ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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※ドラマCD的なノリで読んでください




ヒロヒナ追跡作戦

横浜にあるガンダムベース……通称『シーサイドベース』

1/1のエールストライクガンダムが見守るそのガンダムベースには、G-カフェと呼ばれる飲食スペースがある。

以前、チェーン店のカフェでバイトをしていた彼方は、たまたまそこに訪れた店長のマツムラ・ケンにスカウトされ、今は週一でここで働いている。

交通費も出る上に、同い年でバイト仲間のムカイ・ヒナタとはとても仲良くさせてもらっている。

もしここが近所であれば、毎日でも働きたい……そんな理想の職場であった。

 

 

「彼方さん!今日はお誘いありがとうございます!」

「いらっしゃ~い、歩夢ちゃん!ゆっくりしていってね~。」

 

 

いつものように同好会の練習を終えた放課後、少し時間が遅くなってしまったが、同好会の後輩である上原歩夢をG-カフェに招待した。

他のメンバーも招待したかったのだが、残念ながら皆用事で来られず、たまたま予定が開いていた歩夢だけが来てくれた。

彼女に甘い紅茶を差し出すと、歩夢はそれを一口飲んだ。

 

 

「! うわぁ、凄くおいしいです彼方さん!」

「でしょ~!それ、ヒナタちゃんのオリジナルブレンドなんだって!」

「そうなんだー……そう言えば、今日はヒナタさんはいないんですか?」

「言われてみればいないね?」

 

 

3年生になり、弓道部を引退したはずのヒナタは、基本的に毎日出勤している。

いつもヒロトと一緒にやって来て、仕事をして、少しGBNにもぐって……と言うのが、最近のヒナタの一連の流れ。

しかし今日はヒナタもいなければヒロトもおらず、店には彼方と店長のケンしかいない。

 

 

「あぁ、今日はヒナタちゃんはお休みだよ。」

「そうなんですか?……そう言えば彼方ちゃん、急にシフト変わってって言われたな~。」

 

 

ケンからシフト表を見せられ、ヒナタが今日が休みだと言う事をやっと思い出した彼方。

アハハと歩夢が笑っていると、注文していた料理を彼方が持ってきてくれた。

料理というかスイーツだが。

 

 

「お待たせ~。ア・バオア・クー・パフェだよ~。」

「わぁ~!すごいです彼方さん!」

「これ彼方ちゃんの一押しなんだ~。食べて食べて~!」

 

 

『機動戦士ガンダム』に出てくる『ア・バオア・クー』をイメージした巨大なパフェ。

歩夢はさっそくそれを写真に収め、今頃用事を済ませているだろう侑へと送信。

速攻で返事が返ってきたと思ったら、『羨ましい』の文字がいくつも羅列してありちょっと怖い。

練習後の疲れた時に食べる甘いもの格別で、美味しさのあまり涙が出てきた。

歩夢がパフェを食べている間彼方はささっと今日の分の仕事を済ませてしまい、今日の客入りが少ないため帰宅の許可を貰うと、歩夢と同じ席に座った。

 

 

「この後どうしようか?」

「GBNもいいですけど、せっかく横浜まで来たなら散策とかしたいなぁ。GBNと言えば、一昨日のせつ菜ちゃん達のバトル、凄かったですね!」

「あれ熱かったね~。そうそう、実は遥ちゃんも、彼方ちゃん達を見てガンプラバトルに興味が湧いたらしくて、今度一緒にガンプラ作るの~!」

「楽しみですね!」

「うん!すごく楽しみ~!」

 

 

歩夢と彼方の組み合わせは、おそらく同好会メンバーで二人組を作った時、一番空気が緩くなる組み合わせだろう。

エマと彼方で組んだ時も緩くはなるが、エマの母性が発揮され過ぎていて、どっちかと言えば母子とか、どいう雰囲気になる。

こんな緩い二人だが、使うガンプラは両者とも近接戦闘特化であり、彼方に至っては原作さながらの残虐ファイトでこそ本領を発揮する。

 

 

「彼方ちゃんね、遥ちゃんにも鉄血のガンプラ使ってほしいんだけど、何がいいかな~?」

「グリムゲルデとか強そうじゃないですか?」

「グシオンも可愛いよね~。真ん丸で。」

「逆に一番無いのは……、」

「グレイズ・アインでしょ。あんな可哀想な機体に遥ちゃんを乗せられません。」

 

 

グレイズ・アインは、おそらく鉄血で一番可哀想な機体。

パイロットであるアインのキャラの積み重ねもあり、登場時はほとんどの視聴者が衝撃を受けただろう。

遥としては、ガンダムグシオンかガンダムキマリスで迷っているそうで、東雲のガンプラ部の友達と相談するそうだ。

パフェを食べ終え、席を立った二人。

歩夢はめったに横浜に来ることは無いので、彼方と一緒にウインドウショッピングがしたい様子。

 

 

「私、彼方さんにお洋服選んであげたいです!」

「おぉ~、じゃあお願いしようかな~。」

「はい!任せてください!彼方さんはやっぱり、緩めのコーデが好きですか?」

「あー、そうだねー……あんまりキツめなのは得意じゃないかなー……。」

 

 

そんな事を話しながら、二人はガンダムベースを後にして横浜の街へ繰り出す。

しばらくは他愛のない事をしゃべりながら歩いていた歩夢と彼方だったが、道中、建物や電柱の陰に隠れながらコソコソする二人の人影を発見。

というか、一人はもう一人におんぶされていて、実質おぶっている一人が大分怪しそうに動いている。

物陰から何かを盗み見るように動くその少年に見覚えのある歩夢と彼方は、戸惑いながらも彼に話しかけた。

 

 

 

「……カザミくん?パルくん?何してるの……?」

「「うわああああああ!!!??」」

「急に大声出すとびっくりするよ~。」

 

 

 

と、全然びっくりしていない意外と肝の座っている彼方と、大声に驚く歩夢。

怪しげに動いていた二人は、彼女たちの初フォース戦の相手でもあった『BUILD DiVERS』のトリマチ・カザミと、パトリック・アルジェ。

普段、パルは車いすで動いているが、カザミと隠密行動をするために今日はカザミにおんぶされている。

 

 

「って、お前らかよ!!脅かすなよ!!」

「なになに~?なにかいけない事してるの~?」

「い、いけない事なんてしてねーよ!!なぁパル!!」

「……やっぱりやめませんかカザミさん……良くないですよ、こんなの……。」

「お前ここまで来てそりゃねぇだろ!?」

「やっぱりいけない事してるんだね……。」

 

 

パルの様子からすると、おそらくカザミが勢いで連れてきたのだろう。

カザミはハッとすると、歩夢と彼方も電柱の陰に隠し、息を潜めた。

 

 

「な、なに!?」

「シーっ!……ほら、アレ見ろよ。」

「「あれ?」」

 

 

カザミに言われ、電柱の陰から彼の指差す方向を見た歩夢と彼方。

すると、そこにいたのは見覚えのある少年少女の姿。

 

 

 

「次はどこへ行くんだ?」

「お洋服見に行こうよ。」

「わかった。似合うのがあればいいな。」

「きっと見つかるよ。行こう、ヒロト!」

「あぁ。」

 

 

 

そこにいたのは、クガ・ヒロトとムカイ・ヒナタの二人。

二人はカザミ達に一切気づいておらず、再び電柱の陰に隠れた彼は歩夢達に事情を説明しはじめた。

 

 

「ヒロトのやつ、今日のミッションの約束ドタキャンしやがったから、パルと一緒に文句言ってやろうと思って……。」

「そしたら、偶然お買いものをしているヒロトさんとヒナタさんを発見したんです。」

「で、こりゃ後をつけるしかねぇよなぁ!!って事で今に至る。」

「ふむふむ……なるほど。じゃ、彼方ちゃん達はこの辺で。」

「いやいやいやいや待てよ!!ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に行こうぜお二人さん!」

「えー……こういうのよくないと思うなぁ。果林ちゃんから二人の邪魔は絶対にするなって念押されてるし……。」

「そ、そうですよカザミさん!やっぱり良くないですよ!」

「バカ野郎パル!!俺達は、仲間としてヒロトがちゃんと男らしくヒナタをエスコート出来てるのか見守る義務があるんだよ!!」

「えー……ねぇねぇ、歩夢ちゃんからも何か言ってあげてよ。」

「……………。」

「歩夢ちゃん?」

 

 

カザミに呆れる彼方は、隣にいる歩夢に同意を求めた。

しかし、歩夢はその言葉が耳に入っていないのか、ただただヒロトとヒナタの事を遠くから見つめているのみ。

全員が首をかしげると、歩夢は拳を握りしめて彼方へ言った。

 

 

 

「行きましょう、彼方さん!」

「え、行くって……まさかヒナタちゃん達の後つけるの……?」

「ヒロトくんとヒナタさんは幼馴染なんですよ!気になりませんか!?」

「気にはなるけど……しまった……歩夢ちゃんは幼馴染ガチ勢だった……。」

 

 

 

上原歩夢は幼馴染ガチ勢だ。

 

どのぐらいガチかというと、幼馴染という事でいちいちマウントを取ってきたり、幼馴染を押し倒したり、校内フィルムフェスティバルで璃奈が手伝ったゲーム部のジャンルが幼馴染ものだった事に強く反応したり、と上げるとキリが無い。

恐らく歩夢の幼馴染への愛の強さは、クジョウ・キョウヤのガンダムAGE愛に勝るとも劣らないだろう。

 

「私たちも行くよカザミくん!」

「おう!じゃあミッションスタートだ!絶対にヒロト達にばれるなよ!!」

「うん!」

 

「お互い大変だねぇ、パルくん。」

「アハハ……もう慣れてます……。」

 

 

 

 

~~

 

 

その後、ヒロトとヒナタの向かった先は、先ほどのヒナタの提案通り洋服屋。

女性物が多く取り扱っていて、ヒナタはウキウキしながら服を見て回る。

ヒロトは女性物専門店にいるのが恥ずかしいのか、顔には出さないがソワソワしていた。

 

「おいおい……初々しい反応じゃねぇかヒロト!」

「きっとこの後、ヒナタさんがお洋服を持ってきて『似合う?』って聞いてヒロトくんが『ヒナタなら何着てたって可愛いよ』、その後ヒナタさんが『もー、またそんな適当な事言ってー』ってなると思う!」

 

「歩夢ちゃん、水を得た魚のごとくイキイキしてるねぇ。」

「僕、あんなにしゃべってる歩夢さん初めて見ました。」

「てかさっきのセリフ、前に侑ちゃんに言われたヤツだよね。」

 

 

店の中でもコソコソする4人は、陰ながらヒロト達を見守る。

しばらくしてヒナタが黄色の服を持ってきて、それをヒロトに見せた。

色は派手だが、デザインが少し大人っぽく、ヒナタが着れば可愛いというより綺麗、という印象になるだろう。

ヒナタがそれをヒロトに見せると、彼は顎に手を当てて首をかしげる。

そして、4人はその姿を不安そうに見守る。

 

 

「これなんてどうかなヒロト?」

「……いや、さすがにそれは似合わないんじゃないか?」

「そうかな?私は似合うと思うんだけど。」

「もう少し地味な色にした方がいい。」

「んー……そっかぁ……。わかった、戻してくるね。」

 

 

そう言って、ヒナタは再び売場へ消えていく。

勿論、今の様子を見ていたカザミと歩夢は信じられないといった表情でヒロトを見ていた。

 

 

「おいおいおいおい……普通あんな事言うかよヒロト!!」

「待ってカザミくん!もしかしたら、これはヒロトくんの作戦なのかもしれない!」

「作戦?作戦ってどういうことだ?」

「きっと『俺は可愛い服を着てるヒナタが皆に注目されると困るから、目立たない服を着てほしい』って事だよ!」

「なるほどぉ!!ヒロトのやつ、やるじゃねぇか!!」

 

 

「今日の歩夢ちゃんは侑ちゃんとせつ菜ちゃんとしずくちゃんを足して2で割ってるのかな?」

「それ割れてないですよ彼方さん。」

 

 

やがて、ヒロトと一緒に茶色いブラウスを選んだヒナタはそれを購入。

荷物は男らしくヒロトが持ち、それを見ていたカザミと歩夢はご満悦。

二人が次の目的地へと向かうので、乗り気じゃない彼方と、カザミにおんぶされているパルも一緒に向かう事に。

道中、カザミが自動販売機でジュースを買うので見失いそうになったが、なんとか見つけ出してそのまま二人を追う。

こんな事なら、ビルドダイバーズのアヤメに隠密行動の秘訣でも教わっておけばよかったと、カザミと歩夢は後悔。

いつもは2年生組では一番大人しく、一番周りを冷静に見てくれている歩夢だが、今日に限れば暴走具合はせつ菜以上。

滅多に見れない一面を見れて嬉しい反面、ちょっと疲れてきた彼方だった。

 

 

 

~~

 

 

次にヒロト達が来た場所は、文房具屋。

この店には文房具以外にも、ガンプラ製作に役立つ物が多数販売されており、ビルダーであれば立ち寄って損が無い場所。

想像以上の品揃えに、カザミとパルも目を輝かせていた。

 

「そう言えば俺、もう10000番の紙ヤスリ切らしてたんだよな。買って行くか!」

「僕もマスキングテープが欲しいです。」

「彼方ちゃんは普通にシャーペンの芯買う~。今日も帰ったらお勉強するから~。」

「皆!そんな事してる場合じゃないよ!」

「歩夢ちゃん歩夢ちゃん、この緑と黒のノート、侑ちゃんっぽくない?」

「買います!」

 

自分たちが必要な物だけ手に取り、ヒロト達にばれる前に速やかに会計を済ませた4人。

幸いヒロト達は全然違う売り場で物色をしていたので何とかばれずにやり過ごし、再び隠密行動を開始。

先ほどヒナタが服を選んでいたので、今度はヒロトのガンプラに使う道具でも選んでいるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

ヒロトとヒナタは万年筆を見ながら、どれがいいかと悩んでいた。

 

 

「違いがわからないな……。」

「もう直感で選んじゃえば?」

「いや、こういうのは妥協しちゃダメだと思う。」

「そっか。」

 

 

「万年筆……?」

 

ヤスリやデザインナイフなどには見向きもせずに、万年筆を見比べるヒロト。

ヒナタも一緒になって選びながら、どれがいいかと相談している。

幼馴染評論家の上原歩夢は、今の状況を冷静に分析し始めた。

 

 

「あれはどういう事なんだ歩夢!」

「……たぶん、交換日記じゃないかな。」

「交換日記だと!?」

「ヒナタさんの手に持っているものを見て!」

「あ……あれは、ノート!!」

 

 

ヒナタの手には、購入前のノートが。

先ほど歩夢が購入した物の色違いで、トリコロールカラーのノート。

トリコロールと言えばガンダム、ガンダムと言えばヒロトだ。

 

 

「ヒロトくんはたぶん、ヒナタさんとの交換日記に使うペンにはいい物を使いたいんだと思う!」

「えー、そんなに変わるかなー?彼方ちゃん、今までいろんなシャーペン使って来たけど、どれも一緒だったよ?」

「いえ、そんな事ありませんよ。いい物はやはり使いやすいです!僕の父が使っている万年筆も、こだわりの品だそうで、それ以外の物は使えないと言っていました。」

「そうなのかー……俺は書ければなんでもいいけどなー。」

「彼方ちゃんもー。」

「こういうのは気持ちが大事なんだよ!フフフ……小学生の頃に侑ちゃんと初めて交換日記した時も、侑ちゃんが『歩夢と交換日記するから高い鉛筆買って』ってお母さんにねだった事があってね。」

「その話、長くなるのか……?」

 

 

歩夢が侑との思い出話に花を咲かせている中、ヒロトとヒナタは万年筆を購入。

長々と語る歩夢を彼方がひっぱり、再びヒロト達の追跡を始めた。

 

 

 

 

~~

 

次に訪れた場所はデパートの食品売り場。

どれも新鮮な食材が並び、珍しく目がしゃっきりしている彼方はそれに目を輝かせている。

 

「どれも美味しそう~!遥ちゃんの為に買って行ってあげたいな~!」

「そうかぁ?エルドラの畑でなってる野菜の方が美味そうだけどな。」

「エルドラ?」

「な、なんでもありません!ダメですよカザミさん!」

「おっと、悪い悪い。」

「幼馴染でお料理だなんて素敵!何を作るんだろう?」

 

相変わらずテンションの高い歩夢。

ヒロト達の会話に耳を澄ませている。

 

 

 

「どれがいいかな……。」

「ヒロトが作ってくれるなら、ユリコさんは何でも喜ぶと思うよ。」

「そうかな?」

「そうだよ!」

 

 

 

「え……ユリコさん……?誰?」

「えぇ……彼方ちゃん予想外の展開なんですけど……。」

 

 

突然ヒナタの口から出た『ユリコさん』なる謎の人物の名前。

名前からして女性のようだ。

予想外の展開に、カザミはもちろん、乗り気ではなかった彼方とパルもヒロトとヒナタから目が離せない。

 

 

「こういう事、慣れてないんだ……。」

「私も手伝ってあげるから。」

「ありがとう。ヒナタに相談して良かったよ。」

「ユリコさん、喜んでくれるといいね!」

「あぁ。」

 

 

 

話を聞く限り、『ユリコさん』という人物は、ヒロトが料理を作ってあげたいと思うほど親密な相手らしい。

しかもヒナタとも面識がある様で、ヒナタはその『ユリコさん』の為に、ヒロトと一緒に買い物をしている。

先ほどまで仲睦まじい幼馴染を見て笑顔だった歩夢の表情がどんどん沈んでいき、その顔はまるで、スクフェス直前に侑と喧嘩をしていた時の様な暗い表情だ。

 

「ヒロトくん……どうして……!?」

「ま、まさかヒロトにそんな相手がいただなんて……アイツ、中々やるじゃねぇか……。」

「か、カザミさん!そんな事言ってる場合じゃないですよ!」

「歩夢ちゃんしっかり~!」

 

彼方が歩夢の肩を必死に揺らす。

だが、歩夢の表情は暗いままだ。

このままでは食材を持ったヒロトとヒナタがレジへ行ってしまう……その時だった。

 

 

 

 

「彼方姫ーーーーー!!!」

 

 

 

 

「!! こ、この声って……もしかして……。」

「「姫?」」

 

 

背後に悪寒を感じながら彼方が後ろを振り返った。

すると、そこにいたのは、何故かこんな所にまで買い物にきていた虹ヶ咲学園ガンプラバトル同好会兼近江彼方姫親衛隊(正式名称)の部長であるサクモト・ヤマト。

彼女は彼方の姿を見つけるやいなや彼方へと駆け寄り、彼方の前に跪いた。

 

 

「こんな所でお会いできるとは光栄です、姫!!」

「さ、サクモトさん、ちょっと、今は静かに……!」

「まさかこのような所でお会いできるとは……なんたる偶然……いや、むしろ必然か?いや、これは運命だ!!」

「だから静かに……!」

「そうだ!よろしければこれから私と共にランデブー、」

「お話聞いてーーーーー!!!」

 

 

 

「彼方ちゃん?」

 

 

 

「ハッ!!」

 

 

 

思わず叫んでしまった事で、ついにヒロトとヒナタにその存在がばれてしまった彼方たち。

やって来たヒロトとヒナタは、彼方の後ろにいたカザミ、パル、歩夢の存在にも気が付くと、首をかしげた。

 

 

「カザミにパル……それに歩夢も。こんな所で何をしてるんだ?」

「よ、よぉヒロト!お、お前こそ何してんだ!」

「あぁ……プレゼントを買ってたんだ。ヒナタにも手伝ってもらって。」

「プレゼントですか?」

「あぁ。実は、明日h、」

 

 

 

「ヒロトくん!!」

 

 

 

「歩夢?」

 

 

その時、ついに正気を取り戻した歩夢がヒロトへ叫んだ。

彼女は涙目になりながらヒロトへ詰め寄り、彼の肩を掴んだ。

 

 

「ヒロトくんは、ヒナタさんの事が大切じゃないの!?」

「は!?な、何を言い出すんだ!?」

「ユリコさんって人の方が大事なんでしょ!!」

「え?ま、まぁ……大事な人だけど……、」

「やっぱり……!ヒナタさんの事、弄んでるの!?」

「ちょっと、歩夢ちゃん!?」

 

 

もはや止まらない幼馴染ガチ勢。

困惑するヒロトとヒナタ。

なんだか楽しくなってきたカザミとパル。

状況が呑み込めないがなんとか彼方を誘いたいヤマト。

そしてもう何もかも投げ出してすやぴしたいと心から願う彼方。

 

なんとも混沌としたこの状況で、歩夢はヒロトに対し、ガンダムドリームインパルスのガンプラを突き付けた。

 

 

「勝負してヒロトくん!私が勝ったら、ヒナタさんに謝って!」

「謝るも何も……。」

「私、謝られるような事されて無いし……。」

「私と彼方さんは絶対に負けないから!!」

「えぇ!?彼方ちゃん巻き込まれてる!?」

「おぉ!姫のバトルが見れるのか!!」

「話がややこしくなるから静かにしてて!」

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

 

ヒロトを無理やりガンダムベースへ連れ込み、GBNへダイブした一同。

なお、ヤマトはあの後、兄と一緒に買い物に来ていたことが判明し、名残惜しそうにしながら帰って行った。

バトルフィールドは荒野フィールドであり、アユムはドリームインパルス、カナタはビヨンドバルバトスにすでに乗り込んでいる。

やる気満々のアユムに対してカナタは乗り気ではないが、今ここで決着をつけておかなければきっとこの話が果林に伝わり、もっと面倒くさい事になるだろう。

アユムは幼馴染ガチ勢だが、果林はヒロヒナガチ勢だからだ。

もしこのことが果林に伝われば……と、考えると彼方も何とかしなければという気持ちになる。

対するヒロトの搭乗するコアガンダムIIは、今まで見た事の無いアーマーを装着しており、右肩に装着されている巨大なドリルが目立つ。

 

 

「どうしてこんな事に……。」

『行きますよカナタさん!!アユム!ガンダムドリームインパルス!!行きます!!』

「……カナタちゃん、ガンダムビヨンドバルバトス、いっくよー。」

 

 

『状況が良く呑み込めないけど……やるしかないのか。ヒロト、サタニクスガンダム、出る!』

 

 

 

勢いよく飛び出したアユムのドリームインパルス。

ドリームシルエットから二本のレイピアを手に取り、サタニクスガンダムへ斬りかかる。

対するサタニクスガンダムも背中からビームサーベルを手に取ると、それでドリームインパルスに対抗。

重武装のサタニクスガンダムはドリームインパルスの突撃ではビクともせず、逆にドリームインパルスを押し返した。

 

 

『カナタさん!お願いします!』

「はいはーい!」

『!』

 

 

押し返されたドリームインパルスの後ろから、メイスを構えたビヨンドバルバトスが飛び出してきた。

だが、攻撃は一直線で対応しやすい。

ヒロトは素早くビームサーベルを引っ込めると、左肩に装備した巨大クローを展開し、それでビヨンドバルバトスのメイスを受け止めた。

更に、右肩の巨大ドリルを右腕にスライドさせ、それでビヨンドバルバトスを攻撃。

ビヨンドバルバトスのナノラミネートアーマーを貫き、内部のフレームに深刻なダメージを与えた。

 

 

「なっ……!?」

『このサタニクスガンダムは、ガンダム・フレームを倒すためのアーマーだ。』

「くっ!」

 

 

メイスを手放し、右手でダブルリベイクライフルを構えてサタニクスガンダムを撃つビヨンドバルバトス。

一瞬生まれた隙を狙い、バックパックに装備されたテイルブレードでサタニクスガンダムの頭部を切り裂いた。

だが、先ほどのドリルの一撃で受けたダメージが大きく、その場に膝をついた。

 

 

『カナタさん!』

『くっ……メインカメラをやられた……!』

「今だよアユムちゃん。」

『……はい!行くよ、ドリームインパルス!!』

 

 

ドリームシルエットを急噴射させ、サタニクスガンダムへ接近したドリームインパルス。

左カメラをやられたサタニクスガンダムの左側へと回り込むと、手に持った二本のレイピアをドッキングさせてスピアモードへ。

サタニクスガンダムの右腕にそれを突き刺し、とどめを刺すためにビームサーベルを手に取った。

 

 

 

『ボルトアウト!!』

 

 

 

だが、ドリームインパルスがビームサーベルをサタニクスガンダムへ突き刺す前に、サタニクスガンダムが装着していたサターンアーマーを脱ぎ捨て、素体であるコアガンダムIIの姿へ戻った。

ドリームインパルスの足元へ滑り込むと、彼女の足元でコアスプレーガンを構え、ドリームインパルスに向けて引き金を弾いた。

 

 

『きゃあああ!!』

「あ、アユムちゃーーーん!!」

 

 

ドリームインパルスの本体であるコアスプレンダーを直接狙い、アユムを撃墜したヒロト。

すでにフレームをやられて動けないビヨンドバルバトスも当然戦闘続行不能であり、今回のバトルはヒロトとコアガンダムIIの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

~~

 

 

試合を終えたアユムは、いつになく落ち込んでいた。

カナタがそれを慰めていると、そこへコアガンダムIIから降りてきたヒロトがやって来て、試合を見物していたカザミとパル、ヒナタもアユムの下へ。

 

「うぅ……また負けちゃったよぉ……。」

「よしよーし、アユムちゃんは頑張ったよぉ。」

「アユム……。」

「ね、ねぇアユムちゃん?たぶん、アユムちゃんは勘違いしてるんじゃないかな?」

「勘違い……?」

 

ヒナタにそう言われ、顔を上げたアユム。

ヒロトはため息をつきながらヒナタと顔を合わせ、事の経緯を放し始めた。

 

 

 

「ユリコさんっていうのは、ヒロトのお母さん。クガ・ユリコさんの事だよ。」

「明日は俺の両親の結婚記念日なんだ。それで、父さんと母さんにプレゼントするものを、ヒナタに選んでもらってたんだ。」

 

 

 

「お……お母さん……!?」

「あー、そう言えばこの前言ってたねー。」

「カナタからアドバイスを貰って、それで、今年は父さんたちに何かしてあげようと思って……。」

「じゃあ、服屋さんでヒナタさんと服を選んでたのは……。」

「ユリコさんに似合いそうな服を探してたんだ!」

「文房具屋さんは……。」

「俺の父さん、作家なんだ。普段はPCで書いてるんだけど、たまには直筆もいいかなって思って。それで万年筆を。」

「ガンダムカラーのノートは!?」

「あれはただのノートだよ。」

 

 

 

つまり、全ては勘違いだったという事だ。

ヒロトがカザミとの約束をドタキャンしたのも、急遽両親へのプレゼントを買いに行く事になったから。

ヒナタと一緒だったのは、ヒナタがヒロトの母親と仲がいいから。

カザミ達が期待していたような事は一切なく、それを聞いて全員一気に脱力。

特に、やっと全部片付いたカナタはその場で膝をつき、ログアウトしたらすぐにでもスやぴしてしまいそうなほど疲れ切っていた。

 

 

「そ、そうだったんだ……ご、ごめんなさい私ったら!」

「いや、アユムは悪くないよ。」

「悪いのはアユムちゃん達を誘ったカザミくんだもんね。」

「そ、そりゃねぇだろヒナタ!!」

「いえ、悪いのはカザミさんです!」

「う、裏切ったなパル!!」

「もう喧嘩やめよ~よ~……カナタちゃん疲れちゃったよ~……。」

 

 

眠そうな涙声でカナタがそう言うので、今日は解散となった。

最後までアユムはヒロトとヒナタに謝罪をし続け、その姿を見て、カザミも反省した。

 

 

 

 

~~

 

 

 

ログアウトして、解散した一同。

同じマンションに住むヒロトとヒナタの帰り道を同じであり、道中に今日の事を話していた。

 

 

「それにしても、あんな歩夢ちゃん初めて見たね。」

「あぁ。皆、意外な一面があるんだな。……イヴの事は、ニジガクの皆には言えないな……。」

「アハハ……そうだね。」

「でも、今日はありがとうヒナタ。おかげで助かった。」

「どういたしまして。こんな事ぐらいしか出来ないけど、ヒロトの役に立てて良かったよ!」

「こんな事ぐらいなんかじゃないよ。俺は、ずっとヒナタに助けてもらってる。」

「え……?」

「今日の事だけじゃなくて、マサキの事やエルドラの事、諦めかけていた俺をずっと励ましてくれていた事。他にもたくさん……ヒナタは俺の事をヒーローって言ってくれるけど、俺にとってはヒナタだって、俺を助けてくれるヒーローなんだ。」

 

 

ヒロトにそう言われ、ヒナタは思わず彼から顔を逸らした。

しばらくヒロトの顔が見れなかったが、数十秒後にもう一度ヒロトの顔を見た。

 

 

 

「……ユリコさんとオサムさん、喜んでくれるといいね!」

「うん。よかったら、明日も手伝ってくれないか?料理なんてした事なくて……。」

「しかたないなぁ。じゃあ今度、私にガンプラ作り教えてよ!今度はちょっと難しいヤツ作りたい!」

「わかった。だったら、RGのゼータガンダムを用意しておくよ。」

「そ、それは難易度高めかも……でも、楽しみにしてるよヒロト!」

 

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第26回:かすみんバースデー

かすみ「皆さーん!今日はかすみんの誕生日なんですー!盛大にお祝いしてくれていいですよー!」

璃奈「おめでとうかすみちゃん。璃奈ちゃんボード『ハッピー!』」

栞子「おめでとうございます!可愛いアイス屋さんを見つけたので、是非かすみさんと行きたいです!」

かすみ「えへへー!ありがとー、りな子、しお子!」

しずく「かすみお嬢様(イケボ)。」

かすみ「え、し、しず子……?」

しずく「本日は、僭越ながらこのわたくしめがエスコートさせていただきます(イケボ)。さぁ、お手をどうぞ(イケボ)。」

かすみ「え、な、なに?」

しずく「さぁ……お嬢様、お手を。それとも……わたくしでは、いけませんか……?」

かすみ(え、なにこのしず子、めっちゃイケメンなんだけど……それなのに上目使いで可愛い……///)

しずく「さぁ、かすみお嬢様(イケボ)。」

かすみ「か、かかか……かすみん!ちょ、ちょっと用事思い出したから行くね!!」

しずく「お待ちくださいお嬢様!かすみお嬢様!!」


璃奈「しずくちゃんの誕生日プレゼント、『今日一日かすみちゃんの執事になる』っていうの、効果あったね。」

栞子「かすみさん、顔真っ赤でしたね。しずかす尊いです。」
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