ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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3rdライブ、栞子でないの悲しいけど、小泉さんが応援コメントしてくれるっていうのは結構胸熱だと思ってるのでアニメ2期早くください。




クアトロアトリーチェ

「侑ちゃん、部室いこ!」

「うん、すぐ行くよ歩夢!」

 

いつも通り、授業を終えて音楽科の教室まで侑を迎えに来た歩夢。

歩夢が来るまでの間に曲作りでもしていたのか、侑の机の上には楽譜が散乱していた。

愛とせつ菜は用事で来れない事を告げると、歩夢と侑は二人そろって部室へ。

しばらく歩いていると部室が見えてきたが、部室からは異様な雰囲気が漂っていた。

部室には『1年生以外立ち入り禁止』という謎の張り紙がされ、部屋の中から何か固い物を切り刻んでいるような異常音が聞こえる。

そして何より、部室の前ではかすみと栞子がまるで門番の様に立っており、部室に入ろうとする侑と歩夢の行く手を阻む。

 

 

「ぶっぶー!!今日は1年生以外立ち入り禁止ですよ先輩方!!」

「え、か、かすみちゃん……?コレ、どういう事?」

「内緒です!!」

「栞子ちゃん、私達練習したいんだけど、中に入れてくれないかなー……なんて……。」

「ご心配無く歩夢さん!ランジュにお願いして、今日はスクールアイドル部の部室を使わせてもらえるようにしていますので!」

「中で何やってるの?しずくちゃんと璃奈ちゃんは?」

「もー!内緒だって言ってるじゃないですかー!!ほらほら、回れ右ですよ侑先輩歩夢先輩!」

「「え?えぇー!?」」

 

 

そのままかすみに押され、部室から追い出された侑と歩夢。

首をかしげていると、かすみと栞子は部室へと消え、中から鍵を掛けてしまった。

途方に暮れている彼女たちの下へ、ちょうど演劇部の部長が通りがかった。

 

「やぁ、こんにちわ。」

「あ、演劇部の部長さん。こんにちわ。」

「しずくはいるかな?今度の舞台の事で少し話があるんだけど。」

「あー……いるとは思いますけど、今部室に入れないんです。」

「入れない?」

「えっと、1年生以外立ち入り禁止なんだそうです。」

「ふーん……なるほどね、そう言う事か……。」

「何か知ってるんですか?」

「ううん、私は何も。ならしずくに会ったら伝えておいてよ、楽しみにしてるって。」

「? わかりました。」

 

 

いまいち部長が言ってる事がよくわからなかったが、多分今度の舞台の事を言っているんだろうと思い、侑と歩夢は承諾。

1年生が何をしているのかはともかく、練習を休むのも良くないので、言われた通りスクールアイドル部の部室へ行く事にした。

 

 

 

 

~~

 

 

「ふぅ……任務完了です。」

「しず子ー!りな子ー!捗ってるー?」

「ちょっと難航してる……璃奈ちゃんボード『むむむ~』……!」

「別に部室を使わなくても、私はガンダムベースで良かったのに。」

「こういうのって、一番落ち着くところでやった方がやりやすいでしょ!しず子は気にしないで作業進めて!」

「うん、ありがとうかすみさん、璃奈さん、栞子さん。」

 

部室の中に戻り、作業を進める1年生組。

しずくのO-ドリーの改造の為に落ち着ける環境を、と言う事でかすみが部室を乗っ取ってしまった。

その間の練習が疎かにならないようにと栞子からランジュに部の練習スペースを提供してもらえるように交渉し、その間に部室でしずくと璃奈の二人が作業を進める。

トランザム・バーサーカー克服の為の新装備を作る為、プラ版を削るしずく。

だが、問題はどのようにエネルギーを剣に逃がすかによる。

 

 

「んー……何かいいアイデア無いかなー?」

「原理で言えば私とせつ菜さんの必殺技に近いんでしょうか……。」

「どういう事しお子?」

「私達の必殺技は、デスティニーフリーダムのエネルギーを全てスカーレットエクシアに注ぎ込んで、それをライザーソードとして撃ち出すんです。それに近い形なのかな、と。」

「ふーん。エネルギーと言えば、りな子のドムにもあるよね、そういうの。アブソーブシステム……だっけ?」

「……そうか!!」

「うわっ!?り、りな子……!?」

 

 

突然、璃奈が大声を出して席を立ちあがった。

彼女は自分のカバンからガンプラの余りパーツを取り出し、机の上に並べた。

 

 

「栞子ちゃん、デスティニーのパーツ余ってない!?拳パーツ!」

「え、は、はい!もちろんあります!予備にいくつか用意していたんです。」

 

璃奈にせかされた栞子も、自分のカバンからデスティニーのパーツを取り出した。

O-ドリーと一緒に並べられたのは、デスティニーの拳パーツとAEドムに使用していたクリアパーツ。

パーツの規格を見比べながら、璃奈は寸法をメモに書き留める。

 

「璃奈さん、これは……?」

「難しく考える必要無かったんだよしずくちゃん!私達のガンプラ、全員の技術を集めれば出来た事だったんだ!璃奈ちゃんボード『ぶいっ』!」

「え、ど、どういう事りな子……?」

「デスティニーにドムのクリアパーツ……あ、なるほど。その手がありましたね璃奈さん!さすがです!」

「えぇ!?しお子わかったの!?」

「今から説明するね。しずくちゃん、良く聞いてて。」

「う、うん。」

 

 

璃奈の提案とは、O-ドリーにAEドム、ザクみん、デスティニーフリーダムの技術を結集させるという物。

まず、O-ドリーに装備させる武器の原型となるのは無敵武者魔殺駆罠と同じ妖刀黒幻。

SDガンダムの武器はHG規格のガンプラに比べると、迫力を出すために大きく、丈夫に作られている。

ここに、AEドムに搭載されているクリアパーツを組み合わせ、アブソーブシステムとディスチャージシステムを組み込む。

特に柄の部分は全てこのパーツに入れ替える。

そうする事で、O-ドリーが発動したトランザム・バーサーカーの有り余るエネルギーを、デスティニーフリーダムと同じパルマフィオキーナの技術を使って全て武器へと送る事が可能になる。

 

 

①O-ドリーがトランザムを発動

 

②エネルギーをパルマフィオキーナ掌部ビーム砲から照射

 

③するとアブソーブシステムで武器がエネルギーを吸収

 

④そしてディスチャージシステムでそのまま攻撃力に変換しつつ、O-ドリー本体への負担を大幅に軽減する

 

 

この工程を踏む事で、理論上O-ドリーはトランザム・バーサーカーを克服できる。

この4人のうち1人が欠けても実現不能な機構だ。

 

 

「なーるほどー!じゃあしず子、これ使って!かすみんの予備武器!」

「O-ドリーに違和感なく取り付けられるよう、私もデスティニーの拳パーツを加工しますね。」

「じゃあ私はアブソーブシステム用の接続パーツを作る。しずくちゃん、皆で頑張ろう!」

「皆、ありがとう!」

 

 

 

~~

 

それからかなりの時間、4人は作業に没頭した。

周りはすっかり暗くなり、遠方に住んでいるしずくは今日中の帰宅が難しくなったため、今日は全員璃奈の家に泊まる事に。

かすみと栞子が夕飯の準備をしている間、しずくと璃奈はいくつか完成したサンプルの最終チェックを進めていく。

思えばしずくはこうして璃奈と二人きりで作業をする事など今まで無く、少し新鮮に感じた。

 

「そう言えば、しずくちゃんと二人きりになる事ってあんまりなかったね。」

「え!?」

「どうしたの?」

「あ、ううん!私も同じ事考えちゃったから……。そうだね、かすみさんはせつ菜さんが部長だった頃の同好会からの仲間だったし、栞子さんとは一時期スクールアイドル部で一緒だったけど、璃奈さんと二人っきりってほとんど無かったと思う。」

「私、しずくちゃんとこうやってガンプラの相談で来て嬉しいよ。」

「ウフフ、私もだよ璃奈さん。」

「私ね、しずくちゃんがナイトさんと戦った後、どんな道を選んだとしても、それを応援したいって思ってる。もししずくちゃんが、このまま演劇部の新しい部長さんになって、あんまり同好会にこれなくなっても、それがしずくちゃんの夢なら応援するよ。」

「璃奈さん……。」

「しずくちゃんがどっちをとっても、きっと素敵な未来が来るって信じてる!璃奈ちゃんボード『イエイ』!」

 

 

璃奈にそう言われ、しずくの手が止まった。

しずくの夢……大女優。

演劇部の部長になれば、その夢にグッと近づく。

実績を積めばその道の大学への推薦ももらえるし、有名劇団からのスカウトだって夢じゃない。

しかし、そうなれば今のスクールアイドル活動はどうなってしまうのか。

本当に憧れのナイトケンプファーと戦って勝つ事で、その答えを出す事が出来るのか。

色々考えこんでしまい、顔を俯かせたしずく。

するとキッチンからいい匂いがして、かすみと栞子がカレーライスと筑前煮とサラダを持ってきた。

 

 

「はいはいはーい!お待ちかねのディナータイムですよー!」

「カレーとサラダと……筑前煮?」

「しお子がどうしても作るーって。」

「この筑前煮、歩夢さんに教わったんです。是非皆さんにも一度食べていただきたくて!」

「「…………。」」

「ほらー!りな子もしず子も微妙な顔してんじゃん!絶対合わないよ!筑前煮!」

「そんな事ありません。歩夢さんのレシピは完璧なんです。」

「いやそう言う事言ってるんじゃなくて組み合わせの事言ってんの!!カレーの付け合せに煮物は無いよ普通!!」

「歩夢さんの筑前煮なら大丈夫なんです。」

「しお子のその歩夢先輩へ対する絶対的な信頼なんなの!?」

「上原歩夢さんは私の姉になってくれたかもしれなかった女性です。」

「姉……?歩夢先輩が……?うわっ……。」

「プッ……アハハハ!」

「え?し、しず子……?」

「しずくちゃん?」

 

 

 

かすみと栞子が言い合いをしていると、突然しずくが笑い出した。

いきなりすぎて3人は反応できず、しずくは笑いすぎて出てきた涙を拭う。

 

 

「二人とも、最近逆シャア見たでしょ?この前配信してたもんね!」

「え?どういう事?」

「さすがはしずくさん、ちゃんとわかっていただけて何よりです。」

「元ネタはシャア・アズナブルの『ララァ・スンは私の母になってくれたかもしれない女性だ』っていうセリフだね。璃奈ちゃんボード『赤い彗星』」

「えぇ!?今のネタなの!?」

「当たり前です。そもそも私にはすでに姉がいますので。ですが、歩夢さんに折角教えていただいた筑前煮に対して否定的な意見を受けた事に少々腹が立ってしまったのは事実です。」

「うぅ……ごめん……。」

「でも栞子さんのお芝居、凄く棒読みだったのに気付かないだなんて。」

「あの……私、これでも精一杯やったのですが……。」

「も、もういいじゃん!ほら、ご飯食べよ!!いただきます!!」

「このカレーライス、美味しい!かすみちゃん、やっぱり料理上手だね。」

「えへへ~、りな子もっと褒めて~!」

 

 

ちなみに、『逆襲のシャア』のシャアのセリフに対するアムロの『お母さん?ララァが……?うわっ。』とは、別にシャアに対してドン引きしているセリフでは無く、直後に激しい衝撃に襲われたセリフである。

これが劇中におけるアムロの最後のセリフであり、この後アムロとシャアは生死不明となり、以降の宇宙世紀シリーズでは戦死扱いされているため、決して初代主人公の今際の言葉がライバルに対するドン引きの言葉では無い。

 

4人で食卓を囲み、スクールアイドルの話やガンダムの話、同好会やGBNでの仲間の話に花を咲かせる一年生組。

しずくに遠慮せず、普段通りにしてくれる態度が嬉しかった。

きっと今回の件、先輩たちに相談してもきっといいアドバイスを貰えただろう。

しかし皆とても優しい、だからこそ気を遣わせてしまうかもしれない。

同い年の友達だからこその繋がり、しずくは今それを身に染みて感じていた。

食事を終えて、再び作業に戻る4人。

 

 

「しずくちゃん、パーツ削り終わったよ。」

「ありがとう璃奈さん。かすみさん、ピンバイス取ってもらえる?」

「OK!」

「あ、マーカーが切れてしまってますね。私、買ってきます!」

「だったら、ちょっと遠いけど21時まで開いてるお店がある。今住所書くね。」

 

 

パーツを削り、組み合わせ、自分たちだけの武器を作っていく。

途中で買い出しに出た栞子が戻ってきて、最終工程に入る。

気が付くとすでに24時を回っており、いつの間にかテーブルの上でかすみと栞子は眠ってしまっていた。

夜更かしに慣れていた璃奈と、作業中だったしずくは二人に毛布を掛けてあげると、いよいよ後は色を塗るだけに。

 

 

「凄くカッコいいね、しずくちゃん!」

「うん。ありがとう、皆のおかげだよ。」

「さっそく色を塗ろう!O-ドリーに合わせたトリコロールがおススメ!璃奈ちゃんボード『むんっ』!」

「ううん、私、この武器を塗る色はもう決めてあるんだ。」

 

 

そう言いながらしずくが取り出したマーカーは4本。

ガンダムマーカーのライトブルー、ホワイト、イエロー、アイグリーン。

それぞれ、しずく、璃奈、かすみ、栞子のイメージカラー。

マスキングをした武器に、それぞれのガンダムマーカーを専用のエアブラシで塗装していく。

 

「コレは皆で作った武器だから、皆の色を使いたいの。」

「私は嬉しい。きっと、あの二人もそう思うよ。」

「だったらいいな。」

「絶対にそうだよ!」

「応援しててね皆、私……絶対に勝ってみせるから!」

 

 

 

 

~~

 

とうとう迎えた、ナイトケンプファーとのバトルイベント当日。

GBNへとログインした4人は、タイガーウルフと共にナイトケンプファーの待つディメンションへと渡った。

 

たった一人でフォースを組み、全世界にガンプラを使った様々な演技を送るナイトケンプファーのフォースネストは、まさに『劇場』

 

 

バトルフィールドは状況に応じてあらゆる環境に変化する特殊なフィールドで、それ自体が舞台となっている。

観客席も虎武龍などの一般的な物とは異なり、劇場における観客席を意識した作りになっており、映画館の様な扉を開けると、舞台の上ではすでにガンプラに乗り込んだナイトケンプファーが、観客を待ち受ける劇団の団長の様なたたずまいで待ち構えていた。

 

 

『紳士淑女の皆様、ようこそ私の劇場へ。私はナイトケンプファー。あなた方を夢の世界へ送り届ける案内人でございます。どうか最後まで、ごゆっくりお楽しみ下さい。』

 

 

ペコリとお辞儀をするナイトケンプファー。

それを見ていたタイガーウルフがゴクリと唾を飲み、毛を逆立てる。

 

 

「奴がナイトケンプファー……素性不明の謎のダイバーか。なるほど、とんでもねぇ気迫をビリビリ感じるぜ。」

「しずこちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ!皆と一緒に作った武器もあるし、皆の応援もあるもの!」

「ファイトだよしずこ!」

「応援していますしずこさん!」

 

 

早速O-ドリーガンダムを呼び出し、乗り込もうとするしずこ。

その時りなこがしずこの服を裾を掴み、彼女を引き留めた。

 

 

「しずくちゃん、前にも言ったけど、私達はしずくちゃんがどんな道を選んでも応援するよ。」

「……うん、見てて皆。行こう、O-ドリー!」

 

 

O-ドリーガンダムに乗り込み、ナイトケンプファーと対峙するしずこ。

左手にはシールド、右手にはビームサーベル。

背面のGNドライブには、今までにない細身の大型剣が取り付けられており、ニジガク1年生4人のそれぞれのイメージカラーがちりばめられている。

対するナイトケンプファーはシールドすら持たず、武器は実体剣のサーベルのみ。

 

 

『あなたが、今回のチャレンジャーだね?』

「はい!しずこと申します!今日は私を挑戦を受けていただき、ありがとうございます!」

『こちらこそ。今GBN界で注目株のフォースのメンバーさんと手合せ出来て嬉しいよ。私に挑戦しようと思った理由を聞いても?』

「元々、アナタに憧れていたという事ももちろんあります……でも一番は、私の中にある迷いに答えを出すため……。」

『迷い?』

「強い人と戦えばその答えが見つかるかもしれない。そのために私は、あなたに挑戦します!!」

『なるほど。いいよ、それじゃあここからが私とあなたのステージだ。さぁ、皆様ご覧ください!可憐な夢見る未来の大女優が、この劇場の主であり、騎士であるこの私へ挑む、スリルと興奮に溢れたこのバトルステージを!!』

 

 

『BATTLE START』

 

 

 

『ナイトケンプファー、ステージゴー!』

 

「しずこ!O-ドリーガンダム!!登壇します!!」

 

 

それぞれの武器を構えて、斬り込む二体のMS。

ナイトケンプファーの武器は名前を持たないただの実体剣のサーベルで、それ以外は一切武装をしていない。

しかししずこは油断をせず、まずはナイトケンプファーの剣をシールドで受け止め、攻撃を防ぐ。

受けて見て思ったのは、ナイトケンプファーの攻撃は以外と軽いと言う事。

というのも、ケンプファー自体は元々高機動の為に徹底的に装甲の軽量化をされた強襲用MSであり、本来の武装も近接用の物では無くバズーカやショットガンなどの実弾兵器を用いる機体。

更に、この機体が登場する『ポケットの中の戦争』本編においては、その装甲の薄さからガンダムNT-1(アレックス)に一瞬で倒されてしまっている。

そんな機体を使って、何故近接戦のみしかやらないのか……しずこはそれが不思議でならなかった。

 

 

「この威力……これなら!」

『フフフ……。』

 

 

しかし、それが彼女の油断だった。

気が付いた時には、O-ドリーの持つシールドが真っ二つに斬られており、ビームサーベルもいつの間にか故障していた。

何が起きたのかわからないしずこ、それを見ていた1年生組。

この状況を理解できていたのは、タイガーウルフただ一人。

 

 

「……あのケンプファー……とんでもねぇ速さでしずこのO-ドリーを切り刻みやがった……。」

「あれ、斬られたの!?全然見えなかった……。」

「あぁ。なるほどな……ナイトケンプファーは普段はGBNで芝居ばっかやってるが……ケンプファーを使っているっていう事そのものが、アイツの演技だって言う事か。」

 

 

装甲の薄いケンプファーで接近戦オンリーで戦う事。

近接戦闘機を『演じる』事こそが、ナイトケンプファーの真骨頂。

これほどの力を手に入れるまでの努力は計り知れないだろう。

だからこそ、しずこはナイトケンプファーと戦う意味がある。

新たに新造したのは武器のみだが、O-ドリー自体も塗装やコーティングで工夫して強化はしている。

しずこは、なんとかナイトケンプファーの猛攻を、可変式ビームガンソードモードで耐え抜く。

 

 

『フフッ……よく耐えているね、さすがは注目株のしずこだ。』

「あなたにそう言って戴けると光栄です。しかし、私は負けません!」

『なら、少し稽古をしようか。私のセリフに続けて、即興で返してみなよ!』

「!!」

 

 

ナイトケンプファーを払いのけたO-ドリー。

ナイトケンプファーはサーベルをO-ドリーへと向け、まるで西洋の騎士の様な構えを取った。

 

 

『【貴女の剣ごときで、この私を破れるとでも思っていたか?】【私と戦う事に迷っている貴女の剣に、何の重みも感じられない!】』

「このセリフ……どうして……?」

『さぁ、返してみなよ、しずこ?』

「ッ……!き、【貴様に何がわかる!】【私の苦しみなど、貴様に理解できようものか!!】」

 

 

ナイトケンプファーが吐いたセリフに対し、即興でセリフを返すO-ドリー。

剣を交えながら、しばらく即興劇を続けていくO-ドリーだったが、じょじょに勢いを失っていく。

彼女の動揺はタイガーウルフだけでなく、かすみん、りなこ、しおこの目から見ても明らかで、突然の事に全員困惑した。

 

 

 

『どうしたのさ?そんな攻撃じゃ私は倒せないよ?』

「今のセリフ……そんな!ありえません!だって、あのセリフは……、」

『あのセリフは演劇部オリジナルの脚本のセリフなのに……って?』

「!! あなたは、まさか……!」

 

 

 

先ほどのナイトケンプファーのセリフを聞いて以降、様子のおかしいしずこ。

するとナイトケンプファーの動きが止まり、コックピットが開いた。

今までナイトケンプファーのダイバーは誰も見た事長く、男か女なのかも判明していなかったが、コックピットから出てきたのは、青の上着に赤いスカートとマントを身に着けた騎士風の女性。

顔には、ガンダムシリーズではおなじみの仮面をつけており、彼女はそれをしずこの前で取り外した。

その顔を見て、しずこはもちろん、観客席で見ていた1年生組も目を見開いた。

 

 

 

「ぶ……部長……!?」

「そう。私がナイトケンプファーのダイバーで、この劇場の主。そして、さっきのセリフの台本を書いた張本人だよ。」

 

 

 

 

ナイトケンプファーから出てきたダイバーは、演劇部の部長その人。

予想外の事態にしずこは動揺し、そのまま数歩後ずさる。

部長は再びガンプラに乗り込むと、ケンプファーの機動性を活かしながらO-ドリーへと接近し、そのボディを切り裂いた。

 

「ど、どうして部長が!?」

『私、中学生の頃からずっとやってるんだ。ガンプラはこのナイトケンプファーしか作った事無いけどね。それより、ボディが留守になってるよ。稽古はまだ続いてるんだからね。』

 

 

間髪入れずに攻め続けるナイトケンプファー。

その姿は、今度演劇部が披露する舞台で部長が任された役……主人公の女騎士と重なる。

先ほどまでと打って変わり、O-ドリーは中々攻める事が出来ず、その姿にタイガーウルフは違和感を覚えた。

 

 

「どうしたんだしずこの奴!全然反撃しないじゃねーか!知り合いなのか?」

「うん。あの人、演劇部の部長さん。」

「しずこさんは同好会以外にも、演劇部も兼部しているんです。」

「でも相手がよりにもよって部長だなんて!だってしずこは……、」

 

 

『どうしたのしずく?全然攻めてこないじゃない。』

「部長……私は……!」

『相手が私だから戦い辛いって?』

 

 

相手が部長だと知り、急にO-ドリーの動きが鈍くなった。

それもそのはず、何故ならしずこが今回ナイトケンプファーに挑戦した理由は、演劇部の次期部長になるかどうかを決断するため。

憧れていた相手に勝つ事で、何か答えが見えるかもしれないと思ったから。

なのにその相手が、悩みの種ともなっている部長その人ならば、戦いにも迷いが生じる。

地面に倒されたO-ドリーに剣を突き付け、部長はしずくを睨みつけた。

 

 

「……部長は知っていたんですよね、挑戦者が私だって……。」

『もちろん。挑戦者の応募を募ったのは本当に偶々で、しずくが応募してきたのも本当に偶然だったよ。当選を決めたのは、正直身内贔屓みたいなものだったけどさ。』

「どうして私を選んだんですか……?」

『しずく、私が次期部長の話を持ちかけた時、ずいぶん迷っていたよね。私と戦って少しでも解決のヒントになるならって思ってたんだけど。』

「……ずるいですよ部長……こんな状態で、あなたと戦えるわけ無いじゃないですか!」

『本当にそうかな?』

「? どういう意味ですか?」

『見て見なよ、あそこ。』

 

 

 

そう言いながら、ナイトケンプファーが観客席を指差した。

その方向を見たしずこの目に映ったのは、彼女を応援するために身を乗り出しながら叫んでいる3人の親友。

隣ではタイガーウルフも応援してくれていて、4人ともしずことO-ドリーへ向けて手を振っている。

 

 

「しず子ーーーー!!!頑張れーー!!負けるなーーーー!!!」

「しずくちゃんファイト!!大丈夫、絶対勝てる!!」

「私達がついてますしずくさん!諦めないでください!!」

「相手が誰だろうと関係ねぇ、いつも通りやれ、しずこ!!」

 

 

「かすみさん……璃奈さん、栞子さん……師匠……。」

『本当はもう答え、出てるんでしょ?』

「………そうでした……O-ドリー!!S・バーサーカーモード!!」

 

 

『BERSERKER MODE』

 

 

バーサーカーモードを発動したO-ドリーが、パンチでナイトケンプファーを押しのけた。

自由になったO-ドリーは背面のGNドライブに接続されている剣に手を伸ばすと、それを抜き取る。

同時にバーサーカーモードが終了し、彼女はその剣をナイトケンプファーへと向けた。

 

 

「部長!!今ここで、あの時の返事をさせてください!!」

『…………。』

「私は、スクールアイドルもお芝居も、どちらも中途半端な形で諦めたくない!部長の期待には応えたい……けど、それでスクールアイドルをできなくなるだなんて、絶対に嫌なんです!!」

『次期部長は辞退する……ってことかな?』

「私はまだまだ色んな事を学びたい。一人の演者として、一人のスクールアイドルとして、どちらの良いところをもっともっと吸収したい。だから……ごめんなさい。」

『……謝らなくていいよ。なんとなくこうなる気はしてた。』

「その代り、私の全身全霊を持って、あなたに挑みます!!」

 

 

 

『TRANS-AM BERSERKER』

 

 

「O-ドリー!!トランザム・バーサーカー!!」

 

 

 

しずこが叫んだ瞬間、O-ドリーのGNドライブから大量の粒子が放出され、全身が青い光に包まれた。

トランザムとバーサーカーモードの同時発動、『トランザム・バーサーカーモード』だ。

しかし、いつもならすぐに爆発してしまうこの形態だが、今回は違う。

発動した瞬間、両腕に新たに装備したデスティーガンダムの拳から、余ったエネルギーを全て放出。

それを新武器『クアトロフルセイバー』に備え付けたアブソーブシステムで吸収し、ディスチャージシステムを使いエネルギーを刀身に纏わせる。

これによりトランザム・バーサーカーの過剰なエネルギーを全て攻撃力に変え、完全な制御下に置いた。

それが、

 

 

 

「桜坂しずく!!O-ドリーガンダム・クアトロアトリーチェ!!行きます!!」

 

 

 

『クアトロアトリーチェ……4人の女優か。いいよしずく、かかっておいで!!』

 

 

爆発的な出力で、O-ドリーは一気にナイトケンプファーとの間合いを詰めた。

バーサーカーモードの延長線上にある形態であるにも拘らず、その剣捌きは非常に美しく、まるで日舞を踊るかのような動き。

更にGNドライブから絶え間なく送られ続けるエネルギーにより攻撃力は徐々に上昇し、ナイトケンプファーでは受け切る事が困難になってき始めた。

いったん距離を取ろうと、ナイトケンプファーが剣をひっこめようとするが、その一瞬でO-ドリーがナイトケンプファーの後ろに回り込んだ。

 

 

『ッ……!?速い!』

 

 

 

背後から不意をつき、ナイトケンプファーを斬り飛ばすO-ドリー。

着地先に先回りすると、今度はクアトロフルセイバーを地面に突き刺し、有り余るエネルギーを乗せたパンチを叩きこんだ。

 

 

「! あの攻撃パターンは……!」

「さっきの剣捌き、私が以前教えた日舞に似ています。」

「今のパンチ、私のAEドムのと同じ技だ。」

「……じゃあもしかして、さっきの後ろからドーン!ってザクみんの真似……?かすみんが卑怯者みたいじゃん!!ちょっとしず子ーーー!!」

「真似……なるほど、しずこの野郎、お前らの戦闘を『演じて』やがるってわけか。」

 

 

 

「このクアトロフルセイバーは、かすみさんと璃奈さんと栞子さんと、私の4人で完成させた武器なんです!!そして、その剣を振うのが……、」

『4人の女優……O-ドリーガンダム・クアトロアトリーチェってわけか……。しずく、稽古の続きだよ!』

「はい!!」

 

 

再び剣を構えてO-ドリーと交戦するナイトケンプファー。

二体のMSの流れるような剣捌きに、見ていたかすみん達は目を奪われていく。

部長が言った『稽古』の言葉通り、そこから先は二人とも、次回の舞台で演じる役者になりきって戦う。

 

 

部長/ナイトケンプファーは主人公の手練れの女騎士。

 

しずこ/O-ドリーガンダムはライバルの敵国の兵士。

 

 

二人の戦いはやがてクライマックスを迎え、最後の決闘のシーンへと移っていく。

 

 

「【私は私の剣に誓おう!たとえこの身を引き裂かれようと、必ず勝利を我が手につかんでみせると!】」

 

「【ならば私も誓いを立てよう。私はどちらも諦めない。その信念の元に貴様を下すと!!】」

 

 

部長が演じる女騎士は、ライバルへの情を一切捨て、国の為に戦う。

対するしずこの演じる敵兵は、情を捨てきれずに主人公の国と和平を求める。

 

この物語のクライマックスでは、非情に徹した主人公が和平を求めたライバルを打倒し、その時に自分の過ちに気づくラストで幕を閉じる。

 

何故バッドエンドにしたのか部長に聞いた事があったが、その理由を部長は教えてくれなかった。

本来の物語なら、しずこはここで討たれてしまう。

しかし、このまま台本通りに進める気などしずこには無い。

剣を振り上げたナイトケンプファー……その剣が振り下ろされた瞬間、O-ドリーはワンステップ、後ろへと下がった。

 

 

 

『なっ……!?』

「……私の剣が、未来を切り開く!!」

 

 

 

そうして振りかざしたクアトロフルセイバー。

その一撃はナイトケンプファーの剣を真っ二つに折り、折れた剣先が地面へと突き刺さった。

O-ドリーはそのままクアトロフルセイバーを背面にマウントすると、ナイトケンプファーへと背を向けた。

 

 

『……こんな結末は、私の台本には無かった……。』

「最初に、あなたが言ったんですよ、部長。これは即興劇だって。ウフフ、アドリブです♪」

『アドリブか……前までは台本に忠実だったのに……。これも、あの子たちのおかげなのかな?』

 

 

ナイトケンプファーのHPを0にせず、そのまま戦闘をやめてしまったO-ドリー。

部長はそのまま静かに、ギブアップボタンを押した。

するとバトル終了のアナウンスが流れ、O-ドリーガンダムとしずこの勝利を告げる音が鳴り響く。

同時に観客席から1年生組が飛び出し、コックピットから降りてきたしずこへ抱き着いてきた。

 

 

「しずくちゃん凄い!!強かった!!りなこちゃんボード『ぶいっ』!!」

「わっ!り、璃奈さん!」

「やるじゃんしず子~!あ、でもさっきの不意打ちがかすみんの技っていうのは納得いかないんだけど!!」

「まぁまぁ、いいじゃないですかかすみさん。そうだ!しずくさんを胴上げしましょう!」

「えぇ!?い、いいよそんなの……。」

「そうだ、やめておけ。りなことかすみんはともかく、お前はそのサイズじゃ胴上げなんかしたら潰されちまうだろ。」

「仕方がありません。では、後ほどリアルの方で。」

「どんだけ胴上げしたいのしお子……。」

「アハハ、じゃあ後でお願いするね。」

 

 

ナイトケンプファーから降りて、マジマジとO-ドリーのクアトロフルセイバーを眺める部長。

O-ドリーのオーソドックスでシンプルなデザインに反した、派手な色の武器。

全体的の色合いはライトブルー、アブソーブシステム用の柄はホワイト、刃はアイグリーン、GNドライブ接続用のジョイントはイエロー。

クアトロアトリーチェの名前の通り、同好会1年生の4人の要素を取り入れた武器だ。

 

 

「部長!」

「ん?やぁ、しずく。素敵な武器だね。」

「はい、ありがとうございます。」

「それと……良い友達だね。」

「! はい!ありがとうございます!!」

 

 

とてもいい笑顔でそう返したしずく。

かつて、本当の自分をさらけ出せずに悩んでいた彼女は、かすみに救われた。

そして今回も、3人の友人と共に、答えを出した。

 

部長が今回の台本を、何故バットエンドで終わらせたのか……その理由は、しずくにあった。

 

国の為に友人を捨てた主人公と、国も友も選んだ敵。

友を討ち、自分の正義を世に知らしめた主人公という筋書きに、しずくが演じた敵役がどう変えるのか、それが見たかった。

心の中で、部長はきっと、しずくなら演劇もスクールアイドルも両立する道を選ぶと思っていた。

『ニジガク演劇部の部長』という肩書を手に入れられない彼女が、実力のみで女優の道を選べるのか試していた。

 

 

「………帰ったら台本、書き換えないと。」

「? 何か言いましたか部長?」

「ううん、なんでもないよ。」

 

 

その後、タイガーウルフがカメラマンを務め、部長、しずこ、かすみん、りなこ、しおこの5人で動画のエンディングを撮影して、今回のイベントは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

~~

 

翌日、いつもの4人にミアが加わり、部室で動画を見ていた。

見る動画はもちろん昨日のナイトケンプファーVSO-ドリー。

高速戦闘を得意とするライトニングトールギスに乗るミアもナイトケンプファーには注目していたようで、動画を再生しているしずくのスマホに釘付けになる。

 

「強いね、しずく。」

「ありがとうミアさん。皆のおかげなんだよ。」

「…………。」

「ミアちゃん?どうしたの?」

「別に……。」

「あれれ~?もしかしてミア子、拗ねちゃってます~?」

「ち、違う!」

「いいんだよミアさん。さぁ、自分をさらけ出して!」

「そんなんじゃ無いって!」

「よしよし。」

「子ども扱いするのやめてよ栞子。」

 

ミアは3年生だが、飛び級で1年生よりも年下の為、時々子ども扱いされてしまう。

頬を膨らませて拗ねているミアに、璃奈が提案をした。

 

 

「じゃあこの後、5人でたこ焼きミュージアム行こうよ。」

「たこ焼き……?ぼく、食べたこと無いんだけど……。」

「だったら丁度いいじゃん!よーし、レッツゴー!」

「私、チーズのたこ焼きが食べたいです!」

 

 

ミアを引っ張って部室を出ていくかすみ達。

しずくもスマホをしまい、椅子から立ち上がる。

その時に鞄に入れていた演劇部の新しい台本が目に入り、彼女は少し微笑んだ。

 

 

「何やってんのしず子ー!」

「……うん!今行く!!」

 

 

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第44回:人は何故積むのか?

ヤマト「まことに遺憾である!!!」

彼方「……ど、どうしたの……?」

ヤマト「おぉ!姫!!」

彼方「姫じゃないけど……。」

ヤマト「聞いてください姫!私のフォロワーが、あろうことか積みプラ報告をしているのです!!」

彼方「別にいいんじゃない?作るかどうかなんて人それぞれだろうし…。」

ヤマト「それはいくら姫と言えど聞き捨てなりません!!ガンプラとは、すなわちガンダム!!ガンダムにならないまま埋もれてしまうなど言語道断!!」

彼方「でも、時間が無くて作れない人だっているだろうし、欲しい時に買えないよりはいいんじゃないかなぁ?」

ヤマト「いえ、私も積みプラそのものが悪いと言っているわけでは無いのです姫。しかし、作る気も無いのに次から次へと新作に手を出し、結局そのまま忘れられる……それが許せないのです!!」

彼方「まぁ、確かにそれは一理あるかもねぇ~。買うだけ買って作らない人よりは、ちゃんと作りたくて買う人の手に届いてほしいとは彼方ちゃんも思うよ。」

ヤマト「その通りです姫!!」

彼方「で、ヤマトちゃんはどうして今日はそんなに怒っているの?」

ヤマト「私はHGのナイチンゲールとRGのHi-νガンダムを予約できなかったのに、積みプラ報告をしているフォロワーが少し前に予約完了の呟きをしていてつい。」

彼方「どんまい。」
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