ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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最近栞子のグッズ展開多めで嬉しい。

これはもしや、スーパースター終了後に二期フラグか……?




ランジュのガンプラ体験会

その日も、同好会は11人揃ってダンスの練習をしていた。

ライブに出演する10人はもちろん、ダイエット目的で始めた侑もずいぶん慣れてきて、最初のころに比べると自然と踊れるようになってきた。

踊りつつも今まで通り同好会メンバーへのサポートは忘れずに、練習後に全員分のスポーツドリンクを持ってきてくれた。

 

「皆お疲れ!休憩にしよう!」

「ありがと~侑ちゃん。でも侑ちゃんも練習してるんだから、私たちの応援で無理しなくても大丈夫だからね?」

「無理なんてしてないよエマさん!私、今すごく楽しいから!」

「ホント!?じゃあ、このまま一緒にスクールアイドル……、」

「え?いやいや、無理無理無理無理!!無理だって!!」

「そんな、全力で否定しなくても……。」

 

侑に拒否されて落ち込む歩夢。

そんな歩夢の下に栞子が彼女の分のタオルを持ってきてくれた。

 

「歩夢さん、どうぞ。」

「ありがとう栞子ちゃん。」

「……今日もランジュは来るのでしょうか……?」

「うーん、どうだろう……。最近は毎日来てるけど……。」

 

幼馴染なだけあって、今のランジュの事は栞子も心配している。

勝利に並々ならぬ執着を見せるランジュは、同好会の妨害をしていた頃を彷彿とさせる。

最初に挑んできた時はそうでも無かったが、毎日毎日負けるたびに、日に日に酷くなっている気がする。

同好会の中で、あとランジュと戦っていないのは侑、歩夢、エマの3人。

毎回大型のガンプラで挑んでくるランジュだが、次はどんな機体で来るのだろうか。

 

「大丈夫だよ皆。次は私が……、」

 

 

 

「あ、いた!見つけたわよ、同好会!!」

 

 

 

「噂をすれば……、」

 

 

今日は、GBN内では無く、練習中にやって来たランジュ。

ランジュの後ろには、呆れ顔のミアもいた。

両手で超巨大なガンプラを抱えていて、そのせいで道中すれ違う生徒全員に注目されていた。

ランジュとミアがやって来た事で練習中のメンバーも全員集まり、彼女の顔を見るなりいつも通りかすみが噛みついて行く。

 

「まーた邪魔しに来たんですかー?」

「違うわよ!!アタシと勝負しなさい、高咲侑!!」

「え?私?」

「そうよ!!今日こそ、絶対……絶対に負けないんだから!!」

「う、うーん……でも今練習中だしなぁ……。」

「じゃあ練習終わるまで待つから、勝負しなさいよ!!」

「ランジュ、あんまりわがままを言わないでください。私たち、近々ライブを控えているんです。練習以外にも色々とやる事があるんですよ。」

「そう言わずに、相手してあげてくれないかな?」

「ミアさん?」

 

呆れた顔で、ミアがそう言って来た。

正直ミアとランジュはあまり仲がいいイメージが無かったので、ミアがフォローしてくるのは予想外だった。

しかし、興奮気味のランジュとため息をつくミアを見ると、なんとなく状況が想像できる。

 

 

「ランジュのやつ、こんなんだから練習もまともに出来ないんだ。おかげで余計なノイズのせいでボクも集中できないよ。」

「なるほど。」

「それでどうなの!?やるの!?やらないの!?」

「やるよ。」

 

 

ランジュは侑を指名してきたが、応えたのは侑ではなく、エマ。

彼女は立ち上がると、鞄の中から愛機であるヴェルデブラストガンダムを取り出した。

 

 

「あなたが相手をするのエマ?」

「うん。」

「フフフ……無問題ラ!じゃあ、さっそくGBNへ……、」

「必要ないよ。ここでやろう。」

「ここでって……学校で?」

 

 

エマがそう言うと、全員……とくに彼方はハッとした。

学校で出来るガンプラバトルと言えば、GPD。

いわゆる、実機バトルだ。

戦えばガンプラは傷つき、最悪修復不能なレベルまで破壊される事もある前世代のガンプラバトルシステム。

しかも相手は、初心者のランジュが使うとはいえ、超巨大なガンプラだ。

 

 

「え、エマちゃん、あんなガンプラ相手にGPDはやめた方が……!」

「心配してくれてありがとう彼方ちゃん。でも大丈夫。私、ランジュちゃんに伝えたい事があるから。」

「さぁ、行くわよエマ!いざ、ガンプラバトル同好会へ!!」

 

 

 

 

~~

 

同好会が使うと聞いて、ガンプラバトル同好会兼近江彼方姫親衛隊(正式名称)は快く部室を貸してくれた。

GPDの筐体を起動させると、フィールド全体にガンプラに使われるプラスチックのみに反応する粒子が満たされ、バトルフィールドが形成されていく。

そこにランジュはネオ・ジオングを、エマはヴェルデブラストガンダムを置き、操縦桿を握った。

 

「へぇ、これがガンプラバトルか。ただのおもちゃ遊びじゃないんだね。」

「うん。すごく奥深い。ミアさんも一緒にやれたら嬉しい。」

「璃奈がやっているならボクも興味あるな。」

「ミアは本当にりなりーの事大好きだね!」

「そろそろ始まるよ皆!」

 

侑がそう言うと、ついにネオ・ジオングとヴェルデブラストガンダムがフィールドへ飛び出した。

並んでいるだけですでにネオ・ジオングの大きさは圧倒的であり、人間の子供ぐらいのサイズはある。

それに対するヴェルデブラストは通常のHGの大きさ。

常識で考えるならば、エマに勝ち目はない。

すでに勝ち誇った顔でいるランジュだが、エマの顔は真剣そのもので、一同……特に栞子はこれから始まるバトルに注目した。

 

 

 

「さぁ、始めようかしら!鐘嵐珠!ネオ・ジオング!!行くわよ!!」

「エマ・ヴェルデ、ヴェルデブラストガンダム、出撃。」

 

 

 

ついに始まったランジュとエマによるネオ・ジオングVSヴェルデブラストガンダム。

いままでランジュは同好会に何度も敗れてきたが、それは2対1であり、大きさも規格外というほどでもなかった。

しかし今回はタイマンかつ機体には圧倒的体格差がある。

どう考えても、エマに勝てる要素など見つからない。

なおかつこれはGPD。

敗北はすなわち、ヴェルデブラストガンダムの破壊につながる。

 

 

「まずはこれを喰らいなさい!!」

 

 

まずネオ・ジオングが仕掛けてきたのは、有線式ファンネル・ビット。

腕部から射出されたそれは、正確にヴェルデブラストを狙う。

しかし、ヴェルデブラストはギリギリまでそれを弾きつけると、軽いステップでそれを全て躱して見せた。

さらに、有線式である事を利用し、そのワイヤーを蔦ってネオ・ジオングの上部へと登り始めた。

 

 

「なっ!?姑息な事するじゃないエマ!!」

「この程度の攻撃じゃ、私のヴェルデブラストには傷一つつけられないよ。」

 

 

腕を思いっきり振い、ヴェルデブラストを払いのけたネオ・ジオング。

更に今度は、ネオ・ジオングの胸のハッチが開き、中に搭載された本体が二丁のバズーカを構えた。

それでヴェルデブラストを狙い撃つが、ヴェルデブラストもそのバズーカに向けてロングライフルを構える。

貫通能力の高いヴェルデブラストの狙撃が、バズーカの砲撃を撃ち落とし、更にネオ・ジオングのバズーカそのものを貫いた。

 

 

「え……エマちゃん、すっご……。」

「エマ、また腕を上げたのね。GBNでもないのに、なんて正確な狙撃なのかしら……。」

「う、うるさいわよ外野!!私のネオ・ジオングはカワグチが作ってくれた最強のガンプラなのよ……負けるはず無いんだから!!」

 

 

肩部のメガ粒子砲を放ち、ヴェルデブラストへ襲い掛かるネオ・ジオングだが、ヴェルデブラストはフィールド内の障害物を盾にしてそれをやり過ごす。

威力自体は高い為本来障害物程度では防げないが、ヴェルデブラストの目的は防御では無く回避。

障害物を盾にした事で一瞬生まれたビームの裂け目を潜り抜け、ネオ・ジオングの真下にまで潜り込んだ。

ロングライフルをネオ・ジオングに向け、何度も引き金を弾く。

放たれた銃撃によりネオ・ジオングの左腕の接続部を破壊し、ネオ・ジオングの左腕を奪った。

 

 

「嘘でしょ……こんな事って……!?」

「ランジュちゃん。完成度の高いガンプラなら必ずバトルに勝てる……そんなに甘くないんだよ、ガンプラバトルっていうのは。」

 

 

残った右腕で、ヴェルデブラストを掴もうとするネオ・ジオング。

両肩のミサイルポッドを発射して右腕を払いのけ、いったん距離を取ろうとする。

しかし、その瞬間、ネオ・ジオングの背面の隠し腕が現れ、ヴェルデブラストを鷲掴みにした。

 

 

「!! え、エマ!」

「とらえたわ!!このまま、握りつぶして……!」

「無理だよ。」

 

 

ヴェルデブラストを握りつぶそうとするネオ・ジオングだったが、その時、ヴェルデブラストが両腕に仕込んだ新装備を発動させた。

ヴェルデブラストの新装備……それは、内蔵式のビームサーベル。

フォース戦以来、接近戦も想定した装備を追加したこの機体は、従来のビームサーベルでは無く、『抜く』動作を必要としない内蔵式を採用した。

それによりネオ・ジオングの隠し腕を細切れにし、彼女は一気にネオ・ジオングの胸部まで飛んだ。

 

 

「ひっ……!?」

「性能の高さだけがガンプラバトルじゃない。戦場での油断は、命取りだよ。」

 

 

 

ネオ・ジオングのアーマー『ハルユニット』の胸部をこじ開けると、その中でネオ・ジオングを操る本体のMS『シナンジュ』を引きずり出した。

ヴェルデブラストはネオ・ジオングごとシナンジュを地面にたたき落とし、ハルユニットは粉々に砕け散る。

よろよろと立ち上がったシナンジュにロングライフルを突き刺し、とどめを刺すためにその機体を撃ち抜いた。

 

 

「や、やめて……!」

 

 

『WINNER PLAYER 1』

 

 

「ま、また負けた……。」

「ネオ・ジオング相手に……ノーダメージ勝利だなんて……。」

「元AVALONの実力というわけね。さすがだわ、エマ。」

「ランジュちゃん。」

 

 

壊れたシナンジュを呆然と見つめるランジュに近づくエマ。

戦いを終えたヴェルデブラストガンダムを手に取り、ランジュに言った。

 

 

「ランジュちゃん、何のためにガンプラバトルをやってるの?」

「き……決まってるじゃない!あなた達に勝つために……!」

「じゃあ、ガンプラの事好きじゃないの?」

「それは……!」

「私たちは本当にガンプラが好きで、だからガンプラバトルをやってるの。他人が作ったガンプラで、好きでもないガンプラバトルをやってるあなたじゃ、私たちには一生勝てないよ。」

「……………。」

 

 

反論しようとしたが、ランジュは何も言えなかった。

ここ数日戦ってみて、ランジュ自身もわかった。

 

 

ガンプラバトルでは、自分は絶対に同好会に勝てない。

 

 

ネオ・ジオングを使っても、エマには手も足も出なかった。

ガンプラが壊れないGBNでは、そのことを理解できなかったが、ここまで破壊されたネオ・ジオングを見て、やっと身に染みてわかった。

 

拳を握り、そのままガンプラバトル同好会の部室を出て行こうとするランジュ。

筐体の上に残されていたシナンジュを見て、栞子が急いでそれを手に取り、ランジュへ駆け寄った。

 

 

「ランジュ!あなたの愛機ですよ、ちゃんと持って帰ってください。」

「い、いいわよ……だってアタシは……、」

「良くはありません!せっかくあなたと一緒に戦ってくれたんですよ!」

「良いって言ってるでしょ……!」

 

「持って帰りなさい!!ランジュ!!」

 

「ッ……!」

「……でないと、あまりにも可哀想じゃないですか……この子は、あなたの為に頑張ってくれたんですよ……。ちゃんと大事にしてあげて下さい。」

 

 

栞子が差し出してきたシナンジュ。

ランジュはそれを受け取り、部室を出て行った。

ミアはため息をつきながらそんなランジュの後を追いかけ、その場にはスクールアイドル同好会だけが残された。

 

 

 

 

~~

 

スクールアイドル部の部室に戻ってきたランジュとミアは、今日は練習をせずに帰宅する事にした。

部室にはまだ、ガンプラバトル同好会から貰ったガンプラが山のように積まれている。

それを見るたび、ランジュはため息をついた。

 

「ランジュ、柄にもなく落ち込んでるね。まぁ、あそこまでワンサイドゲームされたら誰だってそうなるか。」

「ミア、あなたアタシの事励ましてるの?それとも貶してるの?」

「どうするのさ、そのガンプラ。ガンプラバトル同好会に返すの?」

「ヤマトが受け取ってくれるとは思わないワ。……ねぇミア、アタシ、栞子に嫌われちゃったかしら……?」

「どうしてそう思うのさ?」

「あの子、ガンプラ大好きじゃない?でも、アタシはそうじゃない。さっきも怒られちゃった……。」

 

ボロボロになったシナンジュを見て、先ほどのバトルを思い出す。

誰がどう見てもランジュの完敗だ。

 

 

「そもそも、ランジュはどうしてガンプラバトルで勝とうなんて思ったんだよ。勝負したいだけなら、別にガンプラじゃなくてもいいじゃん。」

「それは……、」

 

 

何故ガンプラバトルで勝ちたかったのか?

 

そう言われると、返答に困る。

他にも勝負する方法はいくらでもある。

それこそ、もう一度スクールアイドルとしての勝負を挑むという手もあった。

だが、何よりも彼女はガンプラバトルで同好会に勝ちたかった。

 

 

(ねぇ、栞子)

 

(はい?)

 

(楽しいの?ガンプラバトルって。)

 

(……はい!大好きです!!)

 

 

いつかの栞子との会話が頭をよぎる。

あの時は、ガンプラバトルなんてものは知らなかったし、全く興味が無かった。

それがなぜ、今はこんなにもガンプラバトルの勝利にこだわるのか。

 

 

「もう帰るわミア。戸締り、よろしくね……。」

「このガンプラの山、どーすんの?」

「……ホントに、どうしようかしら……。」

「いらないなら、ボクがもらうよ。」

 

 

ミアに積みプラを引き渡し、ランジュは壊れたシナンジュだけを持って帰った。

エマと栞子の言葉を思い出すと、このシナンジュだけは、どうしても手放す気にはなれなかった。

 

 

 

 

 

~~

 

同じ頃、ランジュの事で落ち込んでいた栞子。

バトルを終え、ライブに向けての練習の為に、再び部室に戻った同好会のメンバーたちだったが、その場には栞子、エマ、愛、果林の4人が残った。

エマ以外は、全員一度スクールアイドル部に所属した事があるメンバー。

栞子の隣にエマが座り、彼女に頭を下げた。

 

「ごめんね栞子ちゃん……どうしても私、ランジュちゃんに伝えたかったの。今のままじゃダメだって……。」

「い、いえ!エマさんは悪くありません!!むしろ、ありがとうございました。本当は、私が伝えるべきだったんです……。」

「エマも栞子ちゃんも悪くなんてないわよ。」

 

栞子は、幼馴染のランジュには昔から相当手を焼いていた。

お嬢様ゆえに強情でわがまま、自分の思い通りに事が運ばないと癇癪を起こすタイプ。

しかし、そんなランジュにも良いところはたくさんある。

彼女は人の長所をすぐに見つけられるし、自分が一度友人と決めた人物の事は『親友』と呼んでくれる。

面倒見が良くて、頼れる時には本当に頼りになった。

ダブルバトルトーナメントの決勝戦も、ランジュがいなければ負けていたかもしれない。

 

 

「みなさんのおかげで、私はこうして同好会に戻ってくることができました。でも、それでもランジュは大切な友達なんです。ランジュがガンプラバトルを始めたと聞いた時は、とても嬉しかったんです。ただの友達として、楽しいバトルが出来るって信じてました。でも……。」

「しおってぃー……。」

「このままで、いいはずがないわよね。」

「当たり前だよ。この前のナデシコアスロンの打ち上げの時にも愛さん言ったもん!愛さんだって、このまま放っておくなんて出来ない!」

「あなたはどう思う?エマ。」

「私は……、」

 

 

先ほどのランジュのバトルを思い出すエマ。

シナンジュがとどめを刺される寸前、ランジュは目を瞑った。

壊されるガンプラを、直視できていなかった。

本当にガンプラに興味が無いのであれば、そんな事は気にはしないだろう。

もしも同好会へのコンプレックスが彼女の本心に蓋をしているのであれば、エマの答えは決まっている。

 

 

「私も、ランジュちゃんをこのままにしておきたくない。出来る事なら、あの子の心もポカポカにしてあげたいよ。」

「決まりね。私たちで、あの子を助けてあげましょう。」

「ガンばるためのプランを練らなきゃね!ガンプラだけに!」

「愛さん、果林さん、エマさん……!」

 

 

「私にもお手伝いさせてください!」

 

 

「! しずくさん!」

 

 

そこへ、しずくもやって来た。

どうやら部室の外でずっと話を聞いていたようだ。

しずくもごくわずかな期間だが、部に所属をしていた。

数日間の在籍だったにもかかわらず、部を抜けた後もランジュはしずくにずっと注目をして、気にかけていた。

 

 

「ごめんなさい、お話はずっと聞いてました。私にも、何か出来る事があれば言ってください。私だって部に所属していた事があるんです。あのままのランジュさんを放っておきたくはありません。」

「ありがとうございますしずくさん。」

「でも、何かアイデアはある?ただガンプラバトルするだけじゃ、あの子はきっと変えられないわよ。」

「ガンプラの一番の醍醐味は、やっぱり自分で作る事だよ。プロに作ってもらえると確かに強い機体が出来るけど、今のランジュちゃんに必要なのはそういう物じゃない。」

「しかし、どうやって今のランジュさんにそれを伝えたらいいんでしょうか?」

 

 

今のランジュにはきっと、ガンプラの楽しさを伝えてもうまく伝わらないだろう。

ランジュの面倒くささはここにいる全員十分に理解している。

何かいいアイデアは無いか……全員で頭をひねっていると、部室のドアを誰かが開けた。

 

 

 

「ボクにアイデアがあるんだけど。」

 

 

「ミア!」

「ランジュはどうしたの?」

「帰ったよ。それより、ちょっとスクールアイドル部の部室に来てもらえるかな?」

 

 

 

 

~~

 

ミアに案内され、スクールアイドル部の部室にやって来た栞子、エマ、愛、果林、しずく。

部室には数えきれないほどのガンプラが積まれていて、その数に全員驚いた。

大型キットはランジュがすべて持って帰ってしまっていたが、標準的なHGクラスのガンプラなら様々な種類が揃っている。

どれもこれも、元々はガンプラバトル同好会の部室で埃をかぶっていた物だ。

 

「こんなにたくさんガンプラが……。」

「コレ、使えないかな。」

「コレで、どうするの?」

「栞子、ボランティア活動やってるんでしょ?だったら、どうすればいいかわかるんじゃない?」

「……あ、もしかして……!」

「そう言う事。」

 

ミアの意図を察すると、早速この大量のガンプラを運ぶ事にした。

栞子がボランティア団体へ、愛、果林、しずくが知り合いのガンプラビルダーへ連絡を取り、準備を進めていく。

運んでいる最中、エマがミアに尋ねた。

 

「でも、どうしてミアちゃんが?」

「別に。ボクは部室を圧迫してるこのガンプラを処理したかっただけ。」

「本当に?」

「……いや、ごめん。それ嘘。」

「フフ、ミアちゃん、ランジュちゃんの事好きなんだね。」

「好きじゃないよ、全然。」

「あ……そ、そうなんだ……。」

 

きっぱりと言われ、エマは苦笑。

ただ、とミアは続けた。

 

「日本に連れて来てもらった事は感謝してるよ。おかげで璃奈とも会えたしね。部にいる時はいつも新曲新曲って騒がしくて、正直ウザいよ。でも、テンションの低いランジュを見てると調子が狂うんだ。」

「そっか。」

「ボクも始めてみようかな、ガンプラバトル。エマのバトルを見てたら、ボクもやってみたくなったよ。」

「私たちはいつでも大歓迎だよ。さぁ、準備を進めよう!」

 

 

 

 

~~

 

そこから数日が経った土曜日。

あれからランジュはスクールアイドル部の練習には参加しているが、いつもの様な覇気が無い。

ミアはあの日以来練習に来なくなってしまった。

スマホには栞子や愛たちからメッセージが来ているが、全て無視。

壊れたシナンジュのガンプラをただただ見つめていると、突然ランジュの部屋のドアが勢いよく開かれた。

 

「ランジュ。」

「か、カワグチ!?何しに来たのよあなた……もう契約期間は何日も前に終わったはずよ。報酬なら後でちゃんと……、」

「そうではない。私と一緒に来てもらう。」

「え、な、何よ急に!」

 

ランジュの腕を引っ張り、カワグチはランジュと共に車へと乗り込んだ。

エンジンを掛けると、行先すら告げずにカワグチは車を走らせる。

途中で何度もランジュが降ろすように彼に言ったが、カワグチは聞く耳を持たない。

 

「降ろしなさいよカワグチ!あなた、わかってるの?これ、誘拐よ!誘拐!」

「もうすぐだ。」

 

口数の少ないカワグチの事なので、これ以上聞いても無駄だと判断したランジュは、それから大人しくなった。

数分後、目的地に到着した二人は車から降りた。

突いた場所は少し広めの公園で、白いテントと長机を何個も設置し、数十名の男女が何かのイベントに参加している。

何かのボランティア活動のようだったが、掲げられた旗にはこう書かれていた。

 

 

 

『ガンプラ体験会』

 

 

 

「な……何よこれ……カワグチ、あなたどういうつもり!?」

「あれを見ろランジュ。」

「あれ?」

 

カワグチの指差した先にいたのは、見覚えのある顔。

それも一人では無く、数名。

 

 

「お姉ちゃーん!ここわかんなーい!」

「どこですか?あぁ、ここには先にこっちのパーツをはめ込むんですよ。この順番通りにやってみてください。ほら、出来たでしょう?」

 

「ヒロトくん、用事で来れなくて残念だわ。でも、マサキくんが来てくれて助かったわ。」

「あぁ、任せろ。」

「マサくーん!果林ー!こっちの子がスミ入れわかんないんだってー!愛さんちょっと今手が離せないからおねがーい!」

 

「SDガンダムで質問のある人はこちらでーす!」

「し、しずくさん!あんまり注目を集めるのはやめてください!」

「パルくん、腕は確かなんだから自信持って!」

 

「ミアちゃんはどのガンプラ作りたいか決めた?」

「ちょっと待ってくれエマ。種類が多すぎる……眩暈がしそうだよ……。」

「そうやって悩むのも、ガンプラの醍醐味だからね♪」

 

 

 

「なによ……これ……。」

「驚いたか?」

 

 

栞子、愛、果林、しずく、エマ、ミアの6人が、マサキとパトリックを助っ人に呼んでガンプラの体験会を開催していた。

参加は完全無料で、使うガンプラは前にランジュがミアに押し付けたガンプラバトル同好会から貰った積みプラ。

子供たちに丁寧にガンプラの作り方を教えている彼女たちの姿を見て、ランジュは自分のカバンを見た。

この中には、壊れたシナンジュが入っている。

 

「先ほど、友人からこのイベントの事を聞いた。お前も参加してみるといい。」

「……前にも言ったでしょ。アタシはもうガンプラバトルはやらないの。たまたまこんなイベントが開かれてるからって……、」

「本当にたまたまだと思うか?」

「え?」

 

カワグチに言われて、改めてランジュはイベントに参加しているメンツを見た。

幼馴染の栞子に、スクールアイドル部の仲間のミア。

以前スクールアイドル部に籍を置いていた事のある愛と果林としずく。

そして、ネオ・ジオングを圧倒したエマ。

全員、ランジュと深くかかわった者ばかりだ。

ハッとして、ランジュは自分のスマホを開き、そこに届いてる未読のメッセージを見た。

どれも栞子か愛からの物で、文面には『土曜日に公園に来てほしい』という旨が記載されている。

 

 

「もしかして、アタシのために……?」

「ランジュ。他人が作ったガンプラで戦う事が悪いとは言わない。私が最高と認めたライバルも、作ってもらったガンプラで戦っていた。ガンプラバトルに一番必要な物は『心』だ。好きだという心、楽しみたいという心、その上で勝ちたいと思う心……今のお前に、もっとも足りていなかった物だ。」

 

 

 

「! ランジュ!!」

 

 

「栞子……。」

 

ランジュの存在に気が付き、栞子がランジュへ駆け寄ってきた。

ランジュの手を掴み、そのまま握る。

 

 

「良かった!メッセージが中々既読にならなかったので、来てくれないものだとばかり……。」

「アタシはカワグチに無理やり連れてこられて……、」

「あなたの席は確保してあります!さぁ、座ってください!」

 

 

嬉しそうにランジュを着席させた栞子。

彼女からガンプラを受け取ると、机の上に置いてあったニッパーを手に取った。

少し刃こぼれしていて、さっきまでこの席で誰かがガンプラを作っていたんだなとわかる。

 

 

「わからない事があれば、なんでも聞いてくださいね。これでも私、ガンダムに関しては少し煩いんです!」

「………なんで、こんな事するのよ……あなた達に、アタシにこんな事する義理なんて無いでしょう!?」

「義理?何の事ですか?私たちはただ、友達にガンプラを好きになってもらいたいだけですよ。」

 

 

ミアから聞いた、ランジュが同好会に対して、ガンプラバトルで勝つ事に拘っていた事を。

全ての始まりは、あのダブルバトルトーナメントの決勝戦の日。

副会長に頼まれて栞子をせつ菜の下まで送り届けた時の事。

 

 

(ねぇ、栞子)

 

(はい?)

 

(楽しいの?ガンプラバトルって。)

 

(……はい!大好きです!!)

 

 

あんなに嬉しそうに笑う栞子を、ランジュはほとんど見た事が無い。

スクールアイドル部にいた時、栞子はずっと苦しそうな表情をしていた。

同好会に戻って、ガンプラバトルを初めて、自分と一緒にいた時には見せなかった表情をして。

あの堅物だった彼女がそこまでのめり込むガンプラバトルを、ランジュもやって見たくなった。

それと同時に悔しかったし、同好会に今まで以上に嫉妬した。

だから、ガンプラバトルで同好会に勝つ事に必要以上のこだわりを見せた。

それが失敗して、ガンプラバトルを辞めたランジュ。

本当は、こうやって普通にガンプラバトルをやりたかったはずなのに。

 

 

「ねぇランジュ。」

「果林。」

「私が前に言った事覚えてる?移籍しても、繋がりが消えたわけじゃ無い。それは、あなたも同じなのよ。」

「愛さん達、ランジュにもガンプラを好きになってもらいたいんだ!だから今日はこうやって、マサくんやパルるんも呼んだんだよ!」

「まずは自分で作ってみましょうランジュさん!作るのも凄く楽しいんですよ!」

「さぁ、やってみましょうランジュ。このガンダム、せつ菜さんのおススメなんです!『機動戦士ガンダム00』に出てくる敵のガンダムなんですが、たった数分の出番で絶大なインパクトが……!」

「しおってぃーストーップ。ネタバレはダメだよ。こういうのは自分の目で楽しまなきゃ。」

「す、すいません!私ったら……。」

 

 

受け取った『HG リボーンズガンダム』を開けたランジュ。

袋を破り、ランナーを取り出した。

何枚も重なったランナーを手に取ると、首をかしげる。

 

 

「ど、どれを切ればいいのかわからないわ……。」

「ランナー毎に番号が振られているので、それを見て切るんですよ。あ、一度に切るのはダメです!ちゃんと二度切りを意識してくださいね!」

「切った痕が気になるならコレ!神ヤスリがおススメですよ!10000番までかければ、ツルツルになって綺麗なんです!」

 

 

栞子としずくの指導の下、ランジュはリボーンズガンダムを組み始めた。

ミアもエマと一緒に作りたいガンプラを決めて、席についてランジュの方を見る。

あたふたしながら後輩に指導を受けているランジュを見るのは新鮮で、その姿に思わず笑ってしまった。

 

「あんなランジュ、初めて見たよ。滑稽で笑えるね。」

「ダメだよミアちゃん、そんな事言っちゃ!」

「冗談冗談。It's joke. エマ、ボクの方を見ててよ。」

「いいよ。ミアちゃんは愛ちゃんやかすみちゃんと同じSDガンダムなんだね。三国伝の呂布トールギス?」

「子供の時にアニメ見た事がある。でも、あの時のトールギスと、ちょっと違う。」

「SDガンダムフォースの再放送かな?ならそれはたぶん、『嵐の騎士 トールギス』だね。呂布を使っての改造の仕方、教えてあげるよ。」

「じゃあ僕もお手伝いします!」

「ありがとうパルくん!じゃあ頑張ろうミアちゃん!」

 

三国伝の呂布トールギスを、『SDガンダムフォース』の嵐の騎士トールギスの様に改造しようとするミア。

いきなりでレベルが高いが、エマとパルの手伝いがあれば不可能ではないだろう。

その間にランジュはなんとかリボーンズガンダムを完成させ、素組みながら初めてのガンプラに少し感動を覚えた。

 

 

「出来た……!」

「おめでとうございますランジュ!とてもカッコいいです!」

「へー、良く出来てるじゃない。栞子ちゃんとしずくちゃんの指導が良かったのね。」

「ね、ねぇ。ランジュ、これもやってみたいんだけど……。」

「! これは……!」

 

ランジュが出したのは、先日エマとのバトルで壊れてしまったシナンジュ。

あの日から、手放せずにずっと持っていたガンプラだ。

胸には大きな穴が開き、手足もボロボロ。

 

 

「直せるかしら……?」

「だったらマサくんにお願いしようよ!GPDの頃からやってるって言ってたし!」

「俺を呼んだか宮下?」

「マサくん、ガンプラの直し方をランジュに教えてあげてよ!」

「実機バトルの傷か。うん、この程度なら問題なく修復できそうだ。俺と宮下と朝香で担当するから、桜坂と三船は他の子どもたちの指導をしてやってくれ。」

「わかりました!」

「では、私たちはこれで失礼します。」

 

「あ、し、栞子!」

「はい?」

「……結構、楽しいのね、ガンプラって……教えてくれて、ありがと。」

「フフ、侑さんも歩夢さんも手強いですよ。勝ちたいなら、もっとガンプラを好きにならないと!」

 

 

 

~~

 

 

少し離れた場所で、ランジュ達の体験会を見ていたカワグチ。

そこへ、彼にメッセージをくれた友人が駆けつけ、彼の隣に来た。

 

「キョウヤか。」

「やぁ、カワグチ。」

「今はただのガンプラファンとして来ている。その呼び方はやめてくれ。」

「じゃあ、ウィルフリッドと呼んだ方がいいかな?どうかな、このイベントは。」

 

駆けつけたのはキスギ・キョウヤ。

GBNの世界チャンピオン。

彼はこのイベントの事をエマから聞いており、お忍びで見学に来ていた。

カワグチにイベントの事を聞くと、彼は愛や果林と共にシナンジュを直しているランジュを見た。

 

「素晴らしいイベントだ。私は、あの子からガンプラ製作の依頼を受けた時、二つ返事で了解した。一人でも多くの者に、ガンプラの素晴らしさを伝えたかった。だが、彼女に本当に必要だった物は、私の作ったガンプラでは無く、共に歩める友だったんだな。」

「あの子たちはまだまだ若い。可能性の塊だよ。ウィルフリッド、僕は今とてもワクワクしている!リクくん達やヒロト達、それにあの子たちが、これからどんどんガンプラの新しい未来を切り開いて行ってくれる事に!」

「相変わらずのガンプラ馬鹿だな。」

「それは、君もだろう?」

「あぁ。友、か……私も、久しぶりに会いたくなってきたよ。最高で最強の、私のライバルに。」

 

 

 




~ニジびる毎回劇場~

第34回:譲れない戦い

タイガーウルフ「おいシャフリ、お前冷蔵庫の中の俺のマカロン食ったろ?」

シャフリ「何を言い出すかと思えば……私がそんないやしい真似をするはずがないだろう?どこかの犬っころと違ってね。」

タイガーウルフ「お前以外に誰がいるって言うんだ。」

シャフリ「自分で食べた事を忘れたんだろう?」

タイガーウルフ「俺は食ってねぇ!!だから、食ったのはテメェ以外いねぇんだよ!!」

シャフリ「ハッ!野蛮で単細胞な筋肉馬鹿だね。だいたい、君みたいな男がマカロンだなんて……似合わないにも程があるよ。」

タイガーウルフ「あれはしずことかすみんが持ってきてくれた大事なマカロンだったんだよ!!それに似合わないっていうなら、シャフリ。お前、この前リアルでラーメン屋から出てくるところみたぞ。にんにくたっぷりで有名な店でな。」

シャフリ「なっ!?な、何故それを……!」

タイガーウルフ「普段あんだけ気取ってるヤツがにんにくラーメンねぇ……。」

シャフリ「僕はどんな食文化でも受け入れる器量を持ち合わせているんだけだ……!」

タイガーウルフ「物は言い様だなぁ?え?王子様よ。」

シャフリ「フッ……表へ出たまえ。僕のセラヴィーガンダムシェヘラザードで蜂の巣にしてあげよう……!」

タイガーウルフ「上等だ。俺のガンダムジーエンアルトロンで焼き尽くしてやるよ……!」

マギー「アンタらホント仲良いわねぇ。ところでこのマカロン、すっごく美味しいわ!」

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