ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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Say Good-Bye 涙

侑と歩夢が戦った日の翌日、生徒会の仕事で早朝から登校していた栞子は、書類を纏めると朝練に向かう為の片づけをしていた。

この時間はまだ自分しか登校しておらず、一人でいると不安な気持ちに駆られる。

昨日から、歩夢も侑も、メッセージに返信をしてくれない。

あの後どうなったのか、歩夢達は侑に会えたのか、そればかりが気がかりだった。

不安な気持ちを少しでも和らげる為、練習に向かおうと生徒会室の扉を開けると、そこには意外な人物がいた。

 

 

「! 侑さん……!」

「おはよう、栞子ちゃん。」

「お、おはようございます……ずいぶん早いのですね。」

「うん……出来るだけ早く済ませたい用事があって……それに、歩夢と顔合わせたくなかったから……。」

「え、そ、それはどういう……。」

「ごめん。先に用事いいかな?」

「あ、はい……。そうだ、それが済んだら私の練習を見ていただけませんか?是非、アドバイスをいただきたい所がありまして。」

「んー……ごめんね、それ、ちょっと難しいかも……。」

 

 

そう言いながら、侑は鞄から取り出したものを栞子に渡した。

渡された物を見て栞子は、思わず固まった。

何故なら彼女が持っていた物は退部届けで、そこには間違いなく侑の筆跡で名前が記入されていた。

 

 

「なっ……なんですかコレは!?」

「見ての通りだよ。私、同好会を辞めようと思う。」

「う、受け取れません!!」

「どうして?入部も退部も、生徒の自由でしょ?栞子ちゃんにはこれを受け取る義務はあっても、拒否する権利は無いと思うけど?」

「何故ですか侑さん……昨日、歩夢さんと何があったんですか!?」

「……そっか、皆が歩夢達を……。どうして同好会を辞めるのかって?だって、私がいても何もできなかったじゃん。私はスクールアイドルじゃないし、皆の練習にも付き添ってるだけ……なのに、そんな私のせいで、皆のライブを台無しにして……。」

「侑さんのせいなんかじゃありません!!悪いのはバンシィ・ノワールというガンダムを使うダイバーです!!侑さんだって被害者じゃないですか!!」

「……とにかく、これ以上皆に迷惑かけたくないんだ……ごめんね、辛い役押し付けちゃって。応援してるから、これからも頑張って。」

「侑さん!!」

 

 

そこから侑は何も言わずに生徒会室から出て行った。

追いかけようとしたら、同じタイミングで副会長が登校してきて、去っていく侑と涙目の栞子を見て唖然する。

追いかけるタイミングを見失い、その場に座り込んだ栞子を見て、副会長は戸惑った。

 

「ど、どうしたの栞子!?高咲さん、凄い勢いで出て行ったけど……。」

「そんな事言わないでください……侑さん……。」

 

 

~~

 

「どういう事しお子!!ちゃんと説明してよ!!」

「私だって何がなんだかわかりません!!」

 

緊急で同好会メンバーを招集し、侑についての会議が行われた。

テーブルの上には侑から受け取った退部届けが置かれ、全員それを信じられないという目で見ていた。

生徒会長ではあるが、栞子の一存でこの退部届けを取り消す事は出来ない。

これを提出した時点で、学園としては侑を同好会から除名せざるを得ないのが現状。

当然誰もその事には納得しておらず、侑に辞めてほしいと思う者などここにはいない。

 

退部届けを無理やり渡された形ではあるが、それを受け取ってしまった栞子を責めるかすみ。

悲しみに暮れるしずくと璃奈。

悔しさで打ちひしがれる果林、愛、せつ菜。

原因を作ったバンシィ・ノワールへ対する怒りが沸々と湧いてくるエマと彼方。

 

この紙切れ一枚で、同好会がバラバラになってしまう。

昨日の事を思い出しながら、歩夢は退部届けを見つめた。

1人だけ様子の違う歩夢に気づき、しずくが彼女へ声を掛けた。

 

 

「歩夢さん、昨日何があったんですか?侑先輩、どうしちゃったんですか!?」

「愛、あなたも昨日一緒にいたのよね?説明してもらえる?」

「せつ菜ちゃんもお願い。話して。」

「……実は……、」

 

 

そこから歩夢は、侑がバンシィへ対抗するため、ブレイクデカールを手に入れようとしている事を皆に話した。

話すべきかどうか迷ったが、愛とせつ菜も了承してくれた。

昨夜、GBNで侑のレインボーユニコーンと戦った歩夢は、侑の本気が伝わった。

レインボーユニコーンの攻撃一つ一つが重く、彼女の覚悟が伝わってくる。

確かにベアッガイフェスでのライブの中断に侑が関わっているのかもしれない。

しかし、それが侑のせいだと思う者はこの中にいるはずも無い。

侑がライブを守るために必死にバンシィ・ノワールと戦った事は、ランジュとミアや、マギーたち、それにキョウヤも見ていた。

にもかかわらず、侑が同好会を離れるという決断をし、ブレイクデカールを手に入れようとするなど、納得できるわけが無かった。

 

 

「そう言えば、侑ちゃんは?彼方ちゃん、今日侑ちゃんの事学校で見てないんだけど。」

「朝、生徒会室にコレを届けに来た後から、私も侑さんを見ていません。」

「もしかして侑さん、帰っちゃったのかな?」

「………まさか、昨日私と戦ったせいで……!」

「歩夢!歩夢まで自分を責めちゃダメだよ!!コレはアタシら全員の問題っしょ!?」

「で、でも……。」

「………歩夢さん、無理はしないで下さい。」

「せつ菜ちゃん?」

「先生へは私が上手く誤魔化しておきますので。今日の所は一度、帰ってじっくり考えてみるのも手だと思います。」

「だけど!」

「悔しいですが、侑さんの事を一番想っているのは歩夢さん、アナタです。侑さんが今一番悩んでいるのは、歩夢さんが歌えなかった事。今の侑さんを救えるのは、歩夢さんしかいないと思います。」

「……うん、ありがとう……。」

 

 

せつ菜に言われて、歩夢は今日は早退する事にした。

だが、ああ言われたものの、帰路につく足取りは重く、部室から離れるごとに不安で押しつぶされそうになる。

歩夢が部室からいなくなると、愛とせつ菜は顔を見合わせて席を立ちあがった。

 

 

「歩夢だけに頼ってばっかりじゃダメだよ。愛さん達も、ゆうゆの為に何が出来るか考えよう!」

「今の侑さんも歩夢さんも、心に大きな傷を負っています。で、あるならば、私たちはそれを癒したい……私たちに出来る方法と言えば!」

 

 

 

 

~~

 

 

退部届けを提出した侑は、そのまま自宅へと戻り、GBNへとログインした。

目的はもちろん、ブレイクデカールの出所を探り、それを手に入れる事。

そして、その後は自分の持てる力をすべて使い、バンシィ・ノワールを倒す。

ロビーにログインし、早速ヴァルガへと赴こうとするユウの目の前に、長身の男が立ちはだかった。

 

 

「……マギーさん……。」

「ようやく見つけたわよ、ユウちゃん。」

「どいてください。私、急いでるんです。」

「………ねぇユウちゃん、あなた少し変よ?ちゃんと食べてる?ちゃんと寝てる?」

「聞こえなかったんですか!?急いでるんでどいでください!!」

「あなたこそアタシの声ちゃんと聞こえてるの?変だって言ってるのよ。」

 

 

いつも優しいマギーの口調が、その時ばかりは鋭くなった。

それに少し怖気づいてしまったユウに、マギーは謝罪を述べる。

 

 

「ごめんなさい、怒っているわけじゃないの。元はと言えば、アタシの勘違いから招いた結果だものね。」

「ううん……私も、怒鳴っちゃってごめんなさい……。マギーさんには感謝してるんです。最後まで出来なかったとはいえ、あんな素敵な場所でライブを披露できるって聞いて、私も皆も、すごくときめいたんです。」

「そう、それなら良かったわ。」

「だけど……だからこそ、あのバンシィが許せないんです。本当は、歩夢だってあのステージで輝けるはずだったのに……私が、私がもっと強かったら……あんな事にならずに済んだのに……!」

 

 

マギーの想像より、ユウの心のダメージは大きい。

彼はフゥとため息をつくと、コンソールパネルを開いて、一つの動画を開いた。

ユウがGBNを始めるきっかけになった『第二次有志連合戦』……その前にあったもう一つの大きな騒動、『第一次有志連合戦』の動画。

この動画はブレイクデカールを使用していたダイバー達のプライバシー保護の為の非公開情報となっていたが、有志連合戦に参加していたマギーはこの動画のデータを持っていた。

彼はそれを、ユウに見せつける。

 

 

「リっくん達から聞いたわ。あなた、ブレイクデカールを手に入れるつもりなんでしょう?」

「はい。」

「なら、これを見なさい。あなたが手に入れようとしている力が、一体どういう物なのか……その正体が、ここにあるわ。」

「正体……?」

 

 

マギーから見せられたデータを見て、ユウは絶句した。

そこにあったのは、ビルドダイバーズを含めた有志連合達と、アンシュ率いるマスダイバー軍団の戦いの記録。

ブレイクデカールに使用により崩壊するGBNと、それに必死に抗うダイバー達。

最後のダブルオーダイバーエースの起こした奇跡のトランザムにより、落された超巨大MA『ビグ・ザム』。

ブレイクデカールの危険性が、これでもかと言わんばかりに記されていた。

 

 

「なに……これ……!?」

「それがブレイクデカールの正体よ。GBNのデータを改竄して、この世界のルールを捻じ曲げる悪魔のツール。あなたが手に入れようとしているのは、そういう物なのよ。」

「そんな……じゃあ、私は何のために今日まで……!」

「ユウちゃん……。」

 

 

ユウは今日、同好会を辞めた。

ライブをまもれなかった事も勿論あるが、ブレイクデカールを使うメンバーが所属していると、同好会のイメージダウンになる恐れがあったから。

自分ひとりが傷つくだけならいいと、そう思っていた。

しかしマギーに見せられたブレイクデカールの真の脅威を目の当たりにし、彼女はその場に座り込んだ。

 

 

「ユウちゃん、『ミラーミッション』を受けて見ない?」

「ミラーミッション?」

「そう。今のあなたには、絶対必要な物よ。自分を見つめなおす、いい機会だと思うわ。」

「…………。」

 

 

ブレイクデカールを使うという選択肢が無くなった今、藁にもすがる思いのユウ。

マギーに言われた通り、ミッションカウンダーへと行き、月一で開催されている特殊ミッション『ミラーミッション』の概要を読んだ。

クリア後は二度と受ける事の出来ない、内容不明の謎のクエスト。

報酬は称号のみで、どんな簡単なクエストでもクリアすれば手に入るビルドコインや経験値は一切得られない。

正直、受ける必要性を一切感じないミッションだった。

 

 

「マギーさん、コレ、あんまり受ける意味ない気がする……。」

「言ったでしょ?自分を見つめなおすクエストだって。物は試しよ。」

「……うん。」

 

 

半ば無理やり、クエストを受注した。

すぐにミッションエリアへの座標が送られ、ユウはそこへ向かい始めた。

レインボーユニコーンガンダムに乗り込み、ワープゲートを潜り、座標へと飛び立つ

マギーに見送られながら、ユウはミッションエリアへと姿を消した。

 

 

『………。』

 

 

そして、ミッションエリアへと入っていくレインボーユニコーンの姿を、遠方からバンシィ・ノワールも確認していた。

 

 

 

~~

 

 

ミラーミッションは複数のミニゲームを順番にクリアしていく、連戦ミッションに近い形のクエストだったが、その内容はあまりに統一性が無かった。

NPDのSDザクII達が襲い掛かってくるのは通常の連戦ミッションと一緒ではあるが、それ以外の内容はガンプラバトルとは一切関係の無いものばかり。

 

 

Oガンダムによる千本ノック。

 

よくわからない形をした知恵の輪タイムアタック。

 

何故ダイバーでやる必要があるのか一切わからないアスレチック。

 

 

苦労して突破出来た物の、ユウはこのミッションを受注した事を少し後悔し始めていた。

本当にこんなクエストに意味があるのか、そう考えていた。

彼女は知らないが、もちろんこのクエストにはちゃんとした意味がある。

 

千本ノックによる動体視力や反射神経、知恵の輪による柔軟な考え方、アスレチックによるバランス感覚。

 

その全てのデータから挑戦するダイバーと全く同じステータスを持つミラーガンプラを作りだし、最終ステージで自分自身と戦う、まさに『ミラーミッション』と呼べるクエストこそが、このミッションの正体。

 

自分の強さに疑問を感じた多くのダイバー達が挑戦し、自分を見つめなおしてきたミッションであり、マギーはもちろん、シャフリヤールやタイガーウルフ、それにチャンピオンのクジョウ・キョウヤもお世話になったミッションでもある。

最終ステージに入ると、再びレインボーユニコーンに乗り込んだユウの目の前に、他のダイバー達のミッションと同じように、ミラーガンプラが出現。

その姿を見て、ユウは驚愕した。

 

 

 

「え……あれって、スカーレットエクシアと、デスティニーフリーダム……?どうしてせつ菜ちゃんと栞子ちゃんのガンプラがここに……?」

 

 

 

何故か、彼女の前に出現したのは、ミラーがんぷらのレインボーユニコーンでは無く、全身が真っ黒にそまったセツナのガンダムスカーレットエクシアと、しおこのデスティニーフリーダムガンダム。

二体はレインボーユニコーンへ躊躇いなく襲い掛かり、レインボーユニコーンはその攻撃を躱しながらビームサーベルを手に取った。

 

「どうしてあの二人がここに!?ッ……!?」

 

前進しようと足を前に出そうとするが、足が動かない。

足もとを見ると、そこにはレインボーユニコーンの右足にしがみ付いた黒いザクみんがいて、ハッとして正面を向くと、今度は黒いAEドムに顔面を殴られてしまった。

 

 

「か、かすみちゃんと璃奈ちゃんのガンプラまで!?って、ことはまさか……!?」

 

 

上を見上げたレインボーユニコーン。

空中を漂う無数のクリアファンネルが彼女を襲い、さらに追撃にビームによる狙撃が放たれる。

ヨロヨロと立ち上がろうとしたレインボーユニコーンだったが、目の前に現れたガンプラがメイスで彼女を殴り飛ばした。

いずれも黒い姿の、キュベレイ・ビューティー、ヴェルデブラストガンダム、ガンダムビヨンドバルバトスだ。

 

「果林さん、エマさん、彼方さんのガンプラ……な、なんなのこのミッション!?どうして同好会の皆が……!」

 

 

やがて、彼女の後ろに、黒い愛参頑駄無とO-ドリーガンダムも現れ、レインボーユニコーンは同好会の9機のガンプラに完全に包囲された。

それと同時に彼女の周りに景色が少しずつ歪みはじめ、周りの景色がベアッガイフェスの時のあの場所……バンシィ・ノワールに敗れた時と同じ景色に変わる。

一番見たくなかった光景を見せつけられ、体中から嫌な汗が噴き出す感覚に襲われたユウ。

すると、彼女の背後から聞きなれた声が聞こえてきた。

 

 

 

『ひどいよ、侑ちゃん。』

 

 

 

「!! あ、あゆ……歩夢……!?」

『どうして私たちのステージの邪魔をしたの?どうして私だけ歌えなかったの……?』

 

 

背後からあらわれたのは、黒い姿のガンダムドリームインパルス。

ドリームインパルスが少しずつレインボーユニコーンへ近づくと、その首を掴んだ。

 

 

『皆はあんなに楽しそうに歌えたのに……私だって楽しみにしてたのに……。侑ちゃんが余計な事をしなければ、私だって歌えたんだよ?』

『歩夢先輩かわいそ~。スクールアイドルでも無い侑先輩のせいで歌えなかったなんて、かすみんだったら耐えられませ~ん!』

『わかっているんですか侑さん?自分がやった事の重大さが。スクールアイドルにとって、ステージは何物にも代えがたいものなんですよ。』

 

「か、かすみちゃん、せつ菜ちゃん……わ、私……!」

 

 

ザクみんとスカーレットエクシアもレインボーユニコーンへと近づいてくる。

更に、愛参頑駄無、デスティニーフリーダム、ヴェルデブラストも、レインボーユニコーンへ近寄って来た。

 

 

『でも、愛さんがっかりだな~。ゆうゆさぁ、ブレイクデカールにまで手を出すつもりだったんでしょ?マジ無いから、それ。』

『侑さんは私たちからステージだけでは無く、GBNまで奪うおつもりなんですね。』

『ブレイクデカールがどれほど危険な物なのか……知らなかった、じゃ済まされない事だってあるんだよ。』

 

「愛ちゃん、栞子ちゃん、エマさん……。」

 

 

3人に突き飛ばされ、レインボーユニコーンはその場にしりもちをついた。

倒れた彼女の腹部を、キュベレイ・ビューティーが踏みつけ、その様子をO-ドリーガンダムがあざ笑う。

 

 

『あなた、いい気になってたんじゃない?自分だけが使える力を過信しすぎていたんじゃないかしら?』

『これっぽちの力で私たちを守ろうだなんて、おこがましいとは思いませんか?』

 

 

「果林さんしずくちゃん……も、もうやめっ……!」

 

 

キュベレイ・ビューティーに蹴飛ばされた先には、AEドムとビヨンドバルバトスがいた。

二人とも、冷たい目でレインボーユニコーンを見下し、失望したと言わんばかりに首を振った。

 

 

『もう彼方ちゃん達に侑ちゃんは必要ないよ。いや、もうじゃないかな?最初からかぁ。』

『スクールアイドル同好会は、スクールアイドルの集まる場所。スクールアイドルじゃない侑さんの居場所じゃない。』

 

「彼方さん……璃奈ちゃん!」

 

 

『侑ちゃん、さようなら。』

 

 

 

最後にそう言いながら、ドリームインパルスがレインボーユニコーンへレイピアを振り下ろした。

しかし次の瞬間、レインボーユニコーンが突如デストロイモードへと変わり、全身から緑色のエネルギーを放出して全身をバリア状に覆い包んだ。

その中でレインボーユニコーンは体を丸めて縮こまり、同じようにその中でユウもまた、蹲って自分の頭を押さえた。

 

 

「ごめんなさい……皆……ごめんなさい……!」

 

 

 

~~

 

 

ユウがミラーミッションに挑んでから、すでに7時間以上が経過していた。

いくら時間がかかっても、3時間もかからずに終わるようなミッションであるが、いくらなんでも遅すぎる。

マギーが受付カウンターへ行き、ミラーミッションの状況を確認していると、学校を終えたリクとヒロトがGBNへログインしてきて、彼に駆け寄ってきた。

 

「マギーさん!」

「リッくん!それにヒロトくんも……。」

「マギーさん、ユウは……、」

「無事に会えたわ。だけど、おかしいのよ。あの子にミラーミッションへのエントリーを薦めたのだけれど、帰って来ないのよ。」

「え!?」

「一体、何が……。」

「ちょっと、ツカサさん達に調べてもらいます!」

 

リクが早急にリアルのコウイチへと連絡を取ると、彼はすぐさまツカサと共に原因の特定に乗り出す。

すると、ユウの参加しているポイントのミラーミッションのみに異常なバグが検出され、そこからはブレイクデカールに似たような反応が多数確認された。

 

 

「な、なによコレは!?」

「どうしてユウの参加しているミッションにだけバグが……!?」

「不味いわ……ミラーミッションは特殊エリア内で行われる閉鎖空間でのミッションだから、何があっても脱出が出来ない。今すぐミッションを中断させないと!!」

 

 

慌ててマギーが運営にミラーミッションの中断を申し立てた。

しかし、運営もこの事態をすでに確認しており、中断させようとしているが何故か出来ない。

強制ログアウトを試みているが、それも出来ないようだ。

 

 

「こうなってしまったら、脱出は不可能よ!誰かが、ミラーミッションエリアに入って、内部からミラーミッションそのものを破壊するしかないわ!」

「ユウ………。」

 

 

 

~~

 

 

ユウがミラーミッションエリアに入る頃と同じ頃、歩夢は一人、神田明神へと足を踏み入れていた。

神頼みというわけでは無いが、東京有数のパワースポットでもあるここへ来れば、なんとなく何かヒントが掴める様な気がした。

同好会の皆は、自分と侑を気遣って優しくしてくれたが、自分には今の侑とどう接すればいいのかわからない。

侑との擦れ違いは初めてではない。

幼少のころから何度も喧嘩はしたし、同好会に入った後も歩夢のせつ菜への嫉妬心やボランティア集めの件などで衝突した事もあった。

しかし、今回のそれはわけが違う。

侑は全ての責任を自分ひとりで背負おうとしている。

 

 

「……どうすればいいんだろう……私……わかんないよ、侑ちゃん……。」

 

 

 

「歩夢くん?」

 

 

 

「え?あ、きょ、キョウヤさん……!?」

 

 

その時、彼女は後ろから声を掛けられた。

振り返ると、そこにいたのはクジョウ・キョウヤのリアル、キスギ・キョウヤ。

相変わらずガンプラの箱が入った袋をいくつも手に下げており、おそらくチャンピオンとしての仕事の途中なのだろう。

思わぬところで見知った人物と出会った事で、歩夢は緊張の糸が切れてしまったのか、その場で膝をつき、思わず泣き出してしまった。

 

 

「うっ……うぅ……うぇぇぇぇん……!」

「え!?あ、えっと……こ、これじゃあボクが泣かせているみたいじゃないか!?と、とりあえず座ろう!地面の上では汚れてしまう!!」

 

 

その後、キョウヤの紳士的な振る舞いで一緒に座った歩夢。

彼から差し出されたハンカチで涙を拭い、しばらくしてようやく落ち着いてきた。

彼女が泣いている間、キョウヤは黙っていてくれた。

ひとしきり涙を流し切ると、歩夢はキョウヤへ頭を下げ、お礼と謝罪を述べた。

 

 

「ごめんなさい急に……ありがとうございました。洗って返しますね。」

「いや、それは君が持っていて構わない。」

「あの、キョウヤさんはどうしてここへ?」

「ボクは時々ここに足を運ぶんだ。ガンプラのアイデアを出すには最高の場所でね。歩夢くんは……侑くんの事だね。」

「………はい。」

「彼女の事はリクくんやヒロト達からも聞いている。ブレイクデカールに手を出そうとしたこともね。」

「ゆ、侑ちゃんに悪気は……!!」

「わかっている。しかし、それとこれとは別の問題だ。ボク達も、これ以上マスダイバーを増やすわけにはいかないからね。」

 

 

キョウヤもチャンピオンとしての使命がある。

何故か復活したブレイクデカールの蔓延を防ぐことと、バンシィ・ノワールへの対処。

このまま侑を放っておけば、ブレイクデカールに手を出さずとも彼女自身の破滅を迎えてしまう。

だが……、

 

 

「キョウヤさん……私、どうしたらいいかわからないんです……。私は侑ちゃんの事ずっと見てきて、侑ちゃんが凄く頑張ってるを見て、侑ちゃんに勇気づけられて、侑ちゃんの事なら誰よりわかってるつもりだった……なのに……、」

 

 

(だって……歩夢が歌えなかったんだよ……放っておけるはず無い……!!)

 

 

「なのに私は……侑ちゃんの一番の悩みをわかってあげられていなかった!初めてのステージに出られなくて悔しいんだろうって勝手に思い込んで、あの子のやろうとしてる事を否定して……ホントは、侑ちゃんは私の為に……!」

 

 

また泣き出してしまった歩夢。

そんな彼女を見て、キョウヤは何かを思いつくと、ガンプラが入った袋に手を入れた。

そこから一つのガンプラを手に取ると、それを歩夢へと差し出す。

 

 

「こんな時に何を……。」

「歩夢くん。ボクはね、悩みがある時にはガンプラを作る事にしているんだ。ガンプラはいいぞ、作っている間は嫌な事は全て忘れて、ただひたすらに、何故そのガンプラを作っているのか……何故自分はこのガンプラを作りたいのか……そんな事を考える。」

「だけど!!」

「他人の事を全てわかる人間なんていない。どれだけ親しい人だって、その人の全てをわかる事なんて出来やしないさ。ましてや幼馴染なんてなおさらだよ。普段いつも一緒にいるからこそ、見えてこない部分もある。だけど、それでいいじゃないか。そんな事で、君が侑くんを嫌いになったり、侑くんが君を嫌いになったりするのかい?」

「そんな事……絶対にありえません!!」

「ボクやリクくん達だって、大きな擦れ違いを起こして、衝突した事だってあった。それでも心を通じ合えたのは、ボク達がガンプラが好きな者同士だったからだよ。君や侑くん達の場合は、それはスクールアイドルになるのかな?好きな物に、本気で、本音でぶつかれば、おのずと道は見えてくる。」

 

 

そう言いながら、キョウヤは歩夢にガンプラを手渡した。

白いパッケージが特徴的なガンプラで、そこに描かれているのはとある作品の主役MS。

 

 

「その作品の主人公も、戦争を止める為に、周りを恐れず本音をぶつけ、それを実現させるための努力をしてきた。僕の大好きな主人公さ!歩夢くん、今の君の心にある物を、侑くんにぶつけてみたまえ。そのための勇気なら、あの子たちがくれたはずだよ。」

「あ……。」

 

 

その時に頭に思い浮かんだのは、スクールアイドル同好会の皆の顔。

皆、歩夢を信じて背中を押してくれた。

侑と戦う為の勇気なら、すでにあの時、皆にもらっていた。

ガンプラを持って立ち上がった歩夢は、涙を拭うと、もう一度キョウヤに頭を下げた。

 

 

「キョウヤさん……私、わかりました。難しく考えるのはやめます。私は、侑ちゃんと仲直りがしたい!」

「良い顔だ。ところで……物は相談なんだが……、」

「はい?」

「実は、この間のライブを見て、ボクもすっかり君たちのファンになってしまってね。次のライブがある時は、是非招待してもらいたいんだが……ダメだろうか……?」

「え?」

「い、いやすまない!今のは忘れてくれ!」

「フフフ♪わかりました!ガンプラのお礼に、今度のライブは招待しますね!」

 

 

 

 

~~

 

 

そして、自宅に帰って来た歩夢は、さっそくキョウヤから貰ったガンプラを組み立てた。

 

その機体の名は、『ガンダムAGE-FX』……『機動戦士ガンダムAGE』最後の主人公であるキオ・アスノが乗った、戦争を終わらせるための機体、不殺のガンダム。

 

組み上がったAGE-FXと、歩夢の愛機であるドリームインパルスを並べ、彼女はドリームインパルスに手を当てる。

すでに、このドリームインパルスはSEEDを覚醒した歩夢のパイロットとしての能力に追いつけず、彼女の操作を受け付けなくなってしまった。

その事は以前サラからも指摘されており、サラを介して歩夢に対して謝っていた。

 

 

「ドリームインパルス……今までありがとう。」

 

 

組み上がったAGE-FXを手に取ると、歩夢はそのボディを外し、ドリームインパルスのレッグフライヤーとAGE-FXの下半身パーツを分解。

更にボディはドリームシルエットの改造の時に余ったパーツを引っ張りだし、次々と組み替えていく。

 

 

 

「そして、これからもよろしく!」

 

 

 

歩夢の技量に着いて行けなくなったドリームインパルス。

だが、彼女はそれでドリームインパルスを手放すなんて事は絶対にしない。

確かにコレは侑に選んでもらって、自分で決めたガンプラでは無いが、今やドリームインパルスはもう一人の歩夢自身。

 

ならばこそ、彼女はドリームインパルスを進化させる。

進化するガンダムであるAGEシリーズの最終形態、ガンダムAGE-FXと共に、インパルスを新たに生まれ変わらせる。

皆と一緒に一歩一歩夢に向けて進むための機体がドリームインパルスならば、この機体は皆にそのための勇気をあげるための機体。

 

 

気付いた時、すでに作業開始から7時間強の時間が経過していた。

目の前には、無我夢中で作り上げた歩夢の新たなガンプラがある。

全体的なシルエットはドリームインパルスからさほど変わりは無い物の、レッグフライヤーとドリームシルエットを一新し、計10本のレイピアを模した武装が装着されていた。

 

その時、突然歩夢のスマホが鳴り、そこにはリクの名前が表示されていた。

 

 

「もしもし?」

『歩夢!すぐにGBNへ来てくれ!!ユウが大変なんだ!!』

「………え?」

 

 

 

 

~~

 

 

「リクくん!!ヒロトくん!!」

「来たわね、アユムちゃん。」

「マギーさん……侑ちゃんは!?」

「今から事情を話すわね。」

 

至急でGBNへやって来たアユムに、マギーは今のユウが置かれている状況を説明した。

7時間前に入ったミラーミッションでバグが発生し、ユウがその中に囚われている事。

そしてユウを助け出すためには、内部からミラーミッションを破壊するしかないと言う事。

その為のカギを握るのは、リクのダブルオーと、アユムだという事。

 

「ごめんなさいね皆。ミラーミッションをクリアしているアタシは、エントリー権限が無いの……力になれないわ。」

「いいえ。でも、ブレイクデカールを使わずにミッションを壊すなんて……そんな事出来るんですか!?」

「出来る。俺とリクで作った、リクの新しいダブルオーの力なら……。」

「ヒロト、俺はダブルオーセイバーで出る。君は……、」

「わかってる。俺はライザーで行く。」

「アユム、力を貸してくれ!皆でユウを救うんだ!」

「勿論!だけど、私は侑ちゃんを救いに行くんじゃない。」

 

 

ギュっと拳を握るアユム。

リク、ヒロトを順番に見ると、彼女は彼らに言った。

 

 

「私は、侑ちゃんと仲直りしに行くの!」

 

 

そうして、3人はカタパルトへ移動。

新たなインパルスの乗り込み、組み込まれたAGEシステムを起動。

同じくカタパルトへとセットされたリクとヒロトのガンプラ。

ヒロトが乗り込むのはいつものコアガンダムIIでは無く、リクと共に作ったダブルオーセイバー専用支援機。

ザンライザーをベースに作られたそのガンプラの操縦桿を握り、リクと共に叫んだ。

 

 

『ヒロト!インフィニティライザー!!出る!!』

 

『リク!!ガンダムダブルオーセイバー!!出ます!!』

 

 

操縦桿を握り、アユムは覚悟を決める。

このインパルスを作りながら、彼女は決意をした。

侑と仲直りをして、皆でまた同好会で楽しくスクールアイドルをやって、皆でまた楽しくガンプラバトルをする。

その為に、このガンプラで、侑に勇気を届ける。

 

 

「もう涙なんて見せない。ため息だってつかない。皆と一緒に、あなたと一緒に、そしてインパルスと一緒に、夢を叶えるその日まで。その為の勇気は、皆から貰ったから!」

 

 

『SEED』

 

 

アユムの瞳のハイライトが消え、彼女の特殊能力『SEED』が発動。

それに応えるように、インパルスの瞳が緑色に輝いた。

 

 

 

「上原歩夢!!ガンダムブレイブインパルス!!出ます!!」

 

 

 

アユムの新たなガンプラ『ガンダムブレイブインパルス』

 

AGE-FXの力を得た彼女の新しい愛機が、ダブルオーセイバーと共に空へと飛び立った。

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第39回:ビュッフェへ行こう

ランジュ「アタシ、GBNの人達とも仲良くなりたいわ!」

アヤ「じゃあ、私とご飯でも行く?」

ランジュ「それじゃあビュッフェへ行きましょう!」

アヤ「えぇ!?わ、私そんなにお金無い……。」

ランジュ「無問題ラ!1000円もあればお腹いっぱいになれるビュッフェなのよ!」

アヤ「そうなの?じゃあ行こうかな……。」


~間~


ランジュ「ん~!やっぱりお寿司は日本のソウルフードよね!お肉じゃないけど、色んな種類が取り揃えられてて最高だワ!」

アヤ「ビュッフェって、回転寿司の事だったのね……まぁ、考えようによっては、好きなお寿司を取れるし、ビュッフェって言えるかも……。」

ランジュ「この前、愛に教えてもらったのよ。あ、ほら、マグロ来たわよマグロ!アヤの好きなヤツ取ってあげるワ!」

アヤ「じゃあヒラメをお願いしようかな?なんだか、モモちゃんやサラちゃんとは違ったタイプの妹が出来たみたい。」



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