「……さて、皆集まったね。」
フォースバトルトーナメントの二日後、ニジガクメンバー13人全員でGBNに集合。
最初にログインしていたユウとアユムはかなり神妙な顔をしており、後からやって来た他のメンバー達もゴクリと息を呑む。
それほど、今日集まったのは大事な用事なのだ。
そんな重い空気の中、最初に口を開いたのはしずこだった。
「何か……プランは考えてあるんですか……?」
「恥ずかしながら、私1人ではコレっていうアイデアは出せなかったよ。」
「では、やはり……?」
「うん。皆の意見を参考にしたい。皆の力を、私に貸してほしい!」
「えぇ、もちろんです。」
そこへ更にセツナも加わり、3人でニヤリと笑う。
この空気に耐え切れないのか、ミアははぁと深いため息をつき、呆れながら言い放った。
「君たち、どうしてフォースネストの内覧に行くだけなのにそんな重苦しい顔してるのさ。」
「何言ってるのミアちゃん!フォースネストはGBNでは最大の買い物だよ!?そりゃ戦場に赴くような顔になるよ!」
「そうですユウさんの言う通りです!!行ってしまえば、お父さんが一件家を購入するような物なんですよ!!」
「私はその場の空気に乗っただけです。」
ユウの言う通り、今日は待ちに待ったフォースネストの内覧日。
GBNで販売されている様々なフォースネストを見て回り、自分たちにピッタリの場所を購入しようというわけだ。
そんな大きい買い物をユウとアユムの2人で決めるわけにはいかず、全員の意見を聞き入れてから決めようと言う事になった。
どんなフォースネストが販売されているのかは当日までのお楽しみにしていた為、これからどんな物を見に行けるのか全員ワクワクしている。
「賞金は確か1000万ビルドコインだったよねぇ?ねぇエマちゃん、1000万だったらどのぐらいのやつが買えるのぉ?」
「結構大きいの買えると思うよ。さすがに隊長達みたいなお城とか、リクくん達みたいな島まるごと一個とかは無理だけど、お屋敷みたいなやつとか基地みたいなのとかは買えるよ。」
「だったらかすみん、ライブが出来るドームが欲しいです!ねぇねぇユウ先輩!ドーム買いましょうよドーム!」
「アハハ、そういうの買えたら夢広がっちゃうね。でも、まずは一通り見てから皆の意見を聞いてから決めようね。」
「「「はーい。」」」
「よーし、それじゃあレッツゴー!」
全員で勢いよく腕を突き上げ、早速フォースネストの内覧へ。
期待に胸を躍らせながら、ショッピングエリアへと向かった。
~~
「いっしゃいませ~!当店ではお客様のニーズに合わせたフォースネストのご案内をさせていただいております!ご予約をいただいていたフォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』様でお間違いありません出そうか?」
「はい!」
ショッピングエリア内にあるフォースネストの専門店……いわゆる不動産屋のような物でユウ達を笑顔で出迎えてくれた女性店員。
彼女のアバターは現在配信されているアプリゲーム『機動戦士ガンダム U.C.ENGAGE』に登場するナビゲーターキャラクターである『エアル・セーブ』と同じ物で、笑顔がとても美しい。
早速彼女は予約をしていた時点でユウ達が出していた希望に合うフォースネストをいくつかピックアップしてくれていて、全員その資料に目を通すと『おー』と声を上げる。
「皆様のご希望に副う様々なフォースネストをご用意させていただきました!どちらの物件をご案内いたしましょう?」
「全部!全部見て見たいです!」
「畏まりました!では、ご案内いたしますので、少々お待ちください。」
ユウが即答すると、店員は笑顔でそう答えて準備に取り掛かった。
その間に資料を見ながら、ここがいいそこがいいなどと言い合う時間はとても楽しい。
店員の準備が整うと、まずは資料の一番最初にあったフォースネストへと案内された。
~~
「お待たせいたしました!こちらがフォースネスト『ホワイトベース』になります!」
「「「おーーー!!!」」」
案内された先で、目を輝かせながら声を上げたのはセツナ、エマ、しおこの3人。
同好会の中でも特にガンダムが好きなこの3人にとっても、『機動戦士ガンダム』に登場する戦艦『ホワイトベース』は特別な思い入れがある。
細部までこだわって作られているホワイトベースだが、中にはライブをするためのステージを設営できるほどのスペースもあり、設備も充実している。
「見てください皆さん!!ここ!!ブライト艦長はいつもここに立って指示を出してましたよね!!」
「せ、セツナさん、私もそこに立ってみたいです!」
「その次は私~!」
「アハハ……3人とも大はしゃぎだなぁ。」
「でもユウちゃん、このフォースネストとっても広いし、設備も多いし、少しいじれば何でもできそうだよ。」
「うん、いいじゃんここ!」
「気に入って戴けて良かったです!ちなみにこちらのフォースネスト、ホワイトベースの機能を再現しているので実際に戦艦として飛ぶことも可能なんですよ!いわゆる、移動式フォースネストなんです!」
移動式のフォースネストとは何とも夢の広がる話だ。
ライブツアーも、このホワイトベースがあれば簡単に出来てしまう。
「カナタちゃんもここ気に入ったよ~!」
「えぇ、いいんじゃないかしらここ。」
「どうするんだい、ベイビーちゃん。」
「うん、決めました!ここにします!」
即決でお買い上げを決めたユウ。
誰からも反対意見が出ないので、全員賛成という事だろう。
ニコニコしながら女性店員が電卓を取り出し、そこからこのフォースネストの値段を提示してくれた。
「ありがとうございます!こちらのフォースネスト、設備込みで合わせて1億ビルドコインになります!」
「………え?」
「1億ビルドコインです!!」
「………すいません、やっぱやめます……。」
「「「そんな~~!?」」」
予算が1000万なのに、1億のフォースネストなんて購入できるはずが無い。
というか店の予約をした時点で予算の上限は1000万だと話していたのにどうしてこんな所を紹介したのか。
ホワイトベースを気に入っていたセツナ、エマ、しおこは残念そうな声を上げたが、カリンとカナタが宥めてくれた。
~~
次に案内されたフォースネストはゲームセンターの様な場所。
このゲームセンターそのものがフォースネストとなっており、GBNというゲームの中にあるゲームセンターという奇妙な物になっている。
様々なジャンルのゲームが並んでおり、りなことアユムが特に興味津々。
「すごい……絶版になったゲームがたくさん……りなこちゃんボード『ゴクリ……!』」
「見て見てりなこちゃん!ゲームセンターのゲーム以外にもいろいろあるよ!『おこづ○い大○戦』に『サモ○ライ○』、あ、『投げ○!ジャイ○ボール』まである!すごーい!全部やりたいな~!」
「……アユムの言ったゲームって全部クソゲーって有名なヤツなんじゃ……?」
実はアユムがクソゲー好きというのは一部の人間しか知らないのでミアが若干引いている。
とはいえ、りなこが喜んでいると嬉しいのがミアなので、りなこが気に入ったこのフォースネストをミアも気に入った模様。
「アユムがクソゲー好きだなんて意外ね……人は見かけによらないわ……。」
「アユムはクソゲーで作ったクソゲーハウスに住むのが夢だって言ってたからね。」
「も、もうユウちゃん!その夢は中学生の時までのやつだよぉ!」
「中学生の頃までは言ってたのね……。」
「店員さん、このフォースネストは他に何が出来るんですか?」
「世界中のあらゆるゲームが遊べます。」
「え?あ、はい。それ以外には何が……、」
「ありとあらゆるクソゲーが堪能できます。」
「……………。」
「ちなみにお値段5000万ビルドコインとなっております!」
「次ーーーーーー!!!」
予算オーバーなうえに世界中のクソゲーを寄せ集めたフォースネストなど誰が好きで買うのか。
いや、よほどのクソゲーマニアなら買うかもしれないが。
最期にクソゲーの台をアユムが名残惜しそうに見ていたが、ミアがアユムを引っ張ってなんとか連れ出すことが出来た。
~~
その次に案内された場所は、なんとも不思議な場所。
建物は普通なのだが、中に入ると宇宙空間の様な無重力空間であり、さらに宙には雲のような物がぷかぷかと浮いている。
カナタはそのうちの一つを手繰り寄せると、早速その上で横になり、すやぴを決め込んだ。
「んふ~♡ カナタちゃん、ここ好き~♡」
「おーい、カナちゃーん!降りてこーい!」
「アイちゃんもおいで~♪」
「うわわ!?アハハ!なにここめっちゃおもしろーい!」
「これは……バランス感覚を鍛えるトレーニングに最適なフォースネストですね!」
「しずこちゃんそんな真面目な事言わずにすやぴしてごらん?とーっても気持ちいいよ~♡」
無重力空間でふよふよ漂いながら遊ぶアイと、すやぴするカナタとしずこ。
確かに面白い場所ではあるが、フォースネストとしてはどうなのかという疑問が残る。
「面白い場所ですが、ライブを出来るような場所ではありませんね……。」
「えー!?カナタちゃんここがいいよー!!」
「こんな所でライブ出来るの何てカナタぐらいでしょ……。」
「えっと、ちなみに値段ってどのぐらいなんですか……またとんでもなく高いんじゃ……。」
「こちらは100万ビルドコインとなっております。」
「あれ?思ったより安いですね。」
「えぇ、お昼寝するぐらいしか出来ないフォースネストなので人気が無くて、今99%オフなんです!」
(この人真面目にフォースネスト紹介する気あるのかな?)
仕事熱心なのはいいが、どうもさっきから変な場所ばかり案内されている気がする。
というかここのフォースネストは本当にお昼寝空間しかないので、なんとフォースネストとして最低限必要なモビルスーツの格納庫すら無い。
どんなに安くてもこんなフォースネストを購入するのはよほどな物好きだろう。
「やだーーーーー!!カナタちゃんここがいいーーーーー!!ここじゃなきゃヤダーーーーー!!!」
「まずいです先輩!ここがカナタさんの理想のお昼寝空間過ぎて、カナタさんが駄々をこね始めました!!」
「カナちゃんどーどー!って、力つよ!?」
「全く何やってるのよカナタ……。」
少し呆れ気味になったカリンは気晴らしをしようと外に出た。
ゲームの中であるが、太陽の日差しを浴びると気分がリフレッシュするような気がした。
無事に自分たちに合うフォースネストが見つかればいいが……そんな事を考えながらジュースでも買おうと歩いていると、彼女の目にあるものが留まった。
「あら?あれは……、」
「や、やめてください!」
「良いだろ姉ちゃん?俺達と一緒に遊ぼうぜ?」
「わ、私リアルでは男です!」
「またまた~!」
「ほ、本当ですよ!」
「はいはい、そう言うの良いから。とりあえずどっか行こうぜ、な?」
「……また随分と古典的な場面に遭遇したものね……。」
どうやらナンパの現場のようだった。
カリンもリアルではほぼ毎週のようにナンパされてはいるが、あんな古風な手口は見た事が無い。
2人組の男が女性ダイバーを無理やり連れだそうとしていたが、いかにもというコワモテな外見で、女性ダイバーの方は怯えている。
仕方なくカリンは彼らの間に割って入り、男たちに向かって言った。
「あなた達、こういうスマートじゃない誘い方じゃ女の子は靡かないわよ。」
「あん?誰だお前?」
「うおっ、こっちもすげぇ美人!」
「ふふっ、ありがと♪でもお生憎様、私今日は連れがいるの。そうじゃなくても、あなた達みたいな野蛮な人達に着いて行きたいとは思わないけどね。」
「なんだこの生意気な女……。」
「やっちまうか?」
「あら?バトルする気なの?やめておいた方がいいと思うのだけれど……。」
「なんだ、今更ビビってんのか?」
「……いいわよ、あなた達とバトルしてあげる。あなた達が勝ったらデートでもなんでもしてあげるわ。」
「言ったな!へっへっへ……上玉2人ゲットだぜ!」
なんともいやらしい目をしながら、男たちは愛機である自分のガンプラを呼び出した。
呼び出されたのはバウとズサ。
強力なモビルスーツであり、最初にナンパされていた女性ダイバーはそれを見て少しおびえる。
だが、カリンは一切臆することなく、自分の愛機をコンソールパネルから呼び出した。
「さぁ、暴れるわよ!キュベレイ・ビューティー!」
~~
「「か……かわいい~~!!」」
その頃、ユウ達は店員から次のフォースネストを案内されていた。
今度案内されたのは、牧場の様なフォースネスト。
しかしここで飼育されているのは牛やヤギなどでは無く、パンダカラーのプチッガイ。
ゴロゴロとその辺で寝ころんだり、プチッガイ同士で遊んでいたり、じゃれ付いて来たり、非常にカワイイ。
その可愛さのあまり、かすみんとランジュは思わず声を上げ、寄って来たプチッガイに抱き着いたり頭を撫でたりしていた。
「ゴツゴツしてて固いけど、とっても癒されるわ~!ランジュ、こうやってパンダに抱き着くの夢だったのよ~!」
「わかりますわかりますランジュ先輩!」
「きゃは!パンダを撫でてるかすみも可愛いわ!写真撮ってもいいかしら!?」
「どうぞどうぞ!可愛く撮ってくださいね!」
「当然よ!でもかすみはどうやって撮っても可愛くなっちゃうから、可愛く撮るなっていう方が無理よ!」
「ランジュ先輩わかってますねぇ!」
「このパンダプチッガイランドは大変人気のフォースネストになっております!広大な自然の中でプチッガイたちと戯れる事の出来るこの空間は現在のストレス社会からの解放に貢献する事間違いなし!」
「……でもお高いんでしょう?」
「えぇ、もちろん!!」
何がもちろんなのかと突っ込みたくなったが、もはやそんな気も起きない。
先ほどから案内される物件はどれも予算オーバーだったり格納庫が無かったりそもそもライブすら出来なかったりと、散々な物ばかりだ。
というか1000万ビルドコインがあれば大抵のフォースネストは購入できるというのに、よくもこれだけたくさん予算オーバーな所ばかり案内してくれる店員だ。
「ランジュここがいいわ!ここにしましょうよ!」
「ランジュ、予算オーバーだと言っているではありませんか。」
「なによぉ栞子、皆で頑張ればもっとたくさんお金稼げるわ!」
「そもそもライブできるスペースが無いよランジュちゃん。ね、カリンちゃん。……カリンちゃん?」
その時、エマがカリンがいない事に気が付いた。
全員フォースネストを見るのに夢中になっていて、いつの間にかカリンがいなくなっている事に誰も気が付かなかったようだ。
「た、大変ユウちゃん!カリンちゃんが!」
「えぇ!?」
~~
「これで、おしまいよ!!」
『『うわぁああああ!!!』』
その頃、カリンはキュベレイ・ビューティーを操り、ナンパ男たちのバウとズサをビームサーベルで撃墜。
どちらも中級者以上のダイバーではあったが、すでに彼らはカリンの敵では無い。
2人とも尻尾を巻いて逃げだすと、カリンもキュベレイ・ビューティーから降りてきた。
「ふぅ……さぁ、これで大丈夫よ。あら?」
カリンが先ほどナンパされていた女性ダイバーに話しかけようとしたら、彼女はすでにいなくなっていた。
いや、いなくなったわけでは無く、カリンが戦いながら場所を移動してしまっていた。
その証拠に辺りは見覚えのない景色に変わっており、ショッピングエリア内なのかどうかも怪しい。
先ほどまでの気丈な態度とは打って変わり、知らない景色と孤独に耐えかねたカリンは少し泣きそうになった。
「ど……どこなのよここ~……皆、どこ~……!?」
最近はいつもエマかカナタかアイと一緒にいた為、迷子になる事が少なくなっていたカリン。
しかし、久しぶりに迷子になるとこんなにも心細いものなのかと改めて実感。
その心細さと言ったら、ダイバーギアを使って皆に連絡を取る、という手段すら忘れてしまう程と言えば伝わるだろうか。
「……ここにいても仕方がないし、皆を探さなきゃ……。」
迷子が一番やってはいけない、その場から動き回るというのを実行してしまうカリン。
どんどん元いた場所から遠ざかっていくが、彼女はそんな自覚など無い。
行く宛ても無く、エマからかかってきている着信にも気が付かず、カリンは一人でさまよい続けた。
~~
「電話、出ない……。」
「どこのタイミングでいなくなっちゃったのかなぁ?」
「少なくともカナちゃんが駄々をこねてた頃にはいたとと思うけど……。」
「あ、アイちゃ~ん!それは忘れて欲しいんだぜ~!」
カリンに連絡を取るが、一向に彼女は電話を取らない。
心配そうにする一同だが、エマは冷静にコンソールパネルを開き、そこからフォースメンバーリストを選ぶ。
その中からカリンのIDを選ぶと、今度はマップ表示をオンにした。
「エマ先輩何してるんですか?」
「GBNではこうやってフォースメンバーの位置を調べる事が出来るんだよ。」
「へー、そんな便利な機能もあるんだね。」
「正確にはその人本人の居場所じゃなくて、ガンプラの位置を調べるためのものなんだけどね。むー……カリンちゃん、迷子になったら無暗に動いちゃダメっていつも言ってるのに、どうやら動いてるみたい……。」
「カリンはジッとしてるの苦手だからなぁ。」
「電話もつながらないし、探しに行きませんか?」
「そうだねアユムちゃん。すぐに追いかけよう!」
「だったらここはボクの出番だね。ライトニングトールギスの自慢のスピードを見せてあげるよ。」
そう言うと、ミアは早速コンソールパネルから愛機のライトニングトールギスを呼び出した。
りなこをコックピットへ、他のメンバー達を掌の上に乗せると、早速カリンを探す為に飛び立った。
「なんでりなこだけコックピットでかすみん達は手の上なのーーー!!」
「仕方ないよかすみんさん、ナデナデ。」
「そうですね、仕方ありません。」
~~
「ここはどこなのよ~……うぅ、エマぁ~……。」
カリンが迷子になってから数十分が経過。
まさかGBNでも迷子になるだなんて思ってもいなかったカリンは周りを見渡しながら、その場にいないエマに助けを求める。
しばらく歩きまわっていると、カリンは少し開けた場所に出てきた。
日の光がまぶしくて少し目を細めるが、徐々に目が慣れてくる。
すると彼女の前に現れたのは、意外な建物だった。
「これって……虹ヶ咲学園?」
カリンの前に現れた建物は、虹ヶ咲学園と驚くほど似た建物だった。
どうやらここもフォースネストの様だが、誰も使っていないのか、周りには誰もいない。
恐る恐る中へと入ってみるが、内部は実際のニジガクよりもだいぶコンパクトであり、建物の大半は格納庫とライブステージとなっている。
一部は個室となっており、家具などは一切置かれていない。
ニジガクの校舎と寮を足して2で割った物を、さらにコンパクトにしたようなフォースネストだった。
「私達の学校にそっくり……どうしてこんなものがGBNに……?」
「カリンちゃーーーーーーん!!」
「!! え、エマぁ!!」
フォースネストの外に出てきたカリンの下へ、エマの声が聞こえた。
見上げると、そこには空を飛ぶライトニングトールギスの姿があり、その手の上にはエマをはじめとするニジガクメンバーと、女性店員が。
ライトニングトールギスがエマを降ろすと、エマはカリンに駆け寄りほっぺたを膨らませた。
「もう!ダメだよカリンちゃん!一人でどこかに行っちゃ!いっぱい電話もしたんだからね!」
「電話……?ハッ!そ、その手があったわ!」
「カ~リ~ン~ちゃ~ん?」
「ご、ごめんなさい!」
「って、えぇ!?何ここ!?私達の学校にそっくりじゃん!?」
「ホントだねユウちゃん……。」
ユウとアユムが、カリンが見つけたフォースネストに驚愕。
他のメンバーも同じように驚いており、そのあまりにもニジガクに似た装いは偶然とは思えない。
格納庫、トレーニングルーム、ライブステージ、今の彼女たちが必要とする物が全て揃っている。
「あの店員さん、このフォースネストって……店員さん?」
ユウがこのフォースネストの事を聞こうと女性店員に振り替えると、彼女は何故か俯いていた。
心配して全員彼女の顔を覗きこもうとしていると、突然女性店員はフフフと笑いだし、さらに高らかに声を上げて笑い始めた。
「アッハッハッハ!!いや~……最後の最後に紹介しようと思ってたのに、まさか自力でここを見つけるだなんて思わなかったよ!それも、まさか迷子になったカリンが見つけるだなんて!アハハハ!!」
「え?え?あの……。」
先ほどと態度を豹変させた女性店員。
全員その姿に困惑するが、その態度には嫌という程見覚えがあった。
特にしおことランジュは。
「そ、その人を少し小馬鹿にしたかのような飄々とした態度……ま、まさかあなたは……!?」
「そう、そのまさかだよ、栞子。」
「まさか……ね、姉さん!?」
「えぇ!?薫子先生!?」
女性店員……改め薫子、ダイバーネーム『カオルコ』は、その場に座り込み、このフォースネストについて説明を始めた。
「ここはね、私がニルスさんに頼んで作ってもらった場所なんだ。アンタ達が一番落ち着いて練習やライブが出来るのって、結局はニジガクのステージだと思ったのよね。だから、社会科見学に行った時の帰りにアンタ達にぴったりなフォースネストを作ってもらえないかお願いしたの。」
「カオルコ先生、あの時にそんなお願いをしてたんですか?」
「そうそう。でも条件があってさ、さすがにただで作ってもらうわけにはいかないから、1000万ビルドコインで手を打ったの。で、アンタ達が目標金額を溜めきったら、ここを紹介しようってなったわけ。」
だがただで紹介するのは面白くない。
なのでカオルコはこの日の為にリアルの自分とは似ても似つかない姿でショップエリアでバイトをはじめ、ユウ達が絶対に購入しないであろうフォースネストを順番に紹介して、最後の最後にこの場所と自分の正体を明かそうと思っていたそうだ。
しかし、その前にカリンが迷子になってしまい、挙句の果てにこのフォースネストを見つけてしまった。
「全くもう、姉さんったら……こんな回りくどいやり方やめてください!」
「えぇ~?じゃあ栞子はこのフォースネスト嫌なの?」
「そ、そんな事は……。」
「まさか私が見つけたこの場所が、私達の為に作られたフォースネストだったなんて……。」
「ありがとうカリンちゃん♪」
「別に、私はお礼を言われるような事なんてしてないわ……。」
「でもカリンちゃんが見つけてくれたおかげで、こんなに素敵なフォースネストを少しでも早く見る事が出来たんだよ!だからありがとうね♪」
「うぅ……エマぁ……。」
「さて、皆、どうする?このフォースネスト、買う?買わない?」
カオルコがニジガクの為に作ってくれた、彼女たちの為だけのフォースネスト。
ガンプラバトルとスクールアイドル活動の両立を目的とした夢のステージ。
ここにいる全員、反対意見を述べる者などいるはずも無い。
この場にいる13人を代表し、ユウがカオルコに言った。
「買う!買います!ここが私達のフォースネスト!私達の夢を叶える為の、皆の為のステージ!!」
「そうこなくっちゃ!」
そうして、握手を交わすユウとカオルコ。
侑がGBNと出会い、スクールアイドル同好会がガンプラバトルを始めてから早数ヶ月……ついに彼女たちは、自分たちだけのフォースネストを手に入れた。
~にじビル毎回劇場~
第85回:矢澤家
タクヤ「お前ん家の姉ちゃんの飯っていつ食っても美味いよなぁ。」
虎太郎「そう?」
タクヤ「だってうちの母ちゃんの作る飯なんていっつも残り物とかだぜ?美人だし優しいし、理想の姉ちゃんだよなぁ。やっぱ彼氏とかいるのかな?俺立候補したいんだけど。」
虎太郎「絶対嫌だ。」
タクヤ「ちぇっ。」
虎太郎「そうだ。ターンZのメンテナンスしないと。」
タクヤ「そうそう、そいつってなんでターンZって名前なん?∀とZガンダムだから?」
虎太郎「いや、これは……。」
タクヤ「?」
虎太郎「Zって、2って読めるだろ?」
タクヤ「あー、まぁ。」
虎太郎「反転(ターン)させたZって、5に見えるだろ?」
タクヤ「……なぁ、俺らのフォースの名前ってお前が考えたよな?」
虎太郎「うん。」
タクヤ「ミュートの由来って……、」
虎太郎「昔姉ちゃんが入ってたグループの名前を少し変えたんだけど。」
タクヤ「……お前って、シスコンだよな。」
虎太郎「いや、違うけど。」
タクヤ「いや違わねぇだろ。」