※しおぽむはゆうぽむorあなぽむ前提で楽しむが正しい接種の仕方です。
※今回と次回は若干閲覧注意
※閃光のハサウェイの映画は最高でした。
※ジオウ×グリッドマンの小説にダイナゼノンに繋がる一文くわえました。
※閃光のハサウェイの第二部はよ。
土曜日の朝、いつも通り早起きした栞子は、朝ご飯を食べ終わるとすぐに支度を始めた。
なんといっても今日はガンダムベースでのアルバイトの初日、遅刻するわけにはいかない。
そんな事では、二つ返事で雇ってくれたナナミや誘ってくれたモモカに申し訳ない。
普段よく着ているワンピースでは無く、姉のお下がりでもらった動きやすいジーンズに着替えた彼女は、物音を立てないように家を出ようとする。
ゆっくりと玄関の扉を開け、出かけようとした栞子だったが、その時に後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?栞子、どっか出かけるの?」
「!! ね……姉さん……!?」
「何よ、お化けを見たみたいな顔して。」
その声の主は、姉である三船薫子。
虹ヶ咲学園の教育実習生で、元スクールアイドルの先輩。
栞子にとっては尊敬できる人物であると同時に、何をしでかすかわからない未知の存在……彼女曰く『宇宙人』。
恐らく今の栞子が例えるとするなら『ELS』や『ヴェイガン』と言った方がわかりやすいかもしれない。
「今日土曜日でしょ?同好会の練習もお休みなんじゃないの?」
「ど……どうして練習が休みだと知ってるんですか……?」
「アンタの補佐の双子の書記ちゃんに聞いた。」
「右月さん、左月さん……姉さんに余計な事を……!」
「あ、もしかしてガンダムのゲームやりに行くの?いやぁ、栞子がゲームにハマるだなんて意外だったなぁ。これも同好会の皆の影響かしら?」
「ね、姉さん、すいません、私、急いでますので。」
「なんでそんな片言なのよ?」
アルバイトをする、と言う事はもちろん姉には内緒にしている。
いや、学校に申請しているのでいずれ薫子の耳にも入るだろうが、二日間の話なのでそれを過ぎてバレても問題ない。
アルバイトをすると言う事は絶対に姉にはばれたくない、何故なら絶対にからかわれるから。
「あ、私のお下がり着てる!恥ずかしがって絶対着てくれなかったからお姉ちゃん悲しくて悲しくt、」
「行ってきます!!!」
なんとなく嫌な気がして、薫子の言葉を遮りながら栞子は家を飛び出した。
残された薫子は『ふむ』と顎に手を当て、慌てて出ていく妹の姿を眺めていた。
~~
「今日から二日間、こちらでお世話になります、虹ヶ咲学園1年生の三船栞子と申します!至らないところもあり、ご迷惑をおかけしてしまうと思いますが、どうかよろしくお願いします!」
「固い固い~、リラックスリラックス~!」
「い、いえしかし……、」
「知らない仲じゃ無いんだしさぁ。あ、そうだ。ここでは私の事は先輩と呼ぶように!なーんちゃって。」
「はい!モモカ先輩!」
「お……おぉ……コレは中々気持ちいいですな……。」
早速アルバイト初日、モモカからガンダムベースの制服代わりのエプロンを渡された栞子はそれを身に着けた。
以前ナナミがアルバイト時代に使っていた物で、少し古い物だが、綺麗にアイロンがけもされてある。
まさかこれを自分が着れる日が来るとは思わなかった彼女は、嬉しそうにエプロンを眺めた。
「じゃあ開店前に簡単にレジ打ち教えておくね。」
「お願いします。」
「コウイチさんがやってる仕事は今日は私が担当するから、栞子ちゃんには普段私がやってる事をやってもらうよ。レジ打ちと、少なくなってきた商品の補充、それとお客さんからの技術的な相談とかね。棚の配置は大丈夫?」
「もちろんです!宇宙世紀系、アナザー系、SD、それぞれのグレード別の配置、工具の型番まで全て頭に叩き込んできました!」
「お……おう……工具の型番覚えはさすがにちょっと引く……。」
「私、大好きなこのお店でお仕事出来て幸せです!一生懸命頑張ります!」
「うん、よろしくね。困ったことがあったらこのモモカお姉さんになんでも聞きなさい!」
「ありがとうございますモモカ先輩!」
モモカにお辞儀をし、彼女からレジ打ちの指導を受ける。
最近はレジも近代化が進み、覚える事は思っていたよりも少なかった。
あとは倉庫内の在庫の場所と、掃除道具の場所を教えてもらうと、いよいよ開店だ。
いつもはガンダムベースの開店を楽しみにしていたのだが、さすがに今日は緊張する。
ライブ前とはまた異なる緊張だった。
「いらっしゃいませー!ガンダムベースダイバーシティ店へようこそー!」
「い、いらっしゃいませ!!」
モモカの声に続けて言ったが、緊張で声が裏返ってしまった。
いきなり出鼻をくじかれて落ち込む栞子の背中を、モモカが笑いながら叩く。
「うぅ……すいません、緊張してつい……。」
「アハハ、気にしない気にしない!お客さんそんなにいないんだし!」
「でも、もう10人ぐらい並んでます……。」
「いつものライブの規模に比べたら全然じゃん!ほらほら、落ち込むより先にお仕事お仕事!歩夢ちゃんに喜んでもらいたいんでしょ!」
「そ、そうでした!私、この程度では挫けません!」
「よし!その意気だ!!」
「店員さーん、ちょっといいですかー?」
「ほら、お客さん呼んでるよ栞子ちゃん!初接客頑張ろう!」
「わかりました、モモカ先輩!」
モモカに励まされ、早速栞子は初接客へ向かった。
お客さんの要望はガンダムデカールの在庫の確認で、商品の場所を完璧に把握していた栞子はすぐさまお客さんの要望通りのデカールをご案内。
その様子を見ながら、モモカはうんうんと満足そうにうなずいた。
「さてと、じゃあ私も自分のお仕事やりますか!」
~~
初日の仕事はかなり順調に事が運んだ。
最初は確かに慣れない事で緊張で声が裏返ったり、レジを打つスピードが遅かったりで大変だったが、お昼を過ぎた辺りからはだんだん慣れてきてレジ打ちもスムーズにできるようになった。
棚の整理やレジ打ちといったガンダムベースの基本的な業務内容が、普段生徒会でやっている書類整理やデータ入力に似ているという事もあるが、それよりもモモカのフォローによるところが大きい。
栞子が困っていると必ず駆けつけてくれるし、失敗しても『大丈夫!』と励ましてくれる。
とても心強い先輩だった。
「栞子さん、来たよ~。」
「しずくさん!いらっしゃいませ。」
少なくなってきた新商品『RG ウイングガンダム』の在庫を補充していると、しずくとアヤが来店。
しずくは仕事中の同級生の姿をまじまじと見ながら、うんうんと頷いた。
「な、なんですか……?」
「バイトどう?捗ってる?」
「えぇ。モモカ先輩が大変親切に教えて下さるので、とても助かっています。」
「先輩……?栞子ちゃん、モモちゃんの事を先輩なんて呼んでたっけ?」
「お仕事中なので、今日はモモカさんでは無くモモカ先輩とお呼びする事にしました。」
「ずるい……。」
「え?アヤさん?」
「私も先輩って呼ばれてみたい……。」
「アヤさん、私達は向こうのビルドゾーンで何かガンプラでも作りましょう。」
しずくは適当に棚からSDガンダムの『劉備ガンダム』を手に取ると、購入してビルドゾーンでアヤと一緒に栞子の仕事っぷりを見ながら作り始めた。
割と忙しそうだが、イキイキとしている。
「栞子ちゃん、楽しそうに仕事してるね。」
「そうですね。栞子さん、割と不器用な所あるからもっと大変かと思ってました。」
「好きな事はどれだけ大変でも頑張れるもの。しずくちゃんだってそうでしょ?」
「はい、その通りです。」
演劇もスクールアイドルもガンプラバトルも苦にせず頑張っているしずくは力強くうなずいた。
一方、栞子は在庫の補充を終えて、ビルドゾーンの工具の手入れに入る。
しかし、ガンプラファイターとしては腕を磨いているが、ビルダーとしての技量はまだまだの栞子は、工具を手に持ったままその場で固まってしまった。
「え……っと……そうだ、モモカ先輩!」
「あ、ごめーん栞子ちゃん!私ちょっと今手が離せない!」
「そ、そんな……。」
タイミングが悪く、モモカは自分の仕事に入ってしまった。
こんな事になるならもっとたくさんガンプラを作って学んでおけば良かったと後悔するが、気を取り直してスマホで手入れの方法を検索。
『防錆油』や『潤滑油』といったあまり聞きなれない単語が出てきて、少し混乱してしまった。
「ど、どうしましょう……アヤさんに相談……いえ、でもお客様ですし、私から聞くというのは……けどこのままでは……。」
「あれ?しお子じゃん、何してんだお前?」
「あ、い、いらっしゃいませ!あら?カザミさん……?」
必死にスマホでニッパーの手入れ方法を調べていた栞子の後ろから現れたのは、BUILD DiVERSのトリマチ・カザミ。
普段は横浜のシーサイドベース店でヒロト達と一緒に行動しているはずの彼がこのダイバーシティ店に姿を見せる事は珍しく、栞子は驚いた。
勿論カザミの方も栞子がこの店でバイトをしている事に驚いており、彼女の手にあるニッパーとスマホを見て『もしかして』と尋ねた。
「工具のメンテナンスの仕方わかんねーの?」
「は、はい……お恥ずかしながら……。」
「ふふん!そう言う事ならこのガンプラ界のジャスティスナイト!カザミ様に任せときな!」
そう言うとカザミは、栞子に工具のメンテナンスの仕方を説明してくれた。
カザミは動画配信者をやっている事もあり、こう見えて説明は上手い。
錆止め用の防錆油と、動きをスムーズにするための潤滑油の違いを教えてくれて、ついでにヤスリやピンバイス、筆の手入れも教えてくれた。
それでも決して手は出さず、全ての工程を栞子にやらせてくれて、アルバイトとしての顔は保つことが出来た。
「あ……ありがとうございますカザミさん!おかげで助かりました!」
「おう!ってか、お前なんでここで働いてんの?いつから?」
「今日と明日の二日間だけです。その……実は欲しい物がありまして……。」
「なるほどねぇ。っとそうだ忘れるところだった。実は俺も今日は欲しいもんがあってさ。SDガンダムの売り場ってどこ?」
「ご案内します!」
「あれってカザミさん?」
「ホントね。どうしてこのお店に来てるのかしら?」
劉備ガンダムを組み立てていたしずくとアヤもカザミがここに来ている事を不思議がっており、首をかしげた。
カザミはSDガンダムのコーナーで目当ての商品を3つ手に取ると、それをレジへと持っていき栞子が会計。
彼が持ってきたのはどれもかなり古いキットで、20年近く前の商品だった。
「『武者丸』、『武王頑駄無』、『武者○秘将軍』……どれも武者丸系統のガンダムばかりですね。」
「これがどこ探しても見つからなくてさぁ。滅茶苦茶探しちゃったんだよ。」
「どれも古いキットですからね。このためにこのお店に?」
「いや、ここならヒロト達もあんまり来ないし、向こうよりは好都合だからよ。」
「? ヒロトさん達に知られたくないのですか?」
「まぁ、な。これでアイツらに、楽しんでもらおうと思ってよ。サプライズってやつだ!」
「サプライズ……?」
カザミが武者丸を使って何をしようとしているのか見当もつかないが、彼も栞子同様サプライズをやるようだ。
そう言えばBUILD DiVERSのメンバーは最近全員なにやら忙しそうにしている。
それと関係があるのだろうか?
なんにせよ、自分と同じように仲間を喜ばせたいと思っているカザミを、栞子も応援しようと思った。
「頑張ってください、カザミさん。」
「おう、ありがとな!よっし、んじゃ帰って作るか!」
レジ袋に武者丸系統のガンプラをぶら下げて、カザミはガンダムベースから出ていく。
その際に車椅子を押す赤い服を着た少女と入れ違いになり、彼女は店内に入っていくと、真っ先にレジに立っている栞子に目を付けた。
「え?し、栞子!?」
「………うっ……ら、ランジュ……。」
やって来たのは幼馴染の鐘嵐珠。
最悪だ、と栞子は頭を抱える。
ランジュは栞子の姉の薫子とも仲が良いので、下手をすればランジュを経由して薫子にアルバイトの事がばれてしまうかもしれない。
「何やってるのよアナタこんな所で?」
「あ、ランジュさんこんにちわ。」
「しずくもいたのね。」
「ランジュは……どうしてここに……?」
「アタシはただ、マリナとGBNやりに来ただけだけど。」
「こ、こんにちわ。」
ランジュが手で押していた車椅子に乗っている、彼女の新しい友達のカツラギ・マリナ。
左脚が義足の彼女は、最近よくランジュと一緒に行動しているようで、よく一緒にいるのを見かける。
「カツラギ・マリナさん、こうしてちゃんとお話しするのは初めてですね。1年生の三船栞子と申します。」
「桜坂しずくです。せつ菜さんからお話は聞いてます。」
「初めまして、カツラギ・マリナです。演劇部の桜坂さんと、生徒会長の三船さんだよね?二人とも校内じゃ有名人だから知ってるよ。」
「というか何よその格好?薫子のお下がりの服に、ガンダムベースのエプロンなんてつけちゃって。」
「こ、これはその……!」
「栞子さん、歩夢さんへのプレゼントを買う為にここでアルバイトしてるんですよ。」
「し、しずくさん!!」
「えぇー!?栞子がアルバイト!?どうしてそんな面白そうな事ランジュに言ってくれないのよ!!」
「ら、ランジュさんあんまり大声出すと他のお客さんに迷惑かかっちゃうよ!」
やはり喰い付いてきた。
ランジュに知られると確実に薫子にばれてしまう。
迂闊だった……ランジュがGBNをしにここに来る事をいつの間にか度外視していた。
いや、最悪薫子にばれてしまうのは良い。
問題はそこから歩夢にばれてしまう危険がある。
「このままでは折角かすみさんと璃奈さんが歩夢さん達が来ないように足止めしてくれているのに……台無しになってしまいます……!」
「あ、あの二人にも協力お願いしたの?」
「教えとかないと、二人とも後で拗ねそうですから。」
「なるほど。」
ちなみに足止めというのは、かすみと璃奈の二人が今日と明日の二日間、歩夢と侑と一緒にジョイポリスで遊び倒すというもの。
侑も止めておかないと絶対歩夢に喋るので凄く危険。
「もしかして薫子にばれたくないの?」
「はい、もちろん。」
「薫子さんって、教育実習の三船先生の事?生徒会長さんのお姉さんなんだ。」
「安心しなさい栞子!ランジュはこう見えて口が固いのよ!」
「あなたの口の軽さはガンダムF91の重量並です。」
「たとえがよくわかんないわ。」
「えっと、軽いってことじゃないかな?」
「ガンダムの時点で重いんじゃないの?」
「それでもF91は比較的軽い方だよ。」
「ふーん……とにかく、薫子にばれたくないのね。無問題ラ!アタシは今日と明日はマリナとずっと遊ぶ約束してるんだから薫子に言いふらす時間なんて無いワ!行きましょうマリナ!」
「うん。じゃあまたあとでね、生徒会長さん。」
そう言いながら、ランジュとマリナは奥のGBNゾーンに行ってしまった。
最近、ランジュはマリナとばかり遊んでいる気がする。
ランジュに会ってどっと疲れた栞子は、クタクタになりながらも再びレジ打ちに戻る。
何人かのお客さんを相手にし、徐々に店内のお客さんの数が減って来たタイミングで、しずくとアヤが声を掛けに来た。
「大変だったね栞子さん。」
「大変だったのはお仕事の方じゃありませんが……。」
「そんなにお姉さんにばれたく無いの?」
「はい……うちの姉に見つかると絶対にからかわれます……。ランジュさえ話さなければばれる事は無いと思います。」
「……ねぇ栞子さん、さっきからランジュさんがばらす事ばかり気にしてるけど、家ではバレて無いの?」
「えぇ、おそらく大丈夫だと思います。」
「本当に?」
「はい。今日もガンダムベースに急いで行く事を強調して家を出ただけで、バイトの事は話していません。」
「え。」
「どうしたんですかしずくさん?」
「いや……うん、まぁ、栞子さんがそれで大丈夫だと思ってるなら大丈夫なんじゃないかな……。」
「?」
「歩夢ちゃんへのプレゼント、買えるといいね栞子ちゃん。」
「ありがとうございますアヤさん、頑張ります!」
「んー……まぁ、いっか……。」
しずくが何か言いたそうにしているが、その後すぐにモモカに呼ばれたので結局聞きそびれてしまった。
そして、そんな彼女たちの様子を、ガンダムベースの入り口付近で眺める謎の人物の影があった。
「ふーん……なるほど、そういう事か……へー、あの栞子がねぇ……♪」
~~
1日目のバイトを終え、自宅へと帰って来た栞子は、姉と二人で並んで食卓を囲んだ。
生徒会の仕事と似たような業務内容に加え、大好きなガンプラに関わる事だったのでどれだけ働いても苦にならないと思っていたが、現実はそう甘くは無かった。
思ったよりも力仕事は多いし、必要とあらば無線で呼ばれてMGやPGを抱えて店の端から端までの往復をさせられる。
モモカが普段コウイチのやっている展示用のガンプラの手入れなどをやっていたので、雑用は全て栞子に任せられていたので、想像以上に疲れた。
夕飯の野菜炒めと豆腐の味噌汁を白米で頂きながら、ようやく一息つけた気がする。
「ふぅ……。」
「ねぇ栞子、今日何してたの?」
「!? い、いつも通りです!しずくさんと、あ、遊んで……ました……。」
「ふーん。ガンプラバトル?」
「えぇ……まぁ……。」
「懐かしいなー。実は私も昔やってたんだよねぇ。実機の方だけど。」
「そうですか。」
「あれ?驚かないの?」
「姉さんは興味が惹かれる物にはすぐ手を出す人ですから。この程度じゃ驚きません。」
「アハハ、それもそうか。そうだ、今から私の部屋でガンダムのBDでも見る?それともスクールアイドルの方がいい?」
「すいません、今日は疲れたので、お風呂に入ったらすぐに寝ます……。」
「つれないなー。」
つまらなそうにブーイングをする薫子をよそに、食器を片づける栞子。
妹がお風呂に入ると、薫子は自室へと戻り、まったく整理整頓をしていない押入れを開ける。
中身の物が雪崩のように押し寄せてくるのを華麗に躱すと、そこから一つの段ボールを取り出し、ウキウキしながらそれを開け始めた。
~~
「ふぅ……さっぱりしました……姉さん、次お風呂どうぞ。……姉さん?」
「あ、栞子おかえりー。」
風呂上り、モコモコした飾りのついたパジャマを着た栞子が部屋に戻る際中、廊下で薫子とすれ違った。
薫子の手には段ボールが抱えられていて、栞子はそれを見ながら首をかしげたが、薫子はそんな栞子の手を掴んで無理やり妹の部屋へと押し入る。
「な、なにを……!?」
「はい、足だしてー。」
「え?は?えぇ……?」
栞子の足を掴み、そのまま薫子はマッサージを始めた。
何が起きているのかわからない栞子は、なす統べなく薫子にされるがままに。
さすがはラブライブを目指していた元スクールアイドルだけあり、薫子のマッサージはかなり上手い。
「足、だいぶ疲れてるよ。」
「あの……姉さん何を……。」
「歌って踊るのと物持って運ぶのは違うからねー。」
「えぇ!?ね、姉さん……どうして知って……!?」
「そりゃあんだけあからさまにしてたら誰だって気づくってーの。」
足のマッサージを続けながら、薫子は今日一日の事を語ってくれた。
朝、明らかに様子のおかしい栞子を怪しんだ薫子は、その後栞子の後を付けた。
そこでガンダムベースでアルバイトをしている妹の姿、一日中見ていたらしい。
ご丁寧に栞子にばれないように、数時間おきに着替えて戻ってを繰り返して、同じ客だと思わせないように。
「お姉ちゃんショックだったなー。栞子ったら私にばれるのがそんなに嫌だったの?」
「うぅ……そ、それは……。」
「……まっ、仕方ないか。そういう風に思っちゃうようになったのは私の責任だし、実際今日帰ってきたらからかってやろうって考えてたし。」
「姉さん。」
「あ、そんなマジな目でこっち見ないで怖いじゃん。」
「……バレてしまったなら仕方ありません……それで、どうしてマッサージを?」
「頑張ってる妹への反省とご褒美かな。」
「反省とご褒美?」
反省とはもちろん、からかおうとしていた事と、一日中尾行していた事への反省。
もう一つのご褒美とは、栞子が昔に比べると多くの人に信頼され、助けてもらえる様になっていた事へのもの。
今日一日だけでも、モモカやしずく、アヤ、カザミにかすみと璃奈、これだけの人達に支えられていた。
幼いころから堅物で、人の意見など聞き入れなかった妹が、大勢の人と仲良くしている姿を見て、薫子も嬉しくなった。
「アンタは昔からあんまり友達多くなかったからねー。」
「い、今はたくさんいます!」
「そうだね。それも、『歩夢ちゃん』のおかげ?それでプレゼントかー。」
「ち、ちがっ……わ、なく無いです……。あの、姉さん……。」
「ん?」
「姉さんの事、誤解していてごめんなさい……それと、ありがとうございます。」
「うわっ、素直な栞子怖い。」
「前言撤回です。」
『そうだ!』といったんマッサージを留めた薫子は、段ボールを開けるとその家から更に箱を取り出した。
入っていたのはガンプラの箱で、それをさらに開けると薫子は中から自分の愛機を取り出し、それを栞子に見せつけた。
「じゃん!これが私の愛機だよ。アンタがガンプラバトル始めた時から見せてあげようって思ってたんだけど。」
「コレは……インフィニットジャスティスガンダムですか?」
「そうそう、RGのやつね。まぁ、特に改造とかは何にもしてないんだけどさ。」
「それでもかなりの出来栄え……さすが姉さん、器用ですね。でも、押し入れにしまってたと言う事は……、」
「うん。私、ガンプラバトルやめちゃったんだよね。理由は単純で、『スクールアイドルの方が好きだったから』」
「…………。」
「練習とかライブとか忙しくて、ガンプラバトルなんてやってる時間無くなっちゃったからさ。そのうち、どんどんやらなくなって、熱も冷めてきちゃって……。」
「姉さん……。」
「でも、今のアンタ達はスクールアイドルもガンプラバトルも両立して、どっちでも活躍しててさ。私達も、もうちょっと器用だったらそう出来たのかなって。アンタに言わせれば、『適性が無かった』、ってことなのかな。」
そう言う薫子の顔は、少し儚げだった。
何か言いたそうに栞子が口を開こうとしたが、すぐに薫子がそれを遮り、言葉を続けた。
「だからアンタは、好きな事を諦めるんじゃ無いよ。明日もアルバイト、頑張って!」
「………姉さん、私は、いずれアナタともバトルをしてみたいです。」
「そう言って貰えると嬉しいね。ほら、マッサージ続けるよ。足出して。」
「はい。……いたっ、あいたたたた!?ね、姉さん!?変なツボ押してませんか!?」
~~
翌日、二日目にしてアルバイトの最終日を迎えた栞子。
その様子を見に来たしずくやアヤ。
モモカの指導の下昨日同様に棚の整理やレジ打ち、ガンプラ製作指南などをするが、昨日とはキレがまるで違う。
「栞子ちゃーん、裏から在庫補充しといてー!もうZZが少ないよー!」
「はい!」
「あ、ちょっと待ったその前にレジ!レジお願い!」
「いらっしゃいませ!!」
「栞子さん、昨日と動きのキレが違う……。」
「何かあったのかな?」
薫子から応援された栞子は、今まで以上の仕事っぷりを見せる。
昨日カザミから教わった工具の手入れはばっちり頭に叩き込んでいる。
さらに、マッサージの影響なのか、足が非常に軽い。
昨日までの危なっかしさは鳴りを潜め、今や立派なガンダムベースクルーの一員だ。
~~
「二日間お疲れ様栞子ちゃん!お手伝いありがとね!」
「いえ、こちらこそ貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。モモカ先輩がいなければ今の私はありません。」
「フッフッフ、やっぱり?そう思う?」
「もうモモちゃん、あんまり調子乗っちゃダメだよ。」
「はーい、アヤさん。」
無事、二日目の仕事も終え、制服代わりにエプロンをモモカへ返却。
すると裏からナナミが出てきて、その手には給料袋らしきものが握られていた。
「いやー、お兄ちゃんが急に会議に行ってどうしようかと思ったけど、助かっちゃった!お疲れ様、はい、これ二日分のお給料ね。」
「あ、ありがとうございます!!」
「良かったね栞子さん。さっそくプレゼント買いに行こうか!」
「はい!しずくさんも、見守って下さりありがとうございました!あ、でもその前に……、」
「どうかしたの?」
「いえ、実は……姉にもお土産を買って帰ろうかと。」
そう言う栞子の顔は、とても晴れやかな笑顔だった。
~~
その頃、ジョイポリスで遊んだ後にかすみと璃奈と別れ、帰り際に二人で雑貨屋に立ち寄った歩夢と侑の二人。
相変わらず歩夢はヘアピンを付けておらず、今日は侑とお揃いのツインテール。
二人で色々見て回っていると、侑がとある物を見つけてそれを手に取った。
「おっ、コレ歩夢に似合いそう。」
「何?」
「ほら、ウサギの形のヘアピンだって。」
「え、えぇ……?可愛いとは思うけど子供っぽいよぉ……。」
「いいじゃん、歩夢は何つけたって可愛いよ。ほら、これ付けてやってみてよ。」
「何を?」
「あゆぴょん。」
「やりません!!」
「アハハ、ごめんって。お詫びにこれプレゼントするからさ。」
「え、悪いよ……。」
「たった300円だし気にしないでよ。お会計してくるね。」
安物のヘアピンを握りしめ、レジへと向かう侑。
その侑の後姿を、たまたま見ていたのは……カツラギ・マリナだった。
「…………。」
「マリナ?どうしたの?行きましょう!」
「うん。」
ランジュに車椅子をもらいながら、その場から離れていくマリナ。
彼女の懐では、愛機であるバンシィ・ノワールが怪しげな光を瞳に宿していた。
~にじビル毎回劇場~
第54回:呼び方
マサキ「ん?今日は中川しかいないのか?他の皆は?」
せつ菜「今日は皆さん用事なので、私一人でタイガーウルフさんのところで修行でもしようかと。」
マサキ「そうか。向上心の高い中川は偉いな。」
せつ菜「……あの、マサキさん。」
マサキ「どうした?」
せつ菜「一応、この姿の時は『優木せつ菜』で通しているので、できればせつ菜と呼んでいただければ……。」
マサキ「あぁ、そうだったな。すまなかった中川。」
せつ菜「いえあのだからせつ菜と……、」
マサキ「くっ、またやってしまった……もう一度チャンスをくれないか中川!」
せつ菜「はい。」
マサキ「ありがとう、中川!」
せつ菜「……もう中川でいいです。」
マサキ「ちなみに俺がGBNで『シド』と呼んでもらえるまでは半年近く掛かった。気持ちはわかるぞ中川。」
せつ菜「もうわざとやってませんか?」