昔から、虎太郎はあまり笑わない少年だった。
彼には3人の姉がいるが、彼女たちは皆スクールアイドルをやっていた。
特に長女はスクールアイドルの知識がある者であれば知らない者はいないほどの超有名人であり、その長女に憧れて次女と三女もまたその世界に飛び込んだ。
長女が口癖のように言っていた言葉がある。
『アイドルは笑顔を見せる仕事じゃない。笑顔にさせる仕事なのよ』と。
勿論、虎太郎はそんな姉の姿を見て楽しかったし、自分では笑っているつもりだった。
けど、その気持ちがあまり顔に出ない為、周りからは『変な子』だと言われる事もあった。
それでも少なからず友達はいて、小学生時代から高校生になる今までに、親友と呼べる友も数人出来た。
小学校高学年の時、姉がバイト代でお土産を買ってきてくれた。
「虎太郎、アンタ昔からこういうロボットとか好きだったでしょ?」
その時買ってきてくれた物こそ、『HGUC Zガンダム』。
リバイブ品では無い、少し古いガンプラ。
虎太郎は本当はその当時放映されていた『鉄血のオルフェンズ』や人気のあった『OO』のガンプラが欲しかったが、それでも姉がアルバイトをして貯めたお金が買ってくれたそのガンプラをとても気に入った。
それから彼は、後にビルドダイバーズとなる同じ小学校だったリクやユキオの話を聞いたりして、そのガンプラを数年かけて改造して行った。
それが、今の彼の愛機である『ガンダムターンZ』である。
~~
「サザビーに百式、ガンダムMk-II、リック・ディアス、そしてZガンダム……どれも宇宙世紀シリーズでは人気のモビルスーツですね。」
「なんか、サザビーだけ浮いてない?」
決勝戦を目前に控え、ガンダムベースでログイン前に作戦会議とメンバー選出を行っていたニジガク一同。
相手フォース『ミュート』は、リーダーである『コタロウ』のガンダムターンZを筆頭に、どれも強力な機体を操るメンバーで固められた実力派のフォース。
サザビー以外の機体は『機動戦士Zガンダム』に登場するモビルスーツばかりであるが、その機体の常識に囚われない戦法を得意としている。
「サザビーはファンネルもあり、第4世代モビルスーツだけあって性能はかなり高いですね。」
「百式には耐ビームコーティングもあるよ。ビームサーベルやビームライフルでの攻撃は半減しちゃうから、実体剣持ちの歩夢ちゃん、かすみちゃん、しずくちゃん、せつ菜ちゃんでの対応がいいかも。」
どれも強力な機体だが、その中でも、ひときわ目立つ戦績を持つ機体に、やはり全員注目が集まる。
それはもちろん、このフォースのリーダーであるコタロウのガンダムターンZ。
「Zガンダム自体、中々扱い辛い機体だけど、動画を見る限りだとこの人はMS形態とウェイブライダー形態を完璧に使いこなしてるよ。あんなに複雑な構造のZガンダムが、戦闘中にこんなにスムーズに変形するなんて……。」
「けどこの人、射撃武器持って無くないですかぁ?エマ先輩なら遠くからパンパンっ!撃って倒せるんじゃ?」
「これだけ速く動いてるんじゃ誰かが足止めしてくれないとさすがに難しいよぉ。」
Zガンダムは高性能だが扱いの難しい機体。
従来のMSに比べて操作性に難がある為、主役として活躍した『機動戦士Zガンダム』及び『機動戦士ガンダムZZ』劇中に置いても、カミーユ・ビダンやジュドー・アーシタなどの優れたニュータイプ能力を持つ主人公たちがメインパイロットを務めていた。
ニジガクメンバーは何度かZガンダムと戦った事はあるが、いずれもMS形態とウェイブライダー形態の変形の合間に隙があったため、それほど苦戦した相手はいない。
だが、次に戦うこのターンZは違う。
変形の合間に隙が無く、一撃離脱という戦法を使い次々と敵機を撃墜していく様は、他のフォースメンバーや今まで戦ったどのZガンダムベースの機体と比較にならないレベルで強力だ。
「このZガンダムと戦える相手ってなると、侑ちゃんか歩夢ちゃんかな……。」
「私達ですか?果林さんとかの方がいいんじゃ……。」
「キュベレイ・ビューティーの機動性じゃこの子の相手は難しいわ。」
「真正面からターンZと戦って、一番可能性があるのはNT-Dを使ってるレインボーユニコーンか、エクシードバーストモードのブレイブインパルスだと思うから、侑ちゃんと歩夢ちゃんは出るべきだよ。」
そうして、話は進み、とうとう決勝戦に出場する5人が決定した。
アシムレイトとNT-Dを持つ侑とレインボーユニコーンガンダム
凄まじい機動性と短時間ではあるが自己強化が可能な歩夢とガンダムブレイブインパルス
百式の耐ビームコーティングを実体剣で正面から打ち破る為のせつ菜とガンダムスカーレットエクシア
未知数の力を秘めた愛と愛参頑駄無大笑軍。
モードチェンジにより狙撃と格闘を切り替えられるランジュとシランジュ
相手の戦力を考えると、これが今回のベストメンバーとなる。
「お~、偶然にも2年生組だね~。」
「私で良かったんでしょうか?実体剣とトランザムが必要であれば、機体性能であればしずくさんが出場した方が……。」
「いえ、悔しいですけど、今回の相手は私の操縦技術で勝てると思いません。」
「せつ菜さんはフォース内でも卓越した操縦技術をお持ちです。以前の副会長とのバトル、お見事でした!」
「しずくさん、栞子さん……ありがとうございます!私、絶対に皆を勝利に導いてみせます!」
「ランジュ、今回のトーナメントは初バトルだわ!今までお預けくらってた分、暴れまくるわよ~!!」
「好き勝手に動いて皆に迷惑かけちゃダメよ?」
「ランジュちゃん、戦場での油断は命取りなの。ちゃんと皆と連携してね!」
「えぇ!わかってるわ果林、エマ!ランジュを信じて頂戴!」
「心配だなぁ……。」
「ランジュの事は愛さん達がしっかり見てるから、安心してよミアチ!」
「愛さんのガンプラも気になる。でも愛さん、そのガンプラいつ作ったの?」
「確かに。なんかいつの間にか持ってましたよね愛先輩。」
「え?コレはー……アハハ……。」
メンバーも決まり、いよいよログインしようとするニジガクメンバー。
それぞれの愛機を手に取り、侑と歩夢は顔を見合わせた。
「頑張ろうね、侑ちゃん!」
「うん、絶対勝とう、皆!」
~~
すでにバトルに参加するメンバー全員、格納庫で自分のガンプラに乗り込んでいる。
観客席は満員で、その中にはビルドダイバーズのリク達の姿もあった。
リク達はマギー、タイガーウルフ、シャフリヤールと一緒におり、彼らの姿を発見したバトル非参加メンバー達は彼らの下へと駆け寄った。
「モモさん!皆さん!」
「お、皆こっちこっちー!」
「よう、来たなお前ら。」
「あなた達がここにいるってことは、参加するメンバーはあの5人なのね。」
「えぇ。絶対に勝たせてもらうわ。」
ビルドダイバーズと一緒に座ると、かすみんがリク、ユッキー、モモが複雑な表情をしている事に気が付いた。
不思議に思いながら、彼女はリク達に尋ねた。
「リク先輩たち、どうしたんですかそんな顔して?」
「うーん……いや、俺達、どっちを応援すればいいのかなって……。」
「えー!?いやいやいや、普通にユウ先輩たちを応援して下さいよぉ!薄情じゃないですかぁ!」
「いつもならそうするんだけど、相手が相手だから……ハハ……。」
「どういう事?りなこちゃんボード『はてな?』」
「今日戦う『ミュート』ってフォース、リク達のクラスメイトなんだって。」
答え辛そうにしていたリク達に変わり、サラが応えてくれた。
「クラスメイト?」
「うん。特に、リーダーのコタロウとは小学生の時からの付き合いだから……だからどっちを応援してもちょっと気が引けちゃうって言うか……。」
「俺がどうかしたか?」
「師匠、コタローじゃなくてコタロウさんです。」
どうでもいいことだが、タイガーウルフの本名はコタロー。
今回相手のフォースのリーダーと同じような名前なので、名前を呼ばれるたびに尻尾がムズムズするらしい。
「そう言えば、今日もヒロト君たち来てないのね。最近付き合い悪いんじゃない?」
「あぁ、ヒロト達はエルドラで……、」
「リッくーーーん!!しーーーっ!!」
「わーー!!ごめん!何でもない何でもない!!ヒロト達も忙しいんじゃないかなー……あ、アハハ……。」
「?」
不自然に誤魔化すリクに対し、事情を知らない一同は首をかしげた。
そんな彼女たちの様子を、VIP席からジッと見ている男が一人。
「キョウヤ、何を見ている。」
「あぁ、カワグチ。あそこだよ。」
「むっ……なるほど、お前のお気に入りたちか。」
「君のお気に入りでもあるだろう?」
「私は個人に肩入れするような真似はしない。メイジン・カワグチは全てのガンプラファイターに平等であるべきだからな。」
「素直じゃないな……君の教え子がバトルに出るというのに。楽しみだろう?」
VIP席にいたのはチャンピオンのクジョウ・キョウヤと4代目メイジン・カワグチ。
カワグチの教え子というのは、もちろん一緒にシランジュを作ったランジュの事であり、客席に彼女がいない事に、密かにカワグチも心を躍らせていた。
「楽しみなのは否定しない。」
「ボクも本当に楽しみだよ!彼女たちの成長は目覚しい!それに、今回のバトルには今まで司令塔の様な役割だったエマやカリン君がいない。そんな中で、あのターンZにどう立ち向かっていくのか……見ものだ。」
~~
「ユウちゃん!」
「アユム、どうしたの?」
「これ、使ってほしいの。」
戦地へ赴こうと機体の最終調整を行っている選抜メンバー達。
そんな中、アユムがユウにとあるデータを渡した。
それを開いてみると、そこにあったのは見覚えのあるガンプラのパーツ。
「これって、ドリームインパルスのドリームシルエット?」
「うん。今回の対戦相手は今までの様にはいかないだろうから、少しでも皆の力になりたくて……。」
「少しでもって……アユムは今回の主力じゃん!」
「それはユウちゃんもでしょ!」
「んー……でも確かに、NT-Dを使えば速くはなるけど、ブレイブインパルス程じゃないから、少しでも底上げはしておきたいかも……アンチェインドは使うとすぐにダウンしちゃうし……ありがとう、じゃあ借りるね!」
アユムが渡してきたのは、かつての彼女の愛機『ガンダムドリームインパルス』が装備していたドリームシルエット。
これを装着したレインボーユニコーンは『レインボーユニコーンガンダム(ドリームシルエット装備)』となり、ブレイブインパルスにも引けを取らない機動性を手に入れられる。
仮に全身に仕込んだ武装を他のメンバーに渡したとしても、この状態でデストロイモードになればある程度は戦えるだろう。
「あー!ユウだけずるいー!」
「ランジュさん、太陽炉の最終チェックは終わりましたか?」
「えぇ、バッチリよ!」
「よーし、愛さんも準備万端!」
「愛さんは今回、最初から大笑軍形態で行くんですね。」
「相手が相手だからね。最初から全力で行くよーー!」
そうして、彼女たちは全員自分のガンプラに乗りこむ。
カタパルトにシランジュ、スカーレットエクシア、愛参頑駄無大笑軍、ブレイブインパルス、レインボーユニコーンの順でセットされ、全員腰を落とす。
決勝戦のフィールドは、ガンダム作品にふさわしい『宇宙』
巨大なスペースコロニーの周りを、合計10機のMSが暴れ回るのだ。
そして、宇宙と言えば、ファンネルを操るブレイブインパルスやレインボーユニコーンが本領を発揮できる場所でもある。
だがそれは、相手も同じだった。
~~
「コタロウ!ターンZのチェックは完了だ。」
「うん。いつも助かるよ。」
「俺はこのフォースのメカニックだからな。いつでも頼ってくれ!」
そうコタロウに言う男は、コタロウの幼馴染の親友であり、今回リック・ディアスをベースとしたガンプラに乗るフォースメンバーの一人で、名前は『タクヤ』
全てのガンプラは彼は整備を手掛けており、このフォースの中核を担う存在と言っても過言では無い。
「そうだ。今日のバトル、コタロウの姉ちゃんは見てくれてるのか?」
「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは見てると思う。」
「ふーん……で?」
「でって、何?」
「あの人は見てくれんのか?」
「……さぁ、見てないと思うよ。忙しい人だし。」
「でも一番見てほしい人なんだろ?ちゃんと声掛けとけよ。」
「……………。」
「……まっ、お前んとこの姉弟仲にあんま口出すつもりは無いけどよ。とにかく、見られても良い様に、しっかりカッコいいとこ見せようぜ!」
「タクヤ……。」
「俺達が後ろにいるって事忘れんなよコタロウ!俺達ぁお前の、『バックダンサー』みたいなもんだからさ!」
そう言いながらタクヤは他のフォースメンバー達と共にコタロウにサムズアップしながら、各自ガンプラへ乗り込んだ。
コタロウも自身の愛機であるガンダムターンZに乗り込み、カタパルトにセットされる。
『フルアーマーサザビー!出るぞ!!』
『コマンドガンダムMk-II、行きます!!』
『白銀装百式、発進する!!』
次々と飛び出すフォース『ミュート』のガンプラ達。
ガンプラに乗りこんだ状態でもタクヤはコタロウにサムズアップをし、彼よりいち早く飛び出す。
『タクヤ!サイコ・ディアス、行くぜーーーー!!』
『……コタロウ、ガンダムターンZ、フォース『ミュート』、出撃!!』
~~
同じように、ニジガクメンバー達も一斉にカタパルトから射出されていく。
広大な宇宙へ飛び出す彼女たちは、出撃順に勢いよく叫んだ。
『ランジュ!シランジュ!ショータイムよ!!』
『セツナ、ガンダムスカーレットエクシア!目標を駆逐する!!』
『アイさん!愛参頑駄無大笑軍!いざしゅつじーーーーん!!』
『アユム、ガンダムブレイブインパルス、頑張ります!!』
「ユウ!レインボーユニコーンガンダム!!フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』、行きます!!」
叫ぶと同時に宇宙空間へと飛び出したニジガクメンバー。
すでに眼前には、強力なフラッグシップ機であるガンダムターンZ率いる相手フォース『ミュート』が迫ってきている。
『NT-D』
「変身!!」
目標を確認したユウのレインボーユニコーンはサイコフレームの耀きと共に装甲を展開し、ユニコーンモードから戦闘形態であるデストロイモードへと変身。
背面バックパックからビームサーベルを抜き取り、構える。
正面にはウェイブライダー形態のターンZ。
それはレインボーユニコーンの目の前まで来ると、目にも止まらぬ速さでMS形態へと移行。
左腕に仕込まれたビームサーベルを抜き、そのままレインボーユニコーンのビームサーベルにぶつけた。
『この試合、俺達が……、』
「私達が!!」
「『勝つ!!!』」
~にじビル毎回劇場~
第81回:ペットを飼うなら
モル『モルモル~!』
歩夢「わ~!サラちゃん!モルちゃんって可愛いね!」
サラ「うん。この子、3年前にクリアしたロータスチャレンジの報酬でペットショップで買って来たの。」
モル『モル~!』
歩夢「いいな~、私もペット欲しいな~……。」
サラ「歩夢は何も飼ってないの?」
歩夢「うん。同好会の中じゃ、しずくちゃんの家のオフィリーアと、エマさんの家のネーヴェちゃんぐらいかな。後はロボットだけで璃奈ちゃんの家のアランと、学校で飼ってるはんぺん。」
サラ「はんぺんは璃奈が良く話を聞かせてくれるよ。歩夢はどんな子が飼いたいの?」
歩夢「んー……犬とか猫とか可愛いと思うけど、私はやっぱり大きなヘビが良いなぁ!私が乗れるぐらい大きい子が良い!」
サラ「ヘビ……?」
歩夢「ヘビって皆怖いイメージを持ってるけど、ペットとして躾けられたヘビは全然そんな事無いんだよ!首に巻くとぶよぶよしてて気持ちいいし、指を出すとチロチロ舐めてくれてとってもカワイイ!」
サラ「ヘビ……カワイイ!」
歩夢「ねー、可愛いよねヘビ!あ、ねぇねぇこの写真見て!侑ちゃんが昔くれた大きなヘビのぬいぐるみの写真なの!名前はサスケっていうんだけどね!」