「大丈夫ですかリゼさん?」
『どこか具合でも悪いのならログアウトされた方が……。』
「いや、僕は大丈夫……。」
突然ふらついたリゼを、以前かすみんとカナタが立ち寄っていた酒場で休ませる。
顔色の優れない彼を見て、かすみんも姫乃ハロも困惑。
先ほどまでは普通にしていたのに、一体何が起きたというのか。
「君たちは、マスダイバーって知っていますか?」
『マスダイバー……?私は存じ上げませんが……。』
「かすみん知ってます!!卑怯な方法でガンプラバトルやってるわる~い人達です!かすみん達何回も襲われました!!」
「もしかしたら、そのマスダイバーがこのペリシアにいるかもしれません。」
『えぇ!?』
「少し前まで大人しくなっていたのが、最近また活発化して来たらしいんです。理由はわからないけど……僕はまだ遭遇した事はありませんが。」
「………アイツだ……。」
『かすみさん?』
かすみんの頭に、数日前の嫌な記憶がよみがえる。
同好会初期メンバー5人で挑んだロータスチャレンジ。
そこに乱入してきたバグの元凶 ユニコーンガンダム2号機をベースとしたバンシィ・ノワール。
リクとヒロトがダブルオーで倒したはずのバンシィ・ノワールが、どういうわけか時間をかけて復活した。
GBNで再びバグやマスダイバーが現れ始めたのは、バンシィが復活してからだ。
「かすみんは、マスダイバーに心当たりが?」
「はい。」
「聞かせてもらえますか?」
リゼにそう言われたかすみんは、バンシィ・ノワールの事を彼に話した。
最初に姿を現したベアッガイフェスや、侑と歩夢がバンシィと交戦したミラーミッション。
そして、数日前のロータスチャレンジ。
いずれも尋常じゃ無い強さを誇るバンシィ相手に、ニジガクのメンバーは手も足も出ていない。
唯一対抗できたのはリクのガンダムダブルオーインフィニティセイバーだけだ。
「そうですか……バンシィ・ノワール……。」
『とんでもない人がいるんですね。』
「そうなんですよ!ホントにむかつきます!侑先輩とそっくりなガンプラなのにかすみん達の邪魔ばーっかりして!折角リク先輩とヒロト先輩がやっつけたのに!」
「リクと、ヒロト……。」
『リゼさん?』
「……もしかしたら、マスダイバーがここにやってくるかもしれません。危険なので、シャフリヤールセンセイに挨拶だけしてこの場を離れましょう。」
『そ、そうですね。危険な人にはかかわらないのが一番です。』
リゼに促され、姫乃ハロを抱きかかえたかすみんはいったんシャフリの下へと行こうとする。
その時、彼女たちの頭上を、1機のモビルスーツが飛んで行った。
珍しいSDタイプなのに巨大なガンプラだった。
「わー、あのガンプラ、SDなのにおっきいですねー。」
『リゼさん、あのガンプラはなんですか?』
「僕はガンダムの知識はあまり……うっ……!?」
「リ、リゼさん!?」
「………まさか……あのガンプラが……!」
再び頭を押さえて蹲ったリゼ。
その頭上をかすめていく巨大なSDガンダム……次の瞬間、そのSDガンダムはあろうことか、手に構えた巨大なボウガンを、ペリシアの街へと向けた。
~~
数分もすれば、辺りは火の海だった。
以前起きた展示ガンプラの暴走騒ぎの時は、AVALON所属のカルナ、エミリアの二人にレジェンドビルダーのセイ、そして何より璃奈の迅速な対処でそこまでの被害は出なかったが、今回はそうでは無い。
空中で暴れ回ったSDガンダム……機動武者大鋼は、左腕に装着した大號弓(ダイゴウガン)を撃ち回りながら地面に降り立ち、右手に持った大刃剣で、展示されているガンプラ達を切り裂く。
駆けつけたリゼ、かすみん、姫乃ハロはその光景を見て唖然としていた。
『ひ……酷過ぎます……!』
「あの人、何やってるんですか!!」
『かすみさん!?』
「かすみん、ちょっと文句言ってきます!!ザクみんは元々大鋼のライバルのガンプラを使って改造してるんですから、ここはかすみんが……って、あれ?」
コンソールパネルを開き、ザクみんを呼び出そうとするかすみん。
しかし、いくら呼び出そうとしてもエラーが起きてザクみんが出てこない。
何故かと思ったら、すぐ隣にその理由が表示されていた。
「って、あーーーー!!Bランクにならなきゃガンプラ出せないじゃん!!」
『え?でも前はここで戦ったって……。』
「あの時はバグで色々おかしくなってたんですよぉ!!うえーん……どうしよう……。」
かすみんは現在Cランク。
よって、本来であればペリシアでガンプラは呼び出せない。
途方に暮れている彼女の隣に、頭を押さえたリゼが来ると、彼は自分のコンソールパネルを開いた。
「下がってくださいかすみん、姫乃。僕が行きます。」
「リゼさん!でも、その体で……、」
「大丈夫です。僕、これでも結構強いんですよ。」
そう言いながらにこっと笑ったリゼ。
その時に気が付いたが、彼のコンソールパネルの中にある称号の中に、一つだけ一際輝きを放つ称号があった。
そこには、『メガ粒子杯バトルカイ優勝』とある。
メガ粒子杯バトルカイとは、Cランク以上のダイバーが参加する事の出来る、一種の大会イベント。
かすみんもよく知る百鬼のドージも参加した事のある、大規模な大会だ。
そしてリゼは、ドージや他の強豪たちを破り、その大会で優勝した証である称号を持っている。
「バトルカイ優勝って……り、リゼさん何者なんですかぁ!?」
「僕は僕ですよ。来い、僕のガンプラ。」
リゼがコンソールパネルを操作すると、彼の目の前に赤いガンプラが姿を現した。
その姿は、かすみんもよく知るガンプラとよく似ている……というよりそのものだった。
間違いなくその姿は、BUILD DiVERSのヒロトのガンプラ『コアガンダム』と同じ物だった。
「こ、コアガンダム!?ヒロト先輩のと同じガンプラを、どうしてリゼさんが!?」
『あなたはいったい……。』
「姫乃。」
『は、はい。』
「良く見ていて下さい。真似をするって言うのがどういう事なのか。それを自分だけの力に作り替えるって言うのが、どういう事なのかを。」
そのガンプラ……コアガンダムリゼに乗り込んだリゼ。
コアスプレーガンとシールドを構え、ペリシアの街の中で暴れ回る機動武者大鋼の前に立つ。
SDガンダムの中でもMG並のかなりの巨体を誇る大鋼に対し、HG規格にも拘らずSDガンダム以下のサイズしかもたないコアガンダムリゼ。
その差は、圧倒的だった。
『うおーーーーーー!!!気持ちーーーーー!!!ブレイクデカールってのは最高だぜーーーーー!!!俺の大鋼の前に、皆手も足も出ずに逃げ出していくのがたまんねーーーー!!!』
「あの。」
『あぁん?』
巨大な相手に、一切ひるむ様子を見せないコアガンダムリゼ。
大鋼は動きを止め、いったんコアガンダムリゼの方を向いた。
「あなた、そんな事をして何が楽しいんですか?」
『なんだお前?ハッ、楽しいに決まってんだろ!今までバトルで全然勝てなかった俺が、他の連中の真似してブレイクデカールを使ったらこの通りだ!たまんなく気持ちいいぜ!!』
「なるほど……そういう事ですか……。なら……、」
顔を俯かせたコアガンダムリゼ。
大鋼はコアガンダムリゼに向かって刀を構える。
そして、コアガンダムリゼが顔を上げると、その中で、パイロットであるリゼも顔を上げた。
「なら、『俺』がお前をぶっ倒して気持ち良くなっても文句ねぇよなぁ!!!」
『え。』
「おらぁっ!!!」
突然、髪の毛を逆立てたリゼがコアガンダムリゼを操作し、大鋼に飛び膝蹴りを喰らわせた。
それでよろけた大鋼の足元を更にコアスプレーガンで追い打ちし、飛び上がって再び顔面を蹴り込んだ。
その姿を見て、かすみんと姫乃ハロは呆然。
「『誰ッ!!??』」
「おいかすみん!!!」
「え……えぇ!?あの……アナタ、リゼさんですよねぇ!?」
「んなこたぁ今はどうでもいい!!街の連中を非難させろ!!ぐずぐずしてんじゃねぇぞ!!」
「ひぃ~!?こ、怖い!!」
いきなり性格が180°変化したリゼに恐怖心を覚えながらも、かすみんは街の人達の誘導へと向かう。
そのリゼは、大鋼の攻撃を躱しつつ、攻撃を加えるが、中々決定打とはならない。
『すばしっこいヤツだが、攻撃力は大した事無いなぁ!』
「笑ってられるのも、今のうちだけだぜ……!」
『なんだと?』
「来い!!お前らぁ!!」
リゼが叫ぶと同時に、彼の後ろから4機の支援機が召喚され、大鋼に向けて飛んで行った。
それらはまるで動物が人間にじゃれ付くかのように大鋼にまとわりつき、そのうっとおしさから大鋼は困惑。
その隙にコアガンダムリゼが飛び上がると、その中でリゼがコンソールパネルを操作。
『PLANETS SYSTEM:ANIMA RIZE』
「コアチェンジ!!ドッキング・ゴー!!」
コアガンダムリゼが両手両足を広げると、彼の支援機であった動物型のマシン……アニマリゼアーマーたちが、彼の周りに集まり、合体を始めていく。
右腕には虎、左腕にはライオン、右脚にはオオカミ、左脚には熊。
それぞれの動物の力を宿したアーマーと合体する事で、リゼのコアガンダムはヒロトの物とは全く違う、彼自身のガンダムへと姿を変えていく。
それが、『ガンダムアニマリゼ』だ。
『赤いコアガンダムに、動物のアーマー……!?お、お前まさか……バトルカイ優勝者の、リゼなのか!?』
「今更気づいてもおせぇんだよ!!行くぜ!!ガンダムアニマリゼ!!」
ヒロトのコアガンダムIIのどの姿とも異なる、彼だけの姿となったアニマリゼが、大鋼に飛びかかる。
オオカミの脚力で飛び上がったアニマリゼの、熊のように力強いキックが大鋼に炸裂。
よろけた大鋼に向かって、コアスプレーガンをアーマーにドッキングさせたレーザーライフルで狙い撃つ。
尖った性能を持つアーマーだが、武装そのものは基本に忠実なベーシックタイプ。
それが、リゼのガンダムアニマリゼ。
『これが、リゼさんのバトル……!』
そのバトルスタイルに、姫乃ハロは目を奪われた。
BUILD DiVERSの事は、ガンプラバトルに疎い姫乃も知っていた。
果林も参加したニジガクの初めてのフォース戦で戦った相手だったから。
そこで見たBUILD DiVERSのヒロトの操るコアガンダム(ユーラヴェンガンダム・マーズフォーガンダム)は、他のガンプラには無い魅力と強さに溢れた機体だった。
しかし、リゼのガンダムアニマリゼは、ヒロトのガンプラとは形こそ同じだが全く違う魅力を持っている。
「どんどん行くぜ!!……グッ!?」
『……あ?』
戦闘中、突然アニマリゼの動きが鈍くなった。
その隙に大鋼をアニマリゼを突き飛ばし、刀で彼の全身を切りつける。
高笑いしながらアニマリゼを痛めつける大鋼の姿を、かすみんと姫乃ハロは呆然と見ていた。
「り……リゼさんが……!さっきまであんなに強かったのに!!」
『リゼさん、どうしたんでしょうか……。』
「おそらく、ブレイクデカールの気に当てられたんだ……。」
「! シャフリさん!」
街の人達へ避難指示を出しながら、シャフリヤールがかすみんと姫乃ハロのところまでやって来た。
彼は突然動きが鈍くなったアニマリゼを見つめ、神妙な面持ちになる。
シャフリとリゼを交互に見て、かすみんがシャフリへと詰め寄った。
「シャフリさん、リゼさんは……!」
「……彼はね、ELダイバーなんだ。」
「え、ELダイバー!?リゼさんがぁ!?」
ELダイバー。
もはや説明不要なGBNに発生した電子生命体の総称。
GBNに生まれた新たな人類であると同時に、彼らはGBNに出た異変や異常に、通常のダイバー以上に過敏に反応し、影響を受けてしまう。
「それじゃあリゼさんがさっきから調子が悪そうだったのって、ブレイクデカールが近くにあったからって事ですか!?」
「そうなるね。このままでは、リゼが危ない……!」
『だったら、シャフリさんのガンプラで助けてください!』
「すまない、私は今回、展示用の百式しか持ち合わせていないんだ……くっ、セラヴィーさえあれば……あの程度のマスダイバーなど……!」
「かすみんもザクみんが出せれば……ん?ぽこーん!かすみん閃きました!」
「『?』」
~~
かすみん達がそんなやり取りをしている間に、アニマリゼは窮地に陥っていた。
ELダイバーであるリゼは、大鋼の使うブレイクデカールの影響により、本来の力が出せていない。
最初のうちは良かったが、時間が経つにつれて徐々に反応速度などに遅れが見受けられる。
アニマリゼアーマーのAIが自動でアニマリゼの四肢を動かし対応してはいるが、それでもブレイクデカールを使用して急激にスペックが上がっている大鋼相手にはどうしても及ばない。
『バトルカイ優勝者だからって警戒したが、大したこと無いなぁ!!』
「ぐぅぅ……!ち、ちくしょう……!」
『ザクみんはっしーーーーん!!!』
『なにっ!?ぐあっ!?』
「SDガンダム……かすみんか!?」
その時、いきなり飛んできたSDの黄色いシャアザクが、大鋼に強烈な頭突きを喰らわせた。
その場にしりもちをついた大鋼をよそに、そのシャアザク……ザクみんがアニマリゼの前に立つ。
『ザクみん呼び出し大成功です!』
「おまっ……どうやったんだよそれ!!」
『シャフリさんに手伝ってもらいました!』
かすみんがザクみんを呼び出せた理由。
かすみんは、ペリシアでガンプラを呼び出せるSSランクのシャフリに、いったんザクみんの所有権を譲渡した。
正確に言えばザクみんと展示用の百式の所有権を交換した。
それによりシャフリが代わりにザクみんを呼び出し、今かすみんはシャフリのザクみんに搭乗している状態になっている。
『MUTEKI MAZAKU-MIN』
『無敵合体!魔殺駆罠!!』
支援機のヤミちゃんと合体し、ザクみんは無敵武者 魔殺駆罠に。
アニマリゼの前に立ち、そのまま大鋼と取っ組み合いを始めた。
ザクみんの元ネタである『覇道武者 魔殺駆』と、敵の『機動武者 大鋼』は共に、『SDガンダム戦国伝 七人の超将軍編』に登場した、ライバル同士。
原作さながらの白兵戦を繰り広げ、刀と刀をぶつける。
だが、やはりブレイクデカールを使っている分、大鋼の方がスペックは圧倒的に高い。
『知ってるか?魔殺駆は原作だと、大鋼に負けたんだぜ!!』
『む~!魔殺駆じゃないもん!ザクみんだもん!!』
アニマリゼと違い、万全の態勢から参戦した魔殺駆罠だが、それでも大鋼の力に及ばない。
それでもかすみんはロータスチャレンジの時のバンシィ・ノワール戦のごとく大鋼に喰らい付き、機体のタフさを見せつける。
ジリジリと町のはずれまで少しずつ移動し、そして……、
『うわっ……!?』
『やったーーーー!!かかったーー!!ざまーみろですよーーー!!』
突然、大鋼の身体が地面の中に沈んだ。
見ると、そこにはMGサイズのガンプラであればすっぽり収まってしまうほどの巨大な落とし穴が。
なんと、かすみんは参戦する前に、ヤミちゃんを使って町はずれに大きな落とし穴を作っていた。
それを見て、リゼはかすみんの奇抜な戦法に苦笑。
姫乃ハロも呆然としていた。
『これで、かすみん達の勝ちですよーーー!!』
『………それはどうかなぁ?』
『はい?』
大鋼を落とし穴にはめて勝ち誇っていたかすみん。
しかし、大鋼のダイバーはニヤリと笑い、まったく焦りを見せていない。
すると、油断していた魔殺駆罠の背中を、何者かが斬りつけた。
『にゃああああ!!?』
「か、かすみん!!」
『あ、あれは……!』
ボディを切り裂かれ、その場に倒れ込む魔殺駆罠。
見て見ると、彼女の背後に、もう二機の機動武者 大鋼が現れた。
彼らは落とし穴に落ちている最初の大鋼を引き上げると、三機で並び立つ。
勿論、全員ブレイクデカールを使用していた。
『おせーよお前ら。』
『お前が先に突っ走ったんだろ。』
『ん?あれ、バトルカイ優勝のリゼじゃね?お前すげーの相手にしてんのなww』
『いやー、大したこと無かったぜ。やっぱ所詮ELダイバーだよなぁ。偽物の人間もどきのくせして他人のガンプラ使って、人間様に盾つこうだなんて十年はえーっての。』
倒れたアニマリゼと魔殺駆罠をあざ笑うマスダイバー達。
すると、ムッと表情を変えた姫乃ハロが彼らの前に出てきた。
余りにも小さい彼女に、当初マスダイバー達は気が付かなかったが、リゼとかすみんが姫乃ハロを呼ぶ声で、足元に姫乃ハロがいる事に気が付いた。
『少し、よろしいでしょうか。』
『なんだこのハロ……。』
『あなた方、リゼさんの事を馬鹿にしているようですが……そういうあなた方はどうなんでしょうか。』
『はぁ?』
『リゼさんは、確かに他人と同じガンプラを使っています。しかし、彼はそれを自分だけの物に昇華させています。対して、あなた方は全員全く同じガンプラを使っていますよね。』
『なんだコイツ。』
『それに、彼の事をELダイバーと馬鹿にしていますが、私から言わせればあなた方の方が偽物です。』
『……なんだと?』
『だってそうでしょう?違法な手段で力を手に入れて、それで人様に迷惑をかけているあなた方と、たとえ他人のガンプラを真似ようが、それを自分の力で強くしていったリゼさん。どちらが本物の力なのかは、火を見るよりも明らかです。』
『コイツ……黙って聞いてりゃばかにしやがって……!!』
「姫乃!!」
『姫乃せんぱぁい!!』
大鋼が、足を振り上げる。
姫乃ハロを潰そうとしている。
怖いが、死ぬわけでは無い。
そうまでして、姫乃はリゼを馬鹿にするマスダイバー達に文句を言いたかった。
恐怖で目を瞑る姫乃ハロ……その時、彼女たちの頭上がキラッと光り、上から巨大な何かが降って来た。
『『『!!?』』』
『……あれ?』
『あーーー!!あれはーーー!!』
かすみんが思わず声を上げる。
彼女たちの前に振って来たのは、かすみんや姫乃ハロもよく知るガンプラだった。
青いボディに、巨大なショルダーパーツ。
ベース機よりも細身にアレンジされた、モビルドールと見間違えるほどの美しいガンプラ。
『ようやく、見つけたわよ、マスダイバーの坊やたち、』
『カリン先輩!!』
『あら、かすみちゃん?どうしてこんな所に……ん?このハロは誰かしら?』
『か、かかか……果林さん!?』
『その声……もしかして姫乃ちゃん!?どうしてかすみちゃんと姫乃ちゃんが一緒にいるの!?』
現れたのは、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会でエマのスーパーヴェルデブラストガンダムと双璧を成す最強ダイバーの一人、朝香果林ことカリンとその愛機、キュベレイ・ビューティー。
アークの知らせを聞き胸騒ぎがした彼女は、近くで見つけた模型屋からGBNにログインし、このペリシアエリアへやって来た。
どうやらカリンの嫌な予感は当たっていたようで、彼女は倒れた魔殺駆罠とアニマリゼ、襲われそうになっている姫乃ハロを順番に見て状況を察したのか、再びマスダイバー達へと向き直った。
『そう言う事……。どうやら、私の可愛い後輩たちがずいぶんお世話になったみたいねぇ。』
艶やかにそう言うカリン。
しかし、その声色には少しばかりの怒りが混じっているのが、かすみんにはよくわかった。
キュベレイ・ビューティーが腕を広げると、リアスカートから無数のクリアファンネルが発射され、大鋼三機に襲い掛かる。
だが、ブレイクデカールを使用している大鋼はクリアファンネルを完全に見切っており、軽々とそれを避けたり撃ち落としたりして見せた。
『見えないファンネルだと!?だが、ブレイクデカールの前じゃそんなハッタリ……、』
『えぇ、もちろんわかってるわよ。』
『なっ……!?』
気付いた時には、大鋼はすでにキュベレイ・ビューティーに懐に入られていた。
そのまま彼女の発生させたビームサーベルに刀を持つ右腕を斬りおとされ、その場に倒れ込む。
それを見ていた他の大鋼たちは一斉にキュベレイ・ビューティーに襲い掛かったが、飛ばしたクリアファンネルを一か所に集め、シールド代わりに構えてその攻撃を防ぎ切った。
そして、大鋼が驚いているうちに姫乃ハロと魔殺駆罠を救出し、倒れていたアニマリゼの下へ飛んでいく。
その際に再びクリアファンネルを飛ばして、油断していた大鋼三機全員の大號弓を破壊した。
『な、なんだよこのキュベレイ!?めちゃくちゃ強いぞ!?』
『お、おい待てよ……アイツさっき、『カリン』って呼ばれてたよな……?それにあの青いキュベレイ……もしかして……!?』
『あら、私の事知ってくれていたのね。ウフフ、ありがとう♪』
にこっと笑うカリン。
心なしか少し不気味に見える。
キュベレイ・ビューティーはアニマリゼへ手を差し伸べ、彼はその手を掴んだ。
カリンの手を借りながら立ち上がったアニマリゼは視線をキュベレイ・ビューティーへと向ける。
『ありがとう、あなたがこの子たちを守ってくれたんでしょう?』
「いや、俺は……、」
『そうなんです!』
「姫乃……。」
『かすみちゃんのザクみんはダメージが大きいみたいね。アナタは、あと少しだけ行けるかしら?』
「……やってやるよ……!!」
『決まりね。』
そして並び立った、カリンのキュベレイ・ビューティーとリゼのガンダムアニマリゼ。
まずはアニマリゼが近接戦闘を仕掛ける為に、大鋼に向かって走って行った。
すでに飛び道具は失っているとはいえ、相手はブレイクデカール使用機三機。
中心に飛び込んだアニマリゼは、大鋼の攻撃を躱しつつ、ライオンと虎の腕力で大鋼をねじ伏せる。
勿論、そのままでは到底無理だが、その為にキュベレイ・ビューティーが後方支援でクリアファンネルを操り、大鋼の動きを妨害している。
アニマリゼを攻撃しようとするとその前面にファンネルが展開されて攻撃を妨害し、アニマリゼが攻撃する際にはファンネルが解かれて大鋼に攻撃を当てられる。
更にアニマリゼは背面のバックパックからビームサーベルを抜き取ると、鞭のようにそれを振い、大鋼たちの刀をへし折った。
『こ、こんな事あるかよ!!』
『相手はELダイバーでパクリガンプラなんだぞ!?』
『あら、真似をするって言うのは悪い事じゃないわよ。ガンプラバトルでもスクールアイドルでも、ライバルの技はどんどん盗んでいかなきゃ。そしてそれを一番魅せられるのは自分だって気概を持つ事が大事なんじゃないかしら。』
「確かに俺のガンプラはコアガンダムの真似かもしれねぇ。けど、コイツは俺が生み出した、俺自身だ!誰にも、偽物呼ばわりはさせねぇぞ!!」
飛び上がり、全身に刻まれた動物のエンブレムにエネルギーをチャージするアニマリゼ。
そして、チャージを終えると、キュベレイ・ビューティーのファンネルと共に、そのエネルギーを動物の形に変えて、必殺技『アニマランページ』を大鋼たちへと撃ち出した。
『う……うわあああああああ!!!』
爆散する三機の大鋼。
着地したガンダムアニマリゼとキュベレイ・ビューティー、そしてなんとか立ち上がった魔殺駆罠は、マスダイバーの撃破を喜び、その場でハイタッチをした。
~~
その後、シャフリの手引きにより、ペリシアの街は再興される事になった。
以前の騒動の時より被害は大きいが、大勢のビルダーの手を借りればそう遠くないうちに元に戻せるだろう。
すっかり元の大人しい性格に戻ったリゼは、アニマリゼから降りると姫乃ハロとかすみんに頭を下げた。
「ごめんなさい……偉そうなこと言っておいてすぐやられてしまいました……。」
「そんな事無いですよリゼさん!」
『リゼさんは私に大事な事を教えてくれました。』
「そんな……。」
『私、自分がどんなガンプラを選びたいのか、わかった気がします。』
「姫乃の力になれたのなら、良かったです。」
(この子さっきまでと全然性格違うわね……。)
元のリゼを知らないカリンはそんな事を考えながら彼らのやり取りを見ていた。
リゼがログアウトしようとすると、姫乃ハロはかすみんに抱きかかえられながら、彼に言った。
『今日はありがとうございました、リゼ先生!』
「……僕が、センセイ……?」
『私に大事な事を教えてくれた、リゼさんは私にとっての先生です。』
「……そう呼ばれるのは、嬉しいけど、少し恥ずかしい物ですね。帰ったら、テツに教えてあげよう。」
そうして、リゼはその場からログアウトして行った。
残されたカリンとかすみん、姫乃ハロもログアウトしようとすると、カリンがかすみんに耳打ちする。
「ねぇかすみちゃん……後でちょっと迎えに来てほしいんだけど……。」
「え、もしかしてまた迷子になってるんですかカリン先輩……さっきまであんなカッコよかったのにしまらないですよ。」
「うぅ……言わないでぇ……!」
涙目になりながらも、3人は無事にログアウト。
こうして、ペリシアのマスダイバー問題は解決した。
~~
ログアウトした姫乃は、かすみと共にすぐに物販コーナーに向かった。
彼女の目的のガンプラはいくつも在庫が重なっており、売り切れの心配は無さそうだった。
姫乃はそれを手に取り、ギュっと抱きしめた。
「姫乃先輩、それにするんですか?」
「はい。私は憧れの果林さんのようになりたい。そして、リゼさんのように自分だけの強さも手に入れたい。だから、果林さんと同じキュベレイがモチーフのこのガンプラで、私は私だけの強さを目指します。」
「フッフッフ、SDガンダムは奥が深いですよ~!」
「色々とご教授お願いします、かすみ先生♪」
「うぇっ!?か、かすみんが先生!?も、も~う……仕方無いですねぇ!」
まんざらでもない顔で笑うかすみ。
一緒に笑う姫乃の手には、果林と同じキュベレイをモチーフとした、かすみと同じSDガンダム系のガンプラ……SDガンダム三国伝の『貂蝉キュベレイ』が抱かれていた。
~~
数日経って、エマが帰国した。
同好会の部室でエマやかすみと一緒に、姫乃から送られてきた写真つきのメッセージを見る果林。
藤色の美しい和風のキュベレイの画像が添付されており、エマはそのガンプラの写真に『わぁ!』と声を上げる。
「すごく綺麗なガンプラ!コレ、姫乃ちゃんの?」
「えぇ。貂蝉キュベレイを改造したガンプラで、『藤姫』って名前らしいわよ。」
「綺麗な名前~。」
「かすみんがお手伝いしたんですよ!ここのお花の模様描いたのかすみんです!」
「これで藤黄もガンプラバトルを始めたし、いよいよライブの話を進められるわね。」
「果林ちゃんちゃんと姫乃ちゃんにお話ししてくれてたんだね。私、スイスにいる間ずっと果林ちゃんの事心配だったけど、ちゃんとやってくれたたんだね。偉い偉い♪」
「え?」
「……え?果林ちゃん?」
ここで、果林は思い出した。
姫乃に、ライブの話はしていない、と。
あの日はマスダイバーの事もあったし、迷子になっていてそれどころでは無かった。
果林は思わずかすみに助けを求める視線を向けるが、かすみは果林から目を逸らす。
そして、その話を聞いていたこのライブの発案者であるせつ菜とランジュが果林の下へとやって来た。
「かーりーんさーん……?」
「ひぃっ!?せ、せつ菜……こ、これは違うのよ!!決して忘れていたわけじゃ……、か、かすみちゃん!!」
「かすみん知りませーん。」
「ちゃんと当日中にお話しするように伝えていましたよねぇ……?」
「それはその……ら、ランジュ!!」
「コレは果林が悪いラ。」
その後、せつ菜から説教を喰らい始めた果林。
そのすぐ傍で、かすみがベッと舌を出す。
「まぁ、姫乃先輩にはかすみんからちゃんとお話ししておきましたけど。」
「そうなの?かすみちゃん偉い偉い♪」
多分果林は忘れてるだろうと思い、姫乃には先日かすみの方から話は通してある。
勿論結果は賛成、めでたく東雲と藤黄の両校とも参加してくれることになった。
怒られる果林の姿を見ながら、かすみは少し悪い顔で笑った。
「この前の果林先輩、カッコよかったので代りにここで痛い目見てもらいます!次に注目されるのは絶対かすみんなんですからね!!」
~にじビル毎回劇場~
第61回:あだ名で呼ばれたい
愛「アハハ!ゆうゆとかすみんの話しおもしろー!エマっちとカナちゃんも聞いてよー!あれ?そう言えばりなりーとミアチどこ行ったんだろう?ねぇせっつー、しおってぃー、二人どこ行ったか知らなーい?」
歩夢「いいなぁ……。」
しずく「いいですね。」
果林「ねぇ、愛。」
愛「ん?どうしたの歩夢、しずく、果林、ランジュ。」
ランジュ「なんでアタシ達ってあだ名無いの?不公平なんだけど!」
愛「んー……愛さん的には一番呼びやすい呼び方で呼んでるから、あんま気にした事なかったよ……ごめんね。」
しずく「私達にもあだ名下さい!」
愛「よーしわかった!愛さん、とびきりのあだ名を考えちゃうぞ!」
歩夢「ワクワク!」
愛「んー……まず歩夢は……あゆぴょん!」
歩夢「えぇ!?あ、あゆぴょんはやめてぇ!」
愛「ランジュは、ランラン。」
ランジュ「パンダじゃない。」
果林「パンダなら私がそのあだ名欲しいわ。」
愛「いや果林にランラン要素無いから……。しずくは……ミネバ・ザビ。」
しずく「『機動戦士ガンダムUC』、ガンダムチャンネルで随時無料公開中です♪(2021/8/14現在)」
愛「果林はー……うーん……か、かりんとう……果林だけに……?」
かすみ「何やってるんですかあの人達。」
侑「第12回愛ちゃんにあだ名つけてほしい会じゃない?」
かすみ「12回もやってるんですかあの変な会議。」