がさらじのスペシャルドラマ復活嬉しい。
ついに迎えた、流しそうめん同好会と麺料理部決戦の日。
その日は土曜日で学校そのものは休みであり、13時頃には合宿に行っている1年生たちが帰ってくる。
そんな日の朝から、流しそうめん同好会の部長と共に、スクールアイドル同好会とスクールアイドル部の9人が力を合わせて流しそうめん台を組み立てていた。
木工建築同好会の力を借りて作り上げた流しそうめん台のレーンは20個にも及び、これらを組み合わせて巨大な流しそうめん台を作り上げるのだ。
「皆!今日は朝早くから集まってくれてありがとう!」
「お礼を言うのはまだ早いわよ。そのセリフは、麺料理部に勝ってから言ってほしいわね。」
「ウフフ♪果林ちゃん、昨日は緊張して眠れてなかったよね♪」
「え、エマぁ!?」
「そうそう。果林ってば、眠れないからってボクの部屋に来たりしてさ。」
「ランジュのところにも来たわ。果林って意外と甘えん坊なのね!」
「み、ミアとランジュも!?もう!その話はいいでしょ!!」
「その話、彼方ちゃんすっごく興味あるな~。」
「私も!」
「か、彼方と部長まで……!?」
仲睦まじい3年生組とランジュ。
そんな彼女たちを眺めつつ、早速作業に取り掛かろうとする2年生組だったが、そんな中、侑は心配そうにランジュを見つめていた。
「侑ちゃん、どうしたの?」
「ねぇ歩夢、ランジュちゃんちょっとおかしくない?」
「ランジュちゃん?うーん、どうだろう……私はよくわからないかなぁ。」
「気のせいだったらいいんだけど……。」
朝来た時から、ランジュがずっと自分の左腕を抑えている。
そこは二日ほど前、ランジュが流しそうめん同好会の部員を説得しに行った時に謝ってドアに挟んでしまった場所。
その後は多少痛がってはいたものの平然としていた上に、ランジュ自身が大した事無いと言っていたが。
心配した侑は準備に取り掛かろうとするランジュに駆け寄った。
「ランジュちゃん!」
「侑!今日は頑張るわよ!」
「ねぇ、その腕……。」
「腕?あぁ、この間ぶつけたヤツね。全然痛くないから大丈夫よ!」
「……ちょっと見せて。」
「ちょっ、何するの!やめなさい!」
嫌がるランジュの腕をつかみ、無理やり袖をめくる。
案の定ランジュの腕には包帯が巻かれていたが、それを見て侑は絶句。
包帯で覆い切れていない部分が変色して、非常に痛々しい。
覆い切れていない箇所でこれなのだから、包帯の下を想像するだけで身の毛がよだつ。
「こ、これ……!?」
「も、無問題ラ!この程度の怪我、ランジュにとっては無いのも同じよ!」
「何言ってるの!早く病院で見てもらわないと!!」
「なになに~?どうしたの~?」
「ゆうゆとランジュ、何かあったの?」
「彼方さん愛ちゃん、ランジュちゃんが……むぐっ!?」
「何でもないわ!!さぁ、早く始めるわよ!!」
侑を口を押え、笑ってやり過ごすランジュ。
彼方も愛もその態度に違和感は覚えたが、せつ菜に呼ばれたのでそちらへ行ってしまった。
二人がいなくなるとそろそろ窒息しそうな侑を解放した。
「ぷはっ!どうして怪我の事言わなかったの……。」
「だって、言うと皆止めるでしょ。」
「そりゃそうだよ!こんな大怪我してるのに!」
「言ったでしょ。アタシは流しそうめん同好会の力になりたいの!この程度でへばってられないわ!」
「けど……、」
「ちゃんと終わったら病院へ行くわ!ね?」
「侑ちゃーん!ランジュちゃーん!こっち手伝ってー!」
「ほらほら!歩夢が呼んでるわよ!行きましょう!」
歩夢に呼ばれたランジュはいつもの様に笑うと、歩夢の方へ走っていく。
その姿を見て、侑は呟いた。
「……エゴだよ、それは……。」
~~
相変わらず、手伝いをするのはスクールアイドル同好会とスクールアイドル部ばかりで、流しそうめん同好会の他の部員はとうとう当日には現れなかった。
部長1人で侑達に指示を出し、自らも流しそうめん台の組み立て作業を行う。
巨大なアスレチックの様な流しそうめん台を組み立てるのは10人いても相当大変な作業だが、そのうち歩夢と彼方はそうめんの準備に取り掛からないといけない上に、部長は料理と組み立ての兼任作業。
それでも流しそうめん同好会部長は泣き言一つ言わず、的確な指示を侑達に与えていた。
「高咲さんとテイラーさん、二人でそっち支えててね!宮下さん、そこ縛って。」
「りょーかい!」
「部長ちゃ~ん、そうめん、こんな感じでいいかなぁ?」
「おぉ、さすが近江さんと上原さん!完璧!」
「そうめんって自分で作れるんだね~。あとで彼方ちゃんから教えてもらおうかな~!」
「もう、エマったら能天気なんだから……戦場での油断は命取りって、あなたいつも言ってるでしょ。油断しちゃダメよ。」
「えへへ、ごめんごめん。」
開戦まであとわずか。
時間が近づいてくるにつれて、開催場所となるグラウンドに生徒たちが集まり始めた。
休日だが、部活で出てきている生徒はたくさんおり、特に運動部は自分たちの活動場所が今回の対決の開催地となっているためほとんどの生徒が集まってきている。
当然、移動式キッチンを事前に用意していた麺料理部の部員も集まり、食材の運び入れも終わり準備万端。
部員も全員エプロンをつけている。
「麺料理部も準備万端って感じだね。」
「そうね。」
「ウフフ……荷造りの方はお済かしら?流しそうめん同好会さん?」
「! ヒノさん……。」
そこへ、敵情視察……というよりも、わざわざ煽る為に、麺料理部の部長であるヒノ・サヤカがやってきた。
彼女は他の部員と違いエプロンもマスクもつけておらず、煽るために差し出してきた指の爪にはネイル。
コレから料理をしようとする人間の姿にはとても見えない。
「ヒノさん、エプロンは?」
「必要ありませんわよ?」
「え?だってこれから料理するんだよね?」
「わたくしが出るまでもありませんわ。あなた達如き、彼女たちだけで十分でしょう?絶対にありえないと思いますが、わたくしの顔に泥を塗らないように善処していただきいものですわ。」
「なんて事言うのよ!お友達でしょう!?」
「お友達?わたくしがあの子たちと?ウフフ、鐘さん、アナタもう少し頭が良い方かと思っていましたが、とんだ見込み違いでしたわね。」
「なんですって!」
「そんなに怒らないで下さる?そうそう、一応少しお手伝いしてさしあげようかと思いまして……ほら、脚立を持ってこさせてあげましたわ。」
そう言うと、サヤカは彼女の付き人に流しそうめん台の組み立てに使う為の脚立を持ってこさせた。
突然の事に少し戸惑うが、一応ランジュはその脚立を受け取った。
「まぁ、せいぜい頑張ってくださいませ。これが流しそうめん同好会の最後のイベントになるのですから。オーホッホッホ!」
まるで悪役お嬢様のテンプレートの様なセリフを吐き、サヤカは麺料理部の下へと戻って行った。
今の言葉を聞いて、もちろん同好会の他のメンバーも憤慨。
「なんなのあの子……。」
「仲間に任せて自分は何もしないなんて……。」
「あんな奴に負けるわけには行かないわ!!急いで流しそうめん台を組み立てるわよ!!」
サヤカの態度を見て再び闘志を燃やした一同は、急いで流しそうめん台を組み立てる。
もうあまり時間は無い。
しかし全員の頑張りもあり、いよいよ完成が見えてきた。
「後はこの部品を付ければ完成だね!」
「なら最後はこのランジュに任せなさい!」
意気揚々と先ほどサヤカから受け取った脚立を立てて、ランジュはそれを登る。
ミアが最後の流しそうめん台のレーンを下からランジュへ渡すと、彼女はそれを取り付けて紐で縛る。
だが……、
ズキッ……!
「ッ……!あっ……!?」
最後の最後、ランジュが仕上げに紐を縛ったその時、怪我をしている腕に耐えがたい痛みが走った。
痛みのあまりにバランスを崩したランジュは、そのまま脚立ごと倒れてきた。
倒れた脚立と落ちたランジュが流しそうめん台にぶつかる。
当然、流しそうめん台は人間の体を支える程の強度は無い。
そして、1分も経たない内に、あれだけ時間をかけて組み上げた流しそうめん台は、見るも無残な姿へと変わり果ててしまった。
地面に倒れたランジュは血の気が引いた表情で、呆然と崩れた流しそうめん台を見つめた。
「あ……あぁ……!?」
「ランジュちゃん!?だ、大丈夫!?」
「な、流しそうめん台が……!!」
駆け寄った侑達の手を振り払い、腕を抑えながら壊れた流しそうめん台を眺める。
もはや、誰の目から見ても修繕不能なほど破壊されてしまった。
今の事故で周りがざわつき、全員の視線が流しそうめん同好会へと向けられる。
「ランジュ、その腕どうしたの!?は、腫れてるじゃない!?」
「びょ、病院に行った方が……。」
「まさか、こんな状態で今までずっと作業してたのか……?」
先ほどの事故で包帯がはずれ、とうとうその場にいる全員に怪我の事がばれてしまったランジュ。
その間に、愛が倒れた脚立を拾い上げると、その違和感に気付いた。
「!? これ……足の根元が壊れてる……?さっき倒れた時に壊れたんじゃない……最初から壊れた脚立をランジュに渡したって事!?」
「愛、そこをどいて……!」
「や、やめてくださいランジュさん!無理です!!」
せつ菜の静止も聞かずに、ランジュは壊れた流しそうめん台のレーンを手に取り、それを再び組み立てる為に作業を始めた。
当然、こんな状態で元に戻せるわけが無い。
「無理だよランジュちゃん!その腕じゃ!!それに、このそうめん台はもう……、」
「止めないで侑!コレを壊したのはランジュなの!だからランジュが直すの!!」
「でも、だからって!」
「コレはランジュがやらなくちゃいけないの!昔のランジュと同じことをしてるあの子たちを止められなかったら……アタシは、皆に合わせる顔が……!」
「エゴだよそれは!!」
ランジュの肩を掴んで、侑が彼女に怒鳴る。
滅多に怒鳴らない侑が大声を上げた事で、周りの者たち全員が静まり返った。
「ランジュちゃんが昔の事気にしてるのはわかってるよ。でも、そんな怪我して、それを皆に隠してまで頑張ってほしくないよ……。」
「どうして……。」
「友達の事なんだから、心配するのは当たり前だよ。一人で無茶するのはダメ……私は、経験があるからよくわかる……。」
侑にそう言われて、ランジュはハッとする。
忘れもしないひと月ほど前の話……バンシィ・ノワールによって自暴自棄に陥った侑。
たった一人でブレイクデカールを手に入れようとしていた侑は、周りの人間すべてを遠ざけ、最終的には自分の殻にこもってしまっていた。
ランジュが麺料理部のやっている事を昔の自分に重ねているように、侑も今のランジュをその時の自分に重ねてしまっている。
あの時の侑がどれほど辛い状況だったか、ベアッガイフェスの時にその場にいたランジュは良く知っている。
「ごめんなさい、ランジュまた間違えてしまったわ……。」
「ううん。ランジュちゃんは悪くない。悪いのは……、」
そうして振り返った侑の目線の先にいたのは、ランジュを見て不敵な笑みを浮かべるヒノ・サヤカ。
流しそうめん台を壊すため、わざと不具合のある脚立をランジュに渡した彼女を絶対に許せない。
しかし、許せないところで、もはやこの壊れた流しそうめん台はどうしようもないのも事実。
「2人とも。」
「! 部長さん……。」
その時侑達に声を掛けてきたのは、流しそうめん同好会の部長。
彼女は表情は笑っていたが、それが2人を安心させるための作り物の笑顔である事は誰がどう見ても明らか。
部長は侑とランジュの肩に手を置き、2人に頭を下げた。
「私達の為に、こんなに頑張ってくれてありがとう。その気持ちだけで、私はとっても嬉しいよ!」
「ま、まだあきらめちゃだめよ!!」
「そうですよ!まだ何か……何か出来る事があるはずだよ!」
「ううん。元から勝てる勝負じゃ無かったんだよ。それに、たとえ勝ったとしても、今の流しそうめん同好会は私一人だけ……それじゃあ、続ける意味なんて……、」
「一人じゃないですよ!部長!!」
「え?あ、あれは……!?」
突然、流しそうめん同好会部長を呼ぶ声がして、全員がその声のする方向を向いた。
そこにはたくさんの流しそうめん台のレーンを乗せた軽トラがおり、その周りには見覚えのある数名の女生徒達の姿が。
あれは紛れも無く……、
「な、流しそうめん同好会の他の部員の皆!?ぶ、部長さん!!」
「皆……どうして……!?」
そこに現れたのは、部活に来なくなったはずの流しそうめん同好会のメンバー達。
部長以外の全員がそこに集結しており、代表して出てきた2年生の生徒が部長の前に。
彼女は先日、侑とランジュが寮を訪ねた生徒だ。
「あの流しそうめん台って……?」
「……ごめんなさい!!」
「え?」
「私達、ヒノさんから勝負を持ちかけた時、部長に心配を掛けたく無くて……それで皆で勝負の準備をしてたんです。でも、まさかこんな事になってるだなんて……。」
「そうだったんだ……。」
その言葉を聞いて、侑はそう言えばと思い出す。
ランジュと共に寮を訪ねた時、彼女は『用事がある』と言って一方的に侑達を追い出していた。
その用事というのが、あの流しそうめん台を準備する事だったのだろう。
納得して頷いていると、部員の一人がランジュと侑のところまでやって来た。
「鐘さん、あの時はごめんね。腕、私のせいで……。」
「しょげる前にまずはあのコンチクショウをぎゃふんと言わせるわよ!だから、気にしなくていいわ!無問題ラ!」
「あ、ありがとう……!」
「でも、今からこれを組み立てて、間に合うのかな?」
「それには心配ご無用!」
そう言いながらウインクした彼女……なお、彼女は流しそうめん同好会の副部長らしい。
副部長は放送部から借りてきた拡声器を手に取ると、先ほどの壊れた脚立を他の部員に支えてもらいながらそれに登る。
そして、大きく息を吸い込み、拡声器を使って叫んだ。
「会場にいるみなさーーーーーん!!!このままでは私達の準備がまにあいませーーーーん!!!皆さんの力が必要でーーーーす!!!どうか、流しそうめん同好会に力をかしてくださーーーーい!!!」
「!? な、何を言ってるんですのあの子は!?」
副部長の突然の叫びに、驚くサヤカ。
驚いている麺料理部とは逆に、その場にいた他の生徒たちは興味を持ってゾロゾロと流しそうめん同好会の下へと集まって来た。
「え?もしかして私達も参加できるの?」
「へー、面白そう!」
「いつもおいしいそうめん食べさせてもらってるし、たまにはお手伝いしないとね。」
「私、果林先輩のファンだけど、手伝い終わった後にサインとかもらえるのかなぁ?」
様々な理由から集まって来た生徒たちは、流しそうめん同好会の部員から次々と部品を受け取る。
壊れた流しそうめん台の残った部分をベースに、そこに部品を取り付けて巨大なアスレチック型の流しそうめん台を組み立てていく。
先ほどまでは10人で作業していた為時間がかかっていたが、今この場にいる生徒は40名以上。
そのほぼ全ての生徒たちが流しそうめん同好会に手を貸している。
もちろん、その場を仕切るのは流しそうめん同好会の部長。
副部長の持ってきた設計図を基に的確な指示を出し、1時間も経たないうちに巨大なアスレチック型の流しそうめん台が組み上がっていく。
その様子に、サヤカはもちろん、スクールアイドル同好会の面々も圧倒されていた。
「こ、こんなのルール違反ですわ!!他の生徒の手を借りるだなんて!!」
「いいえ、ルール違反ではありませんよ。」
「!?」
反発しようとするサヤカだったが、それをせつ菜が止めた。
せつ菜は侑とランジュから聞いた今回の対決のルールをメモにまとめていて、それをサヤカに突き付けた。
「今回の対決によって定められた明確な規定は投票に関するルールのみ。他の生徒の手を借りる事は規定違反とはなりません。」
「そ、そんなの屁理屈ですわ!!」
「えぇ、そうかもしれません。ですが、彼女たちの表情を見てみてください。」
「顔……?」
せつ菜が指差した先を見るサヤカ。
流しそうめん同好会の手伝いをする生徒たちは、全員とても楽しそうに作業をしていた。
時々ふざけ合ったり冗談を言ったりして、和気藹々としている彼女たちの姿は、サヤカが雇った事務的に料理をする麺料理部の姿とは対照的だった。
「今の彼女たちは本当に楽しんでいます。心の底から、大好きな事に打ち込んでいます。」
「どうして……!?」
「流しそうめん同好会は、私達とスクールアイドルフェスティバルを盛り上げてくれた仲間でもあります。今まで築き上げてきた信頼関係、それこそが彼女たちの本当の武器です。」
ようやく完成に近づいてきた巨大流しそうめん台。
そこへ、完成した手作りそうめんを持って歩夢と彼方がやってきた。
色とりどりの麺に、その場にいる全員が『おぉ!』と歓声を上げた。
「うわー!カラフルなそうめん!美味しそう!」
「ウフフ♪張り切っちゃった!」
「色んなお野菜を練り込んでるから健康にもよくてとっても美味しいよ~!」
「このトリコロールのそうめんってどうやって作ったの?」
「企業秘密。」
カラフルな面に感動していると、流しそうめん同好会部長が流しそうめん台に水を流すためのホースを持ってきた。
そして、それをランジュに差し出す。
「ねぇランジュちゃん、私達の代わりにコレに水流してくれないかな?」
「いいの?」
「うん、皆もそれでいいよね?」
「「「さんせーい!!」」」
今回、一番頑張ってくれたランジュに、一番の大役を任せたいという流しそうめん同好会一同。
承諾したランジュがホースを受け取ると、愛がランジュを肩車してくれた。
「きゃあ!?愛!?」
「脚立は危ないからねー!届くかな?」
「十分だわ!さぁ、ショータイムよ!!」
決め台詞と共に、ランジュが流しそうめん台にホースをセット。
するとそこから程よい勢いで水が流れ始め、ついに流しそうめん同好会の巨大アスレチック型の流しそうめん台が完成した。
気付けばすでに開戦時間はとっくに過ぎており、手伝ってくれた生徒たちは今か今かと流れてくるそうめんを待ちわびている。
侑から歩夢達が作ってくれたそうめんを受け取ると、ランジュが流しそうめん台にそうめんを流し始めた。
「んー!美味しい!」
「ホントホント!力仕事した後だから気持ちいいね!」
「このそうめん変わった味するね?なんだろうこれ……青梗菜?」
「とってもボーノ!!」
「エマ……アナタ、一度にたくさん取り過ぎよ……。」
「果林ちゃん、戦場での油断は命取りなんだよ。」
「絶対今言うべきセリフじゃないわよそれ……。」
多くの生徒たちが流しそうめん同好会に集まる一方、麺料理部の方の料理に集まる生徒はごく少数。
もはや誰がどう見ても、麺料理部に勝ち目が無いのは明らかだった。
「なんでですの……?なんでですの!!せっかく念を入れて脚立に細工までしたのに!!」
「当たり前だわ!!」
「ランジュさん……侑さんも。」
せつ菜とサヤカの下にやってきたランジュと侑。
ランジュは落ち込むサヤカの前にやって来て、彼女に言った。
「ねぇアナタ、同好会ってどういう意味だかわかるかしら?」
「ど、同好会の意味?」
「『同』じものが『好』きな人達が集まる『会』で、同好会なのよ!だからあの子たちのところには、同じ物が好きな人達が集まった。だからあなた達に勝ったの!」
「ヒノさん、たとえ権力やお金で人を集めたとしても、それは本当にヒノさんの仲間って言えるのかな?」
「わ、わたくしに仲間なんて……!!」
「きゃあ!!このパスタ、とってもおいしそう!ねぇねぇ見てよ侑!お肉たくさん入ってるわコレ!」
「ら、ランジュちゃん……。」
突然、ランジュが声を上げて、麺料理部のパスタに喰い付いた。
どうやら相当お腹が空いていたようで、置かれたパスタを手に取った。
「ねぇねぇ!これ、食べてもいいのよね?勝負だもの!」
「え、えぇ……構いませんわ……。」
「ランジュもうお腹ペコペコだったのよ!いただきまーす!モグモグ……ん~!とっても美味しいわ!」
「お、美味しいですの……?」
先ほどまでサヤカを敵対視していたランジュが、麺料理部の料理を食べて大声でその料理を称賛。
その皿を持って、流しそうめん同好会のところまで行くと、それをそこにいた生徒数名におすそ分け。
それを食べた彼女たちも、その美味しさに心を奪われた。
「うわっ!美味しい!」
「これ、麺料理部で作ったの?すごーい!」
「麺料理部……ちょっと興味あるかも……ねぇヒノさん、兼部でもいいなら少し見学したいんだけど、いいかな?」
「え……。」
「ほら、あんな事しなくても、仲間は見つかるよ。ね?」
「……ですが、麺料理部は……、」
約束通り、流しそうめん同好会が勝利した場合、麺料理部は設立されない。
つまり、廃部となるのだ。
今更仲間が見つかったところで……そう考えている時、グラウンドに旅行用のカバンを持った女生徒が4名、入って来た。
それは、たった今合宿から帰って来たニジガク同好会1年生4人組……かすみ、しずく、璃奈、栞子の4名。
「な、何をしているんですか!?」
「あ、栞子ちゃん達おかえりー。」
「何の騒ぎですかコレは!?」
当然、今回の事件を知らない生徒会長の栞子はこの状況に混乱。
お腹が空いている他の1年生たちは流しそうめん同好会の方で流しそうめんをご馳走になった。
事の経緯をせつ菜から栞子に説明し、この状況を把握した栞子は『はぁ』とため息をついた。
「ヒノさん、何度も申しあげたとおり、流しそうめん同好会を廃部にする事などありえません。いいですか?流しそうめん同好会はただ毎日そうめんを食べている部活では無いのです。彼女たちは日々ボランティア活動として、街のお祭りや児童館のイベントなどに無償で流しそうめんを提供してくれているんです。彼女たちの活動は街中に広く浸透していて、生徒会としても非常に高く、彼女たちを評価しています。廃部だんてとんでもありません。」
((流しそうめん同好会ってそんなに真面目な部活だったんだ……。))
細かいところまで把握していなかったせつ菜と、何も知らなかった侑は改めて流しそうめん同好会に感心。
しかし、このままでは麺料理部が廃部となってしまう。
だが、そこへ栞子が『ですが』と付け加えた。
「部員が3年生のみのラーメン研究会が、全ての部員が引退して休部状態となっています。新入部員の目処もついておらず、OGの方々が納得して下さっているので、そこでよければ部室を用意しますよ。」
「い、いいんですの……!?」
「えぇ、もちろん。生徒の自由を阻害するつもりはありません。このお話はまだ決定では無いのですが、反対意見も特に出ていないので、近いうちに可決すると思います。そこで、思う存分活動してください。」
サヤカは父親の会社を継ぐために、麺料理を研究できる場が欲しかった。
その為に同じく麺系の部活で夏場しか活動できそうにない、流しそうめん同好会に目を付けていた。
今日この時まで、他の部員に料理をさせて自分は新商品の案を考えられたらそれでいいと考えていた。
だが、皆で楽しそうにそうめんをつつく流しそうめん同好会を見て、不覚にも、『うらやましい』と考えてしまった。
麺料理部の料理に感動した入部希望者達がサヤカの下に集まる。
そこへ流しそうめん同好会の部長もやって来て、サヤカにめんツユの入ったお椀を渡した。
「コレは……?」
「ヒノさんも食べよう!流しそうめん!」
「わたくしを、許すつもりですの……!?」
「実際に怪我させられたランジュちゃんが許しちゃってるし、私達もヒノさん達も好きに活動できるんだから、それでいいじゃん!今までの事はそうめんと一緒に水に流して、一緒にそうめん食べようよ!」
「……あなた達、相当なお人よしですわ……。」
「ヒノさん、今流すのは涙じゃない。そうめんだよ。」
流しそうめん同好会の部長から、めんツユを受け取るサヤカ。
流しそうめん同好会と麺料理部、ニジガクが誇る麺類二大勢力の決着に、その場にいた全員が歓声を上げた。
~~
病院で検査した結果、ランジュの腕は打撲だった。
だが放置していた期間が長かったため、念のためにギプスを付けてもらった。
一緒に病院に行った帰り道、ランジュが侑に『あーあ』と不満げな声を漏らした。
「これじゃあ練習出来ないわ~……。」
「アハハ……でも安静にしとかないと、もっと長引いちゃうよ。」
「わかってるわよぉ。でも、ミアに迷惑かかるわねぇ……そうだ!ランジュが治るまで、ミアを同好会で練習させてあげてくれないかしら?」
ランジュにそうお願いされると、侑の足が止まった。
侑はグッと拳を握り、ランジュに言った。
「ねぇランジュちゃん、やっぱり……一緒にやらない?同好会の皆と一緒に。もちろんミアちゃんも。」
「……それは、部を解散して同好会に入れって事?」
「同好会とか部とか関係無しに、やっぱり私はスクールアイドルが好きだし、ランジュちゃんとミアちゃんの事も応援したいって思ってる。仲間だって、友達だって思ってる……ごめん、コレは私のエゴかもしれない……というより、単なるわがままなんだけど……私は、ニジガクのスクールアイドル12人皆が好きなんだ!だから……、」
侑が言い終わる前に、ランジュが侑の口を指でふさいだ。
驚いた侑から指を離すと、ランジュはニコッと笑った。
「とっても嬉しい申し出だわ!」
「! じゃあ……!」
「けど、今すぐには答えは出せない。ランジュとミアは、まだ部でやる事があるの。」
「そ、そうだよね……。」
『でも』と、すぐにランジュが付け加えた。
彼女は動く方の腕で鞄を開けると、そこから自分の愛機であるシランジュを取り出し、侑に見せつけた。
「でも、そうね……あなた達のフォースになら、入ってあげてもいいわ。」
「え?ふぉ、フォースに!?ホント!?」
「えぇ!ランジュ、あなた達ともっとたくさんガンプラバトルがしたいわ!アタシとミアはフォースは組んでないし、ミアも璃奈がいるなら喜んで入ってくれると思う。」
「あ、ありがとう!やった……やったぁ!」
「喜び過ぎよ!まぁ、このランジュが入るんだもの!当然よね!」
「勿論だよ!すっごいトキメキー!これからよろしくねランジュちゃん!!」
ランジュ達はスクールアイドル同好会にはまだ加入してくれなかった。
でも、GBNのフォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』になら、加入してもらえる。
侑も自分のカバンから愛機のレインボーユニコーンガンダムを取り出すと、それをランジュのシランジュとコツンと合わせる。
流しそうめん同好会の一件を経て、フォースとしてのスクールアイドル同好会は、ランジュとミアという新しい仲間を手に入れた。
~にじビル毎回劇場~
第67回:スクールアイドルは楽しい!
モモカ「あー、やっぱり可愛いなぁ。」
侑「モモちゃん何見てるの?」
モモカ「これこれ!ニジガクのライブ映像!」
侑「あ、見てくれてるんだ!ありがとう!……って、コレ私も出たヤツじゃん!?恥ずかしいよ~!!」
モモカ「いいじゃん可愛いんだから!」
侑「う~~……!」
モモカ「でも皆楽しそうだなー。」
侑「うん、皆凄く楽しんでるよ!皆それぞれ違った魅力があって、目が離せなくてときめいちゃう!」
モモカ「私もやってみよっかなー。」
侑「ホントに!?絶対応援するよ!!ライブいつにする!?私にも手伝わせて!!」
モモカ「じょ、冗談だって冗談!私バイトとかあるし!」
侑「えー……残念……。」
マギー「それじゃあ、アタシもやってみようかしらん?」
侑「え?」
モモカ「え?」
マギー「え?」