「おーい、アイちゃーん!」
セツナのソロライブ当日、会場であるGBN内のフォース『魂太』のフォースネストへとやってきたニジガク2年生組。
ライブの準備を進めているセツナを手伝おうと楽屋へ向かうユウとアイとランジュ、そのうちのアイを呼ぶ声がしてアイが声の方へ視線を向けた。
するとそこには短髪と長髪の二人の男がアイに向けて手を振っており、その顔を見るとアイは嬉しそうにそちらへと駆け寄った。
「アーくん!ゼンゼン!うわー!めっちゃ久しぶりじゃん!!元気してた!?」
「もちろんや!アイちゃんこそ元気そうで俺らも安心したわぁ!カリンちゃんは来てへんのやな?」
「うん、今日は2年生でせっつーを手伝おうってなってて。」
「じゃあ、そっちの子たちがアイちゃんのフォースメンバーなの?」
「うん!」
随分親しげに話をするアイに対し、首をかしげたユウとランジュ。
アーくんと呼ばれた関西弁の男がユウの方へやって来て、彼女へ握手を求めて来た。
「初めまして!俺、アークっていうもんです!」
「俺はゼンです。俺とアーク君の二人で、『ZA-∀Z』っていうフォースを組んでます。」
「あ、は、はじめまして!高咲侑です!アイちゃんと同じニジガクの同級生です!」
「鐘嵐珠よ。あなた達の名前、聞いた事あるわ!凄腕のファイターって聞いて、一度お話ししてみたかったの!」
「そうなん?なんか照れるわぁ!」
アークとゼン、『ZA-∀Z』の二人は以前アイとカリンがヴァルガで初めてマスダイバーに襲われた時に一緒に戦ってくれた凄腕のガンプラファイター。
アークはシャイニングガンダムの改造機『ガンダムシャイニングブレイク』を、ゼンはG-セルフの改造機『G-エルス』を操る。
「実は俺ら、魂太とは同盟むすんどってな。そんで招待されたってわけや。」
「このライブ会場を作るために、俺達も手伝ったんだ。」
「そうなんだ!2人ともサンキュ!」
「アイってば、凄い人達と知り合いなのね。」
「ランジュさーん!」
「! きゃあ!マリナじゃない!」
アイがZA‐∀Zの2人と話していると、少し離れたところからランジュの名前を呼んで1人の少女が駆け寄って来た。
ランジュのスクールアイドル以外の親友、カツラギ・マリナだった。
リアルでは左脚の無い彼女だが、GBNでは両足でしっかりと地面を踏んで、ランジュへ向けて走って来た。
「マリナも来ていたのね!なによぉ、チケットが当たってるなら言ってくれれば迎えに行ったのにぃ……。っていうかセツナに頼んでマリナの分のチケット用意させたのにぃ!」
「ご、ごめんね。言おうと思ったんだけど、セツナさんが大変そうだったから言い出せなくって……。あれ?そう言えば上原さんは?」
「あー……アユムなら……。」
~~
『さぁ、まずはこのGBNライブにふさわしいこの一曲から始めますよーーーーー!!!『機動戦士ガンダム』OPテーマ、『翔べ!ガンダム』!!!』
「せ、セツナちゃんの『翔べ!ガンダム』!?エクシアに乗ってるからOO系の曲しか聞けないって思ってたのにいきなりコレだなんて神じゃない!?ねぇ、神じゃない!!?」
「そ、そうですね……。」
「もうナナ、テンション低いわよ!!まぁ、セツナちゃんのパフォーマンスに圧倒されて耐え切れないかも……っていう不安もわからなくはないけど……。」
(この人こんなに良く喋る人なんだぁ……うぅ……皆私にばっかりこんな役押し付けて酷いよぉ!)
その頃、中川菜々のGBNの姿である『ナナ』としてログインしている上原歩夢。
2年生5人組の中で一番菜々としてのせつ菜のイメージに近いという理由だけで選ばれてしまったが、ばれるわけには行かないという責任感と副会長に対する罪悪感、そしてこんな重役を無責任に押し付けてきた他3名に対する怒りで早くも限界だった。
もう1名……アイだけは色々とフォローしてくれたので許す。
「あ……あぁ~……素晴らしい歌声……!感動……ッ!」
「………。」
「素晴らしすぎて声も出せないのねナナ!」
「あ、アハハ……。」
『翔べ!ガンダム』を熱唱し、セツナは次の曲へ。
その間も副会長の語りは続く。
その後もセツナの曲は『儚くも永久のカナシ』、『DIVE!』、『閃光』、『ヤダ!』とノンストップで続く。
勿論どの曲も副会長の解説付きで、普通ならばありがた迷惑なところだが、今の歩夢は内心ホッとしていた。
(良かったぁ……副会長さん、セツナちゃんのライブ楽しんでるから私がナナちゃんの真似をしなくても案外バレ無さそう。それにしても……、)
熱唱するセツナ。
その姿を見ながら、胸元でギュっと拳を握る歩夢。
「……凄いなぁ、セツナちゃん。」
ポツリと呟くと同時に、セツナの曲が終わった。
ナナとしての演技をすることも忘れ、歩夢はただただセツナの歌に聞き惚れていた。
歩夢がスクールアイドルを始めたきっかけは、ユウとの約束もそうだが、何よりセツナのパフォーマンスに圧倒されたからに他ならない。
もし、ユウやアイやランジュと一緒にライブの手伝いをしていたら、こうやって観客としてセツナを見る事は出来なかっただろう。
その点は、こんな役目を押し付けてきた彼女たちに感謝しなければならない……そう思っていた歩夢に、ステージの上でセツナが衝撃の言葉を放った。
『みなさーーーん!!前半戦、ありがとうございましたーーーー!!後半戦のスペシャルバトルまで、しばしお寛ぎくださーーーーい!!』
「……え?」
どうやら、セツナが休憩に入る様だ。
休憩……当たり前だろう、あれだけ立て続けに歌ったのだからそりゃ休憩ぐらいしなければ持たない。
それはわかる。
問題は、休憩に入った途端にこちらを見て阿頼耶識システムを搭載したモビルスーツの様に目をギラつかせている歩夢の連れの方だ。
「~~~さいっっこうだったねナナ!!!!」
「へ!?あ、は、はいぃ!!」
休憩に入った途端、歩夢……というかナナに向かって感想のマシンガントークを始めた副会長。
先ほどまではセツナのパフォーマンスに圧倒されていてナナの事は眼中に無かった彼女が、セツナが裏に引っ込んだ途端にナナの方を向いてきた。
その目はとてもキラキラしていて、まるでスクールアイドルの話をする時のユウや、ガンプラの話をする時のリクを彷彿とさせる。
「普段のカッコいいセツナちゃんも勿論大好きだけど、『ヤダ!』を歌ってる時のセツナちゃんって子供っぽくてもうめちゃくちゃカワイイ!わざとらしくない子供らしさがグッと来るって言うか!!」
「そ、そうですね~……。」
「ナナは!?ナナはどの辺が良かった!?」
「えぇ!?ど、どの辺がって……え、えーっと……ぜ、全部……。」
嘘では無い。
実際歩夢はセツナの曲全てに感動した。
今まで色んなスクールアイドルの曲を聞いてきたが、歩夢が言葉に出来ないほど心動かされた曲を歌うのはこの世でただ一人、優木せつ菜だけ。
副会長はセツナの大ファンなので、歩夢がこう言えばきっと同意して納得してくれるはず……そう思った。
考えが甘かった。
「? ナナ、今日少し変……。」
「えぇ!?ど、どこが……?で、ですか?」
「いつも休み時間に一緒にセツナちゃんの動画見た後とか、色々細かい分析とかしてくれるのに、今日みたいな日に『全部よかった』だけで済ませるなんてナナっぽく無い気がするわ。」
(本当に正体隠す気あるのセツナちゃーーーーーーーん!!!!)
「それに普段より仕草が女の子っぽいというか、声のトーンもいつもと違う気がするし……んー?」
どうしてこんなに観察力があるのにセツナの正体には気が付かないのだろう。
歩夢は心底そう思いながら、副会長を前にして息を呑んだ。
~~
「皆さん!お疲れ様です!」
「お疲れ様セツナ!はい、お水よ!この後のスペシャルバトルには是非ランジュを指名してほしいわ!」
「ランジュちゃんずるい!私だってセツナちゃんとバトルしたいよ!」
「2人とも落ち着けー。」
ステージ裏に引っ込んだセツナにグイグイ迫るユウとランジュに軽めのチョップを入れて止めるアイ。
冗談を言いながら笑い合っていると、セツナはユウ達と一緒にいるマリナに気付き、彼女に挨拶。
「マリナさん!来て下さってたんですね!ありがとうございます!」
「セツナさんのライブ、とってもカッコよかったよ!今日は来れて良かった!セツナさんこの後スペシャルバトルやるのなら、私もバトルしてみたいな。」
「フフ、私もマリナさんのノワールと私のスカーレットエクシア、どちらが強いか気になっていたところです!」
「ノワール……?」
「高咲さん、どうかした?」
「あ、ううん。」
そう言えば前にランジュからマリナの愛機はバンシィの改造機で、『ノワール』という名前だと聞いた事がある。
バンシィ・ノワールという名前のガンプラはGBNでは複数機登録されているので、単なる偶然だとは思うが、
それでも少し反応してしまう。
「そういやせっつー、次のスペシャルバトルって指名なの?抽選なの?」
「一応、私が指名していい事にはなっていますが……ごめんなさい!一応こういう場なので同じフォースメンバーの方を指名するのはやはり……。」
「えー!?セツナとバトルしたかったのにぃー!もう見回りなんて飽きたわー!」
「ランジュ、わがまま言ったらせっつーが困るでしょ!」
「仕方ないよ。私達はセツナちゃんとはいつでもバトル出来るんだし、今日は我慢してパトロール頑張ろう。」
スペシャルバトルが抽選の場合、最悪マスダイバーなどが紛れ込む危険性があったので、今回は指名制となっている。
その為同じフォースメンバーは今回は戦えない。
ユウとランジュが残念そうにしていたが、アイとマリナが宥めてくれた。
「あ、そうだ。アユムはどうなったかな?」
「だね。ちょっとコッソリ様子見に行ってみようか。」
「マリナも行きましょ!」
「あ、ごめんなさい。私はそろそろ……。」
「用事?」
「ううん、良い席でセツナさんのバトル見たいから。じゃあね、皆!」
そう言い残し、マリナは観客席へと戻って行った。
そうしてユウ、アイ、セツナ、ランジュの4人は今頃副会長の相手をしていると思われる歩夢の様子をコッソリと覗くべく、ステージの隅から少しだけ顔を出す。
100人もいるので見つけづらいかと思ったが、2人はすぐに見つかった。
というか、副会長があまりにもテンションが高くてとんでもなく目立っていた。
タジタジになっているナナの姿の歩夢。
しばらく様子をうかがっていたが、徐々に雲行きが怪しくなってきた。
「ナナ、今日少し変……。」
「えぇ!?ど、どこが……?で、ですか?」
「いつも休み時間に一緒にセツナちゃんの動画見た後とか、色々細かい分析とかしてくれるのに、今日みたいな日に『全部よかった』だけで済ませるなんてナナっぽく無い気がするわ。」
副会長がナナを見ながら、何やら怪しんでいる。
その様子を伺いながら、4人とも大慌て。
「なになに!?もしかしてアユムばれた!?」
「そんな事無いわ!だってセツナの正体に気付いてない副かいちょーが相手なのよ!?ばれるわけ無いじゃない!」
「いやそれは失礼でしょさすがに。」
「ど……どどどどうしましょう!?このままではアユムさんと私の正体が!!!」
その時、アイがハッとした。
そう言えば副会長がログインする時、彼女はダイバーギアだけでは無くガンプラもスキャンしていた。
その事を思い出したアイは急いでセツナに声を掛けた。
「せっつー!!」
「え……?」
~~
今、上原歩夢は人生最大の窮地に立たされていた。
いや、実際バレたら一番まずいのは歩夢自身では無くセツナなのだが、それでも友達想いの歩夢にとって副会長に怪しまれているこの状況は非常にまずい。
セツナ……菜々と副会長の友情が、自分の振る舞い一つで壊れてしまうかもしれないと考えると胃が痛い。
「あの……えっと……、」
「ナナ、GBNに入って来たところからなんだか変だと思ったの。せっかくのセツナちゃんのライブなのに……。」
「あうぅ……。」
「それに、ライブに誘った時もいまいち乗り気じゃ無かったし。……もしかしてアナタ……、」
もうダメだ。
歩夢がそう思い、涙目でギュっと目を閉じた。
その瞬間、会場中のスピーカーからハウリング音が鳴り響き、そのすぐ後に聞きなれた声が大声で叫んだ。
『みなさーーーーーん!!お待たせしましたーーーー!!これより、私とのスペシャルガンプラバトルの対戦相手を発表したいと思いまーーーーーーす!!!』
「え、セツナちゃん?休憩時間終わったのかしら?」
休憩を終えたセツナが、ステージに舞い戻り、今回のライブの後半の目玉イベントであるセツナのガンダムスカーレットエクシアとのバトルの対戦相手の発表を始めた。
今回の対戦相手はセツナによる指名制であり、彼女は天高く指を指し、それゆっくり観客席へと向ける。
そして、セツナが示した指先へ、会場中の視線が集まった。
『ステージという大舞台で、私と熱い一戦を繰り広げるにふさわしいダイバーは……、あなたです!!!メガネの素敵なお嬢さん!!!』
「……………え?私?え?えぇぇぇ!?」
セツナが指名した人物……それは何と副会長。
副会長は何が起こったの一瞬理解できずにポカンとしてしまったが、すぐに驚いて取り乱した。
歩夢がセツナの方を見ると、彼女は歩夢に向けてかるくウインクをし、きっと自分に助け舟を出してくれたんだなと悟る。
副会長の背中を押して、彼女をセツナの方へと押す。
「ほ、ほら!早く行かないとセツナちゃんが待ってるよ!じゃなくて、待ってますよ!」
「あ、ちょ、お、押さないでナナ!ま、まさか私が指名されるだなんて~!心の準備が~!!」
~~
『NT-D』
一方その頃、観客席から数百メートル離れた場所で、黒い光と共にユニコーンモードからデストロイモードへと姿を変えた一機の黒いガンプラ……バンシィ・ノワール。
立ち上がり、セツナのライブが行われている『魂太』のフォースネストを睨みつけながらノワールクローを構えた。
~にじビル毎回劇場~
第73回:ニジガク寮ファミリー!
キョウヤ「エマは今、日本のどこに住んでいるんだい?」
エマ「今はニジガクの寮だよ!前までは果林ちゃんと二人きりだったけど、今はミアちゃんとランジュちゃんも居てとっても楽しいの!」
キョウヤ「ほう、あの3人と一つ屋根の下とは、楽しそうだね。やっぱり皆で集まってガンダム作品を嗜んだり、ガンプラを楽しんだりしているのかな。」
エマ「うーん……どっちかって言うとスクールアイドルのお話とか、学校でのお話しの事が多いかな。」
キョウヤ「そ、そうか……。」
エマ「あ、で、でもガンプラの話もするよ!時々私の部屋に集まって皆で作ったりするの凄く楽しいんだ~!たまにランジュちゃんとかミアちゃんが途中でお昼寝しちゃったりするけど、私がお母さんで果林ちゃんがお父さんみたいで、家族だなーって感じがするの!」
キョウヤ「ほう、家族か。いいたとえじゃないか。そう、私の大好きなAGEも家族の絆が大きなテーマとなっていて……、」
エマ「後はこの4人でお買い物に行ったりするんだけど、果林ちゃんが迷子になって3人で探したり、ミアちゃんが一つの売り場から中々離れなかったり、ランジュちゃんがお腹すいたって駄々こねたりするところも、可愛いんだ~!」
キョウヤ「ほ、ほう。」
エマ「3人とも朝は弱いから私が起こしてあげててね!一番最初に起きた人に、『偉いね』ってナデナデしてあげると3人ともとっても喜ぶの!」
キョウヤ「家族……というより、お母さんと幼い子供3人だな。」