※この先数話は閲覧注意
『機動戦士ガンダムUC』及び『機動戦士ガンダムNT』には、ユニコーンガンダムにまつわるガンダムが3機登場する。
ユニコーンガンダム、バンシィ、フェネクスの3体だ。
フェネクスはNTに登場するユニコーンガンダム3号機だが、ユニコーンとバンシィの登場作品はUC。
ユニコーンガンダムがその名の通り一角獣であるユニコーンをモチーフにしているのに対し、黒いボディに金色のサイコフレームを持つバンシィは獅子をモチーフとしている。
最初のパイロットは、『マリーダ・クルス』
当初は敵として主人公であるバナージと対峙した。
その後、機体は『バンシィ・ノルン』となり、パイロットはUCのもう一人の主人公である『リディ・マーセナス』へと変わり、バナージとマリーダと戦闘を開始。
最終的にはユニコーンガンダムと共にラスボスであるフル・フロンタルの操るネオ・ジオングと戦った、GBNでも人気のある機体だ。
~~
ミライの放送を聞き、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の面々はライブステージの裏へと集合。
すでに何千人もの観客が彼女たちのライブを一目見ようと押し寄せてきている。
その中にはビルドダイバーズをはじめとしたGBNでの仲間や、同じくニジガクでスクールアイドル活動をしているランジュとミアの姿もある。
アユムとユウ以外の9人はマギーから受け取った衣装データをインストールしてウェアをステージ衣装に変え、すでに準備万端。
トップバッターを務めるのはこの中で唯一人間離れしたアバターを持つしおこだ。
「き、緊張してきました……!」
「しおこ、掌に『人』って書いて飲むと落ち着くらしいよ。」
「わ、わかりました……掌に『ガンダム』と書いて飲むんですね……!?」
「落ち着いてしおこちゃん。ガンダムじゃなくて人。」
「でも、セツナさんは00的には皆の為に歌う我々はガンダムと言ってました。つまり、人とガンダムは同義語なのでは……!?」
「うん。とりあえず今はいったんガンダムの事は忘れようね。」
緊張するしおこをなだめるかすみんとしずことりなこ。
そんな4人を見ながら他のメンバーが笑っていると、ようやくアユムとユウがやってきた。
「遅れてごめんなさ~い!」
「おっ!来たわね二人とも!」
「遅かったじゃん。何してたの?」
「ユウちゃんがちょっとはぐれちゃって……。」
「ご、ごめんなさい……。」
「? 何かあったのユウちゃん?顔が暗いぞ~。」
「え?う、ううん……なんでも、無い……。」
「きっと初めてのステージで緊張してるんだよ。」
ユウの表情が暗いのは緊張からではない。
先ほどジュース屋で見かけた、数人の男たちの事を考えていたからだ。
『ライブを潰す』と、はっきり言っていた。
現実的に考えてそんな事やるはずがないのだが、妙に胸騒ぎがする。
震えるユウの手をアユムが握り、コンソールパネルからユウの衣装データを取り出す。
「ユウちゃん。ほら、見て!」
「アユム……。」
「ユウちゃんの衣装だよ!さぁ!」
「……うん!」
衣装データをインストールすると、ユウの姿がステージ衣装に変わる。
髪型はいつものツインテールで、衣装は歩夢と同じタイプの『Love U my friends』衣装。
ユウの初めてのステージ衣装姿に、全員が歓声を上げる。
「ゆうゆめっっっちゃイケてんじゃん!」
「先輩とってもかわいいです~!かすみんの次ぐらいですけど!」
「ユウちゃん、凄く似合ってるよ!」
「え……えへへ……ありがとう……あれ?アユム、泣いてる?」
「うん……なんか、嬉しくなっちゃって!」
ユウと一緒にステージに立つ事が、アユムの夢だった。
その夢がとうとう叶う事に感極まって、思わず涙ぐんでしまう。
彼女たちの姿を見ていたマギーは思わずもらい泣きしてしまうが、邪魔しないようにと駆けつけたタイガーウルフとシャフリヤールによって退場させられた。
「なんだか、ちょっと恥ずかしいな……。」
「堂々としていればいいのよ。自信を持ちなさいユウ。今のあなたは、どこへ出しても恥ずかしくない立派なスクールアイドルだわ。」
「そうそう~。いやぁ、カナタちゃん俄然やる気が出て来たよ~!眼福眼福。」
「そ、そうかな?だったら嬉しいな。」
「最初のステージまではまだ少し時間あるし、振り付けのチェックをしましょう。」
カリンと共に、振り付けの最終チェックを始めたユウ。
もう振り付けは完璧だが、初めての本番なので何があるかわからない。
絶対にミスをしないようにもう一度通しで確認。
なお、この時トップバッターのしおこは、緊張をほぐすために掌に歴代ガンダムシリーズの主役MSの型式番号を掌に書いては飲み、書いては飲みを繰り返していた。
『まもなく虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会による、スペシャルステージが始まります!皆さん、大きな拍手でお出迎えしてくださいね!』
『『『『おーーーーーー!!!』』』』
ミライのアナウンスと共に聞こえる観客の大歓声。
先ほどの男たちの事など頭から抜けていたユウの心は、最高にトキメいていた。
GBNという世界規模の舞台で、数千にも及ぶ観客の前で、この11人でライブを行える。
これほど嬉しい事はこの世にはないだろう。
そんな気持ちでいっぱいになっていたユウは、ステージの隙間から観客たちを見る。
サイリウムを振ってくれるリク達やヒロト達。
応援の声を送ってくれるランジュとミア。
やはり来ていたかガンプラバトル同好会兼近江彼方姫親衛隊(正式名称)
皆がこのステージを楽しみにしてくれている。
それだけで、ユウの胸はいっぱいになった。
「凄い……これだけの人達が、皆のライブを楽しみにしてくれてるだなんて……!」
「皆、じゃないよ。私たち、だよ。」
「アユム……そうだね。」
ライブを楽しみにしてくれているファンの為に、最高のステージを見せる。
それがスクールアイドルとしてやるべき事。
観客を眺めているユウは、その時にある事に気が付いた。
(あれ……?あの人達って……!)
観客席から離れて行こうとする数人の男たち。
あの顔は忘れもしない、先ほどジュース屋で見た男たちだ。
あの時の男たちの言葉が、ユウの脳裏によみがえる。
『ライブを潰す』という言葉が。
「どうしたの?」
「あ、アユム!!」
「? なに?」
「あ……えっと……、」
急に様子が変わったユウの顔を、心配して覗き込んできたアユム。
先ほどの事を皆に話そうとしたユウだったが、喉まで出て来ていた言葉をグッと飲み込んだ。
今、皆は大事なライブを控えていて、このステージを純粋な気持ちで楽しんでいる。
(ダメだ……皆に、余計な心配をかけちゃダメだ……!)
運営に相談しよう、そうも考えた。
だがもし運営に相談すると、それこそライブが中止になってしまうかもしれない。
だったらと、ユウは突然ステージ裏から外へ走って出ていく。
「ユウちゃん!?どこへ行くの!?もうすぐライブ始まっちゃうよ!!」
「ごめん!でもすぐ戻るから!!」
「すぐ戻るって……、」
『それでは、ライブの始まりです!トップバッターは、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会期待の新人、デスティニーフリーダムガンダムのダイバー、しおこちゃんです!』
ミライのアナウンスが流れ、ユウを心配しつつしおこがステージへと飛び出す。
アユムはユウを追いかけようとしたが、ナミに呼ばれて引き留められた。
ステージの外へ出てレインボーユニコーンガンダムを呼び出し、ユウはそれへ乗り込む。
しおこの『決意の光』が流れ始め、彼女へ声援を送っていたランジュは飛んでいくレインボーユニコーンが目に入り、サイリウムを振る手を止めた。
「……? 何やってるのかしら、あの子……。」
~~
ベアッガイランドの浮き島の一つから、ホワイトベース城のライブステージへクロノスキャノンを構えるガンプラ。
『機動戦士ガンダムAGE』に登場するデシル・ガレットが操るMS『クロノス』だ。
更にその周りにも、彼を援護するために集まったガンプラ達が。
様々な作品のMSが計8体集まり、全員でライブステージへ銃口を向けている。
『本当にこんな距離から狙撃して届くのかよ。』
『ブレイクデカールの能力を甘く見るなって。このぐらい余裕余裕。』
『コイツに成功すりゃ報酬は100万ビルドコイン!美味しいクエストだよなぁ!』
『よっしゃ!そんじゃあ……ん?あれなんだ?』
クロノスの仲間の一人であるドラドが、こちらへ接近してくる機影を確認。
その機体はビームサーベルを手に取ると、まっすぐドラド達へ向かって飛んでくる。
そして、気付いた時にはすでにドラドはそのガンプラに襲われ、地面にたたき落とされていた。
『うわあああ!!?』
『な、なんだコイツ!?』
「皆のステージを、邪魔させない!!」
『NT-D』
迫って来たのは、ライブに出演するはずのユウが乗るレインボーユニコーンガンダム。
すでに彼女はユニコーンモードからデストロイモードに変形しており、4本のビームサーベルを構えている。
リーダー格のクロノスはレインボーユニコーンの前に立つと、バキバキと拳を鳴らした。
『誰かと思えばさっきの小娘か。悪いが、お前らのライブは俺達が潰させてもらうぜ。』
「どうして!!」
『そういうクエストなんでね!!』
クロノスの指示で、仲間のガフランやドラド達が、一斉にレインボーユニコーンへ襲い掛かって来た。
ビームサーベルを最大出力で伸ばし、襲ってくるガフラン達を切り伏せていく。
デストロイモードとなったレインボーユニコーンの戦闘能力は同好会では最強であり、NT-D発動中はアシムレイトによりユウの意のままに動く。
その圧倒的戦闘力で、ガフランやドラドを次々と撃破していく。
『中々やるな!!そんだけ強けりゃ、恨みを買う事もあるだろうな!!』
「恨み!?よくわかんない事言わないでよ!!」
『なんにせよ、俺達はお前らで稼がせてもらうだけだ!!』
~~
「はぁ……!はぁ……!スクールアイドル同好会!しおこでした!!皆さん、引き続きライブをお楽しみください!!」
『決意の光』を歌い終わり、ステージの裏に引っ込んだしおこ。
慣れない体型で踊ったため疲労に襲われ、彼女はその場に座り込んだ。
アユムがタオルを持ってきてくれて、しおこはそれで汗をふき取る。
「お疲れ様しおこちゃん。」
「ありがとうございます。あの……ランジュ達は来ていませんか?」
「え?いやぁ、こっちには来てないけど?」
「そうですか……歌う前までは観客席にいたんですが、急にミアさんと一緒に席を離れたためここへ来たのかと思いました。」
「ゆうゆも戻ってこないし、もしかして一緒にいるのかな?」
「そもそもユウはどこへ行ったのよ?ライブを見ないなんてあの子らしくないわ。」
「…………。」
いまだに戻ってこないユウと、急に姿を消したランジュとミア。
それを心配するアユムの瞳からは、一瞬ハイライトが消えた。
~~
ヴェイガン系MSと戦闘を繰り広げていたレインボーユニコーン。
ドラドやガフランと違い、レインボーユニコーンと真っ向から戦うクロノスの戦闘能力は、ブレイクデカールのおかげで急激に上昇している。
だが、そんなクロノスとレインボーユニコーンの間に入り、GNビームアックスでクロノスの攻撃を受け止める赤いガンプラがいた。
その隣ではドラド達の攻撃をはじきながらレインボーユニコーンを守るSDガンダムの姿も。
「シランジュとライトニングトールギス……まさか、ランジュちゃんとミアちゃん……!?」
『何やってるのよ、あなた。』
駆けつけたのはスクールアイドル部のランジュとミアが操るシランジュとライトニングトールギス。
彼女たちはクロノス達を弾くと、レインボーユニコーンを突き飛ばす。
「な、なんで……?」
『あなたの事だから、心配かけたくないとか言って黙って抜け出してきたんでしょ?』
『皆待ってるんだから、ここはボク達に任せて君は早くライブに戻りなよ。』
「でもあの人達は……!」
『無問題ラ!ここでこいつ等を倒せば、アタシがあなたより強いってことを証明できる絶好のチャンスだわ!』
「……あ、ありがとう!!」
この場をシランジュとライトニングトールギスに任せ、ユニコーンモードに戻ったレインボーユニコーンはライブ会場へと引き返す。
レインボーユニコーンがいなくなると、シランジュ達は再びクロノス達へ向かい合った。
『全く……あんた達のせいで、親友のステージ見損なったじゃない!!どうしてくれるのよ!!』
『次は璃奈の番だったのに……お前ら、絶対許さないよ。』
GNビームアックスでクロノスへ襲い掛かるシランジュ。
対抗するクロノスは掌からビームソードを出してシランジュと鍔迫り合いを開始した。
ブレイクデカールを使用しているためその出力は他のガンプラの比では無く、シランジュはそれに押され気味になるが、そこはランジュのプライドが許さない。
『支配してあげるわ!トランザム!!』
『TRANS-AM』
ショルダーパーツが開き、その中のGNドライブが輝くと、シランジュはトランザムを発動。
ツインドライブシステムによりGN粒子の放出量が二乗化され、シランジュはクロノスを弾き飛ばした。
『と、トランザム!?なんだこのガンプラ……!?シナンジュと、まさか、リボーンズか……!?』
『ウフフ……こんな下らない真似するより、おとなしくあの子たちのライブを見てればよかったって、後悔させてあげるわ!!』
シランジュからシナンジュキャノンへと変形し、GNフィンファングを飛ばす。
それでクロノスを拘束すると、再びシランジュへ戻り、GNビームアックスでクロノスを一刀両断した。
爆散して消滅するクロノス……初めての勝利に、ランジュの胸は高鳴っていた。
一方で、残りの7機すべてを相手取るミアのライトニングトールギス。
SDガンダムである彼女の火力では、ブレイクデカールを使うガフランやドラドに対して決定打が無い。
だが、それは通常のライトニングトールギスの場合。
ミアのライトニングトールギスには、支援機であるランページグリフォンが存在している。
ランページグリフォンから飛び降りると、ミアはコンソールパネルを操作し、ライトニングトールギスに隠されたギミックを発動させた。
『RAMPAGE-TALLGEESE』
『合体……ランページトールギス!!』
バラバラになったランページグリフォンが、アーマーを脱ぎ捨てたライトニングトールギスに次々と装着されていく。
ベースとなったのはSDガンダム三国伝の『玄武装呂布トールギス』
しかしその姿は、SDガンダムフォースに登場する嵐の騎士グリフォントールギスの様。
『これがボクのガンプラの本当の姿、ランページトールギスさ。』
ランページトールギスへとパワーアップを果たしたミアは、テンペストランスを構えてブレイクデカールを使用したドラドやガフランへと襲い掛かる。
規定値以上のスピードで動けるはずの彼らは、ミアの攻撃に全く対応できておらず、何の抵抗も出来ないままテンペストランスの攻撃を受け続けた。
このランページトールギスは、エネルギー消費が倍になる代りに、攻撃力とスピードを急激にパワーアップさせるライトニングトールギスの最強形態。
SDガンダムだからこそ出来る大胆な合体ギミックには、一緒にガンプラバトルを始めたランジュも驚いた。
その威力はシランジュのトランザム時の攻撃力をも超える。
『さぁ、そろそろ終わらせましょうミア!』
『あぁ。一気に決める。』
~~
ランジュとミアにその場を任せたユウは、レインボーユニコーンを飛ばしながら会場へ急ぐ。
NT-Dを使った代償により、機体にもユウ自身にも深刻なダメージを負っているが、何度か使っているうちに体の方は慣れてきた。
だが、それでも辛い事に変わりは無く、操縦桿を握る手が震えている。
「早く……早く行かなくちゃ……!私たちの、初めてのステージ……!」
重たくなる瞼を必死に開け、ユウは右手で目をこすった。
そして、次に顔を上げた時、彼女の目の前には見覚えのあるシルエットをした、黒いMSの姿が。
「……? 黒い……レインボーユニコーン……?」
それは、自分の乗るレインボーユニコーンガンダムのデストロイモードとよく似た姿のMS。
だが、決定的に違うのは左腕に取り付けられた巨大な爪と、必要以上に装甲を盛られた左脚。
そして何よりボディの色……その装甲は黒一色であり、デストロイモードの為剥き出しになったサイコフレームは更に深い漆黒だった。
唯一、アンテナだけは金色であり、赤い瞳を光らせると、左腕をゆらりと構えたそのMSは、レインボーユニコーンへ向けて襲い掛かって来た。
「!?」
『NT-D』
咄嗟にNT-Dが発動し、デストロイモードへと変わったレインボーユニコーンは、黒いユニコーンの攻撃をビームトンファーで受け止めた。
だが黒いユニコーンはすぐさま体勢を変えて、今度は左足でレインボーユニコーンへキックをしてくる。
右腕でそれを受け止め、レインボーユニコーンは黒いユニコーンを突き飛ばし、一定の距離を保った。
「だ、誰!?」
『…………。』
「そこをどいて!!私は、皆のところへ戻らなくちゃいけないの!!」
『…………。』
「ねぇ!聞こえてるんでしょ!?だったら……、」
『あいつらは、ダメだった……私が、この手でお前を潰す。』
「……まさか、あの人達は、あなたが……?あなたは、一体……!?」
『『バンシィ・ノワール』……高咲侑、お前を、潰す。』
黒いアームドアーマーを広げ、黒いユニコーン……バンシィ・ノワールは、レインボーユニコーンへ再び襲い掛かった。
先ほどの攻撃でビームトンファーが使い物にならなくなってしまったレインボーユニコーンは、代わりに左脚の装甲を取り外し、ドリームインパルス用に作ったレインボーエクスカリバーを自分に装着。
バンシィ・ノワール専用アームドアーマー『ノワールクロー』とぶつけ、火花を散らした。
~~
『皆さん、おはようございます!演技派系スクールアイドルのしずこです!ライブはまだまだ続きます!今度は私の歌で、新しい物語を感じていただけたら嬉しいです!それでは聞いてください……『やがてひとつの物語』』
しずこの歌が始まり、残すはかすみんとアユムの二人と、全員で歌う最後の曲のみとなった。
しかし、いまだにユウは帰って来ず、舞台で歌うしずこも含めて不安な気持ちでいっぱいになる。
ランジュやミアとも通信が繋がらず、全員に焦りが見え始めた。
そこへ駆けつけたマギー、シャフリヤール、タイガーウルフの3人が彼女たちをなだめるが、それでも落ち着きを取り戻さない。
スクールアイドルのステージが何よりも大好きなユウが帰って来ない事にしびれを切らし、セツナが叫んだ。
「やっぱりおかしいです!ユウさんが連絡もつかないだなんて!」
「もしかして、スクールアイドル部の人達がなにかちょっかいかけてるんですかねぇ。」
「かすみんちゃん、証拠が無いのに疑うのは良くないよ。」
「でもでもエマ先輩!じゃあなんでユウ先輩が戻ってこないんですかぁ!」
「……私、探しに行く!」
「ダメよ。」
飛び出そうとするアユムを、マギーが止めた。
マギーはシャフリヤールとタイガーウルフと顔を見合わせ、互いに頷く。
「今のあなた達のやるべきことは、フェスの皆に最高のステージを届ける事。アユムちゃんの出番はこれからなんだから、ここはお姉さんたちに任せなさい♡」
「ったく……ユウの奴、こんな時になってやってんだか。」
「僕たち3人で彼女を連れ戻す。君たちは、今自分のやるべき事だけを考えてくれ。」
「………。」
「大丈夫よアユムちゃん。アタシたちを信じなさい。」
「ま、マギーさん……。」
アユムを宥めて、ステージ裏から飛び出す3人。
同好会一同、飛んでいく3人のガンプラをただただ見上げ、ユウの無事とステージの成功を祈った。
~~
バンシィ・ノワールの戦闘能力は圧倒的だった。
NT-Dを発動しているにもかかわらず、レインボーユニコーンの攻撃が一切通用せず、完全にいなされている。
ならば無視して切り抜けようとしても、回り込まれて妨害される。
特に厄介なのは左脚で、本来、付け根・膝・足首にしか無い関節が、スネとモモにも追加され、自由自在に動くように改造されている。
鞭のようにしなるキックの威力は絶大で、一撃でレインボーエクスカリバーを砕かれてしまった。
今度は左腕を取り外して銃として構えるが、バンシィ・ノワールはそれをもすべて回避する。
「つ、強い……!」
『ユウ!!』
『! なんだあのガンプラ……?』
そこへ、違法改造集団を倒したシランジュとランページトールギスが、レインボーユニコーンの救援に駆けつけてくれた。
二人はバンシィ・ノワールに掴まれたレインボーユニコーンを引きはがすと、GNビームアックスでバンシィ・ノワールを攻撃。
だが、当然のごとく攻撃を受け止められ、バンシィ・ノワールが右手に持ったビームサーベルを、シランジュの横腹に突き刺した。
『くっ……!なめるんじゃ無いワよ!!』
『鐘嵐珠。』
反撃しようとしてきたシランジュ。
しかしそれより先にバンシィ・ノワールがノワールクローでシランジュの下半身を掴み、無理やり彼女の下半身を引きはがした。
真っ二つになったシランジュへ、彼女から奪い取ったシランジュバスターライフルで追い打ちをかけ、地面にたたき落として完膚なきまでに撃破。
『うっ……きゃああああ!!』
『ら、ランジュを一撃で……!?この……!!』
「ま、待ってミアちゃん!!」
『ミア・テイラー。』
テンペストランスで、今度はランページトールギスが攻撃。
この形態のスピードは、トランザム発動中のガンプラ以上であり、本来であれば回避するのは至難の業。
しかしバンシィ・ノワールはそれをやってみせ、最低限の動きでランページトールギスを躱すと、逆に彼女の頭部を掴んで地面に叩き付けた。
今の攻撃でシランジュとランページトールギスは共に撃墜され、コックピットからランジュとミアが転がり落ちてきた。
「ら、ランジュちゃん……ミアちゃん……!?」
『高咲侑。』
再び、レインボーユニコーンをにらみつけるバンシィ・ノワール。
アシムレイトを発動中のユウには、バンシィ・ノワールからの『悪意』が直に伝わってくる。
今までに感じた事の無いほどの『悪意』。
かつてのランジュが自分に向けていた『嫉妬』などとは比べものにならないほどの、強烈な『悪意』だ。
思わず退きそうになる。
「……ダメだ……ここで私が逃げたら……皆のステージがダメになっちゃう……。それだけは、絶対にさせない!!」
テンペストランスとGNビームアックスを拾い上げ、レインボーユニコーンは再びバンシィ・ノワールと交戦開始。
太陽炉を搭載していないレインボーユニコーンでは、GNビームアックスはただの斧だが、NT-Dにより大幅に上昇したスペックによりバンシィ・ノワールへ対して猛攻を仕掛けることが出来る。
だが、バンシィ・ノワールは成す統べなく攻撃されているように見せかけ、レインボーユニコーンの攻撃を的確にはじいていた。
「私は、皆と一緒にステージに行くんだ!!」
『…………。』
「あなたなんかに、邪魔なんてさせない!!」
『……言いたい事はそれだけか?』
「え……!?」
一瞬、バンシィ・ノワールの動きが止まったように見えた。
次の瞬間、レインボーユニコーンの両腕と両足が爆発し、胴体のみとなったレインボーユニコーンは地面へと落下。
鈍い音を立てて地面を転がり、NT-Dが終了すると、デストロイモードからユニコーンモードへと戻ってしまった。
とどめを刺すため、バンシィ・ノワールが再びレインボーユニコーンへと近づく。
しかしその時、バンシィ・ノワールの目の前を、強烈なビームが横切った。
『マギー、シャフリヤール、タイガーウルフ。』
『今の攻撃をかわすとは……だが、次は無い。』
そこへ現れたのは、同好会メンバー達の先輩ダイバー達。
マギーとガンダムラブファントム。
シャフリヤールとセラヴィーガンダムシェヘラザード。
タイガーウルフとガンダムジーエンアルトロン。
SSランクに名を連ねる、最強のガンプラファイター3人だ。
今の攻撃は、シャフリヤールのセラヴィーによる砲撃で、ラブファントムとジーエンアルトロンも、バンシィ・ノワールへ対して威嚇行動をとっている。
迎え撃つため、レインボーユニコーンから目線を彼ら3人へと移すバンシィ・ノワール……さらにその時、背後から凄まじい闘気を感じ、振り返った。
『君が今回のバグの元凶……GBNの新たなる脅威そのものか。』
『……チャンピオン、クジョウ・キョウヤ……。』
マギーたちと共に現れたのは、GBN最強の男。
クジョウ・キョウヤとその愛機、ガンダムTRYAGEマグナム。
彼もまた、ライブ会場での異変を察知し、ここへ駆けつけていた。
GBN最強の4人を前にし、バンシィ・ノワールはノワールクローを降ろす。
逃がすまいと、ラブファントム、セラヴィー、ジーエンアルトロンが一斉にバンシィ・ノワールへと突撃し、TRYAGEマグナムのTRYファンネルとトライドッズライフルがバンシィ・ノワールを襲う。
だが、バンシィ・ノワールは攻撃が命中する寸前、自ら作り出したワープゲートを潜りその場から離脱。
急いでTRYAGEマグナムが追いかけるが、ワープゲートはすぐに消滅し、痕跡を完全に消してしまった。
『……何者なんだ……あのバンシィは……。』
『……ユウちゃん!!』
『そうだ!ユウだ!!』
バンシィ・ノワールが消え、全員がレインボーユニコーンへと駆け寄った。
ランジュとミアがレインボーユニコーンのハッチをこじ開けようとしているが、歪んでしまって開かない。
コックピットの中で、ユウは汚れてしまった自分の衣装を見てため息をついた。
「衣装……汚しちゃった……こんな格好で、ステージ上がれるかな……汚したのばれたら……アユム、怒るだろうなぁ……。」
ジーエンアルトロンが、レインボーユニコーンのハッチを破壊し、コックピットをこじ開けた。
光が差し込み、ユウの名前を呼ぶマギーたちの姿が目に映る。
「早く……みんなの、所に……。」
ユウの意識は、そこで途切れた。
~~
目が覚めた時、侑の目の前にあったのは見覚えのない白い天井。
そこが病院のベッドの上だと気付くのに、数秒かかった。
侑の手をずっと握っていた歩夢が、侑が目覚めた事を知ると、目に涙を溜めながら喜んだ。
「侑ちゃん!!良かった……目が覚めて、本当に良かった……!」
「……歩夢……?皆も……。」
「侑さん……。」
「ゆうゆ……。」
そこには、歩夢以外の同好会メンバーも全員いた。
病院の外には心配して駆けつけてくれたリク達やヒロト達、ランジュとミアもいるが、人が多すぎると迷惑になると言う事で、代表してマギーとキョウヤが同好会に付き添ってくれていた。
本来、仮想現実であるはずのGBNで敗北し、肉体にまで深刻なダメージが行く事などありえない。
だが、マギーとキョウヤはその状況を冷静に分析し、侑へ伝える。
「アシムレイトの代償か……。ガンプラと一体化している状態でのNT-Dの連続使用に加えて、機体の大幅な損傷……むしろ、よく無事でいられたものだ。」
「悲観する事は無いわ侑ちゃん。あなたがまだまだ強くなれる、だから今はゆっくり……、」
「そんな事より!!」
「ゆ、侑ちゃん、病院で大きな声出したらダメだよぉ!」
ベッドから無理やり起き上がる侑を、彼方が止める。
侑は彼方を引き離し、マギーへと詰め寄る。
「ライブは!!ライブはどうなったんですか!!私たちのステージは!!」
「侑ちゃん……。」
「……皆、無事に歌えたわよ……。」
「ほ、本当に……!?」
「かすみちゃんまでは、ね。」
マギーにそう告げられ、侑は目を丸くした。
そのまま彼女の視線は歩夢へと向き、歩夢は申し訳なさそうに項垂れている。
かすみまで歌えたと言う事は、その次……歩夢は、歌えなかったと言う事に他ならない。
「……私が歌い終えた頃、シャフリさんから連絡が入ったんです……侑先輩が強制ログアウトになったって……それからすぐに救急車で運ばれて、歩夢先輩の番が来る前に、ライブは中止になりました……。」
「そ……そんな……あ、歩夢……。」
かすみが泣きながら教えてくれた。
他のメンバーも、悲しそうな顔をしている。
そんな中、歩夢だけは精一杯笑顔を振りまき、侑へ笑いかけてくれた。
「だけど、侑ちゃんが無事で本当によk、」
「良いわけ無いじゃん!!!」
「ゆ、侑ちゃ……!?」
「そんな顔しないでよ歩夢……!どうしてそんな風に笑えるの……?」
「侑、歩夢はあなたの為を想って!」
「果林ちゃん。」
侑の為に無理して笑う歩夢に怒る侑。
それを止めようと果林が前に出るが、エマに止められてしまった。
すると、面会の時間を過ぎてしまい、医者によって同好会メンバーは全員帰宅を命じられてしまう。
去り際に歩夢が侑へ何か言おうとしたが、侑の耳には届かない。
同好会メンバーが帰らせられると、マギーとキョウヤも立ち去ろうと席を立った。
「侑くん、今日は一日検査入院だそうだ。明日には退院できるそうだよ。」
「今日の事はもう忘れなさい。とはいっても、無理かもしれないけど……でも、ふてくされちゃダメよ。あなたが強い子だってことは、皆ちゃんとわかってるわ。」
そう言い残し、マギーとキョウヤも立ち去った。
鞄からレインボーユニコーンガンダムのガンプラを取り出し、侑はそれを眺める。
GBNでは大破してしまったが、リアルのレインボーユニコーンはこうして無傷の状態だ。
こうして見ると、あれが実は夢だったのではないかと錯覚してしまいそうになるが、脳裏に焼き付いたバンシィ・ノワールの『悪意』が、あれが夢でなかった事を自覚させる。
「バンシィ……ノワール……!!」
負けてしまったレインボーユニコーン。
歌えなかった歩夢。
叶わなかった皆とのステージ。
楽しかった時間を一瞬で壊したバンシィ・ノワールと、歩夢達の事を思いながら、病室で侑は声を押し殺すこともせずに泣いた。