっかり疲れてしまった近江彼方が自宅のマンションに帰り着くと、彼女を出迎えてくれたのは最愛の妹だった。

 

 

「お姉ちゃん、おかえりなさい。」

「遥ちゃん!ただいま~!」

 

 

妹の遥は今日はラブライブ!に向けての大事な練習があったため、ガンフェスに一緒に来れなかった。

今年は淡路島出身の非常に強力な競合スクールアイドルがいるそうで、今年から結成されたにも拘らずラブライブ!優勝候補筆頭との事で、彼女たちに負けないように日夜努力を続けている。

それでも彼方よりも先に帰って来ていた遥は、彼方の為に夕飯の準備をして待ってくれていた。

 

 

「ご飯できてるよ。ちょっと失敗しちゃったけど……。」

「えぇ!?遥ちゃんご飯作ってくれたのぉ!?ごめんねぇ、練習で疲れてるのに。」

「ううん、いつもお姉ちゃんが作ってくれてるんだから、今日ぐらい気にしないで!それにお姉ちゃんだってイベントのゲストで呼ばれてたんだから。」

「あはは~、ゲストって言っても、彼方ちゃん達は好き勝手遊んでてただけだけどね~。」

「私もガンフェスのお話聞きたいな!ご飯食べながらお話聞かせてよ!」

 

 

遥に急かされて食卓についた彼方は、遥お手製の味噌汁と卵焼きに舌鼓を打ちながら、今日あった出来事を話した。

もちろん、ダリルバルデに襲われた事は話さずに、あくまで楽しかった部分だけ。

 

 

「それで、しずくちゃん達と一緒にヒロトくん達の後つけたりして、大変だったよ~。果林ちゃんにばれたら彼方ちゃん何言われるか……。」

「アハハ!楽しそう!ねぇお姉ちゃん。お姉ちゃんたちのライブって明後日なんだよね?」

「うん。明日はその準備期間みたいなものかなぁ。」

「明日と明後日は私も部活お休みだし、東雲の皆で遊びに行こうかな。」

「ホント!?彼方ちゃん案内するよ!!」

「ありがとう。でも無理しなくていいからね。お姉ちゃんもやりたい事あるでしょ?」

「3年生で回る約束してたけど、遥ちゃん達もおいでよ~!皆には彼方ちゃんから話しておくからさ~!」

 

 

 

談笑しながら夕飯を食べ終わった2人は、そのままガンフェスの話を続ける。

その後は、遥の相談で一緒に彼女のビヨンドバエルの調整を手伝って、その日は久しぶりに一緒に眠った。

 

 

 

 

~~

 

 

帰宅したせつ菜は自分の部屋に戻ると、眼鏡をかけて菜々の姿へと戻った。

今日はたくさん遊んでしまったので、少しでも予習復習をと思い、参考書とノートを机の上に広げた。

しばらく自主勉強に励んでいるとスマホが鳴り、開いてみるとランジュからのメッセージが来ていた。

どうやら彼女は今、ニジガク寮で今日のプチ打ち上げをしているようだ。

 

 

「コレ、同好会のグループじゃなくて、2年生のグループに送られてる……フフ、ランジュさんったら、昼間あれだけ楽しんだのにまだ楽しそう。」

 

 

ランジュからのメッセージはマリナも加えた2年生だけのグループに送られていた。

どうやら明日も一緒に回ろうというお誘いのメッセージのようだ。

菜々が返信するよりも先にマリナからの返信が来て、マリナはその誘いを快諾。

同じように菜々もそれに同意するように返信を返した。

 

 

「明日は5人か……んー……じゃあ次はどこを見て回ろうかな……。今日はGBNだったし、明日はリアルのイベントも楽しそうだけど、それじゃあノワールさんがあんまり楽しめ無いかも……うーん……悩むなぁ。」

 

 

気が付いたら菜々は参考書をそっちのけで、受験勉強用のノートびっしりに明日のプランを書き込んでいた。

しかも、夢中になってしまっていたのか参考書を広げた時間からすでに1時間以上が経過していた。

 

 

「うえぇ!?も、もうこんなに経ってる!?べ、勉強が全然手についてない……いや、高校2年生のガンフェスは一生に一度だけ!!こうなったら、この3日間は勉強の事なんて忘れて、全力で楽しんでやりますよぉぉおおおお!!!」

 

 

自宅で、しかも夜中だというのにもかかわらず、テンションが上がってせつ菜モードになってしまった菜々。

机の隅っこへと追いやられた参考書の事など忘れて、無我夢中で次の日のプランを一晩中考えた。

 

 

 

 

 

~~

 

「ありがとうございましたー!またよろしくねー!」

「お疲れ様、愛ちゃん。そろそろお店、閉めよっか。」

「そーだね。ごめんねお姉ちゃん、お店手伝ってもらっちゃって。身体、大丈夫?」

「うん。お医者様もね、適度に動いた方がいいって言ってたから。愛ちゃんの役に立てたなら嬉しいな。」

 

 

ガンフェスから帰って来てからも、愛には休む暇など無い。

実家のもんじゃ屋の手伝いがあるからだ。

近所の幼馴染の美里にもお店を手伝ってもらい、その日は無事に営業を終えた愛は、美里と一緒に自分の部屋へと上がっていく。

一緒にお茶を飲みながらホッと一息ついていると、美里が愛の机に飾ってある愛参頑駄無に目をやった。

 

 

「あれが今、愛ちゃんが夢中な事?」

「うん!ガンプラバトル、すっごく楽しいんだよ!」

「へー、ちょっと見せてもらってもいい?」

「もちろん!」

 

美里に愛参頑駄無を渡すと、彼女はそれをマジマジと見つめる。

 

 

「凄くかっこいいね。」

「でしょ!そうだ!お姉ちゃんもやってみない!?ガンプラバトル!楽しいよ!」

「そうだなぁ……そうだ、じゃあ明日のイベント、私も行ってもいいかしら?愛ちゃんが見つけた新しい楽し事、見て見たいな。」

「やったぁ!じゃあ約束ね!指切りしよ指切り!」

「はいはい。」

 

 

一緒に明日のガンフェスに約束をした愛と美里。

愛が美里と一緒にやりたい事をたくさん彼女に話し、2人ともその日は翌日に思いを馳せながら床に就いた。

 

 

 

 

~~

 

 

『これでいいかな……?やっほー、皆見えてるー?』

『ちゃんと見えてるよかすみさん。璃奈さんと栞子さんも。』

『全員揃ったね。』

「はい!明日は、この4人で回るんでしたよね?」

『ミア子は誘ったんだけど、あっちはあっちで3年生で回るんだってー。』

『仕方ないよ。明後日のライブでは学年曲の披露もあるんだから、なるべく学年で固まっておきたいって思ってるんだよ。特にミアさんはプロ意識が高いし。』

『じゃあそろそろミーティング始めようか。』

「えぇ。」

 

 

1年生は帰宅後、PCでオンライン会議を始めた。

議題は明日の予定と明後日のライブで披露する学年曲について。

勉強道具とスクールアイドルの資料、それとガンプラ用の工具ぐらいしかない自室で正座を組んで会議に参加していた栞子の背後から、見慣れた女性が突然彼女へ抱き着いてきた。

 

 

「おかーえり!」

「きゃあ!ね、姉さん!?」

『あ、薫子先生だ。』

『『こんばんわー。』』

「はいはいこんばんわ、可愛い生徒たち!」

「姉さん!私たちは今大事なミーティング中なので、用事なら手短にお願いします!」

「用事?無いよそんなもん。お姉ちゃん暇だから栞子に構ってもらいに来た!」

「はぁ……すいません皆さん、すぐに追い返しますので。」

『全然いいよ気にしなくて。』

『薫子先生も明日ガンフェス、来る?』

 

 

いきなりやってきた薫子に翻弄され、頭を抱えた栞子。

かすみもしずくも璃奈も、この光景はすでに慣れっこな為、そのまま薫子を受け入れ、更に明日のガンフェスにも誘った。

その誘いを聞いた薫子は目を輝かせながら、全力で頷いた。

 

 

「うん!もちろん行く行く!そうだ!先生みんなの為に車出しちゃうぞ~!」

「ダメですよ姉さん。」

「栞子がいじめる!!」

「違います、人聞きの悪い……。姉さんは明日学校で冬季講習の補佐をやるんでしょう?私たちは冬休み中ですが、姉さんはお仕事です。」

「くっ……これが社会人の辛いところね……。」

『社会人って……薫子先生、一応まだ学生じゃ……?』

 

 

薫子は残念ながら学校があるためガンフェスには参加できず。

ウキウキで愛機のインフィニットジャスティスガンダムを持っていたが、一変してしょんぼり顔になってしまった。

 

 

『落ち込まないで、先生。』

『明後日はライブがあるんです。明後日なら先生も来れますよね?』

『かすみん達一年生で歌う、とびきり可愛い新曲があるんです!薫子先生も絶対気に入っちゃいますよ~!』

「明後日は私たちで最高のおもてなしをしますから、姉さんは明日は教師として学園を守っていてください。姉さんにはその適正があります。」

「仕方ない。残念だけど、可愛い生徒たちを放っておくわけにもいかないからねぇ……その代わり、ライブには特等席用意しといてよ!」

 

 

 

 

~~

 

 

寮暮らしの果林、エマ、ミア、ランジュは寮のラウンジに集まり、今日あった事や明日の事について話し合っていた。

こういう時口が止まらなくなるのがランジュで、話し合いというよりはランジュのトークを3人で聞く、という感じだ。

その途中に果林、エマ、ミアのスマホが鳴り、見て見ると3年生のグループに彼方からメッセージが来ていた。

 

 

「明日、3年生のグループに東雲の皆も合流させたいけどいいかな……だってさ。どうする、果林、エマ。」

「えぇ。私は構わないわ。エマもいいでしょ?」

「うん!人数は多い方が楽しいもんねぇ。」

「ちょっと~!今はランジュがお話してるのよ!」

「だってランジュの話長いんだもん。もうちょっと要点掻い摘んで話しなよ。」

「エマ~!ミアがランジュをいじめるの~!」

「でもミアちゃんもランジュちゃんのお話、しっかり聞いてるから嫌じゃ無いでしょ?」

「ミアったら素直じゃないわね。」

「う、うるさいなぁ!」

「こうなったらランジュだって2年生の皆とおしゃべりしちゃんだから!明日、2年生の皆で遊びましょう……っと、送信!」

「いちいち口に出すのか……。」

「きゃは!もうマリナからお返事が来たわ!さすがね!」

 

 

マリナからの返事をもらい、大はしゃぎするランジュ。

楽しそうな彼女を見て、果林がポツリとつぶやいた。

 

 

 

「明日は、何もないと良いけれど…。」

「「…………。」」

「どうしたのよ、エマ、ミア?」

「果林ちゃん……。」

「それ、フラグだよ。」

「別にそんなつもりで言ったわけじゃ無いわよ。」

「大丈夫よ!果林、エマ、ミア!」

 

 

マリナとメッセージのやり取りをしながら、ランジュが大声で言った。

 

 

「どんな奴が来ても、アタシ達がぶっ飛ばしてやるわよ!だってあたし達、最強チームですもの!!」

 

 

「……全く、君ってやつは……頭が空っぽなのか?」

「な、なによぉ!」

「怒るなよ、良い意味で言ったんだ。」

「褒められてる気がしないんだけどぉ……。」

「フフ、そうね。ランジュの言う通りだわ。私たち、最強だものね。」

「最強で最高のチームだよ!」

 

 

そう言いながら笑いあい、消灯時間ギリギリまで彼女たちはラウンジで語り合った。

 

 

 

 

~~

 

 

「「疲れたーー!!」」

 

 

ようやく自宅のマンションに帰って来れた侑と歩夢は、それぞれの家で夕飯とお風呂を済ませると、ほとんど同時にベランダでそう叫んだ。

隣を見ると幼馴染も一緒に叫んでいたので、ちょっとびっくりした2人だったが、こういう事も珍しくはないので互いの顔を見て笑った。

 

 

「お疲れー、歩夢。」

「侑ちゃんもお疲れ様。そうだ、さっきランジュちゃんから2年生のグループにメッセージ来てたよ。」

「え?あ、ホントだ。学年別で回るの、楽しそうだね。」

「ねぇ侑ちゃん、マリナちゃんにあの曲、渡したの?」

「……うん。渡した。どうするかは、マリナちゃん次第だけどね。」

 

 

侑がバンシィ・ノワールとの決戦前に作った、『ColorfulDreams!ColorfulSmiles!』ともう一曲。

それは、マリナがスクールアイドルになったら、と想像して作った曲。

過去の事故により、片足を失くした彼女が、夢だったスクールアイドルとして一歩を踏み出せたら……そんな想いを込めて作った。

 

 

 

「マリナちゃん、歌ってくれるかな……。」

「こればっかりは私たちの気持ちを押し付けちゃダメだよ。私たちにできる事は、きっかけを作ってあげる事だけ。もしかしたら、余計なお世話だったかもしれないけど。」

「私は、マリナちゃんと一緒に歌いたいな。」

「たぶんそれはみんな同じ気持ちだよ。特にせつ菜ちゃんとランジュちゃんは。どんな事があっても、明後日には答えが出るよ。それまでは、マリナちゃんを信じて答えを待とう。」

「どんな事があっても……ねぇ、明日は、大丈夫だよね?」

 

 

 

歩夢が不安そうな声を漏らす。

それに対し、侑は即答できなかった。

実際にバンシィ・ノワールと対峙し、今日のガンフェスでも謎の敵と二度も交戦した。

本当にあれで終わりなのかと聞かれると、そんな事は無いだろうというのが本音だ。

そんな事を考えていたら、今度は同好会のグループにランジュからメッセージが届いた。

 

 

 

『明日はなにがあっても最高な一日にするわよ!』

 

 

 

「……フフ。」

「ランジュちゃんらしいなぁ。」

「もう寝よっか、歩夢。」

「そうだね。しっかり寝て明日に備えて、ランジュちゃんの言う通り、最高な一日にしないとね!」

 

 

そう言って、2人は部屋の中へと引っ込んでいった。

 

 

 

 

 

~~

 

 

「明日は最高の一日に……か……うん、そうだね!」

『どうしたんだ、マリナ。』

「ランジュさんからメッセージが来たの。明日は最高の日にしようねだって。えへへ、こんな約束ができるなんて、幸せだなぁ。」

『マリナは彼女たちの事が大好きなんだな。』

「うん!大切なお友達だよ!」

『その大好きな友達からの誘いは、どうするんだ?』

「……ノワール、そればっかり聞いてくるね。やってみたいと思うけど……でも、やっぱり私じゃ無理だよ……。」

『そうか。マリナ、もう寝た方が良い。』

「そうだね。そうするよ。おやすみなさい、ノワール。」

『あぁ、お休み。』

 

 

就寝前にスマホを触っていたマリナとバンシィ・ノワールが会話を交わすと、マリナはそのまま寝てしまった。

ELダイバーであるバンシィ・ノワールには基本的には睡眠は必要ない。

マリナの机の上に置いてあったSDカード……それは、今日侑からマリナに渡されたもの。

その中には、マリナがスクールアイドルとして歌う為の曲が入っている。

電子生命体のバンシィ・ノワールは、SDカードに触れるだけで、中の曲を脳内に再生する事ができる。

その曲を聞いて、バンシィ・ノワールはつぶやいた。

 

 

『良い曲だ。以前の俺であれば、これを聞いただけでも憎悪に取り憑かれていただろうが、今はこの曲が心地いい。』

 

 

 

そう呟いた途端、バンシィ・ノワールは胸部に激しい痛みを感じた。

本来電子生命体であるELダイバーは、身体的痛みを感じる事は無い。

しかし、バンシィ・ノワールだけは違う。

 

 

 

『ぐぅぅ……!まだだ……まだ倒れるわけにはいかない……!マリナの夢が叶うかもしれないんだ……それまでは……!』

 

 

 

 

そして夜が明け、日が昇り、朝を迎える。

 

 

まだ誰も知らない……最後の戦いの日の朝が。




~にじビル毎回劇場~

第141回:夏休み、終わる

かすみ「なのに宿題が終わってないよーーーーー!!遊びすぎたーーー!!」

果林「毎年こうなのよね……。」

リク「ハハハ、大変だね、2人とも。」

かすみ「って、他人事みたいに言ってますけど、リク先輩もじゃないですか!!」

リク「いやー、この時期はガンプラバトルもだけどサッカー部からの助っ人とかも頼まれて、一緒に合宿まで行っちゃったんだよ!」

果林「あら、いいわね合宿。私たちもしたわよ。学校でだけどね。」

リク「へー!学校で合宿なんて楽しそうじゃん!俺たちは山の中にある廃校になった小学校を使わせてもらったんだ。夜とかめっちゃ怖かった!」

かすみ「山とか虫とかいっぱいいそうでかすみん嫌だなぁ。」

リク「結構ワイルドな生活してたよ。顧問の先生が野生の蛇を捕まえて、それを捌いて食べたり。」

かすみ「へ、へびぃ!?」

果林「あら、美味しいわよね、蛇。」


愛「……ところで君たち、宿題どこまで進んだのかなぁ?あんまりおしゃべりするなら愛さん帰っちゃうぞー?」


かす果リク「「「はい……すいません……。」」」



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。