『今年も始まりましたナデシコアスロン!可憐で美しい女性ダイバー達が、己の意地とプライドをかけて、今レースに挑みます!それでは出場選手の方々、位置について!』
「お、始まるよエマっち!サラちー!メイりん!」
「そうだな。悪いが、勝ちは私がもらう。」
「メイ、ちゃんと準備運動はした?」
「はい、姉さん。」
「私たちも負けないよ~。」
大勢いるダイバー達の中で、それぞれスタート位置についたアイ、エマ、サラ、メイ。
アイはいつも陸上部の助っ人をしているようにクラウチングスタートの体勢をとる。
今回のレースで必ず勝って、璃奈にお礼のプレゼントを贈る。
その為にも絶対に負けられない。
そんなアイを心配そうに見つめながらも、サラやメイとの親交を深めようとエマは二人に笑いかけた。
メイは相変わらず中々表情を変えてはくれないが、サラが笑顔で笑い返してくれた。
そして、やがて司会者の声が会場に響く。
『よーーーーい………ドンっ!!』
「よっしゃーーーーー!!」
「わっ、アイ速い!」
「凄いスピードだな……。」
「アイちゃんはニジガク運動部のヒーローだからね。私たちは私たちのペースで頑張ろう。」
「うん。頑張ろうねメイ。」
「もちろんです姉さん。」
もしかしてメイはシスコンなのではないか。
エマは無愛想ながらサラに従順な態度を見せるメイに、そんな感情を覚えた。
~~
アイはぶっちぎりの一位だった。
GBNではプレイヤーの運動神経もある程度反映してくれるが、様々な部活で助っ人をして、スクールアイドル活動にも力を入れているアイにとって、このイベントはまさに独壇場。
ペース配分を考えても、最初の時点でかなり差をつけているため、そう簡単に追い抜けるはずはない。
なお、2位にはエマがいる。
「よーし!このままぶっちぎりで……あれ?なんだろアレ?」
走っていると、アイの目に映ったのは休憩所の様なテント。
まだそんなに走っていないのに休憩所とは……と一瞬思ったが、近づいてみるとそれが休憩所ではない事に気が付いた。
テントには『第1ポイント』と書かれており、テントの中には大量のガンプラが積まれている。
「はぁ……はぁ……何ここ?ガンプラ作れってこと?」
「アイちゃ~ん!」
「エマっち!追いつかれちゃったか~。」
「ふぅ……ここはね、ガンプラを完成させると先に進めるようになるんだよ。まずは自分が作るガンプラを選ぼうね!」
「わかった!ん~……どれにしよう。簡単なのがいいよねぇ……。」
アイが簡単なガンプラを作ろうと、ハロのガンプラを手に取ろうとした。
しかし、彼女の隣でエマがとんでもない物に手を出そうとしているのを目撃し、思わず顔をひきつらせてしまった。
「え……エマっち……!?なに、それ……?」
「ウフフ♪見て見てアイちゃん!『RG ジオング ラストシューティング』!私発売すごく楽しみにしてたんだけど、どこに行っても売って無かったの~!こんな所で作れるなんて嬉しいよ~!」
「え、エマっち……これレースだよ?簡単なの作らなくていいの!?」
エマが手に取ったガンプラは、最近発売された『RG』シリーズのジオングの特別エフェクトver。
非常に完成度が高いため、ファンの間では大変好評を得た大人気キットだ。
エマはホクホク顔でそれを開封すると、迷う事無く組み立て始めた。
なお、RGは簡単に言えば小さいMGであり、組み立てにはそれなりの技術と時間と根気が必要となる上級者向けのガンプラだ。
エマの行動に度肝を抜かれていると、次々に他の参加者も到着し、皆簡単なガンプラに手を出し始めた。
追いついたサラとメイも、作るガンプラを悩んでいる。
「私はこれで良いんだよ、アイちゃん。レースには勝ちたいけど、やっぱりガンプラは自分の好きな物を作るのが一番なんだから!」
「えぇ……で、でも……。」
「エマ、楽しそうだねメイ。」
「えぇ。それより姉さん、そのガンプラは……?」
「ダブルオーガンダム!リクとおそろいのガンプラが作りたくって!」
「なるほど。姉さんらしい。では私も、ウォドムを作るとするか。」
エマがRGジオングを組み立てている中、サラはHGのダブルオーガンダム、メイはHGのウォドム、そしてアイもハロではなくレジェンドBBの武者真悪参を選択。
各々好きなガンプラを作っている姿を見ていた他の参加者も、簡単なキットを作るのをやめて自分の好きなガンプラを作り始めた。
「そ、そうよね……いくらレースでも、ガンプラは自分の好きな物作りたいよね……。」
「わ、私!PG作る!」
「だったら私、チャンピオン様と同じAGE2を!」
全員、エマのガンプラに対する姿勢に影響されたようで、第1ポイントは大渋滞。
それでも全員楽しそうにガンプラを作り続け、今回のレースはナデシコアスロン史上最遅レースとなった。
~~
エマのガンプラを作るスピードは異常であり、アイ、サラ、メイがHGクラスのガンプラ作り終える頃には、すでにRGのジオングを完成させてしまっていた。
ほぼ同時に作り終えた4人は真っ先に第1ポイントを抜け、次の目的地を目指すために海へ向けて走る。
「はぁ……!はぁ……!だいぶ時間かかっちゃったね。」
「うん。でも楽しかった!ダブルオーガンダム、上手に作れたかな?」
「素晴らしい出来でしたよ姉さん。さすがです。」
「フフ♪皆が楽しんでくれたなら良かったよ!ね、アイちゃん!」
「う、うん。そうだね。」
あの時、アイは簡単なキットを作って真っ先に抜けるという選択肢もあった。
だが、エマやサラ、メイの楽しそうな顔を見ていたら、自分も自然と好きなガンプラに手を出していた。
その時の自分の選択が正しかったのかどうかモヤモヤしながらも、彼女たち4人は次のチェックポイントに到着。
海岸で4人を待ち受けていた物は……、
「これ、次は何をすればいいの?」
「ガンスタ映えだよ。」
「ガンスタ映え?インスタ映えみたいなもの?サラちー。」
「なるほど。ガンプラを使って、観客からの賞賛を得られる写真を撮る……と言う事ですね。」
並べられたガンプラを好きに使い、自分だけの一枚を撮影するこのチェックポイント。
エマはさっそく並べられたガンプラをまじまじと見つめ、何かを閃くとその中から3つのガンプラを手に取った。
「私の一枚は、コレ!」
そうしてエマが撮った写真。
それは、ガンダムAGE1がファルシアを抱きかかえて、ゼダスにビームサーベルを突き刺しているという構図の一枚。
海岸に打ち上げられた黒いビニールを背景にする事で宇宙空間を演出してる。
「エマっち、この写真って……、」
「隊長がガンダムAGEが好きだったんだけど、前に『ユリンが助かっていればフリットには違う未来があったかもしれない』って言ってたの。だから、フリットがユリンを助ける事に成功した、もしもの一枚なんだ!」
ガンダムAGE本編では、主人公のフリット・アスノが想い人のユリンを助けられなかった事で、ヴェイガンに対する復讐を決意してしまった。
その事がやがて、彼の孫であるキオ・アスノが戦争を終わらせる切欠にもなるのだが、この時点では誰も幸せにはならなかった悲劇のシーン。
皆の心を温めたいという気持ちを持ったエマは、フリットとユリンが幸せになれるようなシーンをジオラマで再現した。
コレには多くのAGEファンの賞賛が集まり、無事に彼女はポイントを通過する事に成功した。
「じゃあ、先で待ってるね、アイちゃん!」
「う、うん!よーし……じゃあ、アイさんも!」
アイが悩んでいるうちに、サラとメイもガンスタ映え写真を撮影して次へと進んでいく。
サラは『ポケットの中の戦争』に登場するMS、アレックスとザクII改で結婚式を挙げる写真。
メイはいつかの模擬戦を思い出し、ジオン水泳部所属機を全機集め、全員で入水前の準備運動をしている写真。
いつもクールなメイがこのような写真を撮るのは予想外で、一部の熱狂的なファンから大きな支持を得て二人とも見事通過に成功した。
「先に行くぞアイ。」
「待ってるね。」
海を泳ぎ、エマと共に次のポイントへ向かったサラとメイ。
悩んでいる間に、次々に別の参加者がチェックポイントに到着しはじめた。
焦ったアイは目の前にあったガンプラを思わず手に取り、何かできないか考え始める。
「うーん……どうしよう……どうしよう……ん?そうだ!」
アイは手に取ったガンプラ……『武者○伝』の主役機である武者丸の鎧パーツを取り外し、軽装形態である『武ちゃ丸』に変形させる。
取り外した鎧は組み合わせる事で、武ちゃ丸というキャラクターを象徴するたこ焼き屋台を再現する事が可能で、アイは武ちゃ丸を浜辺に置き、一緒に写真に写り込んだ。
「さぁさぁ!よってらっしゃい見てらっしゃい!海の家の本格タコ焼き、いらんかね~!なんつって!」
武者頑駄無としての武者丸ではなく、あえて武ちゃ丸のタコ焼きという点にフォーカスしたアイの一枚。
これが、一部の武者頑駄無愛好家達から熱烈な支持を受け、なんとかアイはチェックポイントの通過に成功。
エマたちとだいぶ差が開いてしまったが、ここからなんとしても逆転するため、彼女は急いで次のポイントへ向かうべく、海に勢いよく飛び込んだ。
~~
海を渡った先にあったチェックポイントにあったのは、またしてもガンプラ。
そこには切り株で作ったような土俵があり、到着した時には丁度そこでサラとメイが切り株に乗せたダブルオーガンダムとウォドムでトントン相撲をしていた。
エマはそれを眺めており、彼女の手にはヴェルデバスターガンダムが握られている。
「おーい!エマっちー!」
「アイちゃん!ようやく到着だね!」
「さっきの写真めっちゃ難しかったよ~……で、サラちーとメイりん何してんの?」
「トントン相撲だよ。」
「へー、トントン相撲……え?トントン相撲!?」
「そうだよ。ほら。」
何を隠そう、この第3チェックポイントの課題はトントン相撲。
用意されたガンプラを使い、切り株の上で戦わせるというシンプルな物。
もはやガンプラじゃなくてもいいんじゃないだろうか……そんな事を考えているうちに、サラVSメイの戦いはサラの勝利で幕を閉じた。
「やった!」
「さすがはサラ姉さんです。強い。」
「じゃあメイちゃんは次私とね~。」
「手加減はしないぞ、エマ。」
こうしてエマのヴェルデバスターガンダムとメイのウォドムが切り株の上で相撲を始めた。
呆気にとられているアイに気が付いたサラは、ダブルオーガンダムにお礼を言って棚に戻し、アイに近づいてきた。
「ねぇ、アイは楽しくないの?」
「え?ううん……楽しいよ。」
「………本当に?」
「ど、どうして?」
「なんだか今日のアイ、勝ちに拘ってるみたいだったから。」
「わかるの……?」
「私にアイの気持ちはわからない。でも、愛参頑駄無が教えてくれたよ。」
ログインする時に一緒に持ってきたアイの愛機である愛参頑駄無。
ELダイバーであるサラは、ガンプラの気持ちを読み取ることが出来る。
「……アイさんさ、今日は優勝したいんだよね。りなりーに、お礼をしたいから……。」
「お礼?」
「うん。アイさん達、少し前に色々あって……その時、アタシはりなりーにたくさん助けられて……だから、今日の大会で優勝して、りなりーにプレゼントしたくってさ。」
「そうなんだ。」
「楽しくないわけじゃ無い……だけど、それでも今日は……今日だけはどうしても勝ちたいんだ!」
「ねぇアイ、エマを見て。」
「エマっちを?」
サラにそう言われて、アイはエマを見た。
真剣にトントン相撲に打ち込んでいるエマは、とても楽しそうだ。
かつて、サラの命を奪う役目を担ってしまい、ヒロトと同時期にGBNから退いた彼女が、今こうして心からガンプラバトルをして笑っている。
その姿を見て、アイはハッとした。
「エマっち、凄く楽しそうだね。」
「有志連合戦の時、ヴェルデブラストはとても悲しそうだったよ。でも今のヴェルデブラストは、凄く嬉しそう。私は勝ちたいとか負けたく無いとか、そういうのはまだよくわからない。だけど、ガンプラバトルって、楽しんだ人が勝つものだって事はわかるよ。」
「楽しんだ人が勝つ……エマっち……。」
「やった!私の勝ちだよメイちゃん!」
「まさかまた負けてしまうとは……。」
「ウォドムだとバランスが悪いんじゃないかな?立ち方を変えてみようよ!」
「そうだな。」
楽しんだ方が勝つ。
サラに言われるまで、そんな事頭から抜けていた。
絶対に勝ちたい……そんな感情が、また過ちを犯す所だったかもしれない。
せつ菜をはじめとした同好会の皆に負けたく無くて、少しでも差をつけたくて部に移籍したあの時。
あの頃は部での生活も楽しもうとはしていたが、同好会の時より心は満たされなかった。
誰よりも『楽しい』をわかっているはずの自分が、目先の『勝ち』だけに拘って、大事な事を見失っていた。
これでは本末転倒だ。
勝負にはもちろん勝ちたい。
だけど、楽しむ気持ちを忘れてもいけない。
『勝ちたい』も『楽しい』も両立するのがアイの……宮下愛の目指すスクールアイドル。
皆に元気を届ける為の、『楽しいの天才』
今度はそれを、サラとエマが教えてくれた。
アイは棚からガンダムのガンプラを手に取ると、それを持ってメイの前に。
切り株の上にガンダムを置き、メイに向かい合った。
「メイりん!次はアイさんと勝負だよ!」
「アイか。わかった。勝負しよう。」
「あ、ちょっと待って。メイりん、ウォドムならこういう感じで立たせればバランス良くなるんじゃない?」
「なるほど……だがいいのか?立ち方のコツを掴めば、重量で勝るウォドムの有利になるが?」
「えへへ、アイさん、どんな勝負でも楽しみたいからさ!だからハンデとかそう言うの無い、ギリギリのバトルをやりたいじゃん!」
「いいだろう。勝負だ、アイ!」
そうして始まったガンダムVSウォドムのトントン相撲。
先ほどまでとは比べものにならないぐらい安定したウォドムに、ガンダムが押されそうになる。
ただのトントン相撲なのに、二人の表情は本物のガンプラバトルの時とは変わらず真剣そのもの。
だが、とても楽しそうだ。
「あ……!アイちゃんのガンダムが……!」
「いっけーーー!!」
「なっ……!?ま、また負けた……。」
体格の不利をはねのけ、アイのガンダムが勝利。
飛び上がって喜んだアイはエマとハイタッチをして、負けたメイの肩をサラが叩く。
「次、頑張ろうね、メイ。」
「はい……姉さん……。」
「いよいよ最後のチェックポイントだよアイちゃん!」
「うん、エマっち!……エマっち、ありがとね。」
「ん?どういう事?」
「アイさん、大事な事忘れてたよ……エマっちやサラちーが思い出させてくれた!だから、ありがと!」
「! アイちゃん、最後のレース、頑張ろうね!」
「よーし!テンあげで行くぞーーーー!!」
~~
真っ先にトントン相撲を抜けたエマとアイが辿り着いた最後のチェックポイントは、道が途中で途切れていて行き止まりになっていた。
明らかにここから先はダイバー単身では抜けることが出来ず、アイとエマはそこで足を止める。
「これ、どうやって進むのかな?」
「やっぱガンプラに乗るんじゃない?」
「でも、ナデシコアスロンはガンプラには乗らないレースのはずなんだけど……、」
『はい!ここで今年度からのルール変更の説明をさせていただきます!!』
「うわっ!びっくりした~!」
突然アナウンスが流れ、アイとエマは上を見上げる。
そこには司会者によりモニター映像が映し出され、3年前のナデシコアスロンの最終レースにてガンプラに乗り込んで競い合うダイバー達の姿が。
『今年度より、この最終レースの内容を『ガンプラに乗り込んでのレース』へと変更させていただきました!ダイバーのみなさん、思う存分ガンプラに乗って美しく、かつ大胆に競い合ってください!!』
「ってことは、愛参頑駄無で行けるってこと?」
「ね?ガンプラ持ってきておいてよかったでしょ?」
「うん!よーし!」
コンソールパネルを開き、アイとエマはそれぞれの機体を出現させた。
アイの下には直江兼続頑駄無の改造機、愛参頑駄無が。
エマの下にはヴェルデバスターガンダムの改造機、ヴェルデブラストガンダムが。
自分の相棒に乗り込み、武器を構えた二体のガンプラは、ほぼ同時に出撃開始。
「アイさん!愛参頑駄無!レッツゴー!!」
「エマ!ヴェルデブラストガンダム!出撃!!」
ゴールをめざし、他の参加者が続々と集う中、真っ先に出撃した二体。
愛参頑駄無とヴェルデブラストの出力はほぼ同じであり、ほとんど横並びでコース内を飛び抜ける。
「エマっち!!」
『アイちゃん、ここからは真剣勝負!ヴェルデブラストガンダムに乗っている以上、私だって負けられないよ!』
「OK!どっちが勝っても!」
『恨みっこなし!だね!』
初フォース戦以降、教訓として装備したビームサーベルを手に取り、愛参頑駄無を切りつけたヴェルデブラスト。
愛参頑駄無もそれを愛参命全開で防ぎ、そのままヴェルデブラストを槍で突いた。
今の一撃でヴェルデブラストは少しダメージを負い、後ろへ下がる。
その隙に愛参頑駄無は変形し、飛行形態『スーパー愛参イーグルモード』へ。
「このまま一気に行っちゃうぞーーー!!」
『行かせないよアイちゃん!!』
だが、後ろへ下がったのはエマの作戦。
愛参頑駄無が変形したこの瞬間を狙い、背後から愛参頑駄無に掴まった。
こうする事で、愛参頑駄無を無駄に消耗させつつ、ゴールまでエネルギー消費を抑えて移動する事が出来る。
「やっぱ強いなエマっち……!でも、だから楽しい!」
『優勝するのは私だよ!!』
「いいやアイさんだーー!!」
『いや、私と姉さんだ。』
「『え?』」
声が聞こえ、振り返った愛参頑駄無とヴェルデブラスト。
するとそこには、並み居るガンプラ達を払いのけながら迫りくるメイのガンプラ……ウォドムポッド+の高速飛行形態の姿が。
更にウォドムポッドに掴まっていたモビルドールサラがエネルギーの翼『月光蝶』を発動しており、二人は恐ろしい勢いで追い上げてきた。
『アイ!エマ!』
『さ、サラちゃんとメイちゃん!?』
『優勝は我々がもらう。』
「いいねいいね!燃えてきたねー!やっぱり、ガンプラバトルはこうでなくっちゃ!!」
ヴェルデブラストを払いのけ、自由になった愛参頑駄無。
横並びになった4体は、他の参加者たちでは到底追いつけない速度でゴールを目指す。
次々にトップが入れ替わり、時には互いを妨害しあい、時には障害物を共に砕き、目指すは優勝ただ一つ。
そして、いよいよゴールテープが4人の前に迫った来た。
「いっけーーーー!!愛参頑駄無ーーーーーー!!」
『ヴェルデブラストーーーーー!!』
『姉さん!!』
『メイ!!』
ピーーーーーーーーーッ!!
ほぼ同時に、ゴールへと入場した4機。
ゴールと同時に機体が止まり、彼女たちは一斉にガンプラから降りてきた。
同時にゴールとなると、ビデオでの確認が必要となる。
4人はモニター映像に噛り付きながら、誰が優勝したのかを確認。
そして、とうとうその結果が発表された。
『こ……これは……!わ、わずか0,1秒の差で、愛参頑駄無が最初にゴールを通過しています!!愛参頑駄無!愛参頑駄無です!!優勝は、フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の、アイ選手に決まりましたーーーー!!』
「……勝った?」
「や、やったよアイちゃん!!おめでとう!!」
「凄い!アイ!」
「あぁ、見事だ。お前の勝ちだ。」
「アイさんが勝った……?や……やったーーーーー!!」
今年のナデシコアスロンの優勝者はアイ。
喜びのあまり、アイはエマ、サラ、メイを抱きしめ、目に涙を浮かべながら皆で勝利の喜びを分かち合った。
~~
ログアウトしてしばらくすると、コウイチがナデシコアスロンの優勝賞品であるイヤリングを持ってきてくれた。
愛の優勝が決まった時点でGBNの運営が支給手配し、1時間以内にダイバーシティ店に届けてくれたそうだ。
「愛くん、優勝おめでとう!本当に凄いよ君たちは!」
「ありがとうコウイチさん!えへへ……すごく綺麗だなぁ……。」
コウイチから受け取ったイヤリングは、愛が今まで見たどんなアクセサリーよりも輝いて見えた。
そんな愛を見ながら、エマも笑顔でうなずく。
「おめでとう愛ちゃん!さっそく璃奈ちゃんに……、」
「エマっち!」
「どうしたの?」
「あ……あのさ……、」
少しモジモジしだした愛。
そして彼女はコウイチから受け取った優勝賞品のイヤリングをエマに差出してきた。
何が起きているのかわからないエマは戸惑いながら、それを愛に押し返す。
「な、何をやってるの愛ちゃん!?ダメだよ!」
「ううん、コレはエマっちに貰ってほしいんだ!アタシ、大事な事を見失ってたけど、エマっちやサラちーがそれを教えてくれた!優勝できたのだって、エマっちが一緒にいてくれたから……だから、コレはエマっちに貰ってほしい!ダメかな……?」
「でも、璃奈ちゃんへのプレゼントは……、」
「うん……そのことなんだけど、アタシ、色々考えたんだ。アタシのこの気持ちを、どうしたらいいのか……それで、1つ提案なんだけど……!」
~~
「さぁ!皆今日は愛さんの奢りだよ!じゃんじゃん食べてねーーー!!」
「「「おーーー!!」」」
その日の夜、愛は同好会メンバー全員に連絡を取り、彼女たちを愛の実家であるもんじゃ焼き家『宮下』に集めた。
両親に事情を話し、店を貸し切ってのもんじゃ焼きパーティーだ。
幸い全員夕飯はまだだったため、目の前に出されたもんじゃの器に目を輝かせてくれている。
「むぅ………。」
「どうしたのかすみさん?お腹痛いの?」
「違うよ!!あの、愛先輩!!どうしてあの人がいるんですか!!」
「あの人?」
「なぁに?ランジュがいたら嫌なの?」
「当たり前じゃないですか!!なんで普通にいるんですか!!呼んでませんよ!!」
「ううん、愛さん呼んだよ。」
「呼んだんですか!?」
「呼ばれたわ!」
ランジュとミアも含めた総勢13名でもんじゃを囲むスクールアイドル同好会とスクールアイドル部。
元々お節介焼きのランジュは、愛がもんじゃ焼きを焼いている所を見ると、自分から率先してもんじゃを焼きたがり始めた。
「ミアさんの分は私が焼いてあげるね。」
「サンキュー璃奈。ならボクはジュースを入れてくるよ。」
「歩夢覚えてる?小さい頃、お好み焼きで動物の顔とか作ったよね!」
「うん、覚えてるよ!もんじゃ焼きでもできるかなぁ?」
「しずくちゃんと彼方の分は私が焼いてあげるわ。前にさんざん愛に仕込まれたのよ!」
「わぁ!楽しみです果林さん!」
「へー、じゃあお手並み拝見だねぇ。」
「パンチの利いた味にするためにコンソメとデスソースと、あとクリーミーさも欲しいので生クリームも入れましょう!きっと美味しくなりますよ!」
「大胆な発想ですねせつ菜さん!味の検討がつきません、とっても楽しみです!」
「しお子は一回せつ菜先輩の料理食べた方がいいと思う。そんな事言ってられなくなるから。」
「ランジュちゃん、もんじゃ焼き焼くの上手だね。」
「無問題ラ!あ、璃奈!ミアにはもっと大きく作ってあげて!もっとたくさん食べないと大きくなれないわよ!」
「うるさいなぁ……璃奈とボクの時間を邪魔しないでくれよヘンテコチャイナ。」
「ま、まぁまぁ……。」
同好会と部で交流を深めながら、もんじゃ焼きに舌鼓を打つ一同。
そんな時、ふと気になった璃奈が愛に向かって尋ねた。
「でも愛さん、どうして急にもんじゃパーティー?」
「うん。愛さん、皆にお礼が言いたくて。」
「お礼?」
最初、愛は自分を救ってくれた璃奈にお礼をしようと考えていた。
でも、彼女は気が付いた。
本当に感謝すべき相手は璃奈一人ではない。
自分に『楽しい』をくれた同好会、自分に『勝ちたい』をくれた部、どっちもあってこその今の自分。
だからこそ、ここにいる全員にお礼がしたい。
そう思ったからの、このもんじゃパーティーだ。
「同好会の皆には迷惑を掛けちゃったし、部の皆にも同好会に戻ってごめんって思ってる……。だけど、皆変わらずアタシと仲良くしてくれて、それでどれだけ救われたかわかんないよ。本当に、感謝してもしきれない。……だから、皆!」
そこまで言って、愛は全員に頭を下げた。
「これからも、愛さんとずっと、友達でいて下さい!!」
愛が頭を下げた事で、全員がキョトンとした。
しかし、次の瞬間には全員笑顔で愛に答えた。
「そんなの当たり前じゃん!私たちだって、愛ちゃんの事大好きだよ!」
「愛さんは私たちに絶対に必要!璃奈ちゃんボード『キリリ』!」
「ゆうゆ……りなりー!」
「良かったね、愛ちゃん!」
「エマっち、本当に今日はありがとう!」
「あら?エマ、珍しい物つけてるわね。それ、サザメスのイヤリングじゃない。どうしたの?」
エマの耳に手を当て、果林が首をかしげた。
エマと愛はお互いの顔を見て笑うと、エマは果林に笑顔で言った。
「うん!友達の印……かな!」
~にじビル毎回劇場~
第31回:バレンタインその2
キョウヤ「うーん……参ったな、今年もたくさん貰ってしまった……。」
せつ菜「さすがはチャンピオン!モテるんですね!」
キョウヤ「ハハハ、肩書がそうさせているだけさ。しばらくはリアルでも運動をしないとな。」
せつ菜「もしかしてコレ全部食べるんですか?」
キョウヤ「もちろんさ!ファンの子の厚意を無駄には出来ないからね。」
せつ菜「さすがです。私もその姿勢、見習わなければなりませんね!」
キョウヤ「……しかし、本当にチョコを貰いたい女性は、ただ一人だというのに……。」
せつ菜「えぇ!?チャンピオンにそんなお相手が!?」
キョウヤ「あぁ。彼女はとても強く、優しく、気高い女性だ。僕はそんな彼女に、心から惹かれている。」
せつ菜「そ、それは私も知っている方なのですか!?」
キョウヤ「もちろんさ。彼女の名は『ミレース・アロイ』、僕の心の恋人だ。」
せつ菜「チャンプはさぁ……。」