ドージを龍虎祭に誘ってから数日の時が流れ、いよいよ龍虎祭は明日にまで迫っていた。
GBNのロビーに集まったかすみんとしずこは、ドージからのメッセージが来ていないか何度も確認。
しかしかすみんにもしずこにも彼からのメッセージは来ておらず、二人は不安げに顔を見合わせた。
ドージのガンプラが完成したら手合せの約束をしていたのだが、その通達が一切ない。
そのことに不安を覚えた二人は何度かドージにメールを送ろうと思ったが、そのたびに『邪魔しちゃ悪い』という気持ちが勝り、メッセージを送れずにいた。
「大丈夫かなドージ君……ガンプラ、間に合えばいいけど……。」
「だ、大丈夫だよしずこ!だってかすみんが直々に応援してあげたんだから、間に合わないわけ無いじゃん!」
「だといいんだけど……。」
「それより、かすみん達は明日の本番のための練習をしないと!しずこは何の曲で出るの?」
「私は『オードリー』で出ようかな。かすみんさんはやっぱり『ダイアモンド』?」
「もっちろん!かすみんの可愛さを100%出せるのはやっぱコレでしょ!」
「お互いガンプラ全然関係ない曲になっちゃったね。」
「時間も無かったし、そこから先輩に新曲お願いするのも難しいもんね。」
しずこの持ち曲『オードリー』も、かすみんの持ち曲『ダイアモンド』も、二人を代表する曲だ。
スクールアイドルフェスティバルより少し前に、侑と一緒に作った曲の為、二人とも思い入れがある。
当日によりよいパフォーマンスが出来るように少しでも練習をしないといけないのだが、それにしてもドージが気になる。
そんな事を思っていると、ロビーの奥からユッキーとマギーがかすみん達に向けて手を振って来た。
「おーい!かすみーん!しずこーちゃーん!」
「ユッキーさん、マギーさん!」
「二人とも、明日はいよいよGBNでライブなんでしょ?アタシはリアルのライブ行けなかったから楽しみでしょうがないわ~♡」
「はい!見ててくださいよぉ!かすみんのメチャかわな所、いーっぱい見せちゃいます!」
「このライブ次第では、アタシの方からもあなた達に一つお願いしたいお仕事があるのよ。だから、是非とも素晴らしいライブ、見せて頂戴♪」
「もちろんです!」
「ところでユッキー先輩……ドージから何か連絡とか来ましたか……?」
ユッキーに恐る恐る尋ねたかすみん。
ユッキーはビルドダイバーズの中でも特にドージと仲の良いメンバーのため、色々踏み込んだ話をしているはず。
あれから一切ドージと連絡が取れなくなり、心配する二人の気持ちを汲み取り、ユッキーは優しく笑顔で言った。
「心配ないよ。ドージのガンプラなら、さっき完成したってさ。連絡があったよ。」
「ほ、ホントですかぁ!」
「よかったぁ……でも、ならどうしてドージくんはGBNにログインしないんでしょうか?」
「色々と思う所もあるんじゃないかしら。何しろ、ずっと追いかけていた目標と戦うわけなんだもの……すぐに切り替えられないわ。」
「そ、そうですよね……でも、かすみん達に一言ぐらいあってもいいと思うんですけど!」
「まぁまぁ。でも、ドージは二人に感謝してたよ。明日は絶対勝つって意気込んでた!」
「と、言うわけね。あなた達も明日は頑張ってね。」
「「はい!」」
ドージのガンプラは完成した。
それを聞いたかすみんとしずこは安心し、ホッと胸をなでおろした。
最後にユッキーとマギーに一礼し、二人は虎武龍のフォースネストへ。
残されたユッキーとマギーは、二人がいなくなると会話を続けた。
「楽しみねぇユッキー!」
「そうですね。ねぇマギーさん、さっき言ってたお願いしたい仕事って、もしかしてベアッガイフェス?」
「あら、わかっちゃった?明日のライブが成功したら、ニジガクの皆にお願いするつもり。ナミちゃんとも相談中なのよ。」
「そう言えば最近ナミさんみてなかったなー。やっぱりガンダムべースの店長ともなると忙しいみたいですね。」
「そうね。あの子も久しぶりにあなた達に会いたがってたわ。ベアッガイフェスでは会えるといいわね。」
~~
「「すごーい……!」」
いつも通り虎武龍のフォースネストに練習にきたかすみんとしずこは、思わず声を上げた。
すでに虎武龍のフォースネストは龍虎祭の準備の最終段階に入っており、看板を設置していたタイガーウルフと、それを見ていたシャフリヤールの姿を発見すると、かすみんとしずこは彼らに駆け寄った。
「シャフリさん!」
「タイガーウルフ師匠!」
「おう!来たかお前ら!」
「やぁ、君たち。練習は捗っているかな?」
「もうばっちりです!」
「師匠!私たちにも何かお手伝い出来る事はありませんか?」
「いや、大丈夫だ。こっちの心配より、お前らは自分の心配をしていてくれ。それより、言うのが遅くなったが……今回は本当にありがとな。ライブだけじゃなくて、龍虎祭の最後の参加者探しまで頼んじまって。」
「お礼なら、かすみんさんに言ってあげて下さい。彼をやる気にさせたのは、かすみんさんですから。」
えっへんと胸を張るかすみんに、しずことシャフリは思わずクスリと笑った。
うーむと、何かを考えるようにタイガーウルフは自分の顎に手を当て、手に持っていた参加者リストを見る。
「それにしても、まさかドージが参加するとはな……。」
「意外だったかい?」
「いや、いずれこうなる予感はしていた。今のアイツは強い。それこそ、俺達にだって引けを取らねぇ。アイツに一番足りなかったのは自信だ。アイツが出てくれるなら、今年の龍虎祭は絶対に盛り上がるぜ。」
タイガーウルフもシャフリヤールも、ドージの実力は認めている。
きっと、このGBNに今のドージを認めないダイバーはいないだろう。
だからこそ、今回の龍虎祭で彼はそのことを実の兄であるオーガに示さなければならない。
「ドージはきっと勝ちます!かすみんが保証しますよー!」
「かすみんくんの保証付きなら、きっと勝てるさ。」
いよいよ明日は龍虎祭。
ドージとオーガの、決戦の日だ。
~~
全ての準備は整った。
作り上げた新たなガンプラを、ドージは握りしめた。
彼の周りには改造に使ったガンプラの箱が散乱し、顔や手は塗料で汚れてしまっている。
兄から受け継いだ『ドージ刃-X』と、自分の愛機『煌・ギラーガ』、そこへ新たに二つのガンプラの組み合わせたドージが今作ることの出来る最強の機体。
もはや設定などどうでもいい。
自分のスキルと合わせて、最大限出来る事を模索して作った相棒を手に、兄への想いを馳せる。
「これで……俺は、勝てるのかな………兄ちゃん……。」
~~
『ただいまより!フォース『虎武龍』開催のバトルイベント!龍虎祭を開催いたしまーーーーす!!!』
『『『おーーーーーー!!!』』』
「うわぁ!すっごい熱気!アユム!あっちも見て見よう!」
「もうユウちゃんはしゃぎ過ぎだよ!もうすぐかすみんちゃんとしずこちゃんのライブがあるんだから、早く席取らないと!」
「あ、そうだったそうだった。」
かすみんとしずこを除いた同好会9人は、開催された龍虎祭用のバトルスタジアムへと来ていた。
小さいながらも出店が並び、ステージでは選手たちがウォーミングアップを始めている。
アイとりなこ、カリンが出店で全員分のたこ焼きを買ってきてくれて、カナタが席取りをしてくれた。
ユウとアユムもそっちへ行こうとするが、エマ、セツナ、しおこの姿が見当たらない。
アイが3人の姿を見かけて声を掛けようとしたが、3人ともステージでウォーミングアップをしているガンプラに視線が釘付けだった。
「見てください!あのガンプラ、エクシアですよエクシア!ディティールにこだわりを感じます!」
「ほう、ゴッドガンダムですか。しかしゴッドガンダムにあの武装は……あら?あれはもしや刀?なるほど!あれは超機動大将軍編の主役、武者號斗丸を意識しているんですね!」
「わぁ、ラゴゥだ!でもあのラゴゥ、よく見ると人型に変形しそう……各部を肉抜きして軽量化しようとしてるけど、変形機構のせいであんまり意味ないんじゃ……それに強度バランスも不安だし、あの人は勝てそうにないなぁ……。」
「おーい、そこのガンプラ大好き3人衆ー。そろそろ始まるからもどってこーい。」
大好きを叫ぶセツナ、関心するしおこ、辛口評価をするエマを連れ戻して、アイも席に座る。
ライブが始まるまでずっとガンプラの話で盛り上がっていたが、りなこからたこ焼きを貰うと少し大人しくなった。
しばらくすると彼女たちの隣に、ビルドダイバーズのリクとサラがやって来た。
「あ、こんにちわ二人とも~。」
「こんにちわエマ。皆も。」
「サラちゃんリクくんこんにちわ!今日は二人だけ?」
「ううん、あとユッキーも来てるよ。アイツ今、控室でドージと話してる。」
「そうなんだ。リクくんはオーガさんと話とかしなくていいの?ライバルなんでしょ?」
「試合前のオーガは気難しいから……今日はオーガとドージの二人を応援するつもり!」
「ドージ、凄く頑張ってたから。私とリクも、ドージとドージのガンプラをたくさん応援するよ。」
サラ、ユッキー、ドージの3人は、以前とあるミッションで苦楽を共にした戦友だ。
リクはオーガとドージの共通のライバルであるため、今日の試合の事をタイガーウルフたちに聞いてからずっと楽しみにしていたらしい。
そんな話をしていたら、ふとした疑問がユウの頭に浮かんだ。
「っていうか、リクくんは出なくてよかったの?」
「アハハ……オーガからは出ろって言われたんだけど、タイガさんに『ガンフェス前に公の場で機体を晒すな』って怒られちゃって……。」
「相手がセイさんだから仕方がない。セイさんなら絶対対策してくる。りなこちゃんボード『むんっ』!」
『本日の第1試合!!の、前に、オープニングセレモニーのお時間です!!今回はなんと、あのフォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』から、二人のメンバーがライブを披露してくれます!!では入場いただきましょう!お願いします!!』
リク達と話していたら、音楽と共にステージの上に、一人の少女が現れた。
赤いレインコートと傘を身に着けた、リボンが特徴的なその容姿……しずここと、桜坂しずくだ。
「みなさん、おはようございます!演技派系スクールアイドルのしずこです。今日は私たちのGBNでの初ライブで、龍虎祭を大いに盛り上げます!それでは聞いてください。桜坂しずくで……『オードリー』。」
主催であるタイガーウルフの推薦と言う事もあり、今回のトップバッターを務めたしずこ。
今回の選曲は、彼女の二つ目のソロ曲……彼女の愛機と同じ名前の曲『オードリー』だ。
~~
「! しずこの歌が始まった!」
「いよいよだね……頑張れ、ドージ!」
「…………。」
格納庫で機体の最終チェックを行っていたドージとユッキー、かすみんの3人。
ここまで届くしずこの歌声に、かすみんとユッキーは聞き惚れていたが、ドージだけは上の空。
彼の試合は第一試合で、この後のかすみんのライブの後すぐだ。
「………ハハハ……この期に及んで震えてきやがった……。」
「ドージ?」
「……俺、やっぱ怖いよ……兄ちゃんに、俺のバトルが通用しなかったらどうしよう……『まずい』って言われたらどうしようって、昨日からそればっか考えちまう……。」
昨日、マギーからかすみんが聞いた通り、気持ちの切り替えはそう簡単にできる物ではない。
震えるドージ……その彼の手を、かすみんが握ってくれた。
「大丈夫だよ!前にも言ったじゃん!ドージは強い!かすみんが保証するって!」
「だけど……!」
「ドージ。見て見なよ、君のガンプラ。」
そう言いながら、ユッキーがドージの肩に手を置いた。
彼に言われてドージは自分の機体を見上げた。
今の自分に出来る事を全て詰め込んだ、彼だけの愛機。
これを作っていた時の自分は、自信に溢れていた。
ただ、兄に勝つ……その一心で組み上げたガンプラだ。
ユッキーとかすみんと共に自分のガンプラを見つめていると、格納庫のドアを開けて、3人の人物が入ってきた。
「! ローズ……皆も……!」
「よう、元気してるかいドージ!」
そこに入って来たのは、同じくフォース『百鬼』のメンバーたち。
ローズ、オボロ、ナッツの3人だ。
彼らは百鬼の中でもドージと特に仲良く接してくれる先輩ダイバー達で、3人でドージを担ぎ上げた。
「な、なにすんだよお前ら!?」
「悩むなんてアンタらしくないよ!アンタの兄貴は単純なバトル馬鹿なんだから、アンタももっと単純にぶつかっちまいなよ!」
「我々は期待している。お前が、オーガに一矢報いる事を。」
「お前の漢気を見せてくれ、ドージ。」
メンバーに励まされるドージ。
その時、格納庫へスタッフの一人がやって来て、入り口でかすみんを呼んだ。
「かすみんさーん!そろそろスタンバイお願いしまーす!」
「あ、はーい!」
コンソールパネルを操作し、衣装へ着替えるかすみん。
百鬼の3人に担がれていたドージへ、衣装に着替えたかすみんがビシッと指差した。
「ドージ!これからかすみんが、メッチャ元気になれる曲歌ってあげる!それ聞いたら、ドージも頑張れ!」
「僕たちも客席で応援するよ!頑張って!」
「……おう!!」
ドージ、ユッキーとハイタッチして、かすみんは急いでステージへ向かった。
ステージへ向かう際中、退場したしずこと鉢合わせて彼女ともハイタッチ。
「あとは頼んだよ、かすみさん!」
「まっかせてよ!しず子!」
ステージへ飛び出たかすみんは、その場にいた観客全員の視線を独り占めに。
しずこから受け取ったマイクを握りしめ、かすみんは壇上へと上がる。
虎武龍の司会がかすみんの紹介をすると、彼女はマイクへ向かって大きな声で会場へ叫んだ。
「みなさん、私は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の、中須かすみです。本当は今日は、皆さんに可愛いかすみんを見せようって思ってました。だけど、やめました。私が今日歌う曲は、龍虎祭に出場するダイバーさん達や、ここへ来てくれた皆、私たちを応援してくれる人達へ向けた、激励の歌です!聞いてください!『無敵級*ビリーバー』!!」
かすみんがそう言ったと同時に、イントロが流れ始めた。
本来彼女はここで、代表曲である『ダイアモンド』を歌うはずだった。
しかし今日は龍虎祭。
スクールアイドルとして、彼女が今日ここで歌うべき曲は、自分の可愛さをアピールする曲ではない。
自分を勇気づけ、皆を勇気づける為の曲……『無敵級*ビリーバー』こそが、今日この場にふさわしい。
ステージに上がる直前、シャフリヤールに頼んで流す曲を変えてもらった。
今までは『ダイアモンド』の練習しかしていなかったが、不思議と自然に体が動く。
会場の誰もが、かすみんに、中須かすみから目が離せなかった。
タイガーウルフも、シャフリヤールも、ドージも、ユッキーも、もちろんしずこも。
「……すごいなぁ、かすみさんは……。」
「あそこにいるの……本当にかすみんかよ……すげぇ。」
努力しても追い付けないのかな?
ううん、弱気で凹んでちゃダメ。
自信が湧いてくるでしょ。
かすみんの歌を聞き、ドージも勇気が湧いてくる。
愛機を見つめながら、彼は決心を固めた。
やがて、かすみんの歌が終わり、盛大な拍手に会場が包まれた。
深々と頭を下げてステージから下がるかすみんは、急いで格納庫へ。
しかしそこにすでにドージの姿は無く、ユッキー曰くもう試合に向かったらしい。
「頑張れドージ……アンタは、無敵だ!!」
~~
『ニジガクの二人、素晴らしいライブをありがとうございました!!それでは、まずは第1試合!!なんと、最初の試合から注目のカード!!フォース『百鬼』を束ねる伝説のSSSダイバー、獄炎のオーガ!!対するは、同じ百鬼!!オーガの実の弟、ドージの兄弟対決!!これは目がはなせなーーーい!!!』
司会の中継と共に、ステージに二体のガンプラが入場してくる。
赤い巨体からGN粒子をまき散らしながら入って来たのは、獄炎のオーガの操るガンプラ……『ガンダムGP-羅刹天』
そして、対峙するのはドージの操る新たなるガンプラ……煌・ギラーガのフレームに『HG スサノオ』の装甲を取り付け、『HG ガンダムAGE-1 スパロー』とドージ刃-Xのパーツを組み合わせたドージの最強のガンプラだ。
「兄ちゃん。」
『……ドージ。ソイツがお前の新しいガンプラか?』
「あぁ。皆から勇気を貰って作った俺の最強のガンプラ『耀(ギラ)・スサノオ』だ!!」
『ふんっ。最強か……なら、お前を味わわせてみろ、ドージ!!』
『BATTLE START』
バトルスタートの合図が鳴った。
それと同時に、羅刹天と耀・スサノオの二体が同時に走り出した。
羅刹天の両肩に取り付けられている大型のクロー『フレキシブルオーガバインダー天』に二本のGNオーガソードを持ち、本体は両手で羅刹金砕棒を握り、計3本の武器を構えているオーガ。
それに対するドージの耀・スサノオはスサノオに付属していた強化サーベル シラヌイで応戦。
まずは互いの武器をぶつけるが、当然羅刹天の武器の方が威力は上であり、シラヌイはすぐに破壊されてしまった。
だが、耀・スサノオはすかさず太腿部からガンダムAGE-1 スパローの武器であるシグルブレイドを抜き取ると、それで羅刹天の武器の勢いを殺しながら彼の背後へ回り込んだ。
『X-ROUNDER』
『ちっ!ちょこまか動くんじゃねぇぞぉおおお!!!』
ドージは開戦直後にスキル『Xラウンダー』を発動し、オーガの動きを読んでいた。
しかし、オーガはその程度で勝てるような相手ではない。
彼には予測不能に動くフレキシブルオーガバインダー天がある。
背後に回った途端、オーガバインダーがGNオーガソードを振い、耀・スサノオを弾き飛ばした。
「ぐああああああ!!!」
「ど、ドージ!!」
吹き飛ばされる耀・スサノオを見て、思わずかすみんが彼の名を叫ぶ。
なんとか会場の壁にぶつかる前に空中で体勢を立て直したドージは、耀・スサノオに装着されているスパローの脚部を使って地面に華麗に着地。
だが、そこへすかさず羅刹天が斬りかかってきた。
『どうしたどうしたぁ!!お前の強さはそんなもんなのかぁあ!!』
「こんなもんじゃ……無い!!俺は、今日、兄ちゃんに勝つために来たんだぁああああ!!!」
シグルブレイドで羅刹天の攻撃を流す耀・スサノオ。
いくら彼にXラウンダーのスキルがあると言っても、羅刹天ほどのガンプラの攻撃をいなすことは上位ランカーでもあっても至難の業だ。
彼の日ごろの努力のたまものだ。
しかし、羅刹天の大型の武器を3つも相手取るのは、さすがにシグルブレイドでは分が悪い。
やがてシグルブレイドが折れてしまい、今度は腰に取り付けた二本のGNオーガソードを引き抜く。
兄と同じ武器だ。
『同じ武器を使って、この俺に勝てると思ってるのかドージ!!不味い戦法取ってんじゃねぇぞぉ!!』
「不味いかどうかは、もっと味わってから決めろよな!!」
GNオーガソード同志をぶつけた羅刹天と耀・スサノオ。
ぶつけた瞬間、何かを感じ取ったオーガは、羅刹天を下げさせる。
刃こぼれした自分の武器を見ながら、彼はドージへ顔を向けた。
『てめぇ……その武器……!』
「へへへ。」
会場にいる全員が、耀・スサノオの持つGNオーガソードに注目した。
確かに、この武器はドージ刃-Xが持っていた物と形状は同じ。
しかし、よく見ると刃の色が刃こぼれしたような形状になっていて、見様によってはのこぎりのようにも見える。
「ドージの奴、オーガソードの刃を細かい鋸状に加工して、相手の武器を摩耗させるつもりなんだ!」
「そんな事できるんですか?」
「普通は出来ないよ。あくまでプラスチックだしね。でも、ドージのガンプラはスサノオ!と言う事は、GNドライブがある!」
背面のGNドライブから放出させた粒子を、オーガソードにまとわせる。
これにより、刃の形状に沿ったビームサーベルの膜が形成され、相手の武器や装甲を破壊するための威力を高めてくれている。
00シリーズとAGEシリーズの特徴を組み合わせ、Xラウンダーのスキルをフル活用できるようにした機体。
それがドージの最強のガンプラ『耀・スサノオ』だ。
『……なるほど……ちったぁマシなバトルが出来るようになったじゃねぇかドージ。』
「兄ちゃん……?」
『喰らい尽くしてやるよ……お前を、骨の髄まで!!鬼トランザム!!!』
『ONI TRANS-AM』
オーガの叫び声と共に、羅刹天のボディがさらに赤く染まった。
頭部のバイザーが降り、『鬼ノ目モード』と呼ばれる形態へと変形すると、眼前の耀・スサノオをロックオン。
すさまじい速さで耀・スサノオへと襲い掛かり、彼を圧倒しはじめた。
これが羅刹天に搭載された独自のトランザムシステムである『鬼トランザム』
トランザム発動と同時に一体の敵を完全にロックオンし、相手の機体を完全破壊するまで止まる事が無い、凶悪凶暴なトランザムだ。
「くっ……!う、動きが読めない……!」
『どうしたドージぃ!!Xラウンダーってのはその程度かぁ!!味気ねぇぞぉ!!』
「ドージぃ!!」
鬼トランザムを発動した羅刹天の前に、圧される耀・スサノオ。
ひび割れたGNオーガソードで自分のオーガソードを破壊されてしまい、倒れ込んだ彼の姿を見て、かすみんがドージの名前を叫んだ。
地面に倒れた耀・スサノオはなんとか間一髪で羅刹天の攻撃をかわし、満身創痍ながらも立ち上がる。
「……俺は、無敵だ……!」
『あん?』
「俺は、強い……!俺は、無敵だ!!俺は今日、アンタに勝つ!!耀・スサノオ!!俺トランザム!!!」
『X-TRANS-AM』
耀・スサノオのGNドライブが展開し、ブーストモードへ以降。
それと同時に、全身からXラウンダーのエフェクトと共に緑色のGN粒子が散布され始め、彼の機体は前進が緑色に染まった。
そう思った次の瞬間、羅刹天の目の前から耀・スサノオの姿が消えた。
『なに!?どこへ行った……ドージ!!』
「後ろだぁああ!!!」
『なっ……ぐあああ!!!』
ドージの声が聞こえた次の瞬間、背後に出現した耀・スサノオが羅刹天を蹴り飛ばした。
バランスを崩した羅刹天の、今度は目の前に耀・スサノオが現れ、彼は背中に装備していた彼のもっとも愛用していた武器『ギラーガギラテイル』を手に取り、羅刹天を圧倒。
なんとか逃げ出した羅刹天が再び攻撃を仕掛けるが、耀・スサノオはオーガの攻撃を読んでいたかのようにその場から姿を消し、全く当たらない。
「ど、ドージの姿がまったく見えない!?」
「ユッキーさん、あれは……!?」
「たぶん、Xラウンダーとトランザムの同時発動だよ……Xラウンダーの先読み能力にトランザムの機動力が合わさって、相手の攻撃パターンを完全に見切ってる!」
「凄い……!すごいよドージ!めっちゃカッコいいじゃん!!いっけーーー!!ドーーージーーー!!!」
「これが、俺の目指した俺だけのガンプラ!!獄炎のオーガを超える為の、俺の為の機体!!」
ゆえに、『俺トランザム』
00とAGEのガンプラを長年乗りこなしてきた彼だからこそ出来る、1つの到達点。
羅刹天と耀・スサノオは、もはや観客では視認不能な超高速戦闘をはじめ、羅刹天の攻撃が一切命中しないにもかかわらず、耀・スサノオは着実に羅刹天へダメージを蓄積させていく。
だが、それも長くは続かない。
徐々に羅刹天は耀・スサノオの動きに対応し始め、かすかに攻撃も命中し始めてきた。
『ドオオオジイイイ!!!』
「兄ちゃあああん!!!」
折れた自分のオーガソードを拾い上げると、耀・スサノオはギラーガギラテイルとオーガソードを、羅刹天の肩に押し当てた。
そして、ついに彼は、羅刹天の両腕を、根元からもぎ取った。
『なっ……!?』
「これで……俺の、勝ちだあああああああ!!!」
『DANGER』
「なにぃ!?」
両腕を失った羅刹天へ向けて、ギラーガギラテイルを振り上げた耀・スサノオ。
しかしその時、耀・スサノオのエネルギーが急激にダウンし、ドージのXラウンダーのスキルが終了してしまった。
GNドライブのブーストモードでリミッターを外したため、通常よりも活動限界時間が早まってしまったのだ。
突如動きが鈍くなった耀・スサノオを見て、すかさず羅刹天は、両腕を失った代りに身軽になった事を活かし、軽やかな動きで飛び上がり、耀・スサノオの顔面を蹴り、彼を地面に叩き付けた。
「ぐああああ!!」
『ふぅー……!ふぅー……!ドォォォジィィィィィ……!!』
起き上がろうとする耀・スサノオ。
しかし、トランザム切れを起こしたガンプラは、通常のガンプラよりも機動性は落ちてしまう。
もはや、彼には羅刹天から逃げるすべは無い。
足を振り上げ、耀・スサノオの顔面を踏み潰し、跡形もなく粉砕する羅刹天。
それにより耀・スサノオは機能を停止し、その2秒後、同じく羅刹天もトランザム切れとHP切れでその場に倒れた。
『WINNER 百鬼 OGRE』
『し……試合終了ーーーーーー!!!激闘を制したのは、フォース『百鬼』のリーダー、オーガ!!壮絶な兄弟対決、一歩も譲らない戦いに終止符を打ったのは、兄のオーガだーーーーーーー!!!!』
~~
試合を終え、格納庫へと搬送された耀・スサノオの損壊は凄まじく、見るも無残な状態だった。
修復される愛機を呆然と眺めていたドージの下へ、かすみん、しずこ、ユッキーが駆け寄る。
ドージはばつが悪そうな表情でかすみん達を見たが、すぐに視線を逸らした。
「……ごめんな、負けちまったよ……俺……。」
「ドージ……。ッ……か、カッコよかったよ!ドージ!熱かった!最高だった!輝いてた!!」
「かすみん……。」
「そうだよ!きっと、この会場にいた人達……ううん、このGBNのどこにも、さっきのドージくんをカッコ悪いなんて言う人はいないよ!」
「しずこ……。」
無言で彼女たちの言葉にうなずくユッキー。
立ち上がったドージもかすみん達に何か言おうとしたが、すぐに彼は口を閉じた。
何故なら、格納庫の入り口に、あの男がいたからだ。
「……に、兄ちゃん……!」
「ドージ。」
「ご……獄炎のオーガ……!?」
そこにいたのは、実の兄である獄炎のオーガ。
ガンプラに乗っていないにも関わらず、その圧に恐怖し、かすみんとしずこはユッキーとドージの後ろに隠れた。
拳を握り、ドージはオーガに背を向ける。
そんな彼に、オーガは言葉を投げかけた。
「『ライバル』に背中を見せるんじゃねぇぞ、ドージ。」
「え……?」
「聞こえなかったのか?『ライバル』に、背中を見せるなと言ったんだ。」
「兄ちゃん……今、俺の事ライバルって……。」
ドージがGBNを始めたきっかけは、兄に認めてほしかったから。
リアルでもGBNでも偉大な兄であるオーガに認められたい……その一心で今まで頑張ってきた。
そのオーガが今、自分を『ライバル』と呼んでいる。
「お前のバトル、美味かったぜ、ドージ。」
「…………!!」
美味かった。
その言葉を、どれだけ聞きたかっただろうか。
いずれオーガに『美味い』と言わせたい……ずっとそう思っていた。
言われてうれしいはずの言葉なのに、今はその言葉を聞いて心底悔しい。
思わず目から涙があふれ、ドージは周りの目も気にせずに思いっきりオーガへ向けて叫ぶ。
「オーガぁあああ!!!!」
「……………。」
「次は絶対俺が勝つからな!!!お前にも、チャンピオンにも勝って!!俺が無敵だって証明してやる!!そしたらお前なんて、ぷっぷくぷーって笑ってやるからな!!首を洗って待ってろ!!オーガぁあああ!!!」
「その時は、また俺が喰らってやるよ。」
ニヤリと笑い、オーガはその場から立ち去った。
その後、かすみん達が見ているにもかかわらずドージは大泣き。
彼が泣き止むまで3人は決して彼の傍を離れる事は無かった。
~~
その後、滞りなく龍虎祭は終了した。
かすみんとしずこのライブを見たマギーは感動し、龍虎祭が終わったと同時にGBN仲間であるビルドダイバーズの一員『ナミ』へと連絡を取る。
『へー、そんなに凄いんだ、その子たち!』
「もうホント、めちゃくちゃ可愛いのよぉ♡ユウちゃんじゃないけどときめいちゃったわぁ!」
『じゃあ、もうベアッガイフェスの出演依頼は決まりでOK?』
「もち☆の☆ろん!あの子たちには追って依頼を掛けるとして……まぁ、断りはしないでしょう。」
『りょーかい!じゃあGBNの運営に申請だしておくね。衣装データとかはどうする?』
「それもそっちに頼んじゃってもいいかしら?ごめんなさいねぇ、面倒事ばっかり押し付けて。」
『全然!むしろ楽しい!で、人数は?何人?』
「えぇ。」
ナミと連絡を取りながら、マギーは改めてニジガクのメンバーの数を数える。
そして、そのありのままの数をナミへと伝えた。
「11人!11人でお願いするわ!」
『OK!それにしても11人でステージかー……多いなー……。』
その後、色々と話した後に、マギーはナミとの通信を切った。
ご機嫌で虎武龍のフォースネストを離れようとした時、彼の脳裏にふとした疑問が浮かんだ。
「あら?そう言えばあの子たちって実際踊るのは10人だったかしら……?いやいや、まさかね♪」
~にじビル毎回劇場~
第29回:IPhoneシャワー
栞子「スマホをシャワーで洗ってしまいました……。」
璃奈「栞子ちゃん、この間買い換えたばかりじゃなかったっけ?」
栞子「はい……汚れが気になったので、果林さんに相談したら『洗えばいいんじゃない?』と言われて……。」
璃奈「どうして信じちゃうの?」
栞子「母にすごく怒られました。」
璃奈「当然だよ。」
栞子「璃奈さんなら直せるかと思って、それでご相談を……。」
璃奈「私もさすがに洗ったケータイは直せない。力になれなくてごめんね。」
栞子「そうですか……ごめんなさい、無理な事を言ってしまって……。」
侑「ドライヤーで乾かせばいいんじゃない?」
栞子「なるほど!その手がありました!さすがは侑さんです!」
璃奈「絶対ダメ。」