ニジガクは中の人がIPhoneシャワー
Aqoursは外の人がPC水道
チャンピオンのフォース『AVALON』
ここの隊長室には、秘密の隠し通路が存在する。
隠し通路とはいっても、どこかに扉があったりするわけではなく、この場所でチャンピオンであるクジョウ・キョウヤがパスコードを入力する事により、その場所へワープできるのだ。
パスコードを入力し、キョウヤは隊長室からとある場所へと移動する。
ワープ先は何もない真っ暗で殺風景な場所であり、そこにはキョウヤのほかにもう一人……SDガンダムフォースに登場するMS『ガンダイバー』の姿をしたダイバーがいた。
「来たか、キョウヤ。」
「運営が僕を呼ぶと言う事は、バグについて何か進展があったんですか?カツラギさん。」
「うむ。」
彼の名は『カツラギ』
ダイバーではなく、GBNを運営するヤジマ商事の人間であり、GBNにおける実質のトップ。
彼より強い権限を持つ人間はこのGBN内には存在せず、GBNに関するあらゆる権限を持っている。
「まずは、これを見てほしい。」
「! これは……!」
カツラギが指を鳴らすと、モニターに数体のMSの姿を映し出された。
そこに映っていたのは、ブレイクデカールを使用したグレイズ・アインと戦う愛参頑駄無とキュベレイ・ビューティー、バグにより生まれたデストロイガンダムと戦うデスティニーフリーダム、そしてフラッグ・ジェノアスのチームと交戦するザクみんとO-ドリーガンダム。
どれも、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のガンプラだ。
「見ての通り、現在発生しているバグは全て、彼女たちの身の回りで起きている。以前、ペリシアに君の部隊を派遣した時にも、彼女たちの仲間がいたそうじゃないか。」
「あなたは、彼女たちがこの件に関わっていると?フッ、ありえないな。」
「何故そう言い切れる?」
「彼女たちは実力をつけてきたとはいえまだガンプラバトルを初めて日が浅い。そんな不正が出来るとは到底思えない。それに、私は彼女たちとヒロト達のバトルを見ている。この子たちの情熱は本物だ。不正に手を出すような者たちでは無いと、私は断言しよう。」
「なるほど。では、これを見たまえ。」
次にカツラギは、今映し出した映像の一部分を拡大し始めた。
それを見て、キョウヤはハッとした。
そこに映っているのは、ユウのレインボーユニコーンガンダムによく似た黒いガンプラ……黒いユニコーンガンダムだ。
「これは、ユニコーンガンダム2号機 バンシィか。」
「その通り。映像は無いが、ペリシアにおけるガンプラの暴走事件の時にも、この機体が確認されている。」
「バグの発生条件は、虹ヶ咲の子たちとバンシィ……この二つが揃って起きる物だと?」
「断定はできないが、私はそう睨んでいる。バンシィタイプのガンプラは、このGBNにはそれこそごまんといる。バンシィの調査は運営の方で行おう。」
「つまりあなたは、私に虹ヶ咲の子たちの監視を行えと?」
「……いや、そうとは言わん。だが、気にかけてやってほしい。」
「? それだけでいいのか?」
「あぁ。3年前の事件から、私もいろいろと学んだ。初めてGBNでアシムレイトを発現させた者が率いるフォース……もしや彼女たちこそが、今回の事件の救世主になるやもしれん。」
「了解した。何かあれば私も運営に報告を行う。……ありがとうございます、カツラギさん。」
「何故礼を?」
「この子たちを、信じてくれて。」
「君の下にいた者が所属しているフォース……今の君のお気に入りだったな。そろそろ時間か。すまないが、姪を迎えに行かねばならん。この話は次の機会に。」
そう言い残し、カツラギがログアウト。
それと同時にキョウヤも隊長室へと転送され、自分の席に腰かけて一息ついた。
「……バンシィか……いったい、何者なんだ……?」
~~
「ん~!美味しい!」
「そうですよねそうですよね!これ、かすみんの自信作なんですぅ!侑先輩には~、一番に食べてもらいたくて~!」
「中にいろんなジャムが入ってるんだね!」
「はい!これ、先輩のユニコーンをイメージしてるんですよ!」
「嬉しいよかすみちゃん!」
かすみが持ってきてくれたコッペパンに舌鼓をうっていた、スクールアイドル同好会のマネージャー兼サポーターの高咲侑。
侑はコッペパンが大好物で、何より時々かすみが持ってきてくれるコッペパンが大好きだった。
あっという間にかすみが持ってきてくれたコッペパンを2つ平らげ、口に着いたジャムを舌で舐めとりご満悦。
「あ……一人一個だったんですけど……。」
「え?ご、ごめん!美味しくってつい……。」
「いえ、いいんです。侑先輩が美味しそうに食べてくれたのなら、かすみんは我慢できますので!」
「なんていい子なんだかすみちゃん。」
「こんにちわー!」
「侑さんかすみさん、こんにちわ。」
次に部室に入って来たのは歩夢と栞子。
二人は手に大きなバスケットを持っており、それをテーブルに置いた。
「いい匂い!これ何?」
「スコーンだよ。さっき、栞子ちゃんと家庭科室で作ったの!」
「今度授業で作るので、歩夢さんに教えていただいたんです。よければ召し上がってください。」
「いいの?いただきまーす!」
「え、侑先輩さっきコッペパン二つも食べてましたよね?」
かすみの言葉が聞こえていないのか、侑は次々とスコーンを口へ運ぶ。
ジャムも何もつけていないのに、あまりの美味しさに手が止まらない。
その食べっぷりはエマをも上回るほどで、かすみはもちろん、歩夢と栞子も若干引いていた。
「彼方ちゃん参上~。」
「今日は彼方ちゃんと一緒にチョコケーキを作ってみたんだ!皆で食べてね。」
「彼方さんエマさんこんにちわ!ケーキ美味しそう!いっただきまーす!」
「えぇ!?侑ちゃんまだ食べるの!?」
「さすがにお腹を壊してしまうのでは……。」
「へーきへーきこれぐらい!」
何故か今日に限って皆が食べてものを持ってくる。
その後やって来た愛はぬか漬けを持ってきて、『丁度塩味が欲しかった』とまたバグバグと食べ始めた侑。
璃奈、しずく、せつ菜、果林の順でやって来た頃にはもうお腹いっぱいで、幸せそうな顔でエマに膝枕されていた。
何があったのか果林が歩夢に尋ねると、先ほどの経緯を聞いいた。
なるほどと、侑を膝枕されているエマの隣に座ると、侑の頭を自分の膝の上に乗せた。
「お、今日は果林さんの膝枕かー……いやぁ、同好会冥利に尽きるよ……。」
「侑ちゃん今の顔ちょっと気持ち悪いよ。」
「…………。」
「あぁ、果林さん、今ちょうどいい気持ちだからあんまりほっぺ触らないで……。」
「……侑。」
侑の頬をつついたり引っ張ったりして、果林は確信した。
彼女は侑を起こすと、侑の肩を掴んでその顔をジッと睨む。
「え……ど、どうしたの果林さん……?あんまり見つめられると照れちゃうなー。」
「侑、あなた……太ったわよ。」
「は?」
~~
その後、保健室から体重計を借りてきて、無理やり侑をその上に乗せた果林。
そこに表示された数字を見た侑は絶句し、果林は呆れてため息をついた。
「あなた……そんなになるまで気が付かなかったの?」
「うぅぅ……だって、この季節はお腹が空くんだよぉ……。」
「わ、わかるよ侑ちゃんその気持ち!」
「エマは黙ってなさい。」
「あ、はい。」
先ほどまで侑が食べていたお菓子やパンのカロリーを計算して、果林は軽くめまいがした。
華の女子高生が、一日に摂取していいような数値ではない。
確かに侑はスクールアイドルではないので周りは特に気にしていなかったが、モデルとして、美を追求する者として、果林のプライドがそれを許さない。
「だいたい、あなた達がいつも侑にお菓子を与えるからよ。特に歩夢とかすみちゃん。」
「「うっ……!」」
「侑の事が大好きで美味しい物を食べてほしいって気持ちはわかるけど、限度ってものがあるでしょ。」
「か、かすみんはちゃんと止めましたよぉ!」
「でも実際には止められてないじゃない。」
「それはそうですけどぉ……。」
かすみと歩夢にはまた反省してもらうとして、今の問題は侑だ。
今は外見ではあまり違いが分からないが、比較的小柄な彼女ならこのままいくとすぐに目に見えて肥えてしまうだろう。
鬼の様な形相で自分の前に立つ果林におびえる侑の肩を、果林が掴んだ。
「侑!!」
「は、はいぃ!!」
「ダイエットよ!!あなたは私が、必ず元の体重に戻してあげるわ!!」
「えぇぇ!?」
~~
こうして、今日の同好会の練習はランニングとなった。
いつも通り校庭を走るだけかと思ったが、今日の果林は甘くない。
せつ菜から仕入れたとびきりの情報を持って、11人は虹ヶ咲学園を飛び出してとある場所を目指して走り出す。
「か、果林さーん!どこまで行くの?」
「ダイエットにうってつけのところよ。せつ菜、案内よろしく。」
「お任せください!さぁ、皆さん!行きますよ!うぉおおおおおお!!!」
「うわっ、せっつー早っ!よーし、じゃあ愛さんも!」
「えぇ!?み、皆早いよ!待ってよーー!!」
普段の仕事は皆のサポートが中心の侑は、決して運動が得意なわけではない。
あっという間に10人に追い抜かれてしまい、置いて行かれないように必死に走る。
だが、お腹いっぱいで走っているとすぐに脇腹が痛くなってしまい、それに気が付いた果林が少しペースを落としてくれた。
「食べ過ぎるからそうなるのよ。」
「だ、だけどもう少し手心を……。」
「仕方ないわねぇ……ほら、一緒に走ってあげるから、自分のペースを維持して。」
「は、はぁい……。」
~~
お台場からおおよそ12キロほど走ったところ。
そこには日本最大の電気街である秋葉原がある。
その秋葉原の電気街から少し離れたところにある、神社『神田明神』はスクールアイドルにとっては聖地と呼ばれている。
何故ならここは、音ノ木坂学園の伝説的なグループ『μ`s』が練習で使用し、メンバーの一人である東條希が巫女のアルバイトをしていた事で有名だからだ。
せつ菜の案内でこの場所に走ってやって来た同好会11人は、その神田明神の長い階段を見て呆然とした。
「こ、これを登るのぉ!?」
「そうよ。ダイエットにはうってつけでしょ?」
「頑張りましょう侑さん!スクールアイドルたるもの、この階段に挑むのは必然!いえ、運命と言えるでしょう!!」
「私はスクールアイドルじゃないよ~……。」
「侑さん、私も一緒に走るから頑張ろう?」
「うぅ……ありがとう璃奈ちゃん……。」
璃奈、果林と一緒に頑張って階段を上り始めた侑。
そんな3人より先に、他の8人は走って階段を上った。
その際、侑の隣を歩夢が横切ったが、彼女の表情は真剣そのもので、その目線はゴールしかとらえていなかった。
(歩夢、凄く体力ついたな……前は私と変わんないぐらいだったのに……。そうだよね、スクールアイドル頑張ってるもんね。)
歩夢の姿を見て、侑もなんとか足に力を入れる。
必死に頑張る侑の姿を見た果林はクスッと笑い、横並びに走る侑の背中をソッと押してあげた。
~~
「まさか君と日本で会えるとは、嬉しいよ。」
「私もだ。その手に抱えているのはガンプラか?」
「あぁ。今日はAGE系の再販でね。ついつい買いすぎてしまった。」
「相変わらず好きだな。」
「当然さ!」
神田明神の賽銭の前で話し合う長身の二人の男。
一人は前を分けた茶髪で、手にはAGE系のガンプラが入った袋をいくつも下げている。
もう一人は腰まで届くほどの金髪で、白いスーツにサングラスという、一見すると海外マフィアの様な印象を受ける。
年齢は茶髪の男の方が少し上の様だ。
「と……とうちゃーーく~!」
「はぁ……はぁ……歩夢さん、足早くなりましたね!」
「うへぇ~、歩夢に負けた~!愛さん悔しい~!」
「ん?あの子たちは……。」
男たちが話し込んでいると、階段から見覚えのある少女たちが上がって来た。
随分疲れた様子の彼女たちを見かけると、茶髪の男はそちらへ近づいてきた。
「やぁ、君たち。」
「はい?えっと……どちら様ですか?」
「おっと。リアルで会うのは初めてだったかな?僕は……、」
「隊長!?」
「ん?おぉ、エマ!」
「え?エマさんお知り合いですか?というか隊長って……まさか!」
歩夢、愛、せつ菜に遅れてやって来たエマが、男の顔を見て驚いた。
彼女が『隊長』と呼ぶ者は、この世でただ一人しかいない。
良く見て見るとその男の顔には全員見覚えがあり、恐る恐るせつ菜が彼に向かって尋ねた。
「も、もしかして……チャンピオン……ですか?」
「リアルでは初めまして。クジョウ・キョウヤこと、キスギ・キョウヤです。君は……セツナくんかな?」
「は、はい!ゆ、優木せつ菜です!こちらが上原歩夢さんと宮下愛さん、エマ・ヴェルデさんで、他の皆は今上がって来てます!」
「知り合いか?」
「あぁ。」
男の名前はキスギ・キョウヤ……GBN最強のチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』のリアルでの姿。
雰囲気はそのままに髪型と髪色を変えただけだが、AVALONの隊服で無いだけでずいぶん印象が違う。
こちらではエリート街道まっしぐらのイケメンという出で立ちだが、手に持った大量のガンプラがその雰囲気を掻き消している。
そうしているうちにようやく全員が階段を上がってきて、果林以外の全員……とくに侑はもはや死にそうな顔で疲れ切っていた。
「君たちはここで何を?」
「スクールアイドルの練習だよ。隊長はどうしてここに?」
「僕は友人と落ち合う約束をしていてね。紹介するよ、彼は……、」
「カワグチだ。」
カワグチと名乗った金髪の男。
彼の言葉を聞き、せつ菜と、疲れ切っていた栞子はハッとして起き上がる。
「せ、せつ菜さん……この方……!」
「気づきましたか栞子さん。えぇ、私も気づきましたよ。」
「どうしたの二人とも?この人の事知ってるの?」
「この人……シン・アスカに声がそっくりです!」
「そっくりなんてレベルじゃありません!そのまんまですよ!」
「良く言われる。」
まんざらでもないのか、カワグチは嬉しそうにそう答えた。
カワグチは腕時計を見ると、フゥと一息をついてキョウヤに言う。
「すまないキョウヤ。私はそろそろ……、」
「あぁ。久しぶりに会えてうれしかったよカワグチ。3代目にも、よろしく伝えておいてくれ。」
「わかった。」
「カワグチさん、もう行かれるんですか?」
「仕事だ。縁があったらまた会おう。」
そう答えると、カワグチはキョウヤと別れ、神田明神の階段を下りていく。
丁度そのタイミングで彼への送迎の車がやって来たが、全員どことなくその車には見覚えがあった。
ランジュや理事長が登校に使う車によく似ていたが、全員車には詳しくは無い為、特に気には留めなかった。
カワグチが去った後、エマはもしかして、とキョウヤに尋ねた。
「隊長、あの人ってまさか……!」
「やはり、君は知っているみたいだね。でも、この事は内密に。日本に帰って来たばかりだから、正体がばれて騒ぎになってしまっては可哀想だ。」
「じゃあ、やっぱりあの人が4代目……。」
「エマさんも知ってる人なんですか?」
「歩夢ちゃん、あの人の事はあんまり周りに言いふらしたらダメだよ?大騒ぎになっちゃうから。」
「それってどういう……。」
「あ……あゆ、むぅ~……!」
「え?あ、ゆ、侑ちゃん!?」
その時、侑が死にそうな声で歩夢を呼んだ。
歩夢よりも先に果林が駆け寄り、侑に肩を貸して彼女を立ち上がらせた。
普段の運動不足が祟ったのか、目は虚ろで呼吸もだいぶ荒いだ。
「しっかりしなさい侑。ほら、お水飲める?1時間休憩したら帰るわよ。今度は歩いてもいいから。」
「か……果林さん……鬼……。」
「鬼じゃないわよ。歩いて良いって言ってるでしょ。」
「侑ちゃん大丈夫?」
「うぇ~ん!歩夢~!」
「あの子は、もしかしてユウくんかな?どうしてあんな事に?」
「チャンピオンさん、そう言う事を聞くのはかすみん最低だと思います。」
「かすみちゃんの言う通り。璃奈ちゃんボード『お前は絶対許さない』」
「チャンプはさぁ……。」
「僕、何か失礼な事言ったかな?なぁ、エマ。僕何か失言をしてしまったかなぁ!?」
「隊長。」
「なぜ僕は怒られているんだ……わからない……チャンピオンとして、僕はまだ未熟だとでもいうのか……!?」
~~
それから数日後
「侑、待ちなさい!!今日は私のおススメのストレッチで……、」
「も、もう勘弁してよ~!!」
以前にも増して激しいトレーニングを侑に薦めてくる果林。
元々果林は筋トレなど、運動が好きであり、それを普段一緒に練習をやらない侑に薦められて相当嬉しいのか、毎日毎日侑を探しては走り込んでいる。
最初のうちは良かったが、もはや練習やダイエットというより、スポーツ選手のそれと同じぐらいハードな物になってきた。
ついに侑は痺れを切らし、果林から逃げている。
果林を撒くと、侑は咄嗟に鍵の空いている部屋へと逃げ込んだ。
「ふぅ……ここまで来れば大丈夫かな……。」
「あなた、何してるのよ。」
「え?あれ、ランジュちゃん?なんでここに?」
「ここ、スクールアイドル部の部室なんだけど。」
逃げ込んだ先にいたのは、スクールアイドル部の部長 鐘嵐珠。
練習を終えた後なのか、練習着に首からタオルを下げ、お茶を淹れている最中だった。
「あぁ、ごめんごめん!急いでて気が付かなかったよ。」
「………まぁいいわ。適当に座りなさい。お茶出してあげるから。」
「う、うん。」
~~
侑を見失い、果林は校内で迷子になっていた。
もう3年生になるというのに、いまだに校内のどこに何があるのか半分程度しか把握できていない彼女は、見覚えがあるような無いような場所で途方に暮れる。
うんうん唸っていると、自主練途中の歩夢が果林の姿を見つけ、果林に駆け寄ってきた。
「果林さん!」
「あら、歩夢。練習?」
「はい!果林さんは、今日も侑ちゃんのダイエットのお手伝いですか?」
「そうなのよ。でも、あの子ったら逃げちゃって……。」
「ハハハ……ここ毎日ずっとですからね。私たちの練習よりずっとハードですし。」
「……そんなにハードだったかしら……?」
「はい……かなりオーバーワークだと思います。」
しまった、と果林は自分の頭に手を当てた。
侑はスクールアイドルではない。
にもかかわらず、練習よりもきつめの特訓を無理強いさせてしまっていた。
慣れていない体に、これだけの負荷をかけ続ければ逆に体を壊してしまうかもしれない。
ため息をつきながら、果林は近くのベンチに腰かけた。
「確かにやりすぎたかも……逃げられて当然よね。」
「ま、まぁ、食べ過ぎた侑ちゃんも、食べさせ過ぎた私たちも悪いですし。」
「私、嬉しかったのよ。侑と一緒に練習出来て。それでついつい、張り切りすぎちゃった。」
「気持ちはわかります!私も侑ちゃんと練習出来て楽しかった!だから果林さんが練習の提案をしてくれた時すごく嬉しかったです!」
「ウフフ、そう言ってくれると嬉しいわ。」
「侑ちゃんを探しましょう!私も手伝います!」
「ありがとう歩夢。」
歩夢にそう言ってもらえると、果林のスマホが鳴った。
メッセージが届いており、それを見た果林はすぐに立ち上がった。
「歩夢、案内してほしいんだけど。」
「はい?」
~~
正直、追い払われるかと思った。
同好会のメンバーには友好的なランジュだが、侑にだけは塩対応を貫いていた。
唯一スクールアイドルではない、素人の侑では、同好会の皆を輝かせることが出来ないと考えていたから。
結局は全員が最も輝くには侑が必要不可欠であるとわかったが。
借りてきた猫のように縮こまりながら椅子に座ろうとする侑は、ランジュの後ろに積まれている箱の山に気が付いた。
「あれって……!」
「気が付いた?ガンプラバトル同好会から貰ったガンプラよ。アタシも始めてみようと思って。」
「でもまだ開けてないみたいだけど……。」
「フフフ、アタシは何事にも手を抜かないのよ!最高のランジュのガンプラは、最高のモデラーに作ってもらうの!数日前に雇ったのよ!」
「へー、そうなんだ。でもランジュちゃん、自分でガンプラ作るのも楽しいよ?」
「そういう考え、羨ましいわね。アタシのこの綺麗な指に傷でも出来ちゃったらどうするのよ。いいのよ、こういうのは向いてる人間にやってもらった方が。」
「ハハハ……相変わらずだね……。」
相変わらずのプロ志向のランジュ。
同好会と違い、プロの作家や講師を雇ってスクールアイドル活動をするスクールアイドル部は、同好会とはまた違った人気を獲得している。
そんなスタンスのランジュからすれば、ガンプラを作るためにプロを雇うのは当然の選択だろう。
ランジュが淹れてくれたお茶に口をつけ、独特の味に少し驚いた。
「で、あなたはどうしてここに来たの?」
「いやー………まぁ、色々あって。」
「それだけ飲んだら早く同好会に戻りなさい。」
「うん。でもこの紅茶、なんか独特の味だね……何の紅茶?」
「ダージリンに生姜を入れてるのよ。ダイエット効果もあるらしいわ。」
「へー……え?ダイエット?」
「侑。」
「!! か、果林さん!?」
気が付いた時には、侑の後ろに果林がいた。
ランジュの方を見ると、彼女は舌を出しながら侑にスマホを見せつけた。
そこには、果林へ送った侑確保の通知メッセージが。
困り顔の歩夢も一緒であり、侑は立ち上がると果林に頭を下げた。
「ご、ごめん果林さん!別にダイエットが嫌とかじゃなくって……!」
「はぁ……行くわよ、侑。ランジュ、わざわざ報告悪いわね。」
「早く連れて行っちゃって。アタシも色々忙しいの。」
「えぇ。そうさせてもらうわ。じゃあね。」
そう言い残して、果林と歩夢は侑を連れて行った。
残されたランジュは侑が残した紅茶を飲み干し、練習を再開しようと立ち上がる。
その時に鏡に自分の顔が映り、そこへ手を触れ、先ほどの発言を思い出す。
(そういう考え、羨ましいわね。)
「ホント、羨ましいわ……高咲侑。ランジュに無い物全部持ってて……ランジュが欲しかったものも結局はあなたのところに戻って……。だから、アタシは…!」
積まれたガンプラの箱を見る。
その中のひときわ大きな『HG ネオ・ジオング』の箱を見つめながら、ランジュは拳を握った。
~~
同好会に連れ戻された侑は、果林の前に座らせられた。
すでに他のメンバーも集合していて、心配そうな顔で果林と侑を見守っている。
逃げてしまった事にばつが悪そうな侑だが、果林の口から出たのは意外な言葉だった。
「悪かったわね。」
「え?なんで果林さんが謝るの……?」
「あなたに無理させちゃったわ。歩夢に言われて気付いたの。ごめんなさい。あなたと一緒に練習が出来るって思って、私少し舞い上がっちゃったみたい……。」
「ううん……。私こそ、果林さんがせっかく私の事考えてくれてたのに、あんな逃げるみたいな真似しちゃってごめんなさい。」
「歩夢と一緒に考えたんだけど……良かったら侑も、当分の間一緒に普通の練習をしてみないかしら?」
「普通の練習って……歌とかダンスも?」
「えぇ。それならそれぞれ得意なメンバーで協力し合えるし、モチベーションも上がると思うの。どうかしら?」
今までの様な体を苛め抜く地獄の特訓ではなく、普通の練習。
スクールアイドルではない自分が参加するのは気が引けていたが、他のメンバーの顔を見ると誰もそんな事は気にしてはいない。
むしろ、通常練習に侑が加わると聞くと、全員目の色を変えて賛成してくれた。
「侑先輩と一緒に練習できるんですかぁ!?かすみん嬉しいです!さすがは果林先輩!」
「今度は無理はしないように気を付けましょうね。」
「休み過ぎは良くないけど、適度な休憩も大事。」
「では、侑さんの適正にあった練習プランは私と果林さんで考案します!」
「ゆうゆと歌うならどんな曲がいいかなー?愛さん、ぜーんぶ一緒にやりたいな!」
「愛さん!侑さんはステージに立つわけでは無く、あくまでダイエットの一環なんですよ。まぁ、気持ちはわかりますが。」
「疲れたら彼方ちゃんがお昼寝の極意を教えてあげよう~。」
「わからない事があったら、いつでも私たちを頼っていいんだからね!」
「誰も反対なんかしないわよ。するわけ無いじゃない。」
「侑ちゃん、一緒に頑張ろうね!」
歩夢が手を差し伸べてくれた。
侑はその手を取ると、椅子から立ち上がった。
さっそく練習を始めるべく、1年生と2年生の7人で侑を練習場へ連れて行こうと引っ張ろうとする。
その様子を見ていた3年生は、その微笑ましい光景にクスリと笑った。
「うちの後輩は可愛いね~。」
「いつか、本当に侑ちゃんも一緒にステージに上がれたらいいのになぁ。」
「それはあの子の気持ち次第よ。だけど、きっとみんな同じこと思ってるんじゃないかしら。」
練習場へ連れて行かれる最中、突然侑のスマホが鳴った。
そこに表示されているのは、GBNでお世話になっているある人物。
全員がその名前に注目し、練習場へ迎いながら侑は電話を取った。
「もしもし、マギーさん?」
『もしもーし!侑ちゃんの電話で合ってたかしらーん?今電話平気?』
「うん。大丈夫だよ。今から皆でスクールアイドルの練習するところ。」
『それなら丁度良かったわーん!実は、あなた達にお願いがあるの。』
「お願い?」
マギーと言えば、GBNでも著名な人物。
そんな男からのお願いと聞き、侑は思わず身構えた。
電話越しのマギーはそんな侑の緊張などは知らないため、構わずにそのまま続けた。
『再来週開催予定のベアッガイフェスなんだけど、そこであなた達全員にライブを披露してもらいたいの!』
「えぇ!?ライブ!?全員で!?」
『そうそう。さっき、フェスの実行委員でもあるガンダムベースダイバーシティ店の店長からも正式な依頼が降りたの。そこであなた達に歌を披露してもらいたいのよ。どうかしら?』
ベアッガイフェスと言えば、定期的に開催されるフォースフェスの中でも人気のイベント。
この前の龍虎祭でのライブの成功をGBN運営が評価してくれたため、掴んだチャンスだ。
同好会メンバー全員、二つ返事でOKしてくれて、侑は意気揚々とマギーに答えた。
「お願いします!!是非、ライブをさせてください!!」
『あなた達ならそう言ってくれると思って、もうすでに手配してあるわ!』
「ハハハ、マギーさんには敵わないなぁ。」
『詳しくは今週末にでも説明させてもらうから、よろしくねん♡』
フォースフェスでのライブ。
しかも今度は龍虎祭の様なオープニングでの限られた時間ではない、大規模ライブ。
世界中の人達が集まる場所で、この10人でライブを披露できる。
こんなに嬉しいことは無い。
「ベアッガイフェス……世界中の皆の前でライブ……!」
「ガンフェス前の最後の大型イベントだよ。そんなところでライブが出来るだなんて……!隊長たちにも教えてあげなくちゃ!」
「もう、完全にときめいちゃった!皆、頑張ろうね!!」
「「「「おーーーー!!」」」」
~にじビル毎回劇場~
第32回:グレードの違い
侑「栞子ちゃんのメガジャンボ寝そべり発売決定おめでとー!」
歩夢「これであとメガジャンボで出てないのはかすみちゃんと璃奈ちゃんだね。この二人も早く出してほしいなぁ。」
侑「最近栞子ちゃんグッズ増えて来たし、これはアニメ二期も近いかな。」
歩夢「それにしても、寝そべりっていろんな大きさあるよね。」
侑「普通のサイズに、メガジャンボ……Aqoursさんなんてテラジャンボっていうのもあるみたい。」
歩夢「なんだか、ガンプラみたいだね。」
侑「うん。だってこの前、寝そべり化が決定した時に栞子ちゃんが『私MGで出るんですか!?』って言ってたよ。」
歩夢「メガジャンボをMGって……。」
侑「この理論だと、普通のはHGで、テラジャンボはPGなのかな?」
歩夢「今度ヴィレッジヴァンガードのコラボでもちどるも出るね!」
侑「これは衣装にこだわりがあるけど小さいな……ハッ!RGだ!」
歩夢「ぬいぐるみをガンプラのグレードで例えるのやめて?」