ベアッガイとは、『機動戦士ガンダム』に登場したジオン軍MS『アッガイ』がベースとなったガンプラ。
初出はガンダムシリーズでは異色となるガンプラを題材としたアニメ『模型戦士ガンプラビルダーズ ビギニングG』
ヒロインのノヤマ・リナがアッガイをベースに女の子要素をふんだんに詰め込み改造した機体。
当初はジオン軍のMSを熊のように改造した事で受けは悪かったが、後にガンプラ全国大会でMCを務めたカミキ・ミライが愛機として使用して世間では人気が爆発。
GBNにフォースという概念が導入され、フォースフェスの題材の一つにもなった。
そのあまりの人気ぶりに、フォース参加ダイバーだけでなく、もっと幅広い層にも楽しんでもらう為、1年前からベアッガイフェスはフォースフェスでは無く、自由参加型の超大型フェスとして生まれ変わった。
そして、今回のベアッガイフェスの目玉イベントの一つが、フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』によるライブ。
フォースメンバー10人がそれぞれのソロ曲を披露し、最後にもう一人のメンバーを加えた11人による全員曲を披露。
チャンピオンやビルドダイバーズが注目する大型新人フォースのライブと言う事で、GBNはもちろん、リアルのガンプラファイターたちやスクールアイドルファンも要注目のイベントだ。
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「……って言う事で、皆!今日はよろしくねん♪」
「はい!お任せくださいマギーさん!!なんといっても、今日のライブは私たちの歴史に残る一大イベントなんですから!!」
すでにGBNにログインしたニジガク2年生組は、マギーの前でそう答えた。
全員今日まで猛練習を積み、万全の体調で挑む。
今回のライブは、今までリアルで行っていたライブとは一味も二味も違う。
GBNだからというのもあるが、人を楽しませるのにリアルだろうがGBNだろうが、そんなのは些細な問題だ。
彼女たちにとっての一番の目玉は、何と言っても今回ライブ初参加となる11人目の存在だ。
「うぅ……い、今から緊張してきたよ~……!」
「ユウちゃん大丈夫だよ。皆ついてるから!」
「ライブ始まるまではまだ何時間もあるし、現地に到着したらまずはフェスをめいいっぱい楽しもうよ!ゆうゆ!」
「そうですね。ライブの事を忘れろ、とは言いませんが、適度に遊んで緊張をほぐす事も大切です!かすみんさん達やカリンさん達はもう到着してるでしょうから、まずはフェスへ行きましょう!」
「う、うん!」
今回ライブ初参加となる11人目、ユウこと高咲侑。
今まではサポーターとしてニジガクを支えていた彼女だったが、マギーの手違いとアユム達の希望により今回ついにスクールアイドルとしてステージに立つ。
今日の事を考えていたら、昨日はほとんど眠れなかった。
ひとまずフェス会場へ行くため、マギーに連れられて全員格納庫へ行き、愛機に乗り込む。
1年生4人組はフェス関係者への挨拶回り、3年生3人組はステージの最終チェックの為にすでにフェス会場に到着している。
2年生4人組はマギーとの最後の打ち合わせを終えると、自分たちのガンプラをカタパルトへセットし、フェス会場へと急いだ。
「マギー、ガンダムラブファントム♡」
「アイさん!愛参頑駄無!」
「セツナ!ガンダムスカーレットエクシア!」
「アユム!ガンダムドリームインパルス!」
「ユウ!レインボーユニコーンガンダム!!フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』とマギーさん!フェス会場へ、行きます!!」
~~
ワープゲートを潜ると、そこはまさに『お祭り』だった。
いくつもの浮き島に設置された、フェス限定ディメンション『ベアッガイランド』
ホワイトベースを模した城を中心に広がる様々なアトラクションなど、遊園地を彷彿とさせる作り。
メイン通路には様々な出店が立ち並び、街灯や看板にはベアッガイが描かれた装飾がこれでもかというぐらい施されている。
ベアッガイが最初に登場したガンプラビルダーズのヒロインであるノヤマ・リナの1/1の等身大フィギュアが設置され、まさにベアッガイのためのお祭りといった風貌だった。
到着して機体をしまうと、マギーに連れられて4人はステージの前に。
ステージの前には髪の長いとても綺麗な女性がナナミのダイバー姿である『ナミ』と一緒にいて、彼女はやってきたユウ達に気づくと頭を下げてきた。
「お!来た来た!おーい!皆ー!」
「こんにちわ!もしかして、ナナミさん……?」
「うん。あ、こっちの姿の時は『ナミ』って呼んで!それと……、」
「あなた達がニジガクのアイドルさん?はじめまして、今日はライブを引き受けてくれてどうもありがとう!」
「はい!ナミさん、こちらの方は……ま、まさか!」
彼女の顔を見て、セツナが興奮気味にコンソールパネルを開いた。
そこからカリンから前に見せてもらった雑誌のデータを取り出すと、そこに写っている写真の人物と見比べた。
「あの、失礼ですが、あなたはもしや、カミキ・ミライさんではありませんか!?」
「えぇ!?カミキ・ミライさんって……あの超有名なモデルさんの!?」
「あら~、私の事知っててくれたの?光栄だわ~!」
カミキ・ミライとは、全日本ガンプラバトル選手権優勝チーム『トライファイターズ』のメンバーであるカミキ・セカイの実の姉。
同時にGBNのベアッガイフェスのイメージガールでもある。
今回のライブのMCを務めてもらう為、ナミと共にステージを見に来ていたようだ。
「すっご!超有名人じゃん!」
「ライブで緊張するだろうけど、あんまり気を張らずにフェスを楽しんでね。」
「は、はい!」
ユウの手を握って、優しく微笑んでくれたミライ。
とんでもない有名人の登場に、別の意味で緊張してしまった。
挨拶を終えるとそれぞれの仕事を終えた同好会の7人がユウ達の下へやって来た。
彼女たちの周りにはリク達ビルドダイバーズやヒロト達BUILD DiVERS、他にもガンプラバトルを通じて知り合った者たちも集合しており、代表してかすみんがユウ達へ手を振る。
「せんぱーーーい!こっち、終わりましたよーーー!」
「皆、お疲れ様!」
「よーし!それじゃあ、ライブが始まるまで、フェスをめいいっぱい楽しもーーー!!」
「「「おーーーーーー!!」」」
~~
「かすみんっガイ!!」
「しずっガイ!!」
「りなっガイ!!」
「し、しおっガイ!!」
「4人合わせて、」
「「「「1年生っガイ!!!」」」」<バーーーーン!!!
自由時間になって、全員でベアッガイの被り物をかぶり、撮影コーナーで写真を撮る1年生4人組。
センターのかすみんがしおこを肩車して、しずこ、りなこと一緒にポーズを決める。
その様子を何度もスクショを取るアヤメと、苦笑しながら見守るコーイチ。
「可愛い。とても可愛いわ。今度は別のポーズをやってみましょう。りなこちゃんもう少し右……そうそう、いい感じだわ。今度は一番背の高いしずこちゃんがしおこちゃんを抱きかかえてかすみんちゃんとポジションを変えて見ましょう。」
「あ、アヤメくん、もう少し落ち着いて……、」
「郷に入っては郷に従え。3年前、あなたが私に言った言葉よコーイチさん。さぁ、撮影を続けましょう。」
このベアッガイフェスを一番楽しみにしていたビルドダイバーズのアヤメは、ニジガク1年生4人を捕まえて撮影会をやってご満悦。
最初のうちは楽しく撮影していたが、徐々にアヤメの息が荒くなっていき、身の危険を感じるしずこ、りなこ、しおこ。
なお、かすみんだけは撮影されてうれしいのかまだまだ元気。
「えへへ~♪アヤメせんぱ~い、もっと可愛いかすみんを映してもらっていいんですよ~!」
「えぇ!是非そうさせてもらうわ!!」
「……そろそろ次に行きたい……りなこちゃんボード『飽きた』」
「もはやボード使ってないよりなこさん……。」
ようやく撮影が終わり、お礼にソフトクリームを買ってもらった。
サイズがマスコット並のしおこはアヤメが膝に座らせ、スプーンを使って食べさせてもらう。
「じ、自分で食べられます!」
「いいのよ、遠慮しないで。」
「遠慮ではなく……コーイチさん、助けてください……。」
「アハハ……助けてあげたいけど、こうなったアヤメくんは止められないから……。」
「そう言う事よ。観念しなさい。」
「ハハ……ツカサも来れば良かったのに。」
なお、今日はツカサは来ていない。
ライブは配信で見てくれるそうだが、基本的に彼はGBNのイベントには参加しないというスタンスを貫いている。
過去の罪悪感からなのか、それとも別の理由なのかはわからないが、コーイチは今でもツカサを根気よく誘ってはいるらしい。
次にどこに行くのかの相談をしていた1年生4人だったが、その時りなこの耳に、聞き覚えのある声が入って来た。
「おーーーい!璃奈ねーーーちゃーーーん!!」
「! ミオちゃん!」
勢いよくりなこの抱き着いてきたのは、小さな女の子のダイバー。
彼女の後ろには父親らしき男もいて、その顔を見てコーイチは思わず恐縮。
そこにいたのは、数週間前に竹屋旅館で出会った、ヤサカ・マオとヤサカ・ミオの親子だった。
「璃奈ねーちゃん!会いたかったーー!!」
「久しぶりミオちゃん。お父さんと来れたんだね。」
「そうなんや!おかんは来れんかったけど!璃奈ねーちゃんのライブ見に来たんや!なぁなぁ!うち、大きくなったら璃奈ねーちゃんみたいにスクールアイドルになりたい!」
「ホント?うれしい!」
「いやぁ、ミオちゃんにどーしてもってせがまれて断れんかったわぁ。」
「が……ガンプラ心形流のヤサカ・マオ……!?ほ、本物ぉ!?」
「ん?君、もしかしてビルドダイバーズのコーイチくん?」
「は、はいぃ!」
「いやぁ、お会いできてうれしいわぁ!自分のガンプラ、めっちゃ細かく作り込んでて、一度お話してみたかったんですぅ!」
「え、えぇ!?そ、そんなボクなんてまだまだ……!」
いつも以上に慌てふためくコーイチを見て、思わずアヤメは笑ってしまった。
普段はユッキーと共にビルドダイバーズのブレインとして皆を引っ張ってくれる彼の珍しい慌てっぷりは、見ていて新鮮だ。
その様子を見ながら、ミオを可愛がっているりなこ以外の3人はヒソヒソと小声で話し始めた。
「ねぇねぇしずこしおこ、この二人ってもしかして……、」
「やっぱり?かすみんさんもそう思う?」
「あの……何の話なのでしょう……?」
「うんうん。しおこはまだ子供だからわかんないか~。そうだよね~、こんなにちっこいもんね~。」
「ムッ……!い、今は小さいですけど、リアルでは私が一番背が高い事をお忘れですかかすみさん!」
「まぁまぁ落ち着いて二人とも。ほら、そろそろ次行こう?」
~~
その頃、カリンとカナタの二人はベアッガイフェス限定イベントクエスト『ベアッガイクエスト』に参加中。
簡単に言うと、宝探しゲームだ。
ベアッガイランドのクエスト用エリアを探し回り、宝箱から地図を入手し、それを頼りにお宝を手に入れた者の勝利。
今回は二人一組での参加で、カリンはどうしてもこのミッションに参加したかった。
何故ならこのミッションには、カリンの『推しカプ』が参加していたから。
「ヒナタ、俺がサポートするから、一緒に頑張ろう。」
『うん。よろしくね、ヒロト。』
「……カリンちゃんといいアユムちゃんといい、出歯亀が好きだねぇ。」
『でば……?ちょっとカナタ、私は日本人よ。ちゃんと日本語で話して。』
「純日本語だよ。明日は国語の勉強見てあげるね。」
アースリィガンダムとガンダム(BEYOND GLOBAL)で参加するのは、BUILD DiVERSのヒロトとヒナタ。
ガンプラバトル初心者のヒナタには、直接の戦闘が少ないこのミッションは練習に丁度良く、ヒロトと一緒に参加していた。
それをカザミとパルから聞いたカリンは、カナタを誘ってエントリー。
なお、その際にカナタはこの件をアユムの耳に入らないように努力に勤めた。
もうあんな大変な想いをするのはコリゴリだったから。
『と、まぁ、それはそれとしてミッションに負けてあげるつもりは無いわ。このキュベレイ・ビューティーにはこのミッションは持って来いよね!』
「ちょっと卑怯な気はするけどね~。」
『GBNのミッションはそれぞれのガンプラの持ち味を活かしてするものでしょう?私は私のガンプラにあったミッションをするだけよ。』
「心強いよ~。」
キュベレイ・ビューティーの察知能力は随一で、次々と宝箱を見つけ出していく。
さらに他の参加者には見えないクリアファンネルを飛ばす事で、捜索範囲をエリア全体まで広げる事が出来る為非常に効率的だ。
他の参加チームが悪戦苦闘している中、二人はスムーズに事を進めていく。
「いやぁ、まさかカリンちゃんに道案内してもらう事になるだなんて、カナタちゃん思いもしてなかったよ~。」
『一言多いわよカナタ。ほら、次の宝箱よ。』
次の宝箱を見つけ、それをクリアファンネルで撃ち抜くキュベレイ・ビューティー。
すると宝箱が開き、中からヒントと書かれた看板を持ったプチッガイが姿を見せた。
『ヒントた~いむ!お宝は、簡単には手が届かない場所にあるよ!』
「簡単に手が届かない場所……?」
『私のファンネルが届かない場所って言う事かしら?確かに、もうほとんどの場所は探し終えているけど、肝心のお宝はまだ見つけてないものね。』
「カリンちゃんが探せない場所ってなると、水の中とか?」
『まさか。そんなわけ……、』
カナタがそう言うと、カリンは念のために一番大きい湖をサーチする。
ファンネルは届かないが、ある程度の深さまでならレーダーで見つけることが出来る。
湖にスキャンを掛けようとするカリンだったが、その時、彼女の頭上を二機のMSが横切った。
アースリィガンダムとガンダム……ヒロトとヒナタだ。
『! ヒロトくんとヒナタちゃん!!』
『カリンちゃんがいるってことは、ここにお宝があるんだね!』
「ヒナタ、一人で大丈夫か……?」
『任せて!ヒロトはお宝を!』
「わかった。頼む。」
『PLANETS SYSTEM:EARTHREE TO MERCUONE』
「コアチェンジ!アース トゥ マーキュリー!!」
アースリィガンダムの背中を追うようについてきた支援機『マーキュリーアーマー』がバラバラに分離し、アースアーマーを脱ぎ捨てたコアガンダムIIに装備されていく。
巨大なヒレやバックパックのフィンザンバーを装着し、最後にコアスプレーガンにウォーターニードルガンを装着。
これが、コアガンダムIIの水中戦用形態『メルクワンガンダム』だ。
ガンダムがキュベレイ・ビューティーとビヨンドバルバトスの脚止めをしている隙に、メルクワンガンダムは水中へ潜りお宝へ一直線。
ビームサーベルを構えて二体を妨害するガンダムに、ビヨンドバルバトスは真面目に応戦するが、キュベレイ・ビューティーの動きはどこか鈍い。
『えい!えい!』
「か、カリンちゃんどうしたの?全然攻撃に参加しないじゃん。」
『……ごめんなさいカナタ……私、ヒロト君の為に一生懸命頑張ってるヒナタちゃんと、ヒナタちゃんを信じて1人水の中へ飛び込むヒロト君を見て、胸がいっぱいになってしまったのよ……。』
「マジか。」
この二人を相手にすると、キュベレイ・ビューティーが戦力にならない事を判断したカナタは、いったんガンダムと戦う手を止める。
ガンダムの攻撃をかわす事に専念し、カナタの思惑に気づかないヒナタは攻撃を続ける。
『ぜ、全然当たらない!?』
『健気に頑張るヒナタちゃん、いいわねぇ。』
「このスタンスを貫いててもちゃんと攻撃はよけてくれるんだよねぇ。」
『おっと……そろそろよ、カナタ。』
「おや?カリンちゃん、ちゃんとカナタちゃんの作戦わかってくれてたんだね。」
よく見ると、キュベレイ・ビューティーは動きが鈍いように見せかけて、クリアファンネルで気づかれないようにガンダムの攻撃を逸らしていた。
どうやらカナタの作戦に気が付いていた様子。
やがて、カリンの言葉通り、お宝を見つけたメルクワンガンダムが水中から飛び出すと、急にキュベレイ・ビューティーは軌道を変えて、クリアファンネルでメルクワンガンダムを包囲した。
「なっ……!?」
『ひ、ヒロト!?』
『今よカナタ!』
「あいあいさ~!」
身動きが取れないメルクワンガンダムの手にあるお宝に、ダブルリベイクライフルを放つビヨンドバルバトス。
攻撃が命中し、メルクワンガンダムがお宝を手放してしまうと、今度はテイルブレードを伸ばして、鞭で物を掴むようにお宝を奪い取った。
「いっちょあがり~!」
『こんな作戦立てておいて、人の事卑怯とか良く言えたわね……。』
「んっふっふ~、カナタちゃんはしたたかなんだぜ~♪」
「ごめんヒナタ、宝箱を取れて油断していたよ……。」
『だ、大丈夫だよヒロト!私、楽しかったよ!』
「……そう言ってもらえると助かる。誘ってよかった。」
~~
ベアッガイには派生形として、プチッガイと呼ばれる小さなベアッガイが存在する。
女性や小さい子に非常に人気のあるガンプラで、このベアッガイランドにはそんなプチッガイたちが暮らす村も存在している。
そんな場所にやってきたアイ、セツナ、エマの3人は、村の中をテチテチと歩き回るプチッガイの可愛さに心を奪われていた。
「な、なんて可愛らしいんでしょうか!!あ、アイさん!写真!写真を撮ってください!」
「せっつー大はしゃぎだなぁ~!気持ちはわかるけど。」
「フフフ♪あ、そう言えばマサキくん達もここにいるって聞いたんだけど、アイちゃん、どこにいるか知ってる?」
「あぁ、マサくんならさっき見たよ。そうそう、ランジュとミアチも来てた。」
「そうなんだ。」
「うん、ほら、あそこ。」
「え?」
アイが指差した方向には、確かにシドとランジュがいた。
二人とも芝生の上に寝そべり、そこへ大量のパンダプチッガイが押し寄せて二人に覆いかぶさっている。
傍から見れば非常に危険に見える光景だが、シドとランジュの表情はとても幸せそうだった。
「あぁ……俺は今、熊のぬくもりに包まれている……。」
「この白黒のプチッガイ……故郷を思い出すわぁ……。」
「シド、ガンプラであるプチッガイにぬくもりは存在しないのではないか?」
「ランジュ、バカなの?」
「ミアもこっちへいらっしゃい。ほら、今なら特別にランジュがハグしてあげるわよ。」
「え?嫌だけど?」
呆れた表情で二人を見つめるミアとメイ。
それを見ながら苦笑するアイとエマだったが、写真を撮り終わったセツナが戻ってきてランジュ達に気づいた。
「エマさんアイさん!私もあれやってみたいです!私もパンダプチッガイさんのぬくもりに包まれたい!」
「いらっしゃいセツナ!」
「お前も来るといい中川。これは癖になる。」
「はい!!では、遠慮なく!!」
3人で川の字に寝そべり、パンダプチッガイに覆いかぶされる。
このエリアでの本来の楽しみ方は、プチッガイとまるで本物の動物の様に触れ合うという物なので、こんな楽しみ方は想定されていない。
だが、3人とも幸せそうなのでアイは記念に写真を撮った。
「これ、今度ガンスタにアップしよーっと♪」
「ミアちゃん達も来てくれたんだね。」
「まぁ、同好会のライブが見れるって聞いたしね。」
「今回はユウも参加すると聞いたが?」
「そうだよ!メイりんもミアチも期待しててよ!ゆうゆの初ステージ!」
「先日のライブの時はユウがステージに上がらない事に疑問を覚えたが、今回は出演するんだな。」
「マギーさんが参加人数を勘違いしちゃったの。でも、アユムちゃんのおかげでユウちゃんも決心を固めてくれたみたいで良かったよ~!」
「ふーん……あのベイビーちゃんのお手並み拝見ってところか。」
「ハハ、ミアチってばまだゆうゆの事そう呼ぶんだ。」
「うおぉおおお!!!助けてくれぇええええ!!!」
「「「え?」」」
談笑していると、突然凶暴化したプチッガイたちに襲われているカザミとパルが、アイたちの前を横切った。
5体ぐらいのプチッガイに襲われ、二人とも半泣きで逃げ惑っている。
「カザミーん!パルるーん!どうしたのー?」
「か、カザミさんがプチッガイの尻尾を掴んでしまったんです!!」
「こんなに怒るだなんて知らなかったんだよぉおおおおお!!!とりあえず逃げんぞパルーーーーー!!!」
いくらプチッガイとはいえ、生身のダイバーがMSであるプチッガイに勝てるはずも無く、カザミは巻き添えを喰らったパルと一緒に逃亡を続ける。
その光景を見てアイたちは苦笑いをするが、そんな騒がしい状況でもパンダプチッガイに囲まれているセツナ、ランジュ、シドの3人は幸せそうに寝転がっていた。
~~
「美味しい!」
「でしょ!ベアッガイランドの名物なんだって!」
「ダイエットしてたから久しぶりに甘い物食べたよ!まぁ、本物じゃないけど……。」
ビルドダイバーズのリク、サラ、モモ、ユッキーと合流して、ユウとアユムはベアッガイランドで食べ歩きの真っ最中。
モモの勧めで購入したベアッガイの人形焼の甘さは、ダイエット中だったユウの胃袋に染みわたる。
GBNでは味覚は再現されているが実際に栄養は取れないため、GBNでの食べ歩きはダイエット中の女性ダイバーは大変人気だ。
「他におススメとかあるの?」
「んー……色々あるけど、俺はベアッガイハンバーグが好きかな。ベアッガイの形したハンバーグ出すお店がこの先にあるんだ。」
「ボクはベアッガイバーガー!ボリュームがあって満足感が凄いんだ!」
「そ、そんなに食べられるかな~……。」
「大丈夫大丈夫!GBNじゃお腹は膨れないんだし!じゃあ全部制覇しよう!」
「も~、ユウちゃんったら!」
しばらく食べ歩きを続けていた6人。
GBN内ではお腹もすかないし喉も乾かないが、それでもハンバーガーなどの味の濃い物を食べればゲームだろうと喉が渇くような感覚に陥る。
道中でユウがジュース屋を見つけると、全員分のジュースを買ってくると言って行ってしまった。
「じゃあ行ってくるね!」
「一人じゃ無理だよ。俺もついてく。」
「大丈夫大丈夫これぐらい!リクくんもアユムたちと一緒に待っててよ!」
そう言い残してユウは去って行った。
残った全員がベンチに腰かけると、アユムはコンソールパネルを開き、ドリームインパルスのデータをリクやユッキーに見せた。
「あの……実は、リクくん達に相談があって……。」
「相談?」
「最近、私のインパルスの調子がおかしいの。何が悪いのか私にはわからなくって……良かったら見てくれないかな?」
アユムに見せられたドリームインパルスのデータ。
ガンプラ歴の長いビルドダイバーズなら何かわかるかもしれない。
以前モモに相談した時特に進展は無かったが、今日はガンプラに詳しいリクとユッキーがいる。
「んー……俺には特に問題があるようには見えないけどなぁ……。ユッキー、何かわかる?」
「データだけじゃなんとも……。具体的に、どうおかしいの?」
「この前ランジュちゃん達とバトルした時、動きが鈍く感じたの。攻撃に気づいて、それに反応するまで少し時間がかかるかなぁ。」
「もしかしたら、キョウヤさんなら何かわかるかもしれないけど……。」
「そっかぁ……。」
「アユム、見せて。」
「サラちゃん?」
サラにドリームインパルスのデータを見せたアユム。
彼女はそこへ手を触れると、目を瞑る。
サラはこのGBNで生まれた電子生命体ELダイバー。
ガンプラの声を聞くことが出来る。
目を閉じて、サラはドリームインパルスの声に耳を澄ませた。
「……この子、アユムに謝ってる。」
「どういう事?」
「ついていけなくて、ごめんなさいって。それ以上の事は、教えてくれないみたい。」
「それって、どういう………。」
『まもなく、フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』による、ライブステージが始まります。参加者の方は、ホワイトベース城にて準備をお願いします。』
~~
その頃、ジュースを買いに行っていたユウは、店員プチッガイに6人分のジュースをトレイに乗せてもらった。
お客さん一人ひとりに笑顔で手を振ってくれる店員プチッガイにときめきつつ、ユウは急いでアユム達の下へ戻ろうとする。
ジュースを落しそうになって少しもたついていた時、彼女の耳に、誰かが会話する声が聞こえてきた。
「本当にやるのか……?」
「あぁ。クリアすれば破格の報酬だ。やらない手は無いだろ。」
「だけど、運営に目をつけられるんじゃ……、」
「クエストになってるんだ。そういうイベントなんだろ。運営だって手出しできねぇさ。」
(何の話だろう……?物騒な話だったらやだなぁ。)
「だけど何者なんだろうな。この依頼主の『ノワール』って。」
「俺が知るか。依頼人が誰であれ、報酬は100万ビルドコインだ。とにかく数を集めろ。本番までもう時間が無い。」
「了解。それにしても、依頼主はよっぽどこいつらに恨みでもあるのかねぇ。こんな大枚払ってでもライブを潰せだなんて……、」
男たちの会話に、ユウは耳を疑った。
持っていたジュースのトレイを落とし、ユウは話を続ける男たちの下へ。
「ちょっと!なんなんですか今の話!?ライブを潰すっていったい……!?」
「やべぇ、見つかった!ずらかるぞ!!」
「お、おう!」
「ま、待って!!」
逃げようとする男たちを追うユウ。
だが、人ごみに紛れて逃走する彼らを捕まえる事は出来ず、ユウは男たちに逃げられてしまった。
その後もしばらく男たちを捜し、話を聞き出そうとするが、現在このディメンションには数万人規模で世界中からアクセスが殺到している。
当然そんな中で彼らを見つけ出すことは至難の業であり、結局ユウは男たちに逃げ切られた。
そんな時、会場内にミライの声でアナウンスが響き渡る。
『まもなく、フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』による、ライブステージが始まります。参加者の方は、ホワイトベース城にて準備をお願いします。』
「………ライブ……。」
~にじビル毎回劇場~
第37回:ロシアの荒熊
動物園
果林「見てよせつ菜!ほら!あそこ!急いで急いで!」
せつ菜「落ち着いてください果林さん。慌てなくてもパンダさんは逃げませんよ。」
果林「私パンダ大好きなのよ!今日は一緒に来てくれてありがとうねせつ菜!」
せつ菜「いえ!果林さんの大好きを一緒に感じる事が出来て嬉しいです!」
果林「ほら、あそこよ!わ~……なんてかわいいパンダ……、」
せつ菜「ロシアの荒熊!!」
果林「え?」
せつ菜「どうしたんですか果林さん?ほら、パンダがこっちにやってきましたよ。笹をあげてみましょう。」
果林「そ、そうね。うわ~……!食べてる食べてる!なんて可愛いのかしら……♡」
せつ菜「ロシアの荒熊!!」
果林「……さっきからなんなの?」
せつ菜「なんなのとは?」
果林「その、ロシアの荒熊!!ってやつ……パンダを見るのに集中できないんだけど……。」
せつ菜「『機動戦士ガンダム00』の劇場版予告アニメーションをご存じで無いのですか?」
果林「知らないわよ。」