ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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襲来、バンシィ・ノワール
おいでませ竹屋旅館


すっかり肌寒くなってきたこの季節。

 

天王寺璃奈と宮下愛の二人は、愛の実家がある下町の商店街に来ていた。

愛の家はもんじゃ焼き屋で、季節の変り目に限定のメニューを出したりするのだが、璃奈が遊びに来ている時にちょうど愛の父親から、その限定メニューの材料が足りないので買ってきてほしい、とおつかいを頼まれた。

両手に下げたエコバッグに材料を完璧な配分で詰め込み、二人は家への帰路につく。

 

「ごめんね、りなりー。せっかく遊びに来てくれてたのにこんな事頼んじゃって。」

「ううん。愛さんとのお買いもの、好き。」

「嬉しい事言ってくれるじゃん!このこの~!」

「あ、愛さん!材料落ちちゃうよ!」

「おっと、そうだったそうだった。お礼に限定メニュー食べてってよ!秋の味覚をふんだんに使った特製もんじゃ!ごちそうするからさ!」

「限定メニュー……美味しそう!」

「じゃあ早いところ帰らないとね~。ん?」

 

歩いていると、愛があるものを発見した。

璃奈は初めて見るそれに、興味津々。

 

 

「福引だー!そういえばさっき買い物して抽選券もらったよね!」

「こういうの、初めて見た。」

「そうなの?えーっと、何枚あるかなー……1、2、3……6枚あるから2回引けるよ!折角だし引いて行こ!」

「うん。」

 

「へい、いらっしゃい。おっ、宮下んとこのお嬢ちゃん!おつかいかい?偉いねぇ。」

「ちーっすおじさん!この前はうちの電子レンジの修理ありがとね!」

「こちとら電気屋一筋35年の大ベテランよ!おっと、そっちはお友達かい?」

「こんにちわ。天王寺璃奈です。」

「はい、こんにちわ。引いてくかい?今年の景品は豪華だぜぇ?」

 

 

福引台の後ろに立つおじさんが、景品の一覧を見せてくれた。

5等はポケットティッシュ、4等は商店街限定の割引券、3等はガンプラ、2等はお米1キロ、1等は2万円分の商品券だ。

このラインナップの中に何故かガンプラが混じっているが、GBNが世界的メジャーなゲームである事を考えると、そこまで違和感は感じなかった。

 

 

「あ……特賞もあるんだ……。」

「へー!今年は温泉旅館の無料招待券かー!10人まで行けるんだね。せめて11人なら同好会の皆で行けるのになー。」

「この竹屋旅館は知る人ぞ知る名旅館なんだよ。そうだなぁ……もしお嬢ちゃんがコイツを当てられたら、あと一人分は俺が出してやってもいいぜ?」

「ホント!?おじさん太っ腹ー!よーし、絶対当てようねりなりー!」

「頑張る!璃奈ちゃんボード『やったるでー!』」

 

 

抽選券を6枚渡し、さっそく愛が抽選機を回した。

勢いよく回したせいで落ちた玉が吹っ飛んでしまい、愛は慌ててその玉を拾いに行く。

だが、拾った玉は残念ながら白で、5等のポケットティッシュだ。

 

 

「えー!?残念……。」

「はっはっは!まぁ、そうそう当たりゃしねぇわな!」

「くぅ~……!りなりー!愛さんの敵討ち頼んだ!」

 

 

愛とタッチすると、今度は璃奈が抽選機を手に取る。

こういう時のコツは、すべての欲を捨てる事。

すーっと息を吸い込むと、璃奈はゆっくりと抽選機を回した。

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

翌週の土曜日……虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の11人は、バスに揺られて温泉旅館『竹屋』にやって来た。

真っ先にバスから降りてきたエマはその旅館を見ながら目を輝かせる。

次に降りてきたせつ菜も同じように旅館の前ではしゃぎながら、エマと一緒に旅館を写真に収めた。

 

「うわ~!これが竹屋旅館か~!まさか泊まれる日が来るだなんて思わなかったよ~!」

「はい!!私も感激です!!」

「エマさんとせつ菜ちゃん、この旅館の事知ってるの?」

「何を言ってるんですか歩夢さん!!この竹屋旅館は、ガンプラバトル世界大会日本代表のヤサカ・マオさんとイオリ・セイさん、そしてその10年後にはコウサカ・ユウマさんが泊まったとされる聖地なんですよ!!」

「ガンプラビルダーにとっては一度は訪れたい夢の場所なんだよ~!」

「そ、そうなんだ……。」

「ありがとう璃奈ちゃん!これも全部璃奈ちゃんが招待券を当ててくれたからだよ~!」

「喜んでくれて嬉しい。璃奈ちゃんボード『てれてれ』」

 

 

(セイさんも泊まった旅館……ここが……。)

 

 

イオリ・セイは、以前ペリシアで璃奈たちを助けてくれた恩人だ。

年末に開催される予定のガンダムフェスで、ビルドダイバーズのエースであるミカミ・リクとのエキシビションを予定している。

璃奈は彼の事はビルダーとして尊敬している。

 

「ねぇねぇ!早く入ろう!」

「待って下さい侑さん。まずは点呼を取りましょう。」

「えー………いやいや、栞子ちゃん。どう見ても全員いるじゃん。」

「いいえ。以前、点呼を怠ったせいで一人電車に置き去りにされた9人組スクールアイドルのリーダーがいたと聞いた事があります。」

「アハハ!そんな人いるわけないじゃん!」

「そうだよ~、そんな事になるのなんて果林ちゃんかかすみちゃんぐらいだよ~。」

「「ちょっと彼方(先輩)!!!」」

 

仕方なく、点呼を取る一同。

どうやら点呼を取った本当の理由は、楽しみすぎる気持ちを抑える為だったようで、点呼の際に栞子は『10!』と元気よく返事をしていた。

 

 

 

「いらっしゃいませ、ようこそ竹屋旅館へ。女将のヤサカ・ミサキと申します。どうぞ、ごゆっくりお寛ぎください。」

 

 

 

ようやく旅館の中へ入ると、入り口では美人な若女将が丁寧に挨拶をしてくれた。

和風な装いの旅館ではあるが、何故かところどころにガンプラが飾ってあり、どれも凄い作り込みだった。

実はこの旅館はガンプラバトル世界選手権の日本代表が宿泊するための旅館として正式に登録されていて、ヤジマ商事から援助を受けている。

その為、いたるところにガンプラが飾ってあるのはむしろ自然だろう。

 

「たくさんガンプラあるねー。お、SDもあるじゃん!」

「うっ……ど、どれもザクみんよりカッコいい……。」

「実はそのガンプラ、主人が作ったものなんです。実機バトル用の筐体もありますから、良かったら楽しんでくださいね。」

「はーい!ありがとうございます!」

 

 

一通りガンプラを見たところで、しずくが外の散策に行こうと提案してくれた。

皆それに賛成し、荷物は部屋へ置いて貴重品だけを持つと一度旅館の外へ出ようとする。

その時璃奈の目に、玄関先に飾られていたガンプラと写真が止まった。

 

 

「あ……この写真……。」

 

 

RGのストライクガンダムと共に飾られていた一枚の写真。

そこには見覚えのある青い髪の少年が、赤い髪の少年とハイタッチをしている様子が映っていた。

他にも、ガンダムXやウイングガンダム、ガンダムアストレイ レッドフレームにケンプファーと、ガンプラごとに別の写真が飾られていた。

 

「どしたん?りなりー。」

「セイさんだ……。」

「イオリ・セイさんとレイジさんですね!伝説のビルダーとして世界的に有名な方ですよ!」

「そうなんだ……セイさんってすごい人だったんだね。」

「こっちのガンダムXの方はヤサカ・マオさん、ウイングガンダムはリカルド・フェリーニさん、アストレイはニルス・ニールセンさん、ケンプファーは三代目メイジン・カワグチさん。第七回ガンプラバトル世界大会で活躍した猛者ばかりです!」

「詳しいね、せつ菜さん。」

「もちろんです!!大好きですから!!」

「セイさんは凄い人だった。ビルドストライク、すっごく強かった。」

「璃奈ちゃん、イオリ・セイさんにGBNで会ったんだよね?どんな人だったの?」

「すごく優しくて、すごく強い人。ガンプラが大好きって気持ちが伝わってきた。」

「そう言えば、イオリ・セイさんは数少ないアシムレイトの使い手だと聞いた事があります。彼のバトルを見れば侑さんがNT-Dを使いこなせる為のヒントを得られるかもしれませんね。」

「そうなんだ!私も会ってみたいなー、イオリ・セイさん!」

「侑ちゃん、ガンフェスではリクくんを応援するって言ってなかった?」

「え、そ、そりゃもちろんリクくんを応援したいけど、伝説のビルダーなんて言われてる人のバトルも気になるじゃん歩夢!」

「私はガンフェスのエキシビション、セイさんを応援したい!」

 

 

 

 

 

 

「あーーー!どいつもこいつも、セイ、セイ、セイ、セイ!!空手の稽古の掛け声かなんかか!?えぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

 

突然、後ろから声がした。

驚いて振り返ってみるが、誰もいない。

まさか幽霊……と侑が小声で言うと、かすみと歩夢が悲鳴を上げそうになるが、もちろん違う。

璃奈が目線を落すと、そこには髪をツインテールに縛った六歳か七歳ぐらいの女の子がおり、その手にはクロスボーンガンダムのガンプラが。

 

 

「あの……どなた……?」

「はぁ!?アンタらこの旅館に泊まるのにウチの事知らんとかモグリか!?」

「ごめんなさい……。」

「うちはGBN小学生の部チャンピオン、人呼んでツインサテライトのミオや!覚えとき!!」

「へー、君もガンプラバトルやってるんだね!私たちもやってるんだよ!チャンピオンなんてすごいね!」

「素人が気安くウチの頭撫でんなや!!」

 

 

ミオと名乗った幼女は、自分の頭を撫でた侑の手を払いのけた。

腕組みをすると、セイの事を褒めていた璃奈をにらみつけるミオ。

思わず璃奈はそれに怖気づき、愛の後ろに隠れてしまった。

 

 

「り、りなりー、さすがに小学生にビビらないでよ……。」

「ごめんなさい……ちょっと迫力が……。」

「アンタ、イオリ・セイの事べた褒めしとったやんなぁ?」

「え?うん……。」

「あんな奴、二流もええとこや!いいや三流や三流!!自分が作ったガンプラを他人に使わして優勝してチャンピオン気取りだなんて、ビルドファイターが聞いて呆れるわ!」

「ムッ……!セイさんは、ちゃんと強い!私が今まで見た中で、一番強い人!」

「いいや!一番強いビルドファイターは、イオリ・セイでもミカミ・リクでも、ましてやメイジン・カワグチでもクジョウ・キョウヤでもないで!」

 

 

そう言いながら、ミオは持っていたクロスボーンガンダムのガンプラをそっと地面に置き、今度は飾られていたガンダムXのガンプラを手に取って、それを璃奈へと突き付けた。

 

 

 

「一番強いんは、ガンプラ心形流正統後継者である、ヤサカ・マオや!!うちはあの人みたいに、めちゃんこ強くなりたいんや!!」

 

 

 

ヤサカ・マオとは、イオリ・セイのビルダーとしての最大のライバルと名高い一流のガンプラビルダーであり、エマやせつ菜はその名を知っている。

ガンプラ心形流という流派を学び、七年前に開催された全国ガンプラバトル選手権に出場した『ビルドバスターズ』のサカイ・ミナトの兄弟子としても知られている。

彼の操る『ガンダムX魔王』及び『クロスボーンガンダム魔王』は、機体の象徴でもあったサテライトキャノンの常識を覆したことでも有名だ。

同時期に活躍したセイやメイジン・カワグチの名に隠れてがちではあるが、いまだに彼に憧れるビルダーは多い。

GBNに姿を現したことは無いが、シャフリヤールやコーイチ、ヒロトと言ったGBNで腕の立つビルダーも、彼の事は尊敬している。

 

 

「なぁ、あんた、名前なんちゅーの?」

「私?天王寺璃奈だよ。」

「アンタ気に食わんわ。ウチがシバいたるから娯楽室まで来いや!」

 

 

セイを褒めた事がそんなに気に食わなかったのか、ミオはぷんぷんおこりながら娯楽室へ。

同好会の面々も、子供言う事なので相手にしようかどうか迷っていたが、璃奈は迷わずに娯楽室に向かおうとした。

 

「ちょっとりな子、本当に行くの?子供の言う事なんだから、別に相手にしなくていいんじゃ……。」

「かすみちゃんの言う通りよ。大方、好きなビルダーが褒められなくていじけてるだけでしょ?」

「ううん、行く。私、セイさんの事本当に凄い人だって思ってる。だから、このままにしておくのは、あの子にも、セイさんにも悪いよ。」

「アタシはりなりーが行きたいって言うなら賛成するよ。」

「ありがとう愛さん。私、行くね。」

「私たちも行くよ!ね、皆!」

 

歩夢がそう言って、かすみと果林以外全員強くうなずいた。

しぶしぶ二人も納得し、璃奈の後ろをつけて娯楽室へと向かった。

 

 

 

 

~~

 

娯楽室には、GPDの筐体が設置されていた。

元々はプラフスキー粒子を使用する第一世代ガンプラバトルの筐体が設置されていたのだが、ヤジマ商事からの援助を受けられて数年前にGPDにアップデートされていた。

ミオはそこへ『機動戦士ガンダムX』に登場するガンダムDXの改造機である『ガンダムDX美王』をセットし、操縦桿を握る。

 

 

「ウチが教えたるわ!イオリ・セイなんかよりも、ヤサカ・マオの戦い方の方が上っちゅーことをな!」

「わかった。」

「り、りな子わかってんの!?これ、GPDだよ!?」

「GPD……。」

 

 

実際に動くガンダムDX美王を見て、彼方が眉を細めた。

GPDは実機バトルで、戦えばガンプラが壊れる。

以前はメジャーなゲームであったが、GBN以降はすっかり人気も落ちてしまったが、GPDにはGPDなりの良さもある。

ごくりと唾を飲み込み、璃奈は部屋から取ってきた愛機のAEドムを筐体にセットした。

 

 

「へー、逃げんのやな!」

「セイさんなら逃げない。」

 

 

「よっしゃ行くで!ツインサテライトのミオ!ガンダムDX美王!行くでーーー!!」

「天王寺璃奈、AEドム、行きます。」

 

 

 

ついに発進した二人のガンプラ。

七歳の子供が作ったとは思えないほどの重装甲を纏ったガンダムDX美王は、先手を取ってAEドムへバスターライフルで攻撃を仕掛ける。

AEドムはその攻撃を顔の前で腕を組んでガード。

以前、ユニット対抗戦をした時から更にアップデートを重ねたAEドムの両腕には青色のクリアパーツが取り付けられており、璃奈はそのパーツを使ってガンダムDX美王の攻撃を防いでいる。

おかげでノーダメージだ。

 

「あ……あれってもしかして……。」

「彼方さん、何か知ってるんですか?」

「あれって、ガンプラバトル同好会の部長さんのガンプラとおんなじ技だよ~。」

「と言う事は、もしやあれはアブソーブシステム……?」

 

 

アブソーブシステムとは、ビルドストライクガンダム系列のガンプラ専用に、イオリ・セイが考案したシステム。

ビーム攻撃を吸収し、自分の出力に変えてしまう画期的な技だ。

璃奈はそのシステムの究極系であるビルドストライクギャラクシーコスモスを間近で見て、その技術を研究した。

その甲斐あって、ようやくそのシステムを両腕のみだが採用する事が出来た。

本来このシステムを作るためにはガンプラのフレームから調整する必要があるため、今のAEドムの両腕にはこのシステム採用の為に電動フレームが通っていない。

その為素のパワーは落ちてしまっているが、防御力とディスチャージによる爆発力は強化された。

 

 

「な、なんやあのガンプラ!?ビームを吸収しおった!?」

「セイさんのビルドストライクを参考にした。璃奈ちゃんボード『ぶいっ!』」

「このー!だったらウチの必殺技でいっぱつでのしたるわーーーー!!」

 

 

そう言うと、ガンダムDX美王は空を舞い、月の光を全身に集める。

これこそ、ミオがGBN小学生の部でチャンピオンに輝く事が出来た、彼女の最強必殺技。

ミオの異名でもあるその技を、AEドムへ向けて放った。

 

 

 

 

「いったれーーーー!!ツインサテライトキャノーーーーーーン!!!」

 

 

 

 

「あ、あんなの喰らったらりなりーのドムが!!」

「大丈夫!私のドムは……セイさんのシステムは、負けない!」

 

 

再び腕をクロスさせ、AEドムは両腕のアブソーブシステムでガンダムDX美王のツインサテライトキャノンを受け止めた。

アブソーブシステムでエネルギーを吸収しつつ、衝撃は電動フレームをフル回転させて地面へ逃がす。

やがて、全てのビームを吸収し終えたAEドムがゆっくりと腕を広げると、ガンダムDX美王とミオは驚きのあまり開いた口がふさがらなかった。

 

 

「う……ウソやん……ウチの一撃必殺が!!」

「あー……なるほどね。あの技で全員一撃で倒してたからチャンピオンになれたんだあの子。」

「そりゃ、璃奈ちゃんと相性悪いよねぇ。」

 

 

ツインサテライトキャノンが最大の強みであるガンダムDX美王。

しかし、負けを認められないミオは操縦桿を握りしめると、今度はビームサーベルを構えて、AEドムへと斬りかかって行った。

 

 

「こなくそーーーーーー!!!」

「ッ………!」

「りなりー!!」

 

 

 

 

 

「はい!ここでおーーーしまい!!」

 

 

 

 

 

 

その時、AEドムとガンダムDX美王の間に、一機のガンプラが突如乱入してきた。

そのガンプラはガンダムDX美王の攻撃を片手で受け止めると、ガンダムDX美王を地面に押さえつける。

AEドムとガンダムDX美王……両方のガンプラを全く傷つける事無く、この戦いを終わらせてしまった。

ベース機は同じくガンダムDX……ミオはそのガンプラを見て呟いた。

 

 

「が……ガンダムDX大魔王……!?おとん!?」

「「「おとん?」」」

 

 

突然乱入してきたガンプラのファイターの方へ振り返ると、女将さんと同じぐらいの身長の帽子をかぶった猫目の男がいた。

彼はバトルを強制終了させると、自分のガンプラ『ガンダムDX大魔王』とミオのガンダムDX美王を拾い上げると、璃奈と同好会のメンバーに深々と頭を下げた。

 

 

「娘がえらいすんません!!よく言い聞かせておきますんで、今日のところはどうか勘弁してください!」

「お、おとん何頭さげとんねん!!ウチはこんなのに負かされたまま終わるなんて嫌や!!」

「お前も頭さげんねんミオちゃん!!」

「嫌や嫌やーー!!絶対下げとーないーーー!!」

 

 

この男……見覚えがある。

写真で見たよりだいぶ歳を重ねてはいるが、この特徴的な目つきに使用しているガンダムDX大魔王……おそらく、『彼』と見て間違いないだろう。

恐る恐る璃奈は彼の名前を口にした。

 

 

 

「もしかして、ヤサカ・マオさん……?ガンダムX魔王の……セイさんのライバルの……。」

「お、ワイの事知ってくれてんの?いやぁ、嬉しいわ~!この旅館で板前してます、ヤサカ・マオと申しますぅ。あ、こっちは娘のヤサカ・ミオちゃんですぅ。」

「なんでこんなやつらにペコペコしとんねんおとん!!」

 

 

 

彼こそが、イオリ・セイのライバルだったヤサカ・マオ。

そして、ツインサテライトのミオと名乗っていた幼女は、マオと女将のミサキの娘のヤサカ・ミオというそうだ。

思わぬビッグネームの登場に、せつ菜とエマは目を輝かせた。

 

「や、ヤサカ・マオさんって、あのガンプラ心形流の!?こんな有名人に会えるだなんてとってもエモエモだよ~!!」

「さ、サササ……サインください!!」

「サイン!?いやぁ~、照れますわ~!ええよ~!」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

「デレデレすんなおとん!!おかんに言いつけるで!!」

「そ、それは勘弁やミオちゃん!!って、元はと言えばお前がお客さんにちょっかい出すからあかんねん。ほら、行くで。」

「嫌や嫌や!!ウチはコイツにイオリ・セイよりおとんの方が凄いって証明するんやーーーー!!」

 

 

マオに引きずられ、ミオは連れて行かれてしまった。

一切傷ついていないAEドムを拾い上げ、璃奈は二人が去っていた方を見る。

その時、彼女の口角が少し上がっている事に気が付いた愛が、璃奈の肩に手を置いた。

 

 

「りなりー、どうしたの?」

「え?なにが?」

「今、ちょっと笑ってたよ!」

「ホント……?うん……ちょっと、あの子がうらやましいなって思って……。」

 

 

 

 

 

~~

 

 

それから、同好会の11人は散策を楽しんだ。

近くにある海岸で季節外れの水遊びを楽しんだり、買い物をしたり、とても充実していた。

途中で果林が迷子になり、エマと彼方と愛が死にもの狂いで探したりもした。

すっかり日も暮れて、果林を見つけ出した彼女たちは竹屋旅館に戻ってきた。

入り口では女将のミサキが再び出迎えてくれて、夕飯の席に呼ばれた同好会メンバーはマオの作った料理に舌鼓を打った。

 

 

「ん~♡とってもボーノ!!」

「マオさん、このお料理とってもおいしいです!」

「ガンプラを作るもの上手だけど、お料理も上手なんですね。」

「いやぁ~、照れますわ~!ワイ、ミサキちゃんと結婚したくて滅茶苦茶料理の勉強頑張ったんですよぉ!」

「もう、何言ってるのマオくん!」

「わーぉ、熱いね~。」

「とても素敵なご夫婦ですね。」

 

 

ミサキと共に旅館を続けていくために、ガンプラ道を続けながら料理人を目指したマオ。

地獄の様な特訓の日々だったが、そのおかげでミサキと見事結ばれたそうだ。

料理の席には同好会とヤサカ夫婦の13人しかおらず、璃奈はあたりをキョロキョロと見まわした。

 

 

「コラコラ~、お行儀悪いぞ~璃奈ちゃん。」

「あの子は……?」

「ミオちゃん?あぁ、さっきワイがちょっと叱ってもうたさかい、自分の部屋に閉じこもっとるんやないかな?」

「本当にごめんなさい皆さん。あの子……マオくんにすごく憧れてるから、世界大会でマオくんが負けたセイくんの事が気に入らないみたいで……。」

「ワイはセイはんとレイジはんと本気でバトルして、それで負けたんですわ。悔いが無いって言ったらウソになるけど、あのバトルを超えるバトルは、ワイのガンプラ人生で後にも先にも無いと思うてます。せやから、ミオちゃんにもそれをわかってほしいんですけど……って、こないな辛気臭い話しとったらせっかくのご飯がまずくなりますな!じゃ、ミサキちゃん、ワイ他のお客さんとこの料理の準備しよきますね!」

「うん、お願い。」

 

 

そう言い残し、マオは行ってしまった。

去っていくマオの背中を見ながら、璃奈は少し顔を俯かせる。

食事を終え、お腹も心も満たされた彼女たちは、ミサキに頭を下げた。

 

 

「ご馳走様でした!すごくおいしかったです!」

「ありがとうございます。是非、大浴場の方も楽しんでくださいね。」

「温泉!早く行きましょう!」

「今ご飯食べたばかりだよかすみちゃん。もう少しゆっくりしてからでも……。」

「何言ってるんですか侑先輩!温泉旅館に来たのなら一分一秒でも早く温泉に浸かって、かすみんの可愛さにさらに磨きを掛けないといけないんですよ!!」

「私も早く温泉行ってみたいです。やっぱり旅館と言えば温泉ですよね!」

「しず子わかってる~!」

「しょうがないわねぇ。行きましょう皆。」

「果林ちゃん、今度は迷わないように手を繋いでいこうね。」

「さすがに旅館の中で迷子になんてならないわよ。」

 

 

 

 

~~

 

大浴場へとやって来た同好会一同。

さっそくかすみと侑がはしゃぎながらお風呂へ飛び込むが、かけ湯が先と、それぞれしずく、栞子と歩夢、せつ菜に怒られた。

かけ湯をしている最中にシャワーの音が聞こえ、どうやら先客が先にいるようだ。

 

 

 

「いったーーーー!!目!目に入ったーーーー!!」

 

 

 

「あの声……もしかして……。」

「りなりー?」

 

 

声のした方へ行ってみると、そこにいたのは、何故かシャンプーハットを横に置いて頭を洗っていたヤサカ・ミオ。

ミオは目に入ったシャンプーをシャワーで洗い流すと璃奈の存在に気が付き、思わず逃げようとした。

 

 

「うわっ……!?」

「あ、危ない!」

 

 

走ったせいで床で滑って転びそうになるが、なんとか璃奈が受け止めた。

逃げ切れなくなったミオは璃奈を振りほどこうとするが、スクールアイドルの練習のおかげで見た目よりも筋肉のついた彼女を、ミオは振りほどけない。

心配そうに他の10人が璃奈を見るが、璃奈は『大丈夫』とだけ伝え、ミオと一緒にお風呂に浸かった。

 

 

「最悪や……あんたらと同じ時間にお風呂やなんて……。」

「どうして逃げようとしたの?」

「どうしてって……カッコ悪いやん……ウチ、あのまま続けてたら絶対あんたに負けとったもん……。」

 

 

先ほどのガンプラバトル。

ビーム系以外の攻撃を持たないガンダムDX美王では、アブソーブシステムを搭載したAEドムに勝つ手段が存在しない。

マオの強さを証明するためにガンプラ心形流の技術を使った自分のガンプラが、憎きイオリ・セイのシステムに負けたことが心底悔しかったようだ。

 

 

「ウチ、おとんが一番強いって思うてんねん!おとんのガンプラは誰にも負けないって皆に知ってほしいねん!せやのに……。」

「……大好きなんだね、お父さんの事。」

「当たり前やんか!!うち、おとんもおかんも大好きや!」

「ミオちゃんの事……ちょっと、うらやましいな。」

「なんでや?アンタ、おとんとおかんの事嫌いなんか?」

「嫌いじゃない……でも、好きかって聞かれると……少し、困る……。」

 

 

璃奈は、両親と過ごした事がほとんど無い。

多忙な両親が帰宅する事はほとんど無く、璃奈がスクールアイドルを始めた事は知っているが、ライブに来てくれたことは無い。

勿論、父も母も璃奈の事は大事に思っているし、愛している。

しかし、今では璃奈とのつながりは生活費の援助のみで、電話やメールでの会話もごくわずか。

だから、両親から叱られ、両親から心配され、両親にはっきり『好き』と言えるミオの事が羨ましかった。

 

 

 

「お父さんが言ってたよ。セイさんとレイジさんとのバトルは、今までしたバトルの中で最高だったって。マオさんは、セイさんの事をライバルだって思ってる。それを、ミオちゃんにもわかってほしいって。」

「……なんであんた、そんな事わかるん?おとんがイオリ・セイの事ライバルだと思うとるって。」

「私たちも同じだから。同好会の皆は、仲間でライバル。マオさんがセイさんの事を話す時の目は、私たちと一緒。だから、わかるよ。」

「でも、ウチ……それでもおとんが一番強いって信じたいねん……イオリ・セイに負けても、それでもおとんのガンプラは最強やねん!」

「うん。だったら、ミオちゃんがセイさんより強くなればいい!」

「え!?む、無理やそんなの!」

「出来る!ガンプラもスクールアイドルも一緒!可能性は無限大!エア璃奈ちゃんボード『あいつの為にも、俺は負けられないんだ!!』」

「ガロードのセリフ……。」

 

 

 

『機動戦士ガンダムX』の主人公であるガロード・ランのセリフを、エア璃奈ちゃんボードで言う璃奈。

それを見て、キョトンとするミオ。

やがてミオがそれを見て声を上げて笑い始めた。

 

 

「アハハハ!!なんやの璃奈ちゃんボードって!!へんなのー!」

「へ……変かな?」

「そう言えばあんた、よく見ると雰囲気がティファに似とるな!」

「そう……?エア璃奈ちゃんボード『てれてれ』」

「アンタ、天王寺璃奈ゆーたか?ちょっと気に入ったわ!璃奈姉ちゃんって呼んでやってもええんやで!」

「ね、姉ちゃん……!?嬉しい……!」

 

 

「りな子ー!お話終わった?」

「璃奈さんもこっちに来てお話しようよ。」

「ミオさんもご一緒にいかがですか?」

 

 

「皆見て!ミオちゃん、私の妹になった!!」

「「「はい?」」」

 

 

璃奈を呼びに来た一年生3人が、不思議な目で璃奈とミオを見てきた。

やがて11人はミオを交えて、浴場の中で盛り上がった。

 

 

 

 

~~

 

 

その日の夜、ミオは同好会と同じ部屋で寝泊まりした。

ミサキとマオが止めようとしたが、ミオが駄々をこねて同好会も了承したので、しぶしぶ承諾した。

この日、ガンプラを持ってきていたのは璃奈のほかにガンプラガチ勢のエマ、せつ菜、あと着実にガノタの道を歩んでいる栞子の4人で、彼女たちのガンプラを見てミオはうんうんと唸る。

 

 

「ヴェルデバスターとエクシアの出来はまずまずと行ったところやな!」

「生意気な子供ですねぇこの子……。」

「まぁまぁかすみちゃん……。」

「デスティニーは……あん?これ、もしかしなくてもK1が手を加えとるやろ?」

「K1って?」

「コウイチさんのGPD時代の通り名ですよ。」

「はい、その通りです。わかるんですね……さすがヤサカ・マオさんの娘さんです。」

「当たり前や!でも、やっぱりこうしてみると璃奈姉ちゃんのドムは凄い作り込みやな。こんなんほとんどロボットやん。」

「私、こういうの得意だから。」

「ほえ~、すっごいな~。」

「フッフッフ!ミオっち~……りなりーの凄いところは、これだけじゃないんだよ!」

「愛さん?」

「じゃーん!これ、りなりーのスクールアイドルの動画でーす!!ほら、メッチャ可愛くない!?ここの動きとかサイコーだよね!!ね!!」

 

 

愛が動画を見せると、ミオもそれに目を輝かせた。

動画に注目するミオに、侑が近づく。

 

 

「凄いでしょ、璃奈ちゃん!」

「うん。めっちゃかわええ……!」

「て、照れるよ……。」

「スクールアイドルって、すごくときめくよねぇ~!かわいくて~、キラキラして~!」

「ここにいるみんな、スクールアイドルなん?」

「あ、私は違うよ。私は皆のサポート役。」

「そうなん?でも侑姉ちゃんもかわええと思うんやけど。」

「だよね!!!」

「うわっ!?歩夢いつの間に……!?」

 

 

こうして夜遅くまで同好会と楽しくおしゃべりをしたミオ。

今の彼女に、昼間までのような棘は無く、どこにでもいるような年相応の少女の様だった。

 

 

 

 

 

~~

 

 

そして翌日……スクールアイドル同好会のチェックアウトの時間。

玄関まで見送りに来てくれたミサキとマオ、そしてミオ。

だがミオは璃奈の足にしがみつき、離れようとしなかった。

 

 

「嫌やーーーー!!璃奈姉ちゃん行っちゃ嫌やーーーーー!!!」

「わがまま言うたらあかんやろミオちゃん。」

「そうよミオ!離れなさい!」

「ウチもっと璃奈姉ちゃんとガンプラのお話したいんやーーーー!!!」

「そないな事言わんといてやー……おとん困ってまうですやん……どうしようミサキちゃん……。」

「父親のあなたがそんなんでどうするの!」

「ミオちゃん。」

 

自分の足にしがみつくミオの頭を撫でる璃奈。

カバンから璃奈ちゃんボードを取り出し、それに絵をかくと、一枚破ってミオに渡す。

 

 

「また来るよ。そしたら今度は、最後までバトルしようね。」

「ホンマに……?」

「うん。璃奈ちゃんボード『にっこりん』!ほら、ミオちゃんも。」

「グスッ……ミオちゃんボード『にっこりん』や!!」

「またね、ミオちゃん。」

 

 

最後まで名残惜しそうにしながら、同好会の全員はバスへと乗り込んだ。

途中までミオが走って追いかけて来ていたが、徐々に姿が見えなくなった。

璃奈がバスの中で旅館で撮った写真を見ていると、愛がそれを覗き込んできた。

 

 

「楽しかったね、りなりー!」

「うん。ミオちゃん、また会いたい。」

「むー……りな子だけ懐かれてうらやましい……。」

「じゃあ彼方ちゃん、かすみちゃんに懐いちゃうよ~。」

「離れてくださいよ彼方先輩~!かすみん、自分より大きい妹なんていりませ~ん!」

 

 

(ミオちゃんの為にも……セイさんには絶対に勝ってほしい……!頑張って、セイさん!!)

 

 

 

 

 

~~

 

 

「おっ!」

「どうしたの?」

「セイはんからメッセージや!新しいビルドストライク、ついに出来たんやと!レイジはん用に作ったレイジングガンダムとミキシングかー……これはおもろい事になりそうですやん!」

 

 

 

「おとん!!おかん!!」

 

 

バスを見送ったミオが帰ってきた。

マオは帰ってきたミオを抱きかかえると、そのまま肩車。

ミオは璃奈にもらった璃奈ちゃんボードもとい、『ミオちゃんボード』とガンダムDX美王を掲げながら、マオとミサキに宣言した。

 

 

「ウチ、大きくなったら璃奈姉ちゃんみたいなスクールアイドルになる!!そんで、ガンプラでも一番になって、メイジンよりもイオリ・セイよりも、そんでおとんよりも強くなるんや!!」

 

 

 

ミオがそう宣言して驚いたマオは、思わずスマホを落した。

そこには、セイが作った新たなビルドストライクの写真がメッセージ付きで映し出されていた。

 

 

ガンフェスで、リクの最強のダブルオーと戦う為の、最強のビルドストライク。

 

 

セイのビルドストライクギャラクシーコスモスと、レイジのレイジングガンダムを合わせたRGシステムの究極形態……『ビルドストライクレイジングスター』の姿が。

 

 

 

 

 




~にじビル毎回劇場~

第22回:あけましておめでとう

ヒナタ「新年あけましておめでとう、ヒロト!」

ヒロト「あぁ、おめでとう。今年もよろしく。」

カザミ「早いもんだよなぁ、一年が過ぎるのも。」

パル「リライズの最終回が昨日の事のように感じますね!」

メイ『あぁ。もう半年近く前の事だなんて、信じられないな。』

マサキ「時に皆、今年の抱負はなんだ?」

カザミ「はいはいはーい!俺はもちろん、師匠に勝つ!だ!!」

パル「僕はモルジアーナの新しい可能性を見つけたいです!」

メイ『抱負とはなんだ?』

ヒナタ「今年一年の目標みたいなものかな?私は現実的な話だけど、大学受験合格かなー……。」

メイ『なるほど。ならば私はなでしこトライアスロンに参加する、を抱負にしよう。』

マサキ「俺はもっと大勢の人にガンプラを楽しんでもらいたい。クガ、お前は?」

ヒロト「俺は………。俺は、みんなとまた、楽しくバトルがしたい。本当に心から熱くなれる、そんなガンプラバトルがやりたいな。」

カザミ「くぅ~……!言ってくれるじゃねぇかヒロト!!そうだよなぁ!!なんて言ったって俺達、BUILD DiVERSだもんな!!」

パル「ですね!」

メイ『いいんじゃないか。』

マサキ「その時は俺もまた参加させてもらおう。」

ヒナタ「私もその時までには自分のガンプラ用意しとかなきゃ!良い事言うね、ヒロト!」

ヒロト「……ご、ゴホンッ…!それじゃあ、とりあえずフレディたちにも挨拶に行かないと。皆、エルドラへ行こう。」

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