ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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本物のバトル

同好会メンバーを家に帰したツカサとコウイチに連れられて、彼方はとある場所にやってきた。

ここは、3年前にツカサがビルドダイバーズのリクのダブルオーダイバーエースと戦った場所。

今でも彼が手入れをしているGPDの筐体があり、簡単にではあるが工作が出来るようなスペースもあった。

突然こんなところに連れられて戸惑うが、ツカサは無言で自分のガンプラを筐体に置く。

 

「……何してんだ。さっさとガンプラを置け。」

「え、も、もう始めるの……?」

「時間が無いんだろ。遊びのつもりなら帰るぞ。」

「あ、遊びじゃないよ!」

「ツカサは言い方がキツいんだよ。近江さん、まずはGPDの操作に慣れよう。筐体にガンプラを置いて操縦桿を握ればバトルスタートだから。」

「はい……。」

 

言われた通り、バルバトスルプスレクスをGPDにセット。

操縦桿を握ると、バルバトスの目が光り、筐体の中に荒野の風景が映し出された。

少し動かしてみると、本当にガンプラが動きだし、つたない動きで少しずつ歩き始めた。

 

 

「凄い……本当にガンプラが動いてる……!」

「行くぞ。シバ・ツカサ……ロードアストレイダブルリベイク、出る。」

「ッ……!近江彼方、ガンダムバルバトスルプスレクス、行きます!」

 

 

GPD……GPデュエルの世界で、動き始めた二人のガンプラ。

ツカサの機体は、愛機であったガンダムアストレイノーネイムをコウイチと共に改修、強化した『ロードアストレイダブルリベイク』

本来は二人で操作するためのガンプラだが、一人で戦っているのはツカサなりの彼方への配慮なのかもしれない。

彼方の操るバルバトスは、メイスを持ってゆったりとロードアストレイへと近づいていく。

だが、ロードアストレイの持つダブルリベイクライフルが、容赦なくバルバトスを襲う。

 

 

「うっ……!」

「目を瞑るな!ガンダム・フレームにはナノラミネートアーマーが採用されている。ビーム攻撃なら、ある程度までなら耐えられる。」

「うぅ……は、はい!」

「いい返事じゃねぇか。まだまだこんなもんじゃねぇぞ!!」

 

 

飛び上がると、今度はビームサーベルでバルバトスへ接近戦を仕掛けてきた。

当然彼方もメイスで応戦するが、ビームサーベルによってメイスを真っ二つに折られ、さらに両腕も切り落とされてしまう。

 

 

「は、遥ちゃんにもらったガンプラが……!」

「これでとどめだぁ!!」

 

 

最後に胸部にダブルリベイクライフルを押し当てられ、撃ち抜かれるバルバトス。

機体全体に亀裂が走り、倒れこむと、GPデュエルのシステムが容赦なく彼方の敗北を告げた。

 

 

『WINNER PLAYER 1』

 

 

壊れてしまったバルバトスを拾い上げる彼方。

放課後に組んだばかりの機体だったが、その無残な姿に言葉を失う。

心配してコウイチが声をかけようとしたが、その前にツカサが声をかけた。

 

 

「どうだ?」

「……彼方ちゃん、この子と出会ったのは今日が初めてだけど……壊れると、こんなに悲しい気持ちになるんだね……。」

「やめるか?」

「ううん……やめないよ。彼方ちゃんがやらなきゃ、同好会の誰かがこんな気持ちになっちゃうもん。引き受けた以上、最後まで続けるよ。」

「なら、さっさと始めるぞ。ソイツを、もっと強く作り直す。」

「出来るの……?」

「俺たちはビルダーだ。ガンプラを強くするのに、限界なんてねぇんだよ。」

「ツカサ!」

 

 

一瞬、あの頃の彼が戻ってきたような気がして歓喜の声を上げたコウイチ。

昔の彼は、純粋にガンプラが、ガンダムが大好きだった。

乱暴ながらも彼方を指導している彼の姿は、まるで一緒にガンプラバトルに明け暮れていたあのツカサのようだ。

 

 

~~

 

「いいか!まずは作品の基本設定を理解しろ!!『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』ブルーレイシリーズ全18巻、明後日までに見て来い!!」

「はい!彼方ちゃんのお家、プレーヤーがありません!」

「貸してやる!!」

 

 

「バルバトスの得意分野は近接格闘だ!!だが、そんなもんは見たらすぐにバレちまう。意外性を求めろ!!」

「はい!じゃあ、大きな大砲つけたいです!!」

「機動性が死ぬだろ!!」

 

 

「ガンダム・フレームはビーム攻撃に強いが全く効かないわけじゃない、塗料はGPD用プラネットコーティング仕様の物をつかえ!!」

「はい!こういう細かい作業してると……すやぁ……Zzz」

「寝るんじゃねぇ!!」

 

 

そして、火曜日から木曜日の3日間、ツカサによるスパルタ指導は続いた。

元々頑張屋の彼方は根を上げずについてきたが、寝る間も惜しんでの特訓だったため、体力的には限界に近づいていた。

ツカサとコウイチの指導の下、バルバトスルプスレクスは彼方専用機として生まれ変わり、装甲も厚く改良されているが、それでもロードアストレイとの戦いで何度も破壊されては作り直してを繰り返していた。

 

 

決戦を翌日に控えた彼方は、今日もバルバトスと共にツカサの操るロードアストレイダブルリベイクと戦いを繰り広げている。

 

 

「行くぞ、近江ェ!!」

「………!」

 

 

ロードアストレイが近接格闘専用形態である『レベルソモード』へ変形し、彼方のバルバトスへと襲い掛かる。

だが彼方はバルバトスのメイスを棒高跳びの棒のように使い空中へ飛び上がると、両腕に仕込んだバルカン砲でロードアストレイを狙い撃つ。

ロードアストレイはそれを全て払いのけ、射撃形態『クアドロモード』に変形すると、空中で身動きの取れないバルバトスに照準を合わせた。

 

「落ちろぉ!!」

「まだまだぁ!」

 

巨大な腕を振りかざしてロードアストレイのビームを全て防ぎ切った。

地面に着陸すると、再びメイスを握りしめてロードアストレイに接近戦をしかける。

もう一度レベルソモードになったロードアストレイもそれに応じ、何度もお互いの武器をぶつけ合った。

 

 

「これで、ようやく一勝……ッ!」

「いや、ダメだ!」

「え?」

 

 

コウイチの声に気が付いた時にはすでに遅く、レベルソモードではスラスターとなっているダブルリベイクライフルの右側が、クアドロモードの時のようなライフルモードになっていた。

それはバルバトスの頭部に押し当てられ、引き金を引かれる。

0距離発射のビームには耐えきれず、彼方のバルバトスは地面に倒れこんだ。

 

 

『WINNER PLAYER 1』

 

 

「あぅ……もうちょっとだったのに~……。」

「意外性を求めろって言ったろ。だが、今までの中じゃ一番惜しかった。ガンプラ出せ、さっさと直して次はじめんぞ。」

「うん。」

 

 

壊れたバルバトスを直すために工具を広げるツカサ。

コウイチの指示通りに彼方はバルバトスを分解していくが、その時にツカサの携帯が鳴った。

しかしツカサは作業に集中して結局電話には出ず、数分後に、今度はコウイチの携帯に電話が。

几帳面なコウイチはすぐに電話に応答し、少し話した後にツカサに言った。

 

 

「ツカサ。」

「後にしろコウイチ。」

「『本業』だ。GBNに行くぞ。」

「……チッ、あの鳥女……空気ぐらい読め。」

「無茶言うなよ。俺たちがこんなことしてるなんて、向こうは知らないんだから。」

「あの……。」

「近江、ガンプラ直したら今日はもう帰って寝ろ。」

「え、ちょ、彼方ちゃんまだ……!」

 

 

工具はその場に残し、『本業』というのに行こうとするツカサとコウイチ。

彼方は彼らを見送ろうとするが、いったんコウイチが帰ってきて、彼方にガンプラのパーツを渡してきた。

 

 

「これ、なぁに……?」

「最後まで付き合えなくてごめんね。ツカサはあんな奴だけど、仕事中も君の事でよく相談を受けてたんだ。態度には出さない不器用な奴だけど……。」

「ううん。おかげで彼方ちゃん、ずいぶん強くなれたよ~。」

「このパーツはアイツから。君のバルバトスにも使えるようにしてるから、役立ててほしい。」

「わぁ、ありがと~!」

 

 

そう言い残し、二人は行ってしまった。

このまま家に帰っても道具が無くてバルバトスの修復が出来ないため、彼方はこの場でガンプラを修理することに。

たった3日間ではあったが、あの二人のおかげで修理のコツはつかめてきた。

スクールアイドル同好会の名誉のため、明日は必ず勝つ事を心に誓い、彼方は修理し終わったバルバトスを再びGPデュエルの筐体へセット。

 

「明日は、負けられない……。」

 

 

 

~~

 

 

そこから1時間ほど練習した彼方は、息抜きのために外に出てきた。

すっかり夜も更けて、こんな時間まで特訓していたのは始めてだ。

深呼吸をしていると、遠くで彼方を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

「おーい!彼方ちゃ~ん!」

「あ、エマちゃん!」

 

 

そこにいたのはエマ。

彼女はバスケットを持って彼方へ近づくと、それを彼方へ渡す。

 

「遥ちゃんにまだ帰ってきて無いって聞いて、差し入れ持ってきたよ!」

「ありがと~!彼方ちゃんもうお腹ぺこぺこだよ~!」

「ウフフ、たくさん食べてね!」

 

エマの特製サンドイッチを食べながら、彼方は現在の進捗状況を話した。

エマの方からも、彼方が家にいない間、遥の事は同好会の皆で気にかけてくれていたと聞いた。

特にせつ菜と栞子は責任を感じて、毎日家に足を運んでいるそうだ。

 

「まさか、せつ菜ちゃんのお料理を遥ちゃんに食べさせたりしてないよね……!?」

「そこは大丈夫。歩夢ちゃんやかすみちゃんも一緒に行ってるから。」

「よかった~……。せつ菜ちゃん、味覚音痴だからなぁ……。」

「皆、彼方ちゃんに心配かけさせないように頑張ってるんだよ。」

「ありがとうね皆。彼方ちゃん、絶対に勝つから。絶対、負けないから……。」

「……ねぇ、彼方ちゃん。」

 

少し真剣そうなエマの言葉に、サンドイッチを口に運ぶ手を止めた彼方。

次の言葉で、彼方はハッとする。

 

 

 

「彼方ちゃんは、楽しい?」

「え………?」

「だって、ここ最近の彼方ちゃん、『絶対に勝つ』って、そればっかりだから……無理してるんじゃないかなって。」

「む、無理だなんてそんな……!だって彼方ちゃん、強くなったし、絶対大丈夫だよぉ!」

「ごめんね……。」

「な、なんでエマちゃんが謝るの?」

「あの時、本当に戦うべきは私だったんだよ。侑ちゃんでも歩夢ちゃんでもせつ菜ちゃんでも栞子ちゃんでも、愛ちゃんでもかすみちゃんでもしずくちゃんでも璃奈ちゃんでもなくて……もちろん、彼方ちゃんや果林ちゃんでもなくて、私だったんだよ……。」

「どうして……?」

 

 

エマは、ポシェットを漁ると、一体のガンプラを取り出した。

力強そうなライフルを持ったそのガンプラは、とてもよく作りこまれているが、よく見るとほんの少し傷が目立つ。

 

 

「エマちゃんもガンプラ持ってたの?」

「うん。ヴェルデブラストガンダム……私、4年ぐらい前まで、この子でGPデュエルをやってたの。」

「そうなんだ……。」

「GBNに移った時もしばらくは続けてたんだけど、同じフォースのメンバーが途中で抜けちゃって、その時の顔がとても辛そうで……その顔が忘れられなくて、私もガンプラから離れてたんだ。」

「それで、どうしたの?」

「私が日本に来た時、たまたま目にした動画でね。その子がとっても楽しそうにバトルしてたんだ。それで、私ももう一度やってみようと思って、スイスに帰った時に久しぶりにGBNをやってみて、そこで会ったある人とすごく仲良くなったの。」

「へー、楽しかった?」

「もうすっごく楽しかった!その人は初心者で、キュベレイを使ってたんだけど、私とのコンビネーションも抜群で、初めて会った気がしなかった!」

 

 

キラキラした瞳で、帰国した時の事を語るエマ。

スクールアイドルをしている時と同じぐらいキラキラしていたが、話を続けていくうち、徐々に彼女の声のトーンが落ちてくる。

 

 

 

「でも、私、その人を傷つけた。日本に帰ってきたらもう私はスイスのアカウントじゃログイン出来ない。だからお別れをしたの。その人、すごく落ち込んでた。もし、私のせいで、あの人がガンプラ嫌いになってたらどうしようって、ずっと考えてたら……だからあの時、動けなかった。あの場じゃGPDをやった事がある私がやるべきだったのに……。」

「そ、そんな事……!」

「私はたぶん、もうガンプラバトルを楽しめないかもしれない。だからせめて、彼方ちゃんにはガンプラバトルを楽しんで欲しい!同好会のためとかじゃなくて、彼方ちゃん自身が楽しんでバトルしてほしいの!」

 

 

 

 

そう言うと、エマはGPデュエルの筐体まで行き、ヴェルデブラストガンダムを起動させた。

久しぶりのGPデュエルの舞台に立つヴェルデブラストガンダムは巨大なライフルを構える。

 

 

「私が練習相手になるよ彼方ちゃん!私、ガンプラバトル同好会の人のガンプラのモデルになった機体を見たことあるの!きっと力になれるから!」

「エ、エマちゃん……。」

 

 

こうして、夜が明けるまで、彼方はエマとバトルを続けた。

何度も壊して何度も作って、ついに、決戦の日を迎えた。

 

 

 

 

~~

 

 

翌日、ガンプラバトル同好会の部室に、スクールアイドル同好会は集まった。

目の前には巨大なGPDの筐体と、ガンプラバトル同好会の部長 サクモト・ヤマトがいる。

授業を終え、やって来た彼方は、鞄から新たに作り直したバルバトスルプスレクスを手に取ると、エマの顔を見た。

 

「彼方ちゃん、頑張って!」

「うん、頑張る。」

 

同好会の面々に応援されながら、バルバトスを筐体の上に置く。

バルバトスはカラーリングに彼方のイメージカラーである紫が少し加えられており、腕と足の装甲はさらに厚く、肩には巨大なスラスターの様なパーツが付いていた。

そして、ガンダムの象徴ともいえるアンテナパーツは、羊の角をイメージした巻角となっているが、カラーリングと相まって、バルバトスの禍々しさに拍車をかけている。

 

 

「あれが彼方さんのガンプラ……なんだか、ちょっと怖い……。」

「勝てるのかな、カナちゃん……もし負けたら、本当にせっつーとしおってぃー、辞めちゃうのかな……!?」

「そんなわけないよ!!彼方さんは負けないし、二人もガンプラバトルやめさせない!!」

「侑ちゃん……。」

「そうだね、カナちゃんが負けるわけないよ!いっけー!!カナちゃーん!!」

 

 

応援してくれるみんなに、軽く手を振る彼方。

その彼女へ、ヤマトが言う。

 

 

「逃げずに来た事は褒めてやろう。」

「逃げるわけ無いじゃん。彼方ちゃん、強くなったよ~。」

「面白い……ならばその実力、私と、私のスカービルドストライクが試してやろう!!」

 

 

ボロボロのマントを羽織ったストライクガンダム『スカービルドストライクガンダム』が筐体にセットされる。

GPデュエルの筐体の中に、宇宙空間の様なものが広がり、バルバトスとスカービルドストライクはその中へ移動。

周りにたくさんの隕石と惑星がちりばめられると、ついにバトルスタートだ。

 

 

 

「スカービルドストライク!!出るぞ!!」

 

「近江彼方、ガンダムビヨンドバルバトス……いっくよーーー!!」

 

 

 

 

 

彼方がツカサ、コウイチと共に作り上げ、エマと最終調整を行ったビヨンドバルバトスが、ついに戦場へ飛び出た。

ビヨンドバルバトスは地上戦に特化した機体ではあるが、彼方が新たに取り付けたスラスターがブースターの役割を果たし、宇宙でも自在に動き回れている。

目の前にはすでにヤマトのスカービルドストライクがおり、さっそくビヨンドバルバトスへ攻撃を仕掛けてきた。

相手はガンダム・フレームのナノラミネートアーマーの特性を理解しているのか、実弾を連射してきた。

 

 

「ふっふっふ……ガンダム・フレームなど、わかりやすい機体で挑むから弱点を突かれるのだ!!」

「弱点~?何の事かな~?」

「なに!?」

 

 

両腕の爪を広げ、スカービルドストライクの攻撃を全て弾き返したビヨンドバルバトス。

一瞬何が起きたのかわからないヤマトのスカービルドストライクの下へ、ブースターを噴射させたビヨンドバルバトスが一気に接近し、巨大な爪でスカービルドストライクを隕石に叩き付けた。

 

 

「バカなっ……!」

「ツカサさんのアドバイスのおかげだよ~。」

 

 

実はこのビヨンドバルバトスの爪は、ストライクフリーダムガンダムのスーパードラグーンを加工して作った物。

実弾に強いフェイズシフト装甲を採用し、そこにさらにプラネットコーティング塗料を塗布しているため、この機体の中では格別の強度を誇る。

初心者の機体のため少し油断していたスカービルドストライクは体制を立て直すと、ライフルを別の物に持ちかえた。

 

 

「なるほど、GPD専用の機体にしあげてきているというわけか……面白い、楽しませてくれそうだ!!」

「楽しむ……?」

 

 

今度はスカービルドストライクが、マントをはためかせてビヨンドバルバトスへ急接近。

彼方はビヨンドバルバトスの爪で対抗しようとするが、マントに絡まり身動きが取れなくなってしまった。

反対側の腕を振り上げると、スカービルドストライクはその爪に対し、ビームライフルで攻撃。

高出力の攻撃を長時間当てられ続けると、左腕の爪に亀裂が入り、人差し指と中指の爪は砕け散った。

 

「あっ……!」

「ここだ!!」

 

スカービルドストライクのニーキックが、ビヨンドバルバトスの顔面に炸裂。

角が折れてしまい、そのままビヨンドバルバトスは、GPデュエル内の火星に激突。

すぐさまスカービルドストライクもそれを追いかけ、ライフルを構える。

構えたライフルは当然、実弾仕様だ。

 

 

「彼方ちゃん!!」

「OK、エマちゃん!!」

 

 

その時、彼方がニヤリと笑った。

地の利を得たビヨンドバルバトスのスラスターが変形し、両肩に装備する巨大なライフルへと変形。

そこへエネルギーを集中させ、降りてくるスカービルドストライクの姿が見えると同時に、一気に強力なビーム砲を放った。

 

 

「なにっ!?」

 

 

防御が間に合わず、被弾するスカービルドストライク。

そのまま地面に激突するが、すぐさま体勢を立て直して立ち上がった。

 

 

「バルバトスに……ビーム砲だと……!?」

「ダブルリベイクライフル……ツカサさんとコウイチさんからもらった、彼方ちゃんの切り札だよ!」

 

 

実はビヨンドバルバトスが装備していたのは、ロードアストレイダブルリベイクの予備パーツ。

ツカサが改造に使おうと持っていた、もう一つのダブルリベイクライフルだった。

これをバルバトスルプスレクスに装着できるように加工し、本来バルバトスが不得手とする狙撃を行えるようになった機体、それが『ガンダムビヨンドバルバトス』だ。

 

 

「このまま一気に押し切るよー!」

 

 

ダブルリベイクライフルで、一気に優勢に見えてきた彼方。

それを見ながら、同好会のメンバーも歓喜の声を上げる。

 

 

「すごいすごい!彼方さんのガンプラ!」

「これなら勝てそうじゃないですか!頑張ってください彼方先輩ー!」

 

 

侑とかすみを筆頭に彼方を応援する9人。

無言で彼方を見守るエマ。

その時、ヤマトがニヤリと笑い、再びスカービルドストライクはビヨンドバルバトスの前に立ちはだかる。

 

 

「これが切り札か………なるほど、面白い発想だ。だがしかし、切り札をこんなところで切ってしまったのは大きな間違いだ!!」

「なにをー!」

 

再びダブルリベイクライフルで、スカービルドストライクを狙い撃つ。

しかし、スカービルドストライクはそれをかわすことをせず、左腕のシールドを構えた。

ただ防御するだけかと思いきや、シールドが全てのビームを吸収してしまい、それと同時に、スカービルドストライクの背中に、巨大な星型のエネルギーウイングが出現した。

 

 

「ッ……!」

「フハハハハ!!見ろ、これが我がスカービルドストライクが搭載した『アブソーブシステム』と『ディスチャージシステム』だ!!このアブソーブシールドはいかなるビーム攻撃をも吸収し、それをディスチャージシステムを使ってスカービルドストライクのエネルギーへと変換する!!切り札にビーム砲を採用した時点で、君の負けなのだよ近江さん!!」

「彼方ちゃん、負けないよ。」

「強がりを!!」

「強がりなんかじゃないよ。だって……、」

 

 

操縦桿から手を離し、自分の掌を見る。

その手はすでに汗まみれになっており、彼方はその汗を握りしめながら、この戦いで感じた想いをそのまま口にした。

 

 

 

 

「だって……こんなに面白いバトル、負けたくないじゃん!」

「彼方ちゃん……!」

 

 

 

思わず、エマが声を上げた。

再びダブルリベイクライフルを構え、彼方はスカービルドストライクを狙い撃つ。

しかし、スカービルドストライクの持つアブソーブシールドはそのエネルギーを全て吸収し、そのたびにエネルギーウイングが大きくなり、スカービルドストライクの移動速度と攻撃力も上がっていく。

 

 

「血迷ったか……エネルギー攻撃は効かないと言っただろう!!」

 

 

ビヨンドバルバトスの攻撃を受け続け、どんどんスペックが上昇していくスカービルドストライク。

それでもビヨンドバルバトスは攻撃をやめず、全てのエネルギーを撃ち出すまで攻撃を続ける。

何度もスカービルドストライクの攻撃を受けるが、それでもやめようはしない。

 

「一体なんのつもりだ……!?君は人を馬鹿にしているのか!!」

「そんなわけないじゃん。彼方ちゃんは、いつだって全力なのです。」

「そんな攻撃に、何の意味がある!!」

 

ビームサーベルを手に取り、ディスチャージシステムの加速を最大に高める。

それはビヨンドバルバトスの胸をまっすぐとらえ、そのままその体を貫く、

 

 

 

「……ハッ!!」

「ふっふっふ、にやり。」

 

 

 

はずだった。

 

攻撃が命中する寸前、スカービルドストライクのバックパックが破裂し、エネルギーウイングとビームサーベルの刃が消滅。

勢いがあり過ぎたために途中で止まる事が出来ず、そのまま地面を転がり、多大なダメージを負ってしまった。

 

 

「まさか……これを狙っていたというのか……?スカービルドストライクのディスチャージの放出量を上回るエネルギーを、わざと吸収させていたのか……!?」

「あなたの機体の事は聞いていたよ。そのガンプラ……元々は、実機バトルの世界チャンピオンの人と同じタイプのガンプラなんでしょ?だけど、その人ほどの作りこみが出来ないのなら、それより沢山ビームを吸わせれば行けるとおもったんだよね~。」

 

 

 

初心者とは思えない様な戦法を、してきた彼方に対し、ヤマトは笑いが止まらなかった。

今、彼女は心からガンプラバトルを楽しんでいる。

武者震いが止まらず、思わず彼方を称賛した。

 

 

「礼を言う。楽しい……実に楽しいぞ近江彼方!!私はこういう戦いを求めていた……!これこそが、本物のガンプラバトルだ!!」

「……彼方ちゃんもだよ。今、すごく楽しい。」

「そうだろう!!やはり、実機バトルこそが至高の……!」

「ううん、そうじゃないよ。」

 

 

 

そう言いながら、彼方は首を横に振った。

ビヨンドバルバトス、スカービルドストライク、そしてヤマトを順にみると、彼女は優しく微笑む。

 

 

 

「彼方ちゃんが楽しいのはね……あなたが、本当に楽しそうにバトルをしてくれるからだよ。」

「なんだと……?」

「実を言うとね、私……このバトルを始めるまで、ガンプラバトルを楽しいって思えなかったんだ。」

 

 

 

彼方はエマを見た。

昨日、エマから『楽しいバトルをしてほしい』と言われた彼女だったが、どうしても最後まで乗り気にはなれなかった。

 

 

 

「私はずっと、皆のために勝たなきゃって、そればっかり考えてて……楽しくバトルをしてって言われても、こんな気持ちで始めた私が楽しく出来るはずがないって、そう思ってた。だけど、あなたとのバトルで、楽しそうにガンプラバトルをするあなたを見て、少しずつだけど、楽しいって思ってきた。」

 

 

 

まだ機能停止して無い方の腕で、メイスを握りしめるビヨンドバルバトス。

アブソーブシステムを破壊され、残ったすべての力を右手の拳に注ぐスカービルドストライク。

向かい合う二人のガンプラ。

 

 

 

「GBNだからとか、GPDだからとか、そんなのは関係ないと思う。本当に大事だって思えるのはね、お互いが心から楽しむ気持ちなんだよ。もし、どっちかしか楽しめないっていうのなら、そんなの勿体ないよ。私はどっちも楽しみたい……だって彼方ちゃんは、わがままなお姫様だから。」

「GBNもGPDも関係ない……楽しむ気持ちが大事……か。」

「本物のガンプラバトルっていうのは、本当に心から楽しんだガンプラバトルの事なんだよ。だから私は、今日のこのバトルは、本物のガンプラバトルだって思うよ。」

「……そうか、そうだな。私もそう思うよ。このバトルは、最高だ!!」

 

 

 

走り出したビヨンドバルバトスとスカービルドストライク。

ビヨンドバルバトスがメイスを振り上げるが、懐に潜り込んだスカービルドストライクの必殺技『ビルドナックル』が先にビヨンドバルバトスに命中。

頭部が破壊され、一瞬よろけてしまうが、ビヨンドバルバトスは踏みとどまり、メイスを捨てて巨大な爪をスカービルドストライクへ突き立てた。

 

 

「し、しまっ……!?」

 

 

だが、その爪はスカービルドストライクに当たる事は無かった。

寸前で彼方は攻撃を辞め、ビヨンドバルバトスを引っ込めたからだ。

その場に膝をつくスカービルドストライクを見て、ヤマトは冷や汗をかく。

 

 

「ど……どうして……。」

「もう勝負はついたから。彼方ちゃんだって、ガンプラが壊れるところは、出来たらあんまり見たくないしね。」

「だが、勝利条件は完全破壊……!」

「だめだよ。決着はついたんだから。そんな事言うと、その子がかわいそうでしょ。ね?」

 

 

彼方がウインクすると同時に、GPDのシステムが勝敗を認識し、高らかに宣言する。

 

 

『WINNER PLAYER 2』

 

 

 

「「彼方さーん!!」」

「わっ、ちょっと二人とも危ないよ~。」

 

彼方の勝利が告げられると同時に、せつ菜と侑が抱き着いてきた。

湧きあがるスクールアイドル同好会、沈黙するガンプラバトル同好会。

しばらくするとヤマトが立ち上がり、その沈黙を破った。

 

 

 

 

「うわあああああん!!負けたぁあああああ!!!ぐやじいいいいい!!!」

 

「「「!!??」」」

 

「し、しまった!!部長のアレが出たぞ!!」

「うちの部長はメンタルが弱いのよ!!」

「よしよーし!部長は強い子元気の子!ほらほら、憧れのイオリ・セイさんの世界大会優勝の時の写真ですよー!これ見て泣きやみましょうねー!」

 

 

 

 

しばらく泣き続けるヤマトに、ドン引きしてしまうスクールアイドル同好会。

特にかすみはその光景を見て大爆笑してしまうが、しずくが無理やり口を押えて黙らせた。

10分ほどでヤマトが泣きやむと、彼方は恐る恐る彼女に近づいた。

 

 

「えっとー……だ、大丈夫……?」

「あぁ、問題ない。すまない、取り乱してしまって。」

「あー……うん、OKOK、大丈夫。ちょっと大変な果林ちゃんだと思えば全然いける。」

「ちょっと彼方!!それどういう意味よ!!」

 

 

泣き止んだヤマトに、彼方は手を差し出した。

そのことに戸惑うヤマトだったが、彼方は優しく笑いかけた。

 

 

「彼方ちゃん、これからもガンプラバトル続けるよ。だから、またバトルしてくれる?」

「スクールアイドル活動に加えて、GBNもGPDもやるつもりか……?」

「だってこんな楽しいこと、やめたくてもやめられないよ~。言ったでしょ?彼方ちゃんは……、」

「フフッ……本当にわがままなお姫様だ。こちらこそお願いするよ。次はリベンジさせてもらう。無礼な事を言って申し訳無かった……そしてこれからは、君たちの事も応援させてくれ!」

「もちろん!えへへ~、ファンが増えちゃった~!」

 

 

固い握手を結ぶ両者。

ヤマトはせつ菜と栞子に頭を下げ、彼方のガンプラを一緒に直すと約束した。

そして彼方は緊張の糸が切れたせいか、ここ数日ろくに眠れてなかった反動が一気に来たのか、その場に倒れこんでしまった。

 

 

「か、彼方ちゃん!?」

「彼方ちゃん……もう、限界です……エマちゃ~ん、膝枕して~……。」

「よしよし。彼方ちゃんえらいえらい。ゆっくり休んでね。」

「エマちゃんのおひざ……柔らかくて気持ちい~……すやぁ……Zzz」

 

 

エマの膝に頭を乗せた彼方は、ものの数秒で眠りについてしまった。

彼方の頭をなでながら、エマはボソッとつぶやいた。

 

 

「ありがとう、彼方ちゃん。」

 

 

 

 

~~

 

彼方が眠ってしまってもなお、祝勝会ムードが収まらない同好会メンバーたち。

そんな彼女たちに気づかれないようにコッソリ抜け出すと、果林は一人でフフッと笑う。

 

「凄いわね彼方……最悪の状況だったのに、あんなに楽しんでバトルをして……。本当に凄いわ……。」

 

そう呟くと、果林は自分のカバンからある物を取り出した。

青いカラーリングの、細身のキュベレイのガンプラ『キュベレイ・ビューティー』を。

 

 

「私は、きっとあんな風に楽しめない……だって、もうあなたに会えないのだから……ヴェルダー……。」

 

 

 

 

 

~~

 

週明けの月曜日、休み時間にいつも通り校内を歩いていた愛と璃奈。

愛のダジャレを聞きながら、璃奈は笑顔の特訓中。

スクールアイドルの話も交えながら、ジュースを買いに行く途中だった。

 

「そこで愛さん、しずくに言ったんだよ!オードリーの踊り、上手だねって!『おどり』だけにって!……なんか、すごく怒られたけど……。」

「しずくちゃんにオードリーのダジャレ言っちゃダメだよ。」

「愛さん迂闊だったなー。」

 

 

 

「あ、愛ちゃん璃奈ちゃーーーーーん!!!」

 

 

 

「え?カナちゃん!?どうしたのそんな慌てて!?」

「か、彼方ちゃんの事匿って!!早く早く!!」

「どうしたの?」

「事情はあとで説明するからーーー!!」

 

何故かいつもおっとりしている彼方が、死にもの狂いで走ってきた。

いつもの彼女からは想像できないぐらい緊迫した表情で、愛の胸倉を掴んでまで助けを求めてくる。

すると、そこからさらに足音が聞こえ、彼方は『ひぃっ!』と悲鳴をあげた。

 

 

「姫!!」

 

 

「ひ、ひぃ~!?で、出た~!!」

「あれ?ガンプラバトル同好会の人たちだ。どうしたの?」

 

そこに現れたのは、サクモト・ヤマト率いるガンプラバトル同好会の面々。

何故か彼女たち全員、『近江♡彼方』という鉢巻を撒いており、彼方の写真を加工して作った旗を掲げている。

 

 

「我々、ガンプラバトル同好会あらため、ガンプラバトル同好会兼近江彼方姫親衛隊である!!」

「「近江彼方姫親衛隊!?」」

「姫、今日こそは我々と共にGBNへ行っていただきます!姫にふさわしいアバターは、あなた様の騎士であるこのヤマトにお任せを!」

 

 

「「「どこまでもお供します、彼方姫!!」」」

 

 

「だから彼方ちゃん今日はバイトなんだって~!っていうかお休みの時もずっと付きまとわないでよ~!遥ちゃんが怖がってるんだから~!彼方ちゃんだって怖いし!!」

「なにをおっしゃいますか姫!!あなた様に何かあれば、あの至高のガンプラバトルが二度と出来ないかもしれないのですよ!!これからは、我々があなた様をいついかなる時でもお守りします!!」

 

 

「「「我々はあなた様のナノラミネートアーマーです、彼方姫!!」」」

 

 

「なんとかしてよ愛ちゃ~ん!!璃奈ちゃ~ん!!」

「アハハハ!!いいじゃん彼方姫!愛さんもそう呼ぼっかなー!」

「お姫様、楽しそうでうらやましい。璃奈ちゃんボード『同好会の先輩がガンプラやったらお姫様になっちゃった件について』」

「全然楽しくなーーーーーい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第7回:お兄さんは心配性

ツカサ「………ソワソワ。」

コウイチ「ツカサ、飯ぐらい落ち着いて食えよ。」

ツカサ「あ?落ち着いてんだろ。」

コウイチ「時計ばっかり気にして……近江さんの事が心配なのはわかるけどさ。俺たち、この後もELバースセンターで仕事あるんだから。」

ツカサ「そんなんじゃねぇよ。」

コウイチ「近江さん、勝てるかな?」

ツカサ「はぁ!?勝てるに決まってんだろテメェはバカなのかコウイチ!!」

コウイチ「いたいいたい!服を掴むな服を!!全く……心配なら仕事終わったら会いに行けばいいだろ。」

ツカサ「だからそんなんじゃねぇって言ってんだろ。」


~間~


コウイチ「ようやく終わった。さて、ツカサ行こうか。あれ?ツカサ?」

メイ「アイツなら終わるなりそそくさと出て行ってしまったぞ。」

コウイチ「あいつ、あぁ見えてお兄ちゃん体質なんだよなぁ。」

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