四六時中ガンプラバトルやってるわけじゃないんだから、たまにはガンプラがほとんど出ない回があったっていいじゃない!
鐘家の別荘は最寄りの駅から電車でおおよそ2時間半。
電車を降りて、更に山を登る事1時間の場所にひっそりと建てられている。
ランジュの母親は虹ヶ咲学園の理事長を務めており、莫大な資産を抱えている。
よって別荘も各地に点々と建てられていて、今回ニジガク2年生組が使用するのはその中の一つで、特に自然に囲まれている事が特徴。
小さい頃に幼馴染の栞子を引き連れて山の中で迷子になり、栞子の姉である薫子にそれはそれは恐ろしい形相で怒られた事は今ではいい思い出かつ栞子のトラウマ。
「と、いうわけで……ようこそ!ランジュの別荘へ!!」
「おぉ!これは……本格的なコテージですね!!」
「愛さんこういうのメッチャ上がるー!」
「ひゃあっ!!?」
「ど、どうしたの歩夢!?」
「む、虫!!愛ちゃんの背中に毛虫!!」
「え?ありゃりゃホントだ。ハハハ、こいつー!いつの間に愛さんについてきたんだー!」
「愛ちゃん平気なの!?」
「うち飲食店だからそれなりに虫見るからねー。」
「良く見ると、辺りにたくさん鳥もいますね。うーん、大自然に囲まれていて最高です!」
「喜んでもらえてランジュも嬉しいワ!さぁ、早速中に入ってちょうだい!」
虫に怯える歩夢を愛が宥めつつ、5人はコテージの中へ。
中は思った以上に広く、5人が大の字になって寝転がってもまだまだ十分な余裕がある。
テレビや時計は無いが、その代りにキッチンは最新の設備が揃っていた。
布団は余分に用意されているため、夜に寒くなったら重ね着する事も可能。
「すごーい!こんな所テレビでしか見た事無いよー!ときめいちゃう~!!」
「そうでしょうそうでしょう!」
「とても素敵なコテージですが……やはり、少々埃っぽいですね……。」
「別荘なんて時々しか使わないもんね。」
「じゃあまずは皆でお掃除しよっか。」
「えー!?ランジュ早く遊びたいんだけど!」
「まぁまぁ。皆でやればその分早く終わるし、そうすればたくさん遊べるよ!ランジュ遊ぶ道具たくさん持ってきてくれたもんね。」
「んー……愛がそう言うならいいわよ!早く終わらせてたくさん遊びましょう!」
こうして、まずは別荘の大掃除をすることが決定。
山登りで疲れているが、こうも埃っぽいと満足に休憩も出来ない。
早速全員で取りかかり、歩夢はキッチン周り、愛とランジュで広間、侑とせつ菜が寝室を掃除。
広間には大きな台が置かれていて、布をかぶせてある。
「ランジュ、この台なに?」
「さぁ?ビリヤードとか卓球じゃない?」
「それにしては大きくない?一台だけっていうのも変だしさぁ。」
「んー……そう言えば昔、ママの知り合いの人達がこれで遊んでた気がするんだけど……なんだったかしら?」
「愛さんこの台すごーく見覚えがあるんだけど……えい!布取っちゃえ!」
どうせ掃除するからと言う事で、愛が台の布を取っ払う。
すると、そこから出てきたのは彼女たちにとっては馴染みのある、すでに過去の存在となってしまった物だった。
「これ……GPDの筐体だー!」
「あ、思い出したワ!そう言えば昔、コレで良くママの知り合いの人達が何かを戦わせて遊んでたのよ!GPDだったのね!」
「良く考えて見たらニジガクにもGPDの筐体あるもんね。もしかして理事長って、ガンプラバトル好きなの?」
「そういう話は聞いた事無いけど、一度好きになった物にはとことんハマるタイプね!」
「なるほど……親子だなぁ。」
「でもこれは素晴らしい発見だわ愛!これがあれば皆でガンプラバトルして遊べるわよ!」
「愛さんと歩夢はガンプラ持ってきて無いよー!」
まさかのGPD発見に喜ぶランジュと、それを見て笑う愛。
GPDは本気でやればガンプラが壊れてしまうが、軽い手合せ程度なら特に傷つける事無く出来そうだ。
しばらくの間掃除を続けた5人。
普段から掃除慣れしている歩夢がキッチンの掃除を手際よく終わらせると、他の4人のサポートへ周り、1時間もするとある程度の掃除終了。
お昼ご飯も食べずに動き回っていた為もう全員腹ペコで、遊びに行く前に腹ごしらえする事になった。
「もう14時だね。そろそろお昼ご飯にしようか。」
「わーい!ご飯ご飯!」
「そう言う事ならランジュに任せなさい!!」
「「「!?」」」
「実はとっても美味しいお肉を持ってきたのよ!このランジュがあなた達に最高のランチをご馳走してあげるわ!」
「え、い……いやぁ、それは……、」
「でしたら、私もお手伝いしましょう!!」
「「「!!??」」」
「あら、あなたもやる気満々ねせつ菜!」
「勿論です!大好きな皆さんに元気になってもらう為、不肖この優木せつ菜、最高のお昼を皆さんにお届けいたします!」
「感動したワ!アタシ、あなたの料理を食べる為に今日まで胃袋を鍛えまくったのよ!」
「ランジュさん、私の為にそこまで……嬉しいです!」
ランジュとせつ菜が笑顔で盛り上がる中、それに反比例してどんどん表情が暗くなる侑、歩夢、愛の3人。
実はせつ菜とランジュは、相当な料理下手。
いや、下手とかそういうレベルでは無い。
せつ菜の料理は何故か必ず紫色に変色するし、ランジュの料理は黒炭と化す。
しかもそれでいて二人とも自分の料理に自信を持っていて、純粋に皆に食べてほしいと善意100%なのでなおのこと性質が悪い。
もしこの場に彼方かエマがいてくれれば、この二人をサポートしつつ味をマイルドにしてくれるかもしれない。
だが、今この場にいるのは2年生の5人のみ。
頼りとなる上級生がいないこの状況で、この場を切り抜ける方法……。
それは、善意には善意をぶつけると言う事だ。
「せ、せつ菜ちゃんランジュちゃん!」
「歩夢さん?どうしました?」
「お昼ご飯の準備は私と愛ちゃんに任せてくれないかな!?」
「どうしてよ!ランジュとせつ菜がバッチリやってみせるわよ?」
「ほ、ほら!ランジュは別荘の手配とかしてくれたし、せっつーは合宿のメニュー決めとか色々やってくれたじゃん!?だから二人に頼りっぱなしは良くないなーって思ってさ!」
「私達は気にしませんが……。」
「私達が気にするよ!だ、だから私と愛ちゃんでご飯を作るから、せつ菜ちゃん達には休んでもらいたいなーって!」
「そうそう!」
「そうだ!せつ菜ちゃんランジュちゃん、私と一緒に外に探検に行こうよ!ね!?」
「探検!面白そうです!」
「いいわね!じゃあお言葉に甘えちゃおうかしラ!」
「「「ホッ……。」」」
侑の提案にまんまと乗り、事なきを得た事で命拾いをした3人。
ちなみにランジュもせつ菜もレシピをよく読みこみながらその通りに作ればちゃんと作れる。
ただ、絶対にレシピ通りにしないだけ。
侑に誘われたせつ菜とランジュはさっそく出かける準備をして、歩夢と愛はお昼ご飯作りに取り掛かる。
「侑ちゃん、ナイス!」
「じゃあゆうゆ、二人の事お願いね。」
「任せて。」
「ランジュちゃんお肉たくさん持ってきてるね。何作ろうか?」
「コレは冷蔵庫に入れておいて、夜にバーベキューしようよ!初日のお昼だし、カレーとかでいいんじゃない?」
「そうだね。」
「フフ、二人のご飯楽しみにしてるね。じゃあ行ってくるよ!」
せつ菜、ランジュと共に、コテージの外へと出ていく侑。
3人を見送ると、歩夢と愛はさっそくカレー作りに取りかかり始めた。
~~
その頃、虹ヶ咲学園では1年生と3年生が休日に登校して練習中。
しかし、ライブの予定も無ければつい最近までガンプラバトルで大変だったので、燃え尽き症候群気味。
机に顔を乗せてやる気の出ないかすみと彼方の髪の毛を、しずくと果林が弄って遊んでいた。
「あー……なーんにもする気が起きませーん……。」
「彼方ちゃんもー……。」
「休日に出てくれば意識向上に繋がるかと思いましたが、そうでも無いみたいですね。」
「今のところ特に目標が無いからね。」
「今頃歩夢先輩たちは楽しい楽しいキャンプの真っ最中……かすみん達もそういうのやりたいですぅー!!」
「今日はもうお開きにして、皆で遊びにでも行かない?そうだ、シーサイドベースのG-カフェへ行きましょうよ!久しぶりにヒナタちゃんにも会いたいわ!」
「ヒナタちゃんなら当分は来ないよ。」
「え?どうして?」
「なんか、大事な用事があるとかなんとか……。ヒロトくんも最近忙しそうだし。」
「これは……面白そうな匂いがするわね……!」
「言っておくけど、BUILD DiVERS全員の話だからね?」
練習もせず、ダラダラとおしゃべりを続ける8人。
ちなみに8人とは同好会の残り7人+ミア。
せっかくランジュと愛がいないので、同好会の部室で璃奈の隣を常にキープし続けていた。
「じゃあどうするの?璃奈ちゃんボード『はてな』?」
「皆のモチベーションがこれじゃ、練習しても身につかないだろうね。」
「カラオケとか行きます?」
「かすみさん、カラオケに行くなら校内で歌の練習をした方が……。」
「こういうのは気分の問題なの!」
「んー……だったら。」
エマが何かを考え込むと、思いついた事を皆の前で口にした。
それは、全員予想だにしていなかった事だった。
「ここは間を取って、私達もキャンプに行くっていうのはどう?」
「え……キャンプって、まさかせつ菜さん達に合流するってことですか……?というかエマさん、今どことどこの間を取ったんですか………!?」
「おー!いいじゃないですかー!かすみんもキャンプやりたいです!」
なんとエマは、このまま8人で2年生組の下へ押しかけようと言い出した。
今から向かえばおそらく夕方から夜にかけて到着できるが、『でも』といったん果林が置いた。
「私達、あの子たちのキャンプ地知らないわよ?」
「大丈夫だよ果林。それなら栞子が知ってるはずだ。」
「え!?」
「あー、そうじゃん。しお子ってランジュ先輩の幼馴染なんだし、子供の頃一緒にキャンプした事あるって前言ってたじゃん!」
「栞子ちゃん、記憶力は良いから道案内できるはず。璃奈ちゃんボード『にっこりん』!」
「わ……私は……!!」
その時脳裏によぎるのは、数年前のランジュとのキャンプの記憶。
虫にまとわりつかれ、ヘビに追いかけられ、森の中で迷子になって、最後は何が起きたのかわからないぐらい大泣きしながら姉に保護された記憶。
(い、嫌だ……行きたくない……!もうあの別荘へは二度と……でも、皆さんが私に期待の眼差しを向けている……うぅ……私はどうすれば……。)
「しお子ー。」
「栞子ちゃん。」
「おねがぁい♡」
「うっ……!はぁ……わかりました……ご案内します……。」
「「「やったー!」」」
「……認めたくないものですね、若い頃の過ちという物は……。」
全員でハイタッチして喜ぶ1年生組。
早速全員キャンプの準備をするために、いったん帰宅した。
~~
侑と共に森へと繰り出したせつ菜とランジュ。
その手には釣竿とクーラーボックスを抱え、森の中にあるという大きな滝を探しに行く。
滝の周辺にはとても綺麗な川が流れているらしく、子供の頃はよくそこで泳いで遊んでいたそうだ。
「フッフッフ!いっぱい釣り上げて愛達へのお土産にするワよ!!」
「ランジュさん、釣りは得意なんですか?」
「薫子がやってるところを見た事があるワ!」
「え?じゃあ実際に釣りをやった経験は?」
「無いワよ?」
「大丈夫かなぁ……。」
「無問題ラ!ほら、見えて来たわよ!」
しばらく歩いていると、大きな滝が見えてきた。
ランジュの言っていた通りとても綺麗な川が流れていて、川の中にはたくさんの魚が泳いでいるのが見える。
「うわー!本当に凄く綺麗な川!」
「えぇ、素晴らしい光景です!まさに大自然と言った風景ですね!」
「そうでしょ!実はここの滝には逸話があってね……本当に心が綺麗な人には、スクールアイドルの神様が見えるらしいのよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「グヌヌ……!わ、私には見えない……!歩夢なら見れるのかなぁ……。」
「さぁ、早速釣りを始めましょう!」
「そうだね。……あれ?」
「? 侑さん?」
「どうかしたの侑?」
「あれ、なんだろう。」
その時に奇妙な物を見つけた。
恐る恐る3人がそれへと近づくと、それを見たせつ菜が首をかしげた。
「これは……焚き火の跡でしょうか?」
「テントを張った形跡もあるね。私達以外この山に誰かいるのかな?」
「ここ、結構穴場のキャンプ地なのよ。アタシ達以外の人間がいても不思議じゃないワ。」
「そうなんですか。ですが、その割にゴミが全然落ちていませんね……管理されている方とかいらっしゃるんですか?」
「別荘が悪くならない程度にしか見に来ては無いわね。」
「んー……とりあえず、釣りしよっか!」
「それもそうね!」
「結構能天気ですねお二人とも……。」
釣竿を準備し、魚が集まっている場所を陣取る3人。
ランジュが人数分持ってきた釣竿を侑とせつ菜に渡すと、全員釣竿にルアーをつける。
しかし釣りをやった事の無いせつ菜とランジュは、中々ルアーを付けれずに四苦八苦。
そこへ自分のルアーを素早く取り付けた侑が手助けに入り、あっという間に二人分の釣竿のセッティングが完了した。
「侑さん手際が良いですね!」
「ホントね!」
「えへへ、昔はよく歩夢の家族と一緒にキャンプとか行っててさ、その時に歩夢のお父さんに教わったんだよね。歩夢が虫を怖がるから、釣竿に餌をつけてあげるのはいつも私の仕事で。」
「侑さんと歩夢さんは本当に仲良しですね。さぁ、では始めましょう!目標は人数分のお魚です!!」
「威勢がいいワねせつ菜!人数分なんて言わず、誰が一番たくさん釣れるか勝負しましょう!」
「いいですね……燃えてきました!」
「ガンプラバトルではあなた達に負け込んでるけど、ここで勝てば無問題ラ!!」
「問題はあると思うけどなー。」
釣りバトルが勃発したせつ菜とランジュ。
侑は一人、マイペースに釣りを始めた。
~~
それから1時間ほど時間が経ち、勝敗が決まった。
結果としては、
せつ菜……5匹
ランジュ……2匹
侑……7匹
侑の圧勝だった。
「なんでなのよ~!!」
「ランジュさん、あれだけ竿をブンブン振り回していたらさすがに逃げられますよ……。」
「むしろ良く2匹も釣れたね……。」
「せつ菜は初心者なのにどうしてそんなに釣れるのよ!!」
「気になっちゃいますか!?しょうがないですね~……!では、ランジュさんに今私が絶賛ドハマり中の釣り漫画を布教しちゃいます!!これを読めば、あなたも明日から釣り名人になれる事間違いなし!!」
「せつ菜ちゃん、どうどう。そろそろ戻ろうよ、歩夢と愛ちゃんが待ってるんだし。」
思わぬ大量でホクホク顔の侑とせつ菜、負けた事にイライラするランジュ。
3人が捕まえた魚をクーラーボックスへと入れると、コテージを目指して歩き出す。
「たまにはアウトドアも楽しいね!」
「はい!明日は是非、歩夢さんと愛さんも一緒に!」
「次こそランジュが勝つワ!その前に侑!せつ菜!あとでランジュとガンプラバトルしなさい!シランジュにランジュの仇を討ってもらうわよ!」
「ガンプラバトル?どうやってするの?」
「さっきGPDの筐体があったのよ。武器を使わなければ派手に壊す心配も無いワ。」
「じ、GPDですか……ちょ、ちょっと考えさせてください……。」
スクールアイドルとしての次の目標が特に無い彼女たちの話題は、最近は基本的にガンプラの事ばかり。
道中の話題も『OOのヒロインはマリナ・イスマイールかフェルト・グレイスかガンダムか』、『『止まるんじゃねぇぞ……』は果たして本当にネタとして扱ってよい物なのか』、『『閃光のハサウェイ』公開時期に関して』などなど。
3人で楽しくおしゃべりをしていると、ランジュが不思議そうに周りを見渡す。
「どうしたの?」
「さっきまで鳥が沢山いたのに、今は全然いないわ。まだこんなに日が高いのに。」
「言われてみれば……。どうしたのかな?」
「もしかして、熊などの猛獣がいるのでは……!?」
「そ、そんなはずは無いわ!登山の為に安全管理は万全のはずよ!」
「でもさっき、別荘の様子を見に来るぐらいしか管理して無いって……。」
ガサガサッ!
「「「!!」」」
茂みが揺れ、振り返る3人。
恐る恐る侑が近づくと、そこから少し小さなヘビが姿を見せた。
「ヘビッ!?」
「ホッ……なんだぁ、ただのヘビかぁ。」
「ゆ、侑あなた平気なの!?」
「うん。この子、アオダイショウだから毒は無いよ。小っちゃくて目がクリクリしてて可愛いよね!」
「でもヘビよ!?」
「歩夢がヘビ好きでさー。大きなヘビのぬいぐるみに『サスケ』って名前付けて可愛がってるんだ。」
「い、意外です……でも、確かによく見ると可愛いかも……。」
「歩夢に見せてあげたら喜ぶかな?」
「これからランチするんだからやめなさい。」
歩夢の意外な趣味を侑が語っていると、アオダイショウはそのまま逃げてしまった。
しかし今の感じは、どう見ても何かから逃げているようにしか見えない。
それも、侑達では無く、もっと別の何かから逃げているように見える。
不思議に思う3人だったが、その疑問はすぐに解けた。
茂みの奥から、唸り声を上げながら一匹の大きな野犬が姿を見せた。
「グルルルル………!」
「え……う、嘘……。」
「待って。ちょっと待って。」
「………に……、」
「グルルル……ワンッ!!」
「逃げろーーーーーーーー!!!!」
野犬が侑達の存在に気が付くと、涎を垂らしながら彼女たちへと襲い掛かって来た。
侑、せつ菜、ランジュは野犬から逃げる為、一目散に逃げ出す。
野犬の大きさは、しずくのオフィーリア程ではないが、犬にしては大きな方であり、体中傷だらけ。
恐らくこの山のボスのような存在だろう。
犬であれば火を怖がるはずだが、3人とも誰も火を起こす道具など持ってきておらず、そもそもマッチやライターがあったところでこの大きさの野犬に太刀打ちできるはずが無い。
「ワンッ!!ワンッ!!」
「あっち行きなさいよーー!!ランジュは食べても美味しく無いわよーーー!!」
「そんな事無いよ!ランジュちゃんもせつ菜ちゃんも可愛いからきっと美味しいよ!!」
「侑さんこんな時に冗談言うのやめてください!!」
必死に逃げる3人。
クーラーボックスを捨てて逃げれば身軽になれるが、こんな状況でそんな事を冷静に考えられるはずが無い。
そして、ついに恐れていた自体が起きた。
クーラーボックスを運んでいたランジュは、バランスを崩してその場で転んでしまった。
「きゃあっ!!」
「ら、ランジュさん!!」
「今助けに……!」
侑とせつ菜が助けに向かおうとするが、間に合わない。
野犬は涎を垂らし、倒れたランジュへと襲い掛かろうとした。
「ひっ……!」
その時だった。
突如、彼女たちの周りの木が揺れ、その上から何者かがランジュと野犬の間に割って入って来た。
赤い髪の、筋肉質な大学生ぐらいの男。
その男は拳を握ると、見た事の無いような構えを取る。
「次元覇王流……!」
そして、男はランジュへ襲い掛かる野犬に向かって、拳を突き出した。
「聖拳突き!!」
「きゃんっ!?」
男の突き出した拳は、野犬の鼻に命中し、野犬はその場で倒れる。
すぐに起き上ったが、男を見て先ほどまでの血走った目から怯えたような目に代わり、その場から逃げだした。
「グルルル……きゃんきゃん!!」
「ふぅ……押忍!!」
格闘家の様な仕草で、その場で一礼した赤髪の男。
彼はクルっと振り返ると、そのままランジュの下へ。
彼女は先ほどこけた時に膝を擦り剥いてしまっていて、痛みで蹲っていた。
「君、大丈夫か?」
「え……えぇ……謝謝、助けてくれてありがとう……。」
男が背負っている荷物を見て、侑とせつ菜は先ほど河原で見た焚き火跡の正体が、この男がキャンプした跡だと理解。
彼はランジュに近づくと、彼女の怪我を見てハッとした。
「怪我してるじゃないか!!」
「も、無問題ラ!この程度、かすり傷よ!」
「いや、ダメだ!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
赤髪の男はランジュの持っていたクーラーボックスを自分で背負うと、更に彼女を抱きかかえた。
突然のことでランジュ本人も、それを見ていた侑とせつ菜も困惑。
気にせずに男は話しを進めていく。
「このあたりで休憩できる場所はあるのか?」
「あ……は、はい!この先に、私達が宿泊しているコテージがあります!」
「よし、すぐに其処へ行こう。」
「お、降ろしなさいよ!ランジュ自分で歩けるワ!だいたいアナタ誰なのよ!!」
「あぁ、そうだった。まずは自己紹介をしなくちゃな。」
「もしかして……この人……、」
「せつ菜ちゃん?」
「俺の名前はカミキ・セカイ。最強のガンプラファイターを目指して修行をしている、次元覇王流拳法の使い手だ。」
~にじビル毎回劇場~
第49回:虹ヶ咲学園同好会
リク「へー、ニジガクって同好会だけで100個以上もあるんだ!」
歩夢「うん!部も含めると更に多いんだよ!」
リク「スクールアイドル同好会とスクールアイドル部、ガンプラバトル同好会に演劇部、服飾同好会に焼き菓子同好会にコッペパン同好会……この辺は聞いた事あるけど、他にどんな部活があるの?」
歩夢「変わったのだと、流しそうめん同好会かな。」
リク「流しそうめん!?へ、へー……面白い部活だね。」
歩夢「他にも面白い同好会があるんだよ。魔法少女研究部とか。かすみちゃんと仲が良いの!」
リク「魔法少女……。」
歩夢「あとは巨大パフェ討伐同好会。」
リク「モモが入りたがりそうだなー。」
歩夢「絡まりイヤホンほどき同好会。」
リク「待って、何それ部活なの?本当に部活としてイヤホン解いてるの?」
歩夢「下校時白線だけ踏む同好会。」
リク「本当にあるの!?ねぇ歩夢、本当にそんな部活存在するの!?部費とか出てるの!?」
歩夢「ちなみにこの中だと一番実績があるのは流しそうめん同好会なんだよ。ボランティア活動として地域のお祭りや子供会の集まりに流しそうめん台の貸出と組み立て、片付けをやってくれてるんだ!」