「おぉ!やってるやってる~!」
「いきなり引っ張らないでよモモち~!」
スクールアイドル同好会のバトルが気になり、GBNへとログインしてきたモモカとユキオの二人は、ようやく彼女たちのバトルステージを発見した。
安全圏に降りて周りを見ると、いたるところで激しいバトルが繰り広げられている。
双眼鏡を使い、最も激しい爆発が起きている場所を見て、驚きの声を上げた。
「ちょっとちょっとユッキー見て見て!あそこ凄いよ!」
「あそこ……?あれって、ヴェルデバスターガンダムとキュベレイの改造機?」
「エマさんとカリンさんだよ!あの二人のバトルは見逃せないよー!」
「そうなんだ……僕もちょっと興味出て来たな。僕にも双眼鏡貸して!」
双眼鏡を受け取り、ステージの崖を覗く。
そこでは、容赦の無い攻防が繰り広げられていた。
~~
「はぁぁ!!」
『うっ……!』
ヴェルデブラストガンダムの弱点でもある近接格闘をしかけ、キュベレイ・ビューティーに乗るカリンはエマを追い詰めていた。
カリンのキュベレイ・ビューティーも、どちらかと言えば遠距離寄りの攻撃が得意だが、実際は遠距離も近距離もこなせるオールラウンダー。
キュベレイ・ビューティーは本来のキュベレイとは異なり、ビームサーベルを手に持つのではなく、両腕に装備したビームバルカンの銃口からビームの刀身が出る方式となっている。
こうする事でサーベルを手に取る時間や仕舞う時間を短縮でき、遠距離攻撃を得意とするガンプラに対して素早く格闘戦を挑むことが出来る。
「どうしたのよエマ!この程度なのかしら!?」
『カリンちゃん、戦場での油断は命取りなんだよ!!』
対するエマのヴェルデブラストガンダムには、格闘専用の武器は搭載されていない。
ビームサーベルすら持たず、ロングライフルを取り回しながらカリンの攻撃を捌いている。
本来のヴェルデバスターガンダムには、ビームライフルに銃剣が取り付けられているが、ヴェルデブラストは完全に射撃がメインとなっており、ロングライフルもエマが作ったフルスクラッチ。
一度距離を取らないと、エマは圧倒的に不利だ。
(崖の下は森……上手く落ちれば、木がダメージを抑えてくれるはず……行ける!)
ヴェルデブラストはいったん、ライフルでキュベレイ・ビューティーを押し返した。
ライフルを突きだし、キュベレイ・ビューティーのファンネルをつぶすため、まずは彼女の肩を撃ち抜くと、そのまま彼女は後ろを振り向かずに大きくバックステップを踏み、自ら崖の下へと落ちていく。
それを見たカリンはエマの行動に驚き、ライフルを構えるスピードが遅れてしまった。
「飛び降りた!!」
『これで……私のレンジ!!』
勿論、ブースターを使う事などしない。
重力に任せて下に落ちた方が、圧倒的に早いからだ。
全ての火器系統をキュベレイ・ビューティーへ向けるヴェルデブラスト。
この距離ならば、ファンネルを封じられたカリンはエマに攻撃を加える事は出来ない。
「あなたの考える事なんて、お見通しなのよ、エマ。」
『え?』
「言ったわよねあなた。戦場での油断は命取りになるって。」
次の瞬間、突如ヴェルデブラストの体の至る所が爆発を起こした。
何が起きたのかわからないエマは、我武者羅に操縦桿を動かすが、すでに全身のフレームがやられている。
撃墜される寸前、エマは確かに見た……キュベレイ・ビューティーの周りで光る、『何か』を
『キュベレイ……パピヨン……!!』
ドカアアアアアアアアン!!!
爆散し、散っていくヴェルデブラストガンダム。
それを見ながら、キュベレイ・ビューティーは膝をついた。
正直、『コレ』を出すのが遅れていれば、さっきのヴェルデブラストのフルバーストをまともに食らっていたかもしれない。
「参考にしていて、助かったわね……。」
先ほどカリンが使用したのは、無色透明のクリアパーツのみで作られた、『見えないファンネル』
これは14年ほど前の、実機バトル世界大会にて、優勝候補であったアイラ・ユルキアイネンが使用していた愛機『キュベレイ・パピヨン』が搭載していたギミック。
これで彼女はいくつもの強敵を倒してきたが、透明な分、自分も見えないので扱いが難しい。
しかし、カリンのキュベレイ・ビューティーの察知性能であれば、見えない状態でも十分に扱う事が出来る。
ヴェルデブラストとの交戦を開始した直後にすでに本体から分離していたクリアファンネルは、エマに見つかる事無く空中を漂い続け、そして見事に一番の強敵を撃破する事に成功した。
「さて……アイの援護に行こうかしら。」
~~
「え、エマちゃんがやられたのぉ!?」
『倒したのはカリンさん……凄い……。』
ニジガク最強と呼ばれていたエマが撃墜されたというメッセージは、バトルフィールド内にいる全員に行き渡った。
アユムのドリームインパルスとの戦闘により損傷を負ったビヨンドバルバトスは、りなこのAEドムと共に森の中に身を潜めていた。
事前にポイントで購入していた回復アイテムで機体を修復しながら、次の戦いを待つ二人。
恐らく、アユムは追ってはこない……彼女はしずこの救援に向かったはずだ。
カリンとアイとはまだ遭遇していないが、エマを撃墜できる可能性があるのは彼女と同等以上の火力を持つカリンのキュベレイ・ビューティーのみである事を考えると、きっとカリンが現在いるであろうポイントは、エマの狙撃ポイントのすぐ傍に違いない。
もしアイが強襲を仕掛けて来たとしても、SDガンダムの火力ではAEドムとガンダム・フレームであるビヨンドバルバトスは落とせない。
『気を付けるべきはセツナさん。あの人はトランザムもある。強い。』
「そうだねぇ。りなこちゃんはダメージは大丈夫?」
『私はさっき被弾してないから平気。それより、カナタさんは回復に専念してほしい。』
「ありがと~。エマちゃんが倒されたんなら、カナタちゃんがしっかりしないと。」
『私も頑張る!』
「お、りなこちゃん気合入ってるね~。」
『私、しおこちゃんと一緒に歌いたい。それに、かすみんちゃんも頑張ってるし、私も頑張らないと!』
「そうだよねぇ……皆、来週のライブのために頑張って来たんだもん。ライブが決定した時には栞子ちゃんはまだ同好会に加入して無かったけど、一緒に歌いたいって気持ちはあるはずだよね。私たちが止まらない限り、道は続くよね。」
『カナタさん!……そ、そのセリフはダメ!!』
「どういう事?………ハッ!!」
その時、カナタは思い出した。
ツカサとの地獄のGPD訓練の時、鉄血のオルフェンズを全話視聴した時の事を。
そして、今のセリフが、鉄血機を使うカナタにとって、もっとも言ってはいけないセリフだと言う事を。
『りなこさん!!捉えましたよ!!!』
「せ、セツナちゃん!!」
『見つかった!!』
その瞬間、潜伏しながら二人を追っていたスカーレットエクシアが、トランザムを発動しながら茂みから飛び出してきた。
GNソードSSPをライフルモードへ変形させ、GN粒子を圧縮させた弾丸をAEドム目掛けて放つ。
しかし、それをナノラミネートアーマーで覆われたビヨンドバルバトスが受け止め、AEドムが倒されないように全弾を自分の身で受け止めた。
『カナタさん……?何やってるの、カナタさん!!』
「くっ……!おりゃーーーーー!!」
折れたメイスをスカーレットエクシアに投げつけたビヨンドバルバトス。
スカーレットエクシアはそれをかわすために一度攻撃を中断したが、その隙を狙い、ビヨンドバルバトスが構えたダブルリベイクライフルで、スカーレットエクシアを狙い撃った。
攻撃は見事命中し、それによりスカーレットエクシアのGNドライブの出力が急低下。
トランザムが強制解除され、彼女は地面に落ちた。
『ぐっ………しかし、カナタさんは!!』
「はぁ……はぁ……うっ……!」
『カナタさん!私のために……!』
いくらなんでも、攻撃を受け過ぎた。
フラフラと立ち上がったビヨンドバルバトスだが、どうやら装甲を覆っていないポリキャップを狙われたようで、まともに手足を動かせない。
それでもスカーレットエクシアにとどめを刺すために、ダブルリベイクライフルを持とうとするが、力が入らなかった。
「カナタちゃんは止まらないからさ……皆が止まらない限り、その先にカナタちゃんはいるよ……!だから……、」
ついに、ビヨンドバルバトスはその場にうつ伏せに倒れこんだ。
完全に機能を停止したビヨンドバルバトスは、最後の力を振り絞り、左腕を上に突き上げた。
「止まるんじゃねぇぞ……。」
最後の最後に、死亡フラグを回収し、ついに撃墜したビヨンドバルバトスとカナタ。
ガンダムで実際にこのシーンを見れた事にセツナは感動したいところだったが、そうも言ってはいられない。
トランザム切れを起こしたガンダムは急激に能力が低下する。
そんなスカーレットエクシアの前に立ちはだかるのは、カナタの敵討ちに燃えるりなことAEドムだ。
『よくも……よくもカナタさんをーーーー!!』
『負けませんよりなこさん……!私が……私がガンダムだーーーーーー!!』
GNソードSSPをソードモードで構え、AEドムへ踏み込むスカーレットエクシア。
AEドムは全身の電動フレームをフル稼働させながら、驚異的なスピードでスカーレットエクシアに突撃する。
道中でAEドムはビヨンドバルバトスが投げた折れたメイスを拾い上げ、スカーレットエクシアのGNソードSSPにぶつけた。
当然、トランザム切れを起こしたスカーレットエクシアが、メガサイズガンダムをも受け止めるパワーを持つAEドムの腕力に勝てるはずも無い。
『こ……このパワーは……!?』
『ドムちゃんパワー、全開!!』
ついに、AEドムが、スカーレットエクシアのGNソードSSPをへし折った。
そして、カナタの遺したダブルリベイクライフルを拾い上げ、両肩のメガランチャーと共に、スカーレットエクシアに向けて最大出力の砲撃を放った。
『ファイヤーーー!!』
3つのビーム砲に包まれ、全身に亀裂が入るスカーレットエクシア。
地面に倒れたスカーレットエクシアのコックピットの中で、セツナは正面に向けて手を伸ばした。
「私は……ガンダムにはなれなかった……!くっ……!ソレスタルビーイングは、こんな事じゃ終わりませんよ!!」
『いや、セツナさんはソレスタルビーイングじゃなくてA・ZU・NAだから……。』
ようやくHPが0になり、スカーレットエクシアは機能停止。
カナタの形見となったダブルリベイクライフルをそのままAEドムの腰にマウントし、りなこは次の相手を探してその場を離れて行った。
『カナタさんがいなければ勝てなかった……カナタさんのために、私は勝つ!りなこちゃんボード『むんっ』!』
~~
二つの戦いを見学し、ユキオは興奮していた。
クリアファンネルを使うキュベレイ・ビューティーに、電動フレームで動くAEドム。
撃墜されたが、どれもよく作りこまれていてそれぞれの強みがあるヴェルデブラストガンダム、ガンダムスカーレットエクシア、ガンダムビヨンドバルバトス。
「凄い子だね!本当に初心者なの?」
「エマさんは違うけど、他は皆初心者みたいだよ。」
「そうなんだ。それにしても、あのバルバトスの子、やられる時もちゃんと原作を意識してて愛を感じるね
……僕も参考にしないとかな……。」
「いや……あれは別にそういうつもりじゃないと思うけど……。」
全員個性的な機体で、モモカが気に入るのもわかる。
双眼鏡で他の試合も見ようと辺りを見渡すと、ユキオがある事に気が付いた。
「あれ?ねぇモモち、あそこなんだか変じゃない?」
「変?何が?」
「ほら、あそこの山のところ……なんか、不自然に震えてない?」
「そうかな?ユッキー気にし過ぎじゃない?」
「そんな事無いと思うんだけど……最近またバグが多くなってきたってチャンピオンも言ってたし、ちょっと調査してみようよ。」
「えー。私まだ試合見てたいのにー……。」
「僕はモモちに無理やり連れてこられたせいでガンプラ持ってきて無いんだから。ほらほら、行くよ。」
「ちぇー。」
~~
『スーパーキュートかすみんスラーーーッシュ!!』
「ちょっ……何その変な名前の技!!」
『変な名前じゃないもん!!』
無敵武者 魔殺駆罠とO-ドリーガンダムの対決は、ほとんど互角の戦いだった。
巨体を活かしたパワフルな戦いをする魔殺駆罠に対し、O-ドリーはS・トランザムを用いたスピード戦法で挑むが、お互いに中々決定打を与えられない。
機動性に能力値を全振りしているO-ドリーのS・トランザムは、射撃能力が強化はされるが、合体する事で攻撃力がMG並になる魔殺駆罠の妖刀黒刃で全て薙ぎ払われてしまう。
だが魔殺駆罠の方も、O-ドリーのスピードについていけていない。
しずことかすみんの実力は、完全に同等。
(しずこ早すぎる……かすみんの攻撃が全然当たらないよ……!だけど、シャフリさんと作ったこの魔殺駆罠なら!!)
(かすみさんの攻撃を一撃でもらえば、私のO-ドリーが耐えられるのかわからない……ううん、弱気になったらダメ。タイガーウルフ師匠との特訓を思い出すのよしずく!)
『二連新黒星砲、用意!!』
「O-ドリー!!S・バーサーカーモード!!」
『BERSERKER MODE』
S・トランザムを切り、接近戦を仕掛ける為に今度はS・バーサーカーモードを発動。
機動性が落ちる代わりにGN粒子のすべてが攻撃力へと変換され、ビームガンをビームソードモードに変形させて魔殺駆罠へと斬りかかっていく。
対する魔殺駆罠は覇道武者魔殺駆の装備である二連新黒星砲(ツインネオこくせいほう)を構え、迎撃の体勢に。
エネルギーをチャージし、O-ドリーへと放つが、O-ドリーはそれをビームソードで切り裂き、魔殺駆罠へと飛びかかってきた。
『び、ビームを斬ったぁ!?』
「かすみさん!!私の勝ちよ!!」
『ぬ~~!!かすみん絶対負けないもぉん!!』
再び妖刀黒刃を手に、斬りかかってきたO-ドリーを迎え撃った。
O-ドリーのビームソードは妖刀黒刃を切り裂き、そのまま魔殺駆罠の体を両断。
体が真っ二つになり、そのまま魔殺駆罠は倒れそうになる。
だが、魔殺駆罠の腕は、斬りかかってきたO-ドリーをとらえたままだ。
『今だ……!ザクみんはっしーーーーん!!』
「え!?」
なんと、破壊された魔殺駆罠の体から、本体であるザクみんが飛び出してきた。
手に持った刀で、魔殺駆罠によって身動きが取れなくなっているO-ドリーの胸元から背中までを切り裂き、彼女の動力源だったGNドライブをそのまま破壊した。
「きゃあああ!!」
『かすみん、大勝利!!』
「くっ……だ、だけど……私たちにはまだ……!アユムさん!!」
『わかったよ!しずこちゃん!!』
『えぇ!?アユム先輩!?』
O-ドリーが撃墜されると同時に、空から一機のガンプラがザクみん目掛けて斬りかかってきた。
それがアユムのガンダムドリームインパルスであるという事に気が付くのに一瞬遅れたザクみんは、そのままドリームインパルスのレイピアで両腕を斬りおとされた。
『あ、アユム先輩がいるだなんて聞いてないんですけどぉ!?』
「ご、ごめんねかすみんちゃん。でも、しずこちゃんがどうしても一対一でやりたいから、決着つくまでは出てこないでって言われてて……。」
『納得いきませーーーーーん!!』
最終的に、ドリームインパルスのビームサーベルで胴体を真っ二つに斬られ、ザクみんは爆散。
O-ドリーとザクみんの対決自体はO-ドリーの敗北だったが、チーム戦としてはA・ZU・NAが勝利を収める事が出来た。
O-ドリーの遺した銃剣可変式のビームガンと、ザクみんの刀を拾い上げたドリームインパルス。
ザクみんの刀を鞘にしまって腰にマウントし、O-ドリーのビームガンはソードモードにしてドリームシルエットに取り付けた。
これで、現在アユムの持つ剣は、ビームサーベル×2、レイピア×2、ザクみん刀、可変式ビームガンソード、フォールディングレイザー対装甲ナイフ×2の8本になった。
「これでよしっ!よーし、次も頑張ろう!」
~~
愛参頑駄無は愛参命全開で何度もレインボーユニコーンを狙い撃つ。
レインボーユニコーンは背面のブースターを最大出力で噴射しながら、それをなんとか避けていく。
さすがに、PGサイズの槍をまともに受けるわけにはいかない。
いくら本体がSDガンダムと言えど、あの武器の威力自体はおそらく同好会でも最強レベルだろう。
『うらうらうらーーーーー!!当たれーーーーー!!』
「当たってやらないよーーー!!」
適度に距離を取りつつ攻撃のすきをうかがうレインボーユニコーン。
距離を詰め、槍で一撃必殺を狙う愛参頑駄無。
レインボーユニコーンは装備しているスナイパーライフルの先端を取り外し、通常のユニコーンガンダムと同規格のビームマグナムに変形させる。
それで愛参頑駄無を狙うが、愛参頑駄無のサイズではどうにも狙い辛い。
「NT-Dが自由に使えれば……!」
『足が止まってるよゆうゆ!!』
「止まってるんじゃなくて、止めてるんだよ!!」
愛参頑駄無は槍と合体し、スーパー愛参イーグルモードへと変形。
猛スピードでレインボーユニコーンとの距離を詰めてきた。
だが、これがユウの狙い。
シールドを前面に構え、さらに少し傾ける。
そこにスーパー愛参イーグルが体当たりをしてきて、レインボーユニコーンは体が傾くが、同時にスーパー愛参イーグルも勢いを殺せずに意図せずに真上に上げられてしまった。
スピードが速すぎたために、すぐに体勢を変えられない。
『や、やばっ……!』
「いまだ!!おりゃーーーー!!」
レインボーユニコーンは素早くビームマグナムをスナイパーライフルへと戻し、真上に飛ぶスーパー愛参イーグルを狙撃。
一発命中すると、そこへすかさず何発もビームを撃ち込んだ。
『う、嘘でしょーーー!!?』
何度もビームに襲われ、そのまま愛参頑駄無は爆散して撃墜された。
スナイパーライフルを下ろし、ホッと胸をなでおろすユウ。
だが、彼女は後ろから迫る殺気に気が付き、咄嗟にビームサーベルを手に取った。
『あら、反応が早いわね!』
「か、カリンさん!!」
レインボーユニコーンに襲い掛かって来たのは、ビームソードを発動させたキュベレイ・ビューティー。
鍔迫り合いをした後にお互い数歩下がり、二機とも体勢を立て直す。
『まさか、あなたまで参加しているなんて思わなかったわ。あなたが勝ったらどうするつもりなの?』
「え?あー……アハハ、そこまで考えて無かったよ。ただ、皆が楽しそうにバトルしてたから、つい我慢できなくて……。」
『ウフフ、わかるわよそういう気持ち。ただ、負けてあげるつもりは無いわ。今度のライブには、DiverDivaは3人で参加するんだから!』
怒涛のキュベレイ・ビューティーの攻撃を、なんとかビームサーベルで凌ぐレインボーユニコーン。
よく見て見ると、キュベレイ・ビューティーのショルダーにあるファンネル発射口はすでに潰されている。
ならば今のカリンにファンネルを使う事は出来ない。
純粋な格闘戦で勝負をする二人……その時、レインボーユニコーンとキュベレイ・ビューティーへ、別々の方向から二つの銃撃が襲い掛かってきた。
「『!!』」
咄嗟に避けたユウとカリン。
そして二人の下へ、それぞれの戦闘を終えたガンダムドリームインパルスと、AEドムが出現。
今の攻撃は、アユムとりなこの二人に対する牽制だった。
『アユムとりなこちゃんね。二人とも勝ち残っていたのね。』
『やっぱり、エマさんを倒したのはカリンさんだったんだね。りなこちゃんボード『びっくり』』
『えぇ!?なんでユウちゃんが参加してるの!?』
「細かい事は気にしない気にしない!」
『全然細かくないよぉ!?』
3つのユニットも、残るはそれぞれ各一人ずつになってしまった。
つまり、この戦いで勝ち残ったユニットに、栞子を迎え入れる事になる。
全員、この距離で遠距離武器を使おうなどとは思わない。
レインボーユニコーンはビームサーベル、ドリームインパルスは可変式ビームガンソードとザクみん刀、キュベレイ・ビューティーはビームソード、AEドムはビヨンドバルバトスの折れたメイス。
全員が息を呑み、それぞれの動きをよく観察する。
少しでも先に動いた者が、おそらく最初に脱落するであろう。
それがわかっているから、誰も微動だにしない。
だが、一番最初に動いたのは、意外な機体だった。
ドゴオオオオオオオオオン!!!
「「「「!!?」」」」
彼女たちが戦っていた場所の、すぐ近くの山が突如爆発。
全員そちらの方を向くと、そこから、超巨大なモビルアーマーの腕が飛び出してきた。
そのMAはゆっくりと山の中からあらわれ、全員を見下す。
「う……ウソ……何アレ……?」
『この前のペリシアの時と同じ……!ガンプラの、暴走!』
『暴走?』
『うん。GBNのバグだって、AVALONの人達が言ってた。』
『暴走って言っても……あれは限度があるよ~!』
出現したのは、MGクラスの1/100サイズのデストロイガンダム。
GBNで再現されるガンプラは、基本的にHGのサイズを基準としている。
HGでログインした時のサイズが1/1になるため、MGやPGを使用している場合は本来の設定以上の大きさとなる。
つまり、MGサイズのデストロイガンダムは、本来想定されている全長56メートルを超える超巨体……約80メートル級のサイズとなる。
その大きさは、ユウ達のガンプラの3倍以上だ。
なお、デストロイガンダムは大きすぎる為、MGサイズどころか、HGすら販売はされていない。
『グオオオオオオオオオオ!!!!』
『一時休戦よ皆!まずはアイツを倒しましょう!!』
「了解!アユム!!」
すかさずレインボーユニコーンは足の装甲を取り外し、ドリームインパルスに手渡した。
それをレインボーエクスカリバーに変形させて右腕に装着すると、左手にはO-ドリーの可変式ビームガンを持ち、デストロイガンダムへ射撃。
だが、当然のごとくダメージは無い。
レインボーユニコーンは今度は左足の装甲を取り外す。
それを受け取ったAEドムはそこに自分のドムちゃんメガランチャーを連結させ、AEドム戦闘武器『レインボーメガランチャー』に変形させた。
肩に装着し、デストロイガンダムを狙い撃つ。
『ファイヤー!!』
デストロイガンダムに対し、全機で集中砲火を行うが、デストロイガンダムが発現させた陽電子リフレクタービームシールドがそれを全て防いでしまう。
キュベレイ・ビューティーにも何か武装を用意したいが、レインボーユニコーン側が想定しているキュベレイ・ビューティーの支援武装は、ファンネルの火力と移動速度を上げるためのエネルギー供給を行うバックパック。
ファンネル発射台が潰された今のキュベレイ・ビューティーには何の意味もない。
せめて愛参頑駄無が健在であれば、必殺技で倒せたかもしれないが、それはユウが倒してしまった。
『皆!攻撃が来るよ!』
アユムが注意を促す。
デストロイガンダムは両腕を前に突き出すと、そこに搭載している5連装スプリットビームガンで全員を狙い撃った。
その攻撃が命中し、全員一気にHPが削られる。
「こ……このままじゃ!!」
『全員やられちゃう……!』
再び、デストロイガンダムが攻撃を放つ体制に入った。
全員が敗北を覚悟して目を瞑った。
だが、その時だった。
『ハイマットフルバースト、ロックオン!!』
突如空から注がれた光が、デストロイガンダムの右腕に命中。
想定外の攻撃に防御が間に合わず、デストロイガンダムの右腕が潰された。
全員が空を見上げると、そこには光の翼を展開し、翡翠色の輝きを放つMSの姿が。
「「「『しおこちゃん!?』」」」
『皆さんだけ楽しそうにバトルをしていてずるいです。私だって……私だって、バトルしたいのに!』
「いや、これはそういうのじゃ無いんだけど……。」
『なので、このガンダムは私が倒します!』
そこにいたのは、今回の優勝賞品であるしおこと、その愛機デスティニーフリーダム。
デスティニーガンダムとフリーダムガンダムの翼からヴォワチュール・リュミエールの翼を展開しながら、彼女は両手に持ったライフルを連結させ、ストライクフリーダムガンダムのように構えた。
『しおこ、デスティニーフリーダム……参ります!!』
光の翼を広げ、デストロイガンダムに飛びかかるデスティニーフリーダム。
デストロイガンダムはしおこのみに狙いを定め、残ったスプレッドビームガンを放つ。
だが、左手から展開したビームシールドでそれを防ぎ、なんとかデストロイガンダムの左肩の上に乗った。
関節のつなぎ目にライフルを押し当て、エネルギーを全開にしながらそこへビームを放つ。
するとデストロイガンダムの肩が爆発し、そのまま左腕が付け根から崩れ落ちた。
『な、なんて威力なの……あんな大きい敵の腕を、一撃で……!』
『しおこちゃんのガンプラ、デスティニーに見えるけど、武装はフリーダム寄りだね。』
しおこのデスティニーフリーダムは、デスティニーガンダムがベースだが、武装のほとんどはフリーダムガンダムの物とストライクフリーダムガンダムの物を採用している。
接近戦自体があまり得意ではないしおこは、接近戦用の武器は最低限のもののみを残している。
その為、射撃武器の攻撃力のみを格段に上昇させるように調整してある。
しかし、今の攻撃は上手くいったが、デストロイガンダムに正面からの射撃はあまり効果的ではない。
すぐに振り落されたデスティニーフリーダムは、体勢を立て直すために光の翼を展開しながら再び上昇した。
『やはり簡単には落ちませんね……いったいどうすれば……。あら?』
デストロイガンダムと交戦していたしおこの目に、山の斜面を転がってくる真ん丸な何かが見えた。
白と黒のカラーリングのそれは、斜面を勢いよく転がると、まるでスキージャンプのように飛び上がり、同好会メンバーとデストロイガンダムの間に落ちてきた。
それは地面に着地すると、サッカーボールのようにクルクル回り、ぴたっと止まる。
更にそのガンプラを目の当たりにすると、ユウが驚いて目を見開いた。
「あ……あのガンプラってもしかして……う、嘘……!?」
『皆!このGBNの大先輩!モモちゃん先輩が助けに来たよ!!』
『モモち……もっと優しく操縦して……吐きそう……。』
『男のくせに情けない事言わないのユッキー!!』
「ビ……ビルドダイバーズの……モモカプル!?」
そこにやって来たのは、ユウが憧れた伝説のフォース『ビルドダイバーズ』のガンプラの一機。
カプルをベースに作られた、『モモ』の機体……その名も『モモカプル』だ。
予想外の人物の登場に、ユウはときめきながらも言葉を失い、他のメンバーも唖然としていた。
モモカプルはデストロイガンダムに立ち向かう為、足元に立ち、デストロイガンダムを見上げる。
なお、モモカプルの全長はおよそ14メートル。
それに対し、バグで巨大化したデストロイガンダムは約80メートル。
約5倍強の大きさだ。
『ってでっかぁ!!ちょっとユッキー!!こんな大きいなんて聞いてないんだけど!?』
『デストロイガンダムなんだから大きいのは当たり前……って言いたいけど、これはさすがに大きすぎるかな……。』
『どーすんの!?勝てる気しないんだけど!?』
『お、落ち着いてよモモち!どうするか考えるから!』
『あ……あの、どなたかは存知あげませんけど、助けに来てくださってありがとうございます。ですが、さすがにあなたの体格差では……。』
『あー!栞子ちゃんのガンプラだ!GBNで見るとこんなにかっこいいんだー!』
『え?私の事をご存じなのですか?』
『うん。だって……、』
『って、二人とも!デストロイが来るよ!!』
デストロイガンダムのパンチを、間一髪で避けたデスティニーフリーダムとモモカプル。
二人は飛び上がると、デスティニーフリーダムは再びフルバーストモードになり、モモカプルは腹部の発射口を展開。
『ハイマットフルバースト!!』
『ハイパーお腹ビーーーーーム!!!』
しおこのデスティニーフリーダムの攻撃は、正面からでは当然のごとくはじかれた。
しかし、モモカプルの『ハイパーお腹ビーム』は、名前の割に非常に威力が高く、デストロイガンダムのコックピット部に亀裂を入れる事に成功。
『だ、ダメージが入りました!あとはあそこを狙えれば……!』
『だけどデストロイガンダム相手にこのまま射撃を続けていても埒が明かない!モモち、リッくんとの合体技、デスティニーの子と一緒にやってみよう!』
『OK!というわけで栞子ちゃん、お願いね!』
『あの……だからあなたは誰なのですか?』
同好会の中で、唯一まともに稼働するデスティニーフリーダムに指示を出し、モモカプルは飛び上がった。
しおこは機体に送られてきたモモカプルからの指令通り、光の翼を展開して空へと舞いあがる。
右手にエネルギーをチャージすると、モモカプルの頭が割れ、中からSDガンダムよりもさらに小型の機体である、『プチカプル』が飛び出してきた。
『ボールは友達!!怖くないよ!!』
『い、行きます!!パルマフィオキーナ、エネルギーを掌部に展開!!』
まるで、バレーボールを行うかの様な要領で、デスティニーフリーダムはプチカプルを、パルマフィオキーナビームを纏った手で打った。
勢いよくプチカプルがデストロイガンダムへと突撃していく。
当然デストロイガンダムは、背面のアウフプラール・ドライツェーンでプチカプルを撃つ。
だが、プチカプルの頑丈さにデスティニーフリーダムのパワーが加われば、この程度の攻撃は一切受け付けない。
『カプルボールアターーーーーーーック!!!』
そのままプチカプルは、デストロイガンダムの胸部の亀裂へ勢いよくぶつかった。
更にデストロイガンダムの体を突き破り、動きを停止させた。
今が好機と言わんばかりにデスティニーフリーダムも動きだし、そんな彼女に、なんとか動いたドリームインパルスが、右手から取り外したレインボーエクスカリバーを投げ渡した。
『しおこちゃん、コレを使って!』
『ありがとうございますアユムさん!』
レインボーエクスカリバーを右手に装着し、光の翼を全開に。
武装にパルマフィオキーナのエネルギーを注ぎ込むと、レインボーエクスカリバーの刃が翡翠色に染まった。
『あなたは私が討ちます!今日、ここで!!』
レインボーエクスカリバーの刃が、デストロイガンダムを切り裂いた。
胴体から真っ二つになったデストロイガンダムは、そのまま爆発も起こさずに静かに消滅していく。
思わず、『ステラアアアアアアア!!!』と叫びたい気持ちを抑えながら、デスティニーフリーダムの中でしおこは消滅していくデストロイガンダムを見守った。
『……………。』
そして、デスティニーフリーダムとデストロイガンダムを見下ろす、一機のガンプラ。
黒いユニコーンガンダムの姿をしたそれは、同じエリアにいる同好会メンバーから気づかれる事無く、デストロイガンダムの消滅を見届けるとその場から姿を消した。
『虹ヶ咲学園、スクールアイドル同好会………。』
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モモカプルのパイロットがバグを報告したため、緊急メンテナンスにより同好会一同は強制的にログアウトさせられてしまった。
栞子、歩夢、果林、璃奈、侑の順番でリアルに戻ってくると、先に撃墜されたメンバーたちがガンダムベースの店内でガンプラや道具を物色していた。
「お、皆帰ってきた帰ってきた!みんなお疲れー!」
「ごめんなさいね愛、決着つけられなかったわ。」
「歩夢さん、お疲れ様でした!ナイスバトルでしたよ!」
「O-ドリーの武器を使って戦ってくれたそうですね。ありがとうございます、歩夢さん!」
「ううん、勝てなくてごめんね。でも、楽しかったなぁ。」
「うぅ……私、一番最初にやられちゃったよぉ……。」
「よしよ~し、今日は彼方ちゃんがエマちゃんの事撫でてあげるから~。」
「かすみん悔しいですぅ!!しず子に勝ったのに歩夢先輩に横からやられるなんて~!」
「やっぱりAEドムは最強。璃奈ちゃんボード『キリリ』!」
「ふぅ……やはりガンプラバトルは楽しいものですね。あれ?侑さんは?」
物販コーナーにやってこない侑を気にして、栞子がGBNの筐体を見に来た。
そこでは侑が、隣にいたダイバーの筐体に置いてあるガンプラを見ながら驚愕しており、そのダイバーもリアルに戻ってくると、一緒にログインしていた友達と同時にヘッドギアを外した。
「いや~、一時はどうなるかと思ったけど、勝てて良かったね~!」
「モモち、あんな無茶苦茶な作戦よくやるよ……。」
「も……モモモ……モモちゃんが、ビルドダイバーズぅ!?」
「あれ?言ってなかったけ?」
そこにいたのは、いつもガンダムベースで侑達の対応をしてくれる、バイトリーダーのヤシロ・モモカ。
彼女の手には先ほど一緒に戦ったモモカプルが握られており、侑はそれを見ながら目を輝かせていた。
「私がビルドダイバーズのモモこと、ヤシロ・モモカでーす!で、こっちはビルドダイバーズのユッキーこと、ヒダカ・ユキオくんね!」
「えっと……こ、こんにちわ。」
「ゆ、ユッキーさん!?GBN最高のスナイパー、リアルロックオンのユッキーさん!?」
「いやいや、別に僕そんなにすごくないから!?誰なのそんな事言ってるの!?」
「え?私だけど?」
「モモちぃ!?」
いつも自分たちが親しげに接していたモモカが、まさか憧れのビルドダイバーズだなんて思いもしなかった。
そんな侑の下に彼方がやってきて、アハハと笑う。
「侑ちゃん知らなかったんだね~。」
「彼方さん知ってたの!?」
「うん。コウイチさんとツカサさんからお話聞いてたから~。」
「言ってよぉ!!」
「ねぇねぇ、ところで、勝負はどうなったの?」
「………あ。」
モモカから言われ、何のために戦っていたのかすっかり忘れていた侑。
結局、ユニット所属のメンバーはそれぞれ一名を除き撃墜され、戦績的には互角だった。
だが、最後のデストロイガンダム戦を考慮すると、優勝はすでに決まっていた。
「えー……今回の、ユニット対抗栞子ちゃん争奪戦の結果は~~………じゃん!!デストロイガンダムを倒した、三船栞子ちゃんとモモちゃんの優勝でーーーーーす!!!」
「やったーーー!!優勝したよユッキー!!イエーイ!!」
「イエーイじゃないでしょイエーイじゃ!!」
「わ、私が優勝ですか!?ど、どうなるのでしょう……。」
今回のバトルの目的は、栞子をどのユニットに入れるかどうか。
しかし、その栞子が優勝してしまっては、元も子もない。
全ての決定権は、栞子に委ねられる事となった。
同好会入部前から決まっていたライブに、当時敵対していた自分が参加するなどおこがましいと考えていた栞子……しかし、同好会の他の10人はそんな事誰も思ってはいない。
だからこそ今回のバトルが開催されたのだから。
「あ、あの……では、一つわがままを言ってしまっても、よろしいでしょうか……!」
そして、ついにライブが始まる。
~にじビル毎回劇場~
第17回:ユッキーの新機体
モモカ「そういえばユッキー、ガンプラ新しくするんだね。」
ユキオ「うん。今構想を練ってるところなんだ。」
モモカ「今度はガンダムタイプなの?いつもジムIIIとかジェガンとかパっとしないのばっかりなのに。」
ユキオ「パっとしないとはなんだ!!ガンダムには無い、ジムIIIやジェガンならではの良さがどうしてわかんないのモモち!!」
モモカ「ごめんごめん……。で、それなに?」
ユキオ「『ガンダムデュナメス』だよ。『機動戦士ガンダムOO』で、ソレスタルビーイングのロックオン・ストラトスが乗っていた機体なんだ。」
モモカ「もしかして、リッくん意識してる?」
ユキオ「そういうわけじゃ無いけど……ただ、デュナメスを見た時にビビッ!と来ただけで。」
モモカ「ふーん。いいんじゃない、カッコいいの期待してるよ!」
ユキオ「任せてよ!僕は必ず、リッくんの新しいダブルオーにも負けない、デュナメスロックオンマスターを作り上げてみせる!」
モモカ「というわけで、お買い上げ1320円になりまーす。」