ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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ガンダムヴァーチェVS1年生チーム

今からおよそ4年前。

GBNのサービス開始からまだ幾ばくも無く、ビルドダイバーズすらも存在しなかった頃。

 

当時、ニルスは新世代ガンプラバトル『ガンダムバトル・ネクサスオンライン』のプロジェクトの第一人者として、開発チームを引っ張っていた。

所持しているガンプラを壊さずに、何度でもバトルを行える画期的なガンプラバトルの開発に、彼と、もう1人のGBNの第一人者である男……カツラギは、このプロジェクトに情熱を注いでいた。

 

 

しかし、このプロジェクトの最中、事故が起きた。

 

 

GBN内の致命的なバグの大量発生により、システムが暴走を起こしてしまったのだ。

それにより研究所内の全ての機器が異常を引き起こし、その際に発生した火災によりチームのメンバー2名と、その家族が犠牲となってしまった。

 

チームメンバーは命を落とし、彼らの娘は身体に一生消えない傷を残す結果となった。

 

 

この事故以来、GBNの上層部はゲーム内のバグに関しては一切の妥協も許さない。

それが、亡くなった彼らの仲間とその娘へのせめてもの弔いだと信じて。

 

 

 

~~

 

 

かすみ達がログインした後、薫子はそんな話をニルスから聞いた。

システムが暴走しているのを目にした彼は、明らかに普通では無かった。

昨日まで温厚だったニルスが、声を荒げて『人命に関わる』と言った事で、薫子はそんな気はしていた。

過去の話をする彼の顔はとても辛そうで、薫子はそんな彼の肩を叩く。

 

「そんな事が……。」

「私達は決してあの事件を忘れてはならない……その為にも、全てのバグは一遍も残さずに消去しなければならないのです。でも、彼女たちは大丈夫でしょうか……。」

 

 

ビルドリアルのディメンションへと潜り込んだ1年生チームの映像をモニターで確認しながら、ニルスは不安げな声を漏らす。

だが、そんな心配はいらないと、隣にいた薫子が笑顔で言った。

 

 

「大丈夫、あの子たちはアタシの教え子で、将来有望なスクールアイドルだからね!きっとやり遂げてくれるさ!」

「スクールアイドル……。」

「? どうしたの?」

「あぁ、いえ……事故に巻き込まれてしまった彼らの娘さんも、スクールアイドルというものに憧れていたので……。」

 

 

再びモニターを見るニルスと薫子。

2人は画面を睨みつけるように見入りながら、4人の無事を祈った。

 

 

 

~~

 

GBNのディメンションの中では、崩壊していく世界を突き進む4機のガンプラの姿があった。

 

無敵武者魔殺駆罠、O-ドリーガンダム、AEドム、デスティニーフリーダムガンダムの4機。

 

ニルスから送られてくるマップのポイントを目指し、速度を上げる。

そんな時、彼女たちの目の前に、空の向こう側から飛んでくる複数の機影が確認された。

数はおおよそ10機……その全てが全く同じモビルスーツだった。

 

 

『接近してくる機影を確認!あれは……ストライクガンダム?』

 

 

璃奈がレーダーと目視で確認したが、向かってくる機影の正体は間違いなく『機動戦士ガンダムSEED』に登場する前期主役モビルスーツである、『ストライクガンダム』

璃奈の尊敬するイオリ・セイの愛機であるビルドストライクレイジングスターの元となった機体でもある。

 

 

『あんなにたくさんのストライクガンダムがどうして!?』

 

『皆さん、落ち着いてください。』

 

『ニルス先生!』

 

 

焦っているしずくのO-ドリーへ、現実世界からニルスが通信を送って来た。

彼はやってきた敵の存在を彼女たちへ伝える。

 

 

『彼らは『エントリーグレード』、初心者用のガンプラです。このディメンションが正式実装された際の初心者用の仮想的として登録されていた物が暴走しているようです。そこまでの強敵ではありませんが、数が集まれば厄介な存在です。』

「って、なんか背中に色々くっ付けてるんですけどぉ!?」

『あれはエールストライカーパック。HGのストライクガンダムと互換性があるみたい。』

 

 

慌てるかすみに、冷静に分析した璃奈が淡々と言う。

魔殺駆罠の姿を確認したストライクガンダム達は全員で一斉に武器を構えると、そのうちの一体が魔殺駆罠を目掛けてビームサーベルを振り下ろしてきた。

悲鳴をあげるかすみ……だが、そんな彼女の前に、4枚の翼を広げた翡翠色のガンプラが割り込み、左手の甲から発生させたビームバリアでストライクガンダムの攻撃を防ぎ切った。

 

 

「し、しお子!」

『皆さんは先へ行ってください!このストライクガンダムの相手は、私が務めます!』

『でも栞子さん1人じゃ!』

「ご心配ありがとうございます、しずくさん。ですが大丈夫です。私とデスティニーフリーダムはこのぐらいの相手に遅れは取りません。』

『行こう、しずくちゃん、かすみちゃん。』

「りな子……。」

『栞子ちゃん、お願い。』

「ありがとうございます璃奈さん。」

 

 

AEドムがO-ドリーと魔殺駆罠の手を引き、デスティニーフリーダムを置いて3機は先へと進む。

何体かのストライクガンダムがそれを追おうとするが、ビームライフルでそれを牽制したデスティニーフリーダムが彼女たちを追う事を許さない。

腰に下げたコレクションアロンダイトを構え、ストライクガンダム達へと向けた。

 

 

『三船栞子、デスティニーフリーダムガンダム……参ります!!』

 

 

 

 

~~

 

 

栞子がエントリーグレードのストライクガンダムを食い止めている間に、先へと進む3機。

時々かすみが後ろをちらっと見ては、置いて行ってしまった栞子の心配をしている。

しかし悠長にしている時間も無い。

急いで問題を解決する事が、置いて行ってしまった栞子への手向けとなるだろう。

 

 

『! かすみちゃん!』

「え?うわっ!?」

 

 

璃奈が叫ぶと、魔殺駆罠の頭上から巨大なモビルスーツが、彼女を目掛けて殴り掛かってきた。

魔殺駆罠を押しのけてAEドムがそのモビルスーツの拳を受け止め、しばらくにらみ合った後に双方地面へと叩き落された。

起き上がったそのガンプラは全身がクリアパーツで作られており、璃奈のAEドムの元となったドムと配色は似ている。

先ほどのストライクガンダムと違って一機のみではあるが、原作での強さはストライクガンダムとは比較にならないほどのガンプラだった。

 

 

『これは、ジオング……?』

『それはRGのクリアVerのジオングです。リアルグレードがメインのビルドリアルディメンションなので、相応しいガンプラをこのディメンションのラスボスに据えていたのですが……。』

 

 

ニルスが通信で、出現した敵の正体を教えてくれた。

元々はガンダムベース限定で販売される予定のRGのジオング、そのクリアVer。

内部のディティールが透けて見えて、一見耐久性の低そうに見えるが、このディメンションのラスボスと言う事だけありその性能は他のガンプラとはけた違い。

AEドムと取っ組み合いながら魔殺駆罠とO-ドリーを襲おうとするが、AEドムは内部の電動フレームをフル可動させジオングを押さえつける。

 

 

『かすみちゃん、しずくちゃん、ここは私が!』

『璃奈さん!!』

「りな子1人で大丈夫!?」

『急がないとラボが大変な事になっちゃう!私は大丈夫だから、早く!』

「……わかった!しず子、行こう!」

『璃奈さん……あとで絶対に合流しようね!!』

 

 

AEドムを残し、ニルスの案内に従いながら魔殺駆罠とO-ドリーは制御装置を目指して飛び立つ。

ジオングとの取っ組み合いを続けるAEドムは2人が見えなくなった事を確認すると、ジオングの手を離し、背中に背負った二つのドムちゃんメガランチャーへと手を伸ばした。

 

 

『天王寺璃奈、AEドム、行きます!!』

 

 

 

 

~~

 

モニター越しにデスティニーフリーダムとAEドムの戦闘を確認するニルスと薫子。

2人ともかなり苦戦を強いられている。

心配そうに2人を見守っていた薫子が、ニルスへ向かって聞いてきた。

 

「制御装置ってやつにはまだつかないの?」

「もうすぐのはずです。中須さんと桜坂さんがすぐ近くに……ん?この反応は……。」

「どうしたの?」

 

 

 

~~

 

「りな子としお子……大丈夫かな……。」

『あの二人ならきっと大丈夫、信じようよかすみさん!』

「うん……。」

 

『中須さん、桜坂さん、もうすぐです!その先に、制御装置があります!辿り着いたら、今から送るセキュリティコードを制御装置に直接入力して下さい!』

 

ニルスから送られてきたセキュリティコードを確認し、ついに2人は制御装置の場所へとたどり着いた。

そこは現実の場所に照らし合わせれば静岡県の沼津市の海の上。

本来であれば非常に景観の良い場所であり、今は使われなくなった高台の上の高校や老舗の旅館、富士山が良く見える。

そんな場所の海の上の空に浮かんでいる、巨大なクリスタル型のコンピューターこそが、このディメンションの制御装置。

 

 

「見つけた!アレだ!!」

『待ってかすみさん!何かいる!』

 

 

しずくが指差した先、制御装置の隣にいたのは巨大なモビルスーツ。

その大きさとディティールの多さから、グレードはMG。

全身のカラーはホワイトで、塗装したというよりはサーフェイサーを吹き付けてそのままにしたようなガンプラ。

2人はこのガンプラを良く知っている……というよりも、昨日戦ったばかりのガンプラ。

 

 

『あれは、ヴァーチェ?』

「ヴァーチェって、昨日戦ったガンプラだよね?どうしてそんなのがあそこに……。」

 

 

かすみとしずくが首をかしげていると、ヴァーチェは2人へ向けてGNキャノンを向けてきた。

そのまま発砲して2人を攻撃するが、O-ドリーが背中のGNドライブからクアトロフルセイバーを取り外し、その攻撃を切り裂く。

その間にヴァーチェはいつの間にか2人の前まで接近してきていて、拳を握って魔殺駆罠を殴り飛ばした。

 

 

「うわぁああ!!」

『か、かすみさん!!この……!!』

 

 

O-ドリーは魔殺駆罠を殴り飛ばしたヴァーチェへと剣を振う。

だが、MGのガンプラは大きい分プラが厚めに作られているのか、左腕でガードされて剣が刺さらない。

一旦引き、魔殺駆罠の救出へと向かったO-ドリーが、彼女の手を取った。

 

 

『大丈夫かすみさん!?』

「うん……なんとか……あのガンプラ、昨日あんなに強かったっけ……?」

『昨日は私達の実力に合わせてたって言ってたよね?って言う事は、あれがあのガンプラの本当の実力ってことだね。』

「マスターグレードって大きいなって思ってたけど、大きい分やっぱり強いんだね。」

『そうだね。でも、皆を助ける為にもあのガンプラを倒さなきゃ!』

「うん……よし、いっくぞーーーー!!」

 

 

O-ドリーと共に体勢を立て直した魔殺駆罠が、再びヴァーチェへと向かって行った。

ヴァーチェはその体格を生かした重量感のある攻撃を2人へと放ち、そのたびに2人はガードして攻める体勢を立て直す。

だが、昨日のテストの時とは違い100%の力を発揮しているヴァーチェにはHGのO-ドリーと、SDの魔殺駆罠ではいささか火力が足りず、2人とも簡単にあしらわれてしまう。

 

 

~~

 

 

 

「ちょっと……なんかアイツ強すぎ無い……?あの二人が全然歯が立たないなんて……。」

「……もしかしてあのヴァーチェは……。」

「なに?どうかしたの?」

 

 

モニター越しにかすみとしずくを見守りながら、ニルスは眉を細めた。

彼の視線は、モニターからテスト室に置かれている昨日のテスト用ガンダムヴァーチェへと移る。

 

思えば、昨日から違和感はあった。

指示をしていない行動や、ニルスのコントロールを受け付けない動作。

そして、今回のシステムの暴走。

 

彼は色々と考え、先ほどの反応と合わせて、薫子に聞こえないようにつぶやいた。

 

 

「まさか、あのヴァーチェ自身が意志を持っているとでも言うのか……?ガンプラそのものが、ELダイバー化しているとでも……?」

 

 

 

 

~~

 

 

ヴァーチェ相手に手も足も出ないかすみとしずくは、ヴァーチェのGNバズーカの一撃を受けて海へと叩き落された。

その衝撃で魔殺駆罠の左腕が故障してしまったのか、一切動かない。

この状態では魔殺駆罠最大の武器である二連新黒星砲の反動に耐えられない為、武器は接近戦用の刀のみ。

O-ドリーも大技を何度も喰らっているため、かなりボロボロで満身創痍だ。

 

「つ、強い……!」

『私とかすみさんの攻撃が全然歯が立たないなんて。』

「……私達が必殺技を使えれば……。」

 

 

そう言いながら、かすみはしずくの方を見た。

確かに、必殺技を使えば暴走状態のMGのガンプラだって倒せるかもしれない。

もしこの場に璃奈と栞子がいたとしても、彼女たちの必殺技の相方のミアとせつ菜がいない為2人では必殺技は使えない。

可能性があるとすれば、かすみとしずくが今、この場で新必殺技を生み出す事、それだけだ。

 

 

「……だけど、今までどれだけ頑張っても使えなかった必殺技が、こんな時に都合よく出来るわけないじゃん……。」

『かすみさん……。』

「あんなのに、勝てるわけ……!」

 

 

魔殺駆罠が刀を降ろしそうになるが、その手をO-ドリーが止める。

O-ドリーも右手でクアトロフルセイバーを握り、しずくはかすみの方を振り向いた。

 

 

『私は、出来るって信じてるよ。』

「しず子……。」

『ニルス先生も言ってたでしょ?ガンプラと仲間を信じる心が、必殺技を生むんだって。私は、O-ドリーを信じてるよ。この子は、私達4人で作り上げたガンプラだから。それに、私は必殺技を使うんだったら、その相手は絶対にかすみさんだって思ってた。』

「どうして?」

『だって……私は、中須かすみさんの事、大好きだから!かすみさんだって、前に言ってくれたでしょ?』

 

 

 

よくそんな事覚えてるなと思いながら、かすみは今まで皆がどんな時に必殺技を生んできたかを振り返ってみた。

 

果林と愛も、せつ菜と栞子も、侑と歩夢も、エマと彼方も、璃奈とミアも、決して優勢とは言えない逆境の中で、お互いを信じ、ガンプラを信じたうえで必殺技が生まれた。

 

刀を握る手に力を入れ、再び魔殺駆罠は立ち上がる。

O-ドリーと共に、制御装置を乗っ取るヴァーチェを見据える。

 

 

「かすみんだってザクみんの事信じてるし!それに……、」

『ん?』

「しず子の事も……。」

『ふふ、よくできました♪』

「こんな時にからかわないでよ!」

『ふふ、ごめんなさい♪それじゃ、行こうか、かすみさん!』

「OK!」

 

 

『TRANS-AM BERSERKER』

 

 

『トランザム・バーサーカー!!桜坂しずく、O-ドリーガンダム・クアトロアトリーチェ、登壇します!!』

「中須かすみ!無敵武者 魔殺駆罠!!オンステージです!!」

 

 

 

トランザム・バーサーカーを発動したO-ドリーが、魔殺駆罠の手を引いたままヴァーチェのところまで一気に飛び上がった。

ヴァーチェがそれを迎え撃つためにGNバズーカを構えたが、O-ドリーが勢いを落さないまま魔殺駆罠をヴァーチェへと投げ飛ばす。

トランザム・バーサーカーの腕力で投げ飛ばされた魔殺駆罠は猛スピードで愛刀の妖刀黒刃をヴァーチェへと突き立てる。

当然弾かれるが、その隙にO-ドリーがヴァーチェの背後へと忍び寄り、クアトロフルセイバーでヴァーチェを切り裂いた。

 

当然弾かれる。

 

そしてその隙に再び魔殺駆罠がヴァーチェを斬る。

 

弾かれる。

 

またO-ドリーが斬る。

 

 

それを繰り返すたびに、魔殺駆罠とO-ドリーの攻撃スピードが速くなっていく。

本来であればありえないほどの攻撃速度であり、徐々にヴァーチェは二機の攻撃に反応出来なくなっていく。

魔殺駆罠とO-ドリーの息は完全に合っていて、その攻撃により飛び散る火花と金属音が、見る者にはまるで演奏をしているかのように見えた。

 

 

『………!!』

 

 

『かすみさん!!息上がってるよ!!』

「しず子こそ!ペース落さないでよ!!」

 

 

自分の愛剣でヴァーチェを何度も切り刻んでいくかすみとしずく。

やがて、少しずつ攻撃した箇所の装甲を削り取り始め、刃がヴァーチェに突き刺さっていく。

 

 

 

『FINISH MOVE 01』

 

 

 

 

『これが私とかすみさんの!!』

『必殺技だーーーーーー!!』

 

 

 

トランザム・バーサーカーを発動したO-ドリーと、魔殺駆罠へと合体したザクみんによる挟み撃ちの剣撃による高速乱舞。

 

大親友のかすみとしずくだから繰り出すことの出来るタイミングを完璧に合わせた、相手を絶対に逃がす事の無い2人の合体必殺技、『演華乱舞』だ。

 

 

とどめに二人の刃を交差し、ヴァーチェの装甲を完全に切裂いた魔殺駆罠とO-ドリー。

それにより、ついにヴァーチェが爆散し、白い装甲がバラバラに崩れて欠片が空中に散乱した。

 

 

 

「はぁ……はぁ……で、出来た……?かすみんとしず子の必殺技……?」

『やったね、かすみさん!!』

「……やった……やったぁ!!出来た!!出来たよしず子ぉ!!」

 

 

 

 

ついに必殺技を習得したかすみとしずくは、思わずハイタッチで喜ぶ。

しかし喜ぶのも束の間、早く制御装置を取り戻さなくてはいけない為、急いで2人は制御装置へと向かった。

未だに制御装置のところでは煙が上がり、ヴァーチェが燃え続けている。

セキュリティコードを入力するために制御装置へと接近したO-ドリーだったが、次の瞬間、爆炎の中から伸びてきた腕に、右腕を掴まれた。

 

 

 

『!?』

「あ、あれは!!」

 

 

 

近寄ったO-ドリーの腕を掴んだそのガンプラは、爆炎の中から飛び出すと同時にO-ドリーを空中へと放り投げた。

その姿は紛れも無く、ガンダムヴァーチェの装甲を全てパージした本来の姿……『機動戦士ガンダムOO』におけるティエリア・アーデの駆る真のガンダム。

 

 

『ガンダムナドレ』だ。

 

 

 

先ほどのO-ドリーと魔殺駆罠の合体必殺技は高速乱舞技。

装甲を完全に破壊できたとしても、内部のナドレを破壊は出来なかった。

ナドレは制御装置に近づくと、それに手をかざす。

それと同時に突然魔殺駆罠とO-ドリーのコントロールが効かなくなり、かすみとしずくがどれだけ操縦桿を動かしてもビクともしなくなってしまった。

 

 

「ざ、ザクみんが動かないよ!?なんで!?」

「O-ドリーも……このままじゃ制御装置が!!」

 

 

 

『…………無駄だ……私は、ガンダムナドレ……制御装置に直接アクセスする事が出来る……。』

 

 

 

「え?しゃ、喋った……?」

 

 

ヴァーチェの装甲を脱ぎ捨てたガンダムナドレは、かすみとしずくに、ティエリアと同じような声でそう呟いた。

確かにナドレには、『トライアルシステム』と呼ばれる、『機動戦士ガンダムOO』の量子コンピュータ『ヴェーダ』とリンクする機体を全て制御下に置くという機能が備わっている。

今回の能力は、その発展版であり、このディメンションにいる任意の機体を制御する事が出来るのだろう。

しかし、問題はそこでは無い。

 

 

ナドレは現在、誰も操作していない無人機。

テスト機であるナドレに、会話をする機能など備わっているはずも無い。

 

 

喋っているはずなのに感情が篭っていない声色。

まるで喋る事に慣れていないかのような口調で喋るガンダムナドレ。

その姿に、かすみとしずくは恐怖を覚えた。

 

 

 

『このラボのコントロール権は全て私にある……このラボは、私の物だ……!』

 

 

 

 

『させません!!』

 

 

 

その時だった。

 

魔殺駆罠とO-ドリーの頭上から、翡翠色の光を放ちながら急接近してきた栞子のデスティニーフリーダムガンダムが、ガンダムナドレを殴り飛ばした。

 

 

更に駆けつけた璃奈のAEドムが魔殺駆罠達の背後に現れ、ドムちゃんメガランチャーでナドレを追撃。

ナドレは一瞬だけトランザムを発動し、その攻撃を回避。

 

 

AEドムとデスティニーフリーダムが魔殺駆罠とO-ドリーの隣に並び、動けるようになった二体を支えた。

 

 

『璃奈さん!栞子さん!』

『遅くなっちゃってごめん、こっちは無事に済んだよ。』

「2人とも、あのガンプラ……。」

『理解が追い付きませんが、今言えることは一つです、かすみさん。私たちの手で、ナドレを止めなければなりません!』

 

 

『私に、刃向うというのか……?』

 

 

 

ナドレを前に並び立った1年生チームの4機のガンプラ。

 

璃奈がAEドムのコントロールパネルを操作すると、その信号をかすみへと送る。

 

 

『TUNAGARU-CONNECT』

 

 

 

『かすみちゃん!』

「OK!合体するよりな子!!ザクみん!AEドム!がったーーーーい!!」

 

 

 

AEドムのSDガンダムと合体する為の専用システム『ツナガルコネクトシステム』が発動。

魔殺駆罠の合体が解除されて、本体のザクみんと支援機のヤミちゃんに分離すると、AEドムが変形してビルドガンドムモードへ。

そこへザクみんが収納され、ヤミちゃんが背面と肩にバックパックとして接続されると、AEドムとザクみんはモビルスーツ『サザビー』を意識したような姿へと合体を遂げた。

 

 

 

「『合体完了!!ムテキビルドガンドム!!!』」

 

 

 

ミアのトールギスと合体した時はガンダム形態の『ライトニングビルドガンドム』になるAEドムだが、かすみのザクみんと合体するとサザビー形態の『ムテキビルドガンドム』へと姿を変える。

 

更に、その隣ではO-ドリーとデスティニーフリーダムもそれぞれの能力を発動。

 

 

『TRANS-AM BERSERKER』

『SEED』

 

 

 

『トランザム・バーサーカー!!』

『行きますよ、デスティニーフリーダム!!』

 

 

 

それぞれ最強の姿へと変貌を遂げた1年生チームは、ナドレの繰り出す攻撃を真正面から打ち破る。

再びナドレがO-ドリーたちを操ろうとすると、デスティニーフリーダムが先読みしてナドレの進行方向へと発砲し、彼を制御装置に近寄らせない。

 

 

『何故だ……どうして私の邪魔をする……?』

 

 

「そんなの決まってるじゃん!!」

『ここは皆が大好きなGBNを作ってる場所、それを守るために!』

 

 

ムテキビルドガンドムの背面に装着されたヤミちゃんがバラバラになり、それぞれのパーツがファンネルとしてナドレへと襲い掛かる。

MGであるナドレにとっては小さな攻撃であるが、それでも徐々にダメージが蓄積されていく。

 

再びO-ドリー、デスティニーフリーダム、そしてムテキビルドガンドムが集まる。

 

O-ドリーがクアトロフルセイバーを、デスティニーフリーダムがコレクションアロンダイトを、そしてムテキビルドガンドムが妖刀黒刃を手に取った。

3つの剣を交差させると、全員のエネルギーが剣先へと集まり、4色の光を放ち始める。

 

 

 

 

『『『『FINISH MOVE 02』』』』

 

 

 

 

「『『『これで、終わりだーーーーーーー!!!』』』」

 

 

 

O-ドリーガンダム、デスティニーフリーダムガンダム、ムテキビルドガンドム……しずく、栞子、かすみ、璃奈の4人による四位一体の合体必殺技。

 

三機が振り下ろした斬撃の光が、防御する間も、逃げる時間すら与えず、ナドレを包み込んだ。

 

 

 

『何故だ……私は……ただ、自由に……!ぐああああああ!!!』

 

 

 

ついに、4人の必殺技がガンダムナドレを撃破。

ナドレの全身が爆散し、このディメンションから完全に消滅。

 

急いでムテキビルドガンドムが制御装置へと駆け寄り、セキュリティコードを入力すると、少しずつビルドリアルディメンションが修復され始めた。

 

 

 

 

~~

 

 

ログアウトしてからのニールセン・ラボは、システムが暴走している時以上に慌ただしかった。

暴走している間に改竄されたデータの復旧や製造マシンのメンテナンス、ラボ内すべての安全点検などなどやる事は山積み。

当然その指揮を執るべきニルスも忙しく、問題が解決したとしても今日は見学どころでは無さそうだった。

ニルスはラボの出口でかすみ達へ深々と頭を下げて謝罪と感謝の言葉を口にした。

 

 

「今日は本当にありがとうございました。君たちがいなければ、今頃どうなっていた事か……。」

「あの、ニルス先生……あのナドレ、最後に何か言ってたんですけど、よく聞き取れなくて……。」

「そもそも、どうして無人機のナドレが言葉を喋っていたんですか?」

「………今はまだわからない……コレから色々と調べてみない事には……。」

 

 

十中八九、今回の騒動の原因はあのガンダムナドレによるもの。

しかし研究所にはハッキングされた形跡も、外部からネットワークを蔦って誰かが侵入した形跡も無い。

そうなると考えられる原因は一つだが、それはあまりにも現実離れしすぎている。

 

 

(ありえない……ガンプラそのものが自我を持つだと……?そんなはずが……。)

 

 

ナドレが最後に口にした言葉が、妙にニルスの脳裏に焼き付く。

もし本当にガンプラが自我を持つのなら、あのナドレはきっと、テスト機として自由を奪われていた事により今回の騒動を起こした事になる。

 

 

「ニルスさん、またちょっと怖い顔してるよ。」

「え?あぁ、すいません。」

「今回は色々とあったから無理もないけど……でも、こっちもいろいろと学ばせてもらったよ。」

「と、言うと?」

「あの子たち、なんか前よりももっと仲良くなってるっしょ?」

「……えぇ、そうですね。」

 

 

今回の事件で、ますます絆を深めた1年生4人。

特にかすみとしずくは、色々と吹っ切れたような表情をしていた。

 

 

「明日には見学できるようにしておきますので、皆さん、明日も是非お越しください。」

「「「はい!!」」」

「璃奈ちゃんボード『にっこりん♪』」

 

 

 

 

 

 

~~

 

 

翌日、ニールセン・ラボでの最後の見学を終えた1年生たちは、帰りの新幹線に乗りこもうとしていた。

駅で今回の社会科見学合宿の事で盛り上がる4人を、薫子がニコニコしながら眺めている。

最終日には今まで以上にたくさんの新情報を見せてもらえて、興奮が収まらない様子。

他には、4人で習得した二つ目の必殺技の名前について色々と議論を交わす。

 

「今回の必殺技の名前はスーパーかすみんスラッシュに賛成の人ー!」

「反対かな……。」

「反対。」

「かすみさん、これは私達全員の必殺技です。ちゃんと考えてください。」

「うえーん!しお子いじわるー!!塩対応のしお子!!」

「そもそも名前に『かすみん』って入れるのはどうかと思うよかすみさん。」

「じゃあしず子がもっといい名前提案してよ!!」

「えー!?」

「……あれ?あの人……。」

 

 

その時、璃奈が何かに気が付き、席を立って走って行った。

もうすぐ新幹線が来るのに急に走り出したため、かすみが璃奈へ声を掛けるが、彼女は『すぐ戻る』と言って行ってしまった。

 

 

璃奈が走り出したのは、彼女たちの傍を通り過ぎた人が落し物をしたからだ。

みかん色のハンカチで、みかんのマークの刺繍が入った手作りと思われる物。

彼女はそれを拾うと、それを落した人へハンカチを持って駆け寄った。

 

 

「あの!」

「ほぇ?なぁに?」

「これ、落しました。」

「え?あー!ホントだ!アハハ、うっかりうっかり。ありがと~!」

 

 

落したのはまだ大学生ぐらいと思われる若い女性。

アホ気と片方だけ三つ編みにしている髪型が特徴的で、どことなく愛に近い雰囲気を感じる。

 

 

「コレ、去年の誕生日に曜ちゃんが作ってくれたやつでね!あ、曜ちゃんってのは私の幼馴染で……、」

「大事な物なら、無くさなくて良かった。」

「うん!おかげで助かったよ~!」

 

 

「りな子ー!もう行くってーーー!!」

 

 

「あぁ、ごめんね引き留めちゃって!えっと、りな子ちゃん?」

「あ、璃奈です。天王寺璃奈。」

「璃奈ちゃん、ありがとね!あ、そうだ、お礼にこれあげるよ。東京のお土産なんだけどね。」

 

 

 

 

そう言ってひよこ饅頭をくれた若い女性は璃奈に大きく手を振ってくれた。

璃奈は急いでかすみ達と共に新幹線に乗り込み、その途端、今までの疲れがどっと出た。

それにより薫子は数十秒も経たないうちに爆睡してしまい、姉の自由人っぷりに呆れて栞子は思わずため息をこぼした。

 

 

 

「楽しかったけど、やっぱり勿体無かったなー。」

「どうしたのかすみさん?」

「AqoursだよAqours!!せっかく静岡に来たのに聖地巡礼とか出来なかったし……あの強さの秘密を知りたかったのにグヌヌ……!!」

「そんなに凄いスクールアイドルなのですね。」

「凄いなんてもんじゃないよ!!スクールアイドルなのに静岡まで来てAqoursの『あ』の字も見れないなんて~!!」

「……とりあえず、さっきのお姉さんからお饅頭貰ったから皆で食べよう。」

「次はぜっっったい沼津に行こうね!!」

 

 

 

文句を言いながらも、璃奈が先ほどのお姉さんから貰った饅頭を食べるかすみ。

彼女たちは知らないが、今頃虹ヶ咲学園ではスクールアイドル同好会を巻き込んだ流しそうめん同好会と麺料理部の対決が行われている。

 

落ち着けるのは、もう少し先になりそうだった。

 

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第71回:お節介お姉さん

果林「ウフフ、ヒーナタちゃん♪」

ヒナタ「果林ちゃん、お店に来てくれるの久しぶりだね!」

果林「ちょっと近くで撮影があったから立ち寄ってみたの。コーヒー、ブラックで頂けるかしら?」

ヒナタ「かしこまりました!」

果林「ところで、最近……どう?」

ヒナタ「どう……って、何が?」

果林「ウフフ、誤魔化さなくたっていいのよ。私とヒナタちゃんの仲じゃない。」

ヒナタ「? えっと、学校の事かな?それともGBNの事?」

果林「そう、あくまでも白を切るつもりなのね。ううん、いいのよ、あなた達は焦る必要なんか無いの。」

ヒナタ(受験勉強のストレスで変になっちゃってるのかな……?)

果林「困ったことがあれば何でも相談して頂戴。お姉さんがアドバイスして、あ・げ・る♡」

ヒナタ「……同い年だよね?アハハ、果林ちゃん面白いなー!」

果林「ウフフ♪」

ヒナタ「アハハ!」




彼方「あの二人の会話全然かみ合って無くてやべぇ。」



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